霊峰
関東地方と城都地方の間にあるこの山は今では神々が住まう場所もしくはポケモン達の楽園とまで呼ばれている。
関東、城都からも見える山頂の雪は常に雪が積もっており溶けたことはない。それも不定期におこる吹雪とポケモンの影響のため常に雪は溶けずその美しさを保っていると言われている。
古来のシロガネ山から続いてこの地には多種多様なポケモンが生息していたが、ある日を境にこの地では本来生息していないはずのポケモンまでも住み着き共存している。
また、独自の進化及び環境に対応すべくその姿形を変えたポケモンも確認されているほどだ。
そんな白銀山は第一級立ち入り禁止区域にポケモン協会によって定められている。
これは現在のポケモン預かりシステムの生みの親であるマサキ氏による論文の発表により禁止区域になったとの一説がある。
マサキ氏が存命中だった頃のシロガネ山も現在と変わらず人の手が一切及んでいない場所であり、ポケモンと自然だけが残る場所であった。さらにほかのエリアと違い野生ポケモン達のレベルが高く、希少なポケモンもいるためポケモンマフィアやポケモンハンターらが多くこの地を訪れたそうだが、並大抵のトレーナーでは歯が立たず命を落とした者も多くいたという。
そんな場所にマサキ氏は友人のトレーナーと共にこのシロガネ山及び生態系の調査を開始。数年かけて調査、ポケモン研究において権威の一人でもあるオーキド・ユキナリ博士らの協力のもと論文を発表した。
マサキ氏の論文の中でいくつか興味深いことを記した。
「今もなおシロガネ山には各地方から多くのポケモン達が移動しその生態系を育んでおり、これに終わりはなくポケモン達は時間をかけて環境の変化に対応すべく常にその身を進化させていくと考えられる」
「調査の段階でシロガネ山内部はポケモン達によっていくつもの洞窟が作られている。不思議なことに外にある入口はいくつもあれど、その道はどれも繋がっており出口は頂上へと続くたったひとつのみであると現段階で判明している。また、ポケモンが増えるたびに洞窟もまた増えると思われるので完全なマッピングは不可能に近いと思われる。さらにシロガネ山の地下には大きな空洞があり、そこに溜まっている地下水には微量の塩分も混じっていることから生息しているポケモンの生態から推測するにどこかの海に繋がっていると思われる」
そしてマサキ氏を筆頭に当時名のあるポケモン博士らと共にシロガネ山を禁止区域と認定するようポケモン協会に要請してからそう時間はかからずシロガネ山は禁止区域となった。それから月日は流れ白銀山と呼ばれるようになる。
だが二つ例外がある。
白銀山領域には実は見えない壁が張られている。これが人為的なものなのかはたまたポケモンの技なのかは不明であるが、禁止区域に指定されて以来この見えない壁は存在する。そんな場所に白銀山に入れる入口が存在する。
それはひっそりと建っているポケモンセンターである。これは古くから存在しているため旅のトレーナー達や観光目的で白銀山を間近で見ようと訪れる観光客にとって今でも重宝されている。
そんなポケモンセンターの中にある奥の入口が白銀山へ出入りできるたったひとつの玄関なのである。
ただし、ここを通れる者は限られている。ある条件を果たした者だけがこの地に足を運ぶことができるのだ。
その条件とは各地方のジムバッジを手にした上で各リーグ四天王及びチャンピオンに挑み、実績もあるが存在しているチャンピオンの半数の許可を得れば白銀山への立ち入りを許可されるというもの。
例外の二つ目は図鑑所有者であること。その場合はもちろん実力も含めて審査されるが、その多くは初代図鑑所有者らの血筋の者達が受け継いでいるため第三者がその名を受け継ぐことは稀である。
そんな条件を満たし、ここ白銀山ポケモンセンターの受付に二人の男女が受付の前に立っていた。
「確かに〈赤の図鑑所有者〉朱音様と明様のチャンピオンらの推薦状を確認いたしました。それではどうぞ神々が生きつく聖なる場所白銀山へ」
青い髪をした女性は頭を下げながら奥にある頑丈そうな扉へと手を差し伸べた。そんな彼女に向けて紫色の長髪と赤い瞳をした朱音は馴れ馴れしく言った。
「そんな真面目キャラ似合ってないよ、蒼姉」
「そうそう」
「うっせーな。一応そういう段取りしなきゃいけないんだからしょうがないだろう。たくっ」
姉である朱音に続いて弟である明も頷きながら言うと、蒼と呼ばれた女は先程までの大人のオーラを脱ぎ捨てた。
蒼はポケットからタバコを咥えると遠慮なく二人の前で吸い始め、受付のテーブルに肘をついてその本性を現した。
「猫被るって蒼姉ってことを言うんだろうなあ」
「うっせーぞ明。蹴り入れるぞ蹴り」
「高速移動で避けるから無駄だよ」
「ちっ! ほら、さっさといけよ。こっちは忙しいんだから」
「はいはい。ほらいこ明」
「ういー」
蒼を放っておいて二人は奥の扉へと向かう。頑丈そうには見えるが意外とそれは軽くて簡単に開いた。
そんな時背後から蒼が背中を向けたまま言った。
「ご先祖様によろしくな~」
暇な時はよく会っているくせにと朱音も明も思ったがそこは口には出さす適当に返事をして扉を閉めた。
「あんな人でもここの責任者兼番人なんだから人は見かけによらないね」
森の中を真っ直ぐ空きながらわたしは明に言った。
「ボクも葉兄から聞いたけど、普段は営業停止の看板ぶら下げて山に行ってるかどこかでサボってるらしいけど」
「いいなあ。わたしも仕事から解放されたい」
正式に赤の図鑑所有者になったわたしに待っているのは多忙の日々なのである。今では図鑑所有者は例えるなら国家公務員というかその地方を代表する人間なのだ。ランクとしてはリーグチャンピオンより偉いしポケモン協会にも発言権も持っている。
「無理無理。姉ちゃんは図鑑所有者だから仕事がいっぱいあるし。その点ニートなボクは最強だね!」
「そうねー」
喜んでいる明を他所にわたしは弟に向けて慈愛の目をしていた。
明は知らない。パパとママや親戚やコネを使ってヤマブキジムのジムリーダーにしようとしていることを。
それを知っているわたし達はただその平和が崩れるのを待っているのであった。
「そう言えば待ち合わせ場所ってそろそろじゃない?」
「えーと、手紙によれば……そうだけど」
明が持つ手紙を覗き込む。そこには何度も見た手紙に書いてある地図がある。
『親愛なる朱音ちゃんと明ちゃんへ。図鑑所有者になったお祝いをしたいのでシロガネ山にきてね! 赤の一族一同より。追伸。案内人にかわいいお姉ちゃんが山の麓で待ってるよ!』
今どき紙媒体だなんてと思うがまあちょっと古い人間なので仕方ないとは思った。現に白銀山をシロガネ山と書く人間など今の時代そうはいない。
だが、そもそもこれを書いたのは誰だろうかと頭を捻りたくもなる。
それを明に聞いてみれば。
「え、姉ちゃんわからないの?」
「なによ。明はわかるの?」
「だって、ボクたちをちゃん付けしてかつかわいいお姉さんなんて書くのなんて一人しかいないよ」
「……うちの一族女ばかりだから候補がいっぱいいるんだけど」
「姉ちゃんも鈍いなあ。ン……ほら、噂をすれば目の前にいるよ」
「あーーーー」
明に言われて前を向けばその人はいた。
金髪のポニーテールでわたしより背が小さくて、一見年相応に見える白いセーラー服みたいな時代錯誤な服を着ている人など思い当たる身内は一人しかいない。
その人は岩に見えるようだけど実はよく知るポケモンの頭の上で仁王立ちをして待ち受けていた。
「ふっふっふ。朱音ちゃんに明ちゃんよく来ましたね!」
「あ、リーリエばあちゃん久しぶり~」
「ふん!」
「あっ──」
──リーリエのアイアンクロー! 明には効果抜群だ!
一瞬にして距離を詰めて明にアイアンクローをしているのが〈調停者〉で〈自称太陽の子で月の戦士サンムーン〉ことリーリエお姉様であった。本当はおばあ様であるが、そう言うと今の明のようになるので親戚一同お姉様と呼んでいたりする。
ただ明は馬鹿正直というか思ったことを口にだす子なので毎回あれをくらっている。
「まったく明ちゃんも凝りません、ね!」
「いや、だってお姉様なんていう年じゃ──あばばば!」
「なにか言いましたか?!」
さらに力を強めるお姉様であるが明も明でサイキックバリアで頭部を守っているのでそこまでダメージはなかったりする。
「まあまあ。お姉様もそこまでにしてよ。明にはわたしから言っておくから」
「仕方ないですね。朱音ちゃんに免じて今回はこれまでにしてあげます。さて、いい子な朱音ちゃんには最近潰した悪の組織から拝借したこのデカいきんのたまを二個あげちゃいます」
「あ、ありがとうございますぅ……」
直径30センチ以上はある金の玉なんて一体どこから出したのかと言いたくなったが、そもそも物騒な言葉が先に出たような気がするけど聞かない方がいんだろうなあ。
わたしは二個の金の玉をバックにしまいながらすでに復活している明が言った。
「で、リーリエお、姉様が立っていたポケモンって」
「はい。おふたりもご存じ──」
「どうも。本来は本編に登場するはずが大人の都合でこんな所で先行登場したレジギガスちゃんです!」
「うわぁーーレジギガスだーーーー!!」
「HAHAHA。朱音様は相変わらずですね」
レジギガスと知りわたしはいつものように抱き着いた。なぜだかわからないんだけど、子供のころからこういう癖がついているのだ。
「なんで姉ちゃん毎回レジギガスに抱き着くんだろ。ボクならご先祖様のカビゴンに飛び込むけど」
「さあ? 朱音ちゃんは子供のころからレジギガスに夢中でしたからね」
「年はとらなくてもちゃんとそういうことは覚えてるんですね」
「明ちゃん、あとでお師匠に特別コースを用意させますから期待していてくださいね」
「じゃあボクテレポートで帰りますね……ってできない?!」
「フフフっ。ここはすでにソーナノちゃんの結界内。明ちゃん程度ではテレポートなんてできません」
「ちくしょ────!!!」
「明様も相変わらずですな」
「ほんとにねー」
なんやかんやでわたしたちはレジギガスの手に乗って山を登り始めるのであった。
ここ白銀山内部は一種の迷路である。外にではなく山の内部に住むポケモン達によってこの洞窟はつくられているのだが、種族や人間でいうグループごとによって生息する場所は違い、また年々各地方から来るポケモン達によって新しくできるのでここ白銀山内部は迷宮となっている。
なら外側を登ればいいという発想になるのだが、残念ながら途中まではいけても山頂には絶対にいけないのである。
身内曰く「許可のない者は通れない」とのことだ。
わたしや明も幼い頃パパとママに連れられて来たことはあるのだが如何せん幼少の頃だ。なので、お姉様が折角だから案内しますと言われて何時間もかけてレジギガスタクシーに乗って洞窟内を探検したあとようやく山頂へと辿り着いた。
山頂は一種のバトルステージになっている。雲がなければ最高の景色を満喫しながらバトルをすることができる。その少し手前にちょっと大きめなログハウスがある。
それは幼少のころではあるが、これの前に立って見上げた記憶だけは今でもちゃんと覚えている。
「すげー。全然老朽化してないや。やっぱ時間止めてるの?」
「まさか。ちゃーんとお師匠達が一から修繕しているんです!」
「なんでお姉様が偉そうに言うんだろ……」
「まあまあ。細かいことはいいんです。ささ、中に入って入って」
お姉様の前に言われて二人で扉の前に立つ。
不思議とわたしも明も緊張している。初めて入るわけでも初めて会う人達ではないのにだ。それでも直接こうして訪れるのは十年ぶりぐらいだろうか。いつも用があれば向こうから来るからそんなに懐かしいみたいな感情はないのだが。
「じゃあ……わたしが開けるよ」
「う、うん」
手作りなのにしっかりと作り込まれたドアを開ける。子供のころは一緒に開けていたのだがいまではわたしひとりで開けることができることに時間が経ち成長したことを実感させれられた。
扉の開けたその先にはわたしたちの家族が待っていた。
『おかえりなさい。朱音、明』
「ただいま。ナツメママ。シロナ姉様」
「ただいまママ。あ、シロナb──」
──シロナの波動拳! 明は山頂から吹き飛ばされた!
──明のテレポート! 明は元の場所に戻った!
「明ぁ……」
「なんだよ! まだ何もいってないじゃん!」
「だって、口の動きで絶対に言おうとしてたじゃない」
「だって本当のこ──っぶね!」
「あら避けたわね。ちゃんと成長してお姉さんうれしいな♡」
「うっわ。きっつ」
「──えい」
「っと! ははは。ぼくも日々進化しているんだよ!」
と、外ではシロナ姉様と明の追いかけっこが始まった。そんな二人を見て肩を落としているわたしにナツメママが優しく手を置いた励ましてくれた。
「明も相変わらずね。朱音もたいへんね」
ナツメママはわたしたちのご先祖様だ。シロナお姉様と違って肉体はなく寿命を迎えてこの世を去った……のだが、ある日を境に霊界からやってきてご先祖様たちと一緒にここに住んでるいるのだ。
明のサイコパワーもナツメママ譲りで、それもあって霊体だけどこうして生きているわたしたちの体に触ることもできるのだ。
ちなみにシロナお姉様は加護の影響とやらで不老らしい。一応死ぬとは本人談。最近聞いた話ではお肌の張りが悪くなったとのこと。同じ女性として自分もそれを迎えることになると思うと、やはり年は取りたくないと思ってしまう。
「そうなんだよ。さっきも下でリーリエお姉様と同じことしてたし」
「そういうところはあの人と同じね」
「言われてみればお師匠ってそういうところありますもんね」
「へー。ところで、そのご先祖様は?」
「──あのお方ならいまは外出中です。ね、シガナ」
「そうね、ヒガナ」
奥から二人で手を合わせながら現れたのがヒガナとシガナ。二人は双子らしくヒガナは太陽の巫女としてここでご先祖様の傍に仕えている。対してシガナは伝承者という役目を担っているらしい。
「あ、二人ともひさしぶりー!」
「朱音もようやく赤を継いだのね。ね、シガナ」
「そうね、ヒガナ。それはとても喜ばしいことだわ」
「わたしはまだ継ぎたくないのにパパが継げってうるさくてさー」
パパは先代の赤の図鑑所有者だ。年もまだ40代だというのに「パパはね……毎日をスロットに貢ぐ生活に憧れてたんだ!」と意味わからんことを言いだして少し前から引き継ぎの手続きをしていたらしい。その際ママに折檻されたのは言うまでもない。
「でも朱音が継いでくれてあのお方も喜んでいましたよ」
ヒガナが笑顔で言った。
「え、そうなの?」
「そうですよ。朱音は久しくいなかった発現者」
「なんでも『俺に似てるからあとは死んで生き返れば最高』とも仰っておりましたよ」
「普通は死んだら生き返らないよ……」
「そう? だってあなたの誕生日って10月2日よね」
「うん」
「聞いた話ではあの方は102回死んだとか」
「ね? なにか縁を感じるでしょ?」
「そんな縁やだよ! そ、そんなことないよねナツメママ?!」
「だ、大丈夫よ。今の時代そうそう物騒なことないから……」
必死に擁護してくれているのだが何故かその目は泳いでいた。
「フラグねヒガナ」
「あら奇遇ね。今年は何かよくないことが起きるってお告げが最近あったもの」
「いやだー! わたしは平穏な人生を送るんだー!!」
「まあそんな悲観しなくてもきっと平気よ。わたしたちの子孫って結構丈夫だから」
「フォローになってないよナツメママ……」
そんなことを言いつつもわたしはママに抱き着いてしまうのだ。幽霊なのにいい匂いがするのはとても不思議なのだが考えても仕方がない。
ママに頭を撫でてもらいながらわたしはふと伝えようとしていたことを思い出した。
「あ、そうだ。ママの出たあの映画今度は現代版でリメイクするよ」
「え、また? これで何回目からしら」
「ドラマ版とか時代劇版とか海外版とか色々あったけど、やっぱ本家は超えらないよ。あの『神が愛した女』は」
「あら嬉しいこと言ってくれるわね」
ナツメママは当時のヤマブキジムのジムリーダーらしいのだが、現代はそちらよりもポケウッド女優としての方が名が知れ渡っている。当時から話題のある女優だったらしいのだが最後に出演した『神が愛した女』が空前絶後の大ヒット。興行収入も歴代1位でその記録はいまなお抜かれていない。ママ自身も数多くの賞を受賞してレジェンド女優に名を残した。
「前に聞いたけど、あれって本当に実話なの?」
「ええ。原案というか脚本に演出その他諸々全部私よ」
「す、すごいぃ……」
「ということはその神ってご先祖様なわけ?」
いつのまにか戻ってきた明がひょっこりわたしの隣にやってきて言った。
「ええ」
「じゃあアサギの伝説って言われている愛の告白をご先祖様がして、それからママと交際を始めて」
「色々あってなんかナツメママがご先祖様を振って」
「ご先祖様がもう一度やり直してってなって、何故かご先祖様とママが戦ってママが勝ったのが本当に実話なの」
「本当よ。私も当時見てたし」
近くで座っていたシロナお姉様が懐かしみながら言った。まさにあの頃は私も若かったわ~みたいな雰囲気を出していた。
「ま、まあアサギの伝説はちょっと盛ったていうか順番はちょっと変えてあるけどね」
「凄かったわよね~。被害を出さないために無人島でやったらそれはもう更地になって綺麗なクレーターができたもの」
「スケールが違うね、明」
「ソウダネ姉ちゃん……」
「ぶっちゃけその発端私なんだけどね!」
笑いながら言ってのけるシロナお姉様に対してナツメママの周囲がとても冷えてきた。わたしと明は思わず抱き着いて震えていた。ちなみにヒガナとシガナは話を知っているのか、思い出し笑いをしてクスクスと笑っていた。
温度差が違い過ぎる……!
「あの頃のあの人はね……ちょっと抜けてたって言うの? それはもう大変だったのよ……!!」
「へ、へえ……。で、そのご先祖様はいったいどこに外出中なの?」
「なんでもぷれすてほにゃららとなるものをアルセウス様と一緒に買いに出かけましたよ。そうよね、シガナ」
「そうね。ついでに、にんてんどーなんちゃらも買ってくるとか」
「ご先祖様とアルちゃんってゲーマーだもんね」
「明もゲーム好きだもんね」
ご先祖様とアルちゃん(わたしと明はそう呼んでる)は暇といっていつもゲームをしている。それもちょっと隣の世界に行って買ってくるので、この世にはないゲーム機やソフトがたくさんあったりする。
明が言うには「ちょっとした力の応用だ」とか言ってそちらの世界と繋げてオンラインゲームもできるのだとか。
ちなみにアルちゃんはあれで手先が器用だったりする。
そんな中、妙な感覚を感じ取った。同時にナツメママが言う。
「あら。噂をすれば帰ってきたわよ」
目の前の空間が裂けてにゅいっと人間サイズぐらいなったアルちゃんが帰ってきた。
「いま帰った!」
「アルちゃんおひさー」
「おひさー」
「む。朱音に明ではないか。そういえば今日来るのだったな」
ちょっと偉そうな口調なのはこの世界の創造神だかららしいのだがわたしたちからすればそんな威厳など微塵も感じられない。むしろただの引きこもりなゲーマーだ。
「アルセウスあの人はどこよ。一緒じゃないの?」
「アイツなら……うむ。どうやら逃げ切ったようだ」
「逃げ切った? それって……」
「──あっぶねーー!!」
別の空間から男の人がやってきた。両手に紙袋を持って息を荒くしている。まるで何かから逃げたように見えた。
「ねえ。もしかしてまた?」
と、ナツメママが呆れながら尋ねた。
「う、うん。なんか潜んでたんだよ……」
「そ、そう」
なにやら二人して困った顔をしているがきっと多分あのお姉様のことだろうか。二人はともかくシロナお姉様やヒガナとシガナも笑っているし、むろんわたしたちもあの人のことはキライじゃない。よくお菓子やお小遣いくれるしね。
「それはそうと、二人ともよく来たな」
『パパもひさしぶりー』
「パパ言うんじゃねえ」
『はいぃ……』
神の威圧と言わんばかりに睨んでくる。ナツメママをママと呼ぶからパパと呼びたいのに何故か嫌がるのでみんなご先祖様と呼んでいる。
「それにしてもご先祖様の今日のシャツいいね!」
会うたびに違うシャツを着ているご先祖様の今日のシャツはマグロの刺身こと刺身Tシャツ。まるで本物ようなプリントだ。
「だろだろ! いやあ~時代が遂に追いついたぜ」
「ほんと。これだけは今でもありえないわ……」
「ナツメの感性は昔のままだからよ」
「悪い?!」
「別に~?」
事あるごとにシロナお姉様がちょっとママを挑発して、もう回数何て知らないけどちょっとした痴話げんかが始まるのだ。
「やれやれおふたりは相変わらずですね。ではお師匠早速やりましょう!」
「お前も染まったよなー」
「我が最初にするの!」
「わたしもやるー」
「ぼくもー」
「わたしは見るのが好きだからお菓子と飲み物を。シガナは?」
「あ、わたしもいくわヒガナ」
「オホホ! いくら波動使いと言えど私には勝てないわよ~」
「え?! 幽霊相手に勝てるかって? できらぁ!!」
一方そんな騒がしいログハウスの外では……。
「というわけで現場のレジギガスが赤の一族の日常を現場からお伝えしました」
「お前何やってるんだピカ?」
「現場のアナウンサーごっこ」
『レジギガスも暇ですね~。さあて、今の内にマスターの隣を確保っと』
「──」
「スピアーの言うようにしょうもないゴンねぇ……」
「ソーナノ!」
おわり
登場人物紹介
朱音
今代の赤の図鑑所有者。紫色の長髪に赤い目をしている十代の女の子。
朱音はエスパーとしての力はないがどっかのご先祖の血を濃く継いでいるのか、生まれながらにして身体能力が高くどんなポケモンでも従えることのできる力を持つ。
総合能力は朱音であるが戦闘面においては明が勝る。
怒ると髪の色が変わって炎・氷・雷の技を使うとかないとか。
明
朱音の弟でシスコン。白銀山に入るためにわざわざ全国のバッジを集めてリーグに挑んだ無職(次期ヤマブキジムのジムリーダーの予定)。
姉と違って母方の血を継いでいるのかエスパー使いである。
一人称はボクであるが朱音に何かあるとご先祖様みたいに戦い始める。
必殺技はサイキックウェーブからのサイキック・斬。
あと思ったことはよく口に出すタイプ。
蒼
今代の青の図鑑所有者。年齢は20歳ぐらいでちょいヤンみたいな子。ヘビースモーカーではないがカッコいいからと言ってタバコを吸ってる。その癖に酒は飲めない。
白銀山及びポケモンセンターの責任者兼番人なので他の図鑑所有者と比べると後述のこともあり実力は上である。
観光シーズン以外は基本暇なのでよく山頂に行ってはご先祖様とよくゲームしたり稽古をつけてもらっている。
葉
現在の関東地方リーグチャンピオン。二つある緑の図鑑所有者。もう1人の図鑑所有者は葉の従兄弟である緑が継いでいる。
リーリエお姉様
通称 選ばれし者
調停者であり自称太陽の子月の戦士サンムーン。
見た目は幼い少女であるがその握力はイシツブテを簡単に粉々にしてしまうほどの怪力の持ち主。
年齢不詳。世界各地に赴いては善と悪の均衡を保っていたりなかったり。
ヒガナとシガナ
双子の姉妹。ヒガナが太陽の巫女、シガナが伝承者として代々その名を継いでるらしい。
生まれも育ちも白銀山であるがその出生はきっと明かされることはないだろう。
シロナお姉様
遥か昔、シンオウ地方で常にチャンピオンとして君臨していた無敗のチャンピオン。その美しさもあって男女ともに大変人気があったらしいがある時期を境に行方をくらましたという。
普段から白銀山でご先祖様を甘やかす生活を送っているらしい。
最近の悩みはお肌の水の弾き方が悪くなっていること。
ナツメママ
朱音と明の遠いご先祖様。大昔のヤマブキジムのジムリーダーらしいのだが、その名はポケウッド女優としての方が知れ渡っている。
ある時期を境に霊界と現世を行き来できるようになって以来、いつも彼の傍で甘やかすシロナに変わって死んでもなお奥様として振る舞っている様子。
ちなみに生前ご先祖様と真剣勝負に勝ってゴールした模様。
ご先祖様
ついに時代が追いつたことに歓喜している旧き神にして新しい神様。
普段はアルセウスことアルちゃんと一緒にゲームをしたり、たまに訪れる子孫たちに稽古をつけている模様。
特に朱音は若い頃の自分を思い出すようで、更に強くなってもらうためにちょっと死んじゃうぐらいの試練を考えているとかないとか。
アルセウス
現代堕ちした創造神。
レジギガス
オッス、おらレジギガス。本編の登場を楽しみにしててくれよな!
ご先祖様のポケモン達
みんな今日も元気に過ごしています。
おまけ
あの人はある時期に覚醒して普通にこの時代も生きてる。それもあって第二次嫁対戦が勃発したもよう。
色々言われてるBFVをずっとやっていて頭の中には案はあるけど全然かけていない作者です。
これ本当はもっと後に書く予定でしたがモチベとか色々あって出しました。どこかで書いたのかは忘れたけど、わたしは最初と最後の話はすぐ思いついてその間が中々書けない人間なのです。
なので未来の話だけど結果だけ書きました。
解説というなの言い訳をすれば、ナツメが人の死を選んだのは人間としてレッドを愛して死にたいから。つまり死ぬことによって自分という存在をレッドに永遠に刻みこもうとしたのです。
実際それは的中してレッドはナツメの死後とても悲しみました。が、ひょんなことから霊界と現世を行き来しちゃうぐらいになって今に至るです。
で、甘やかすシロナと違ってちゃんと叱るべき時にレッドを叱るナツメがいるおかげで世界は安定しています。
どうでもいいけど、ポケマスで最近実装されたけど個人的にかわいくないし手抜きな感じがしているので許さないよ。ちなみに出てない。
あ、シロナはいる。
ちなみにレッドが気づかれないように子供が出来ないようにしていたのにナツメが子供ができた理由を漏らすと、ナツメがアレをテレポートさせていたから。何処にとは言わんが。