コノサキノ、地獄ノフタヲアケテモ……?
モドルナラ、イマノウチデスヨ……?
何やっちゃってんの?な10話目投稿。
ハラキリどころかウチクビじゃね?ですね。
※かなり長めです。疲れたり、気分を悪くされてしまいましたら無理せずお戻り下さい
また、今回は全文おバカ文ですので、特にご注意ください。
※H26.9.28に誤字修正しました。ご指摘、ありがとうございました。
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ないすとぅーみーちゅー。
世界で生きていくことができているのは、他者との繋がりがあるからなのさ!と思っている金剛(の偽物)デ~ス。
……その繋がりが変な方に向かっちゃうと、今の俺みたいになっちゃいますけどね……
今の状態ですか?
えー、物凄く簡単に言ってしまえば……
一緒に避難しようと思ってたら置いてかれました、なう。
危険地帯にひとりぼっちです、なう。
…
……
………わけがわからないよ(泣)
鎮守府でお留守番。ひとりでできるもん!
↓
バッドイベントへようこそ!孤立無援の撤退戦だぁ!
――という急転直下の事態に突き落された時点でも、いっぱいいっぱいなのに。
その上、さらにこの仕打ち……俺のガラスのハートは砕けそうです。
こういう時、まっとうな主人公なら最後まで諦めないものなんだろう。
――抗え、最後まで――……ってね。
まあ、俺は主人公とは程遠い凡人ですが、それでも非才なりに足掻いてみましたよ。
……でもね、それでこんな結末を迎えるとか……
――抗った結果がコレだよ!――であります。
現実なんて非情です。
主人公補正を持ってる人には、それが判らんのです!
……とりあえず、落ち着くために今までの経緯を思い返してみるとしよう。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
突如として降り掛かってきた、鎮守府に何者かが迫っているやもしれないという緊急事態。
対応策として[とっとと逃げようZE☆]作戦を発動したはいいが、妖精さん達にはどうしてもらうべきか?
俺の船体に乗ってもらうのが一番手っ取り早いんだろうけど、それだと被害を受けた時に巻き添え確定。
ぶっちゃけ、現状況から考えて追い付かれる恐れは十分すぎる以上にあると思う。
こっちが異常に気付くまでに、相手には相当な時間があっただろうしな。
想像以上に距離を詰めてるかもしらん。
金剛さんボディは確かに高速だけど、それはあくまで戦艦という枠の中での話。
相手に快速艦がいたら振り切るのは厳しいし。
ましてや飛行機でもいようもんなら、どう足掻いても逃げ切れないだろう。
こんな悪天候の中で飛行機を飛ばすなんて、普通だと在り得ないんだけど……相手が相手だからなあ……
相手――まあ間違いなく深海棲艦だろうけど。
ゲーム上だと、ヲ級フラグシップとかは夜戦で航空戦仕掛けてくるからなあ……
そんな奴等のことだ、こんな暴風雨の中でも艦上機を飛ばしてくると見ておいた方が良い。
そうなると、追い付かれて攻撃を喰らう。
その時、妖精さんが乗ってたら……残念だが、犠牲が出ちゃうだろうな。
そんな事態は避けたい。という訳で俺に乗ってもらうのは却下。
だったらどうすんのさってことで、無い頭を振り絞って考えたのがコチラ!
――俺の船体に乗ってもらうのが危ないなら、別の船に乗ってもらえば良いじゃない?―
という訳で、鎮守府に設置してた妖精さん用の避難艇に搭乗してもらったのです。
喋れないし意志疎通もできないので、紙に書いて見てもらいまして。
こういう時に僅かでも自分の気持ちを書き添えることができたなら、妖精さん達からの疎外感も多少は薄れると思うのだけど……
無理です。事務的なことしか書けないというステキ仕様は外せません。
……しょうがないよね。
自分の気持ちを表せない――そんなシャイシャイなのが鉄面皮金剛さんだもの。
……でも、そのせいで妖精さん達からは距離を置かれる一方です。
用件を機械的に伝えられるだけとか…そんな相手と近付きたいとは思わないよね……
この金剛さんボディが気に入らないとか、そういうんじゃないんだ。
ヘタレの俺が戦場という地獄を生き延びたのは、憑代である金剛さんのおかげ。
潜水艦との戦いの後に鎮守府内で行われた簡単な練習航海と模擬演習では、申し分ない結果を残した。
数々の書類を苦も無く片付けてしまうのだから、秘書艦としても優秀。
つまり彼女は、ほぼ万能であるわけで。
その能力は、この緊急事態にも遺憾なく発揮されてるのデス。
例えば、今、懐にある地図……海図と言ったほうがいいかな。
つい先程、妖精さん達が避難艇に乗ってる最中に、「避難場所まで楽に行ければな~」って思って書いたんですが……
我ながら鳥肌の立つ出来。まるで機械が書いたみたいだわ。
当然のごとく、俺の力じゃありません。
ここまでのモノを作るには、正確なデータと確かな技術が必要だけど……俺に、んなことできるわきゃあない。
データ?
近くの海域についての資料が鎮守府資料室にあったので、時間のある時に暇潰しとして目を通したけど……チンプンカンプンで飛ばし読みしましたよ。
技術?
海図のことなんて、何一つワカリマセ~ン。
なのに、できました。こう、腕が自然と動いてですね。
ざっくり言ってしまえば――神様仏様金剛様!
俺の意志を読み取って、体を動かしてくれたってことなんだろう。
こちらの希望を、こうもあっさりと叶えてくれるとか……超有名な、某・青いネコタイプのロボットを彷彿とさせるな。
とっても大好き 金剛さん♪
こんな素敵ボディに憑いてるのが、へなちょこな俺なんて……
……よく考えるまでもなく、「豚に真珠ってレベルじゃねーぞ!」てことで。
我が肉体ながら、頭が上がりません。
文武両道のスーパーフェクトボディに文句を付けることなんて、できません。
……ただね。その能力のホンの僅かでいいからコミュ方面に振ってほしかったかな~、とね。
まあ、とにかく。
その海図を懐に入れた状態で、鎮守府の外に本体を実体化させて居るわけですが。
しっかし、凄い嵐だわ。内心ブルブル。
これからこの荒天の中を突っ切らねばならないという不安感と、そんな中で見えざる敵が忍び寄っているという恐怖感。
そんなダブルパンチで、ノックアウト寸前です。
こんなとこに長居は無用。
あとはとっととスタコラサッサだぜー……というところなんだが。
――ここで俺の(しょうもない)特殊能力、《優柔不断》が発動!
いや、あのですね。
逃げたいのはヤマヤマなんすけど……
ここで逃げたら、イケメン君の立場が悪くならね?
――べ、別にアイツのことなんて心配してないんだからねっ!
…
……コホン。冗談はここまでにして。
マジメな話、奴の立場が悪くなると困る。
戦略的に見れば、ここで撤退するのは妥当な手段だろうと思う。
何しろ、ここは辺境最前線の貧乏鎮守府だ。防備など整っておらず、できることと言えば威嚇が精々。
そんな状態で未知の存在を相手にするのは、余りにも分が悪い。
軍事行動においては、余計な損害を避けることも肝要なこと。
故に、ここで退くのは間違っていない!
……お前はビビッて逃げようとしてるだけだって?それは言わないお約束デス。
で、だ。
理由はともあれ、ここでの退却は悪手ではないと思うんだけれども……問題がある。
組織というのは体裁を重視するものであり、軍という存在においては特にそれは顕著だ。
そんな彼らにとって、今回の俺の決断によって齎される結果――人類防衛の象徴でもある鎮守府の失陥――を、受け入れられるだろうか。
大局的面で見れば間違っていない、とか。
或いは、こんなちっぽけな鎮守府が陥落したくらいで、とか。
その他諸々、合理的に見れば妥当性のある選択であり、軍事に縁のある者なら誰でも察することができるはずだ。
……だけど。
「鎮守府を守れなかった」という結果が残ってしまうのは避けられず。
そして、イケメン君を煙たがってる爺共はそのことに噛み付いてくるかもしれない。
鎮守府撤退⇒落城という結果を生み出すのは、俺の決断によるものであり。
艦娘である俺の決断の責任は、その主の提督であるイケメン君に帰結する。
元帥――あの爺共を始めとした首脳部から睨まれているウチのイケメン君の立場は誠に弱いわけで。
責任を糾弾され、排斥されてしまうかもしれない。
そんなことが起きてしまったら……そんなことになってしまったら……
――俺がヤヴァイじゃないですかぁぁぁ!
まず何と言ってもヤバイのが、第六駆逐隊の皆と引き裂かれて離ればなれになってしまう可能性があることだ。
この地上に降臨した天使であり、宝でもある彼女達と別れ別れになるとか……そんなの、ロリコンとして耐えられないっ!
…
……オホン。
で、もう1つが俺の将来である。
イケメン君排除⇒さあ、所属先を失った俺の未来は?
①大本営に連れ戻される
②別の提督の元に配置される
……うぼあ。どっちでも嫌な予感しかしない。
①⇒即刻抑留されてお縄付き。または、なんらかの非道な実験台として捧げられる。
②⇒こんな俺をまっとうに運用しようとする酔狂な提督なんて、イケメン君ぐらいだろ。
他の提督だったら、最初から撃沈されることを目的とした捨て艦として弾除けとして使われちゃったりとか……
…
……うわあ……どう転んでも碌なことになりゃしない予感がひしひしと。
退くも地獄。残るも地獄。一体、どうすれば……。
とまあ、そんなこんなで鎮守府を見ながら悶々とすること幾刻か。
下した結論は……っ!
――うん、やっぱ逃げよ。
人間(今は艦娘だけど)、命あっての物種だよね!
ひょっとしたら、艦隊という単位で括られた第六駆逐隊の皆とは離されないかもしれないし。
大本営でもいきなり処分はされないだろうし、イケメン君以外に酔狂な提督だっているかもしれない。
……全部、何の根拠も無い現実逃避ですけどね。
ま、生きてりゃ何とかなるもんさ。
…
……まあ、その。
イケメン君がどうなるかは……少しだけ、ほんの少しだけ気になるけど……
――そんな雑念に囚われていたのがいけなかったのか、俺は次の瞬間にとんでもないポカをやらかした。
――嵐の中に突然響いた轟音。
最初に聞いた時、それが何処から発されたものか解らなかった。
え、何?この馬鹿でかい音は?
もしかして、もう奴等が攻め寄せてきたのか?
それとも、避難艇か鎮守府内での事故か?
……ん?この焦げ臭い匂いは……砲撃残滓による匂い?
はて、いやに近くから漂ってくるような?
具体的に言うと、俺の船体前部の主砲辺りから。
さてさて、そこから匂ってくるということは……
…
……
………犯人、俺だったァ!?
結論:しょうもないことで悩んで集中力を欠いてたら、何か砲撃しちゃってました、まる。
あることで悩む余り、他の事象への注意力が疎かになってしまうというのは誰でもあることだと思う。
考え込んでいたせいで目の前に迫っている物に気付かなかったとか、人に呼ばれているのに気づかなかったりといったような、動作の掛け違い。
今の俺の場合だと……集中してなかったせいで砲塔制御を怠り、無意識下で砲撃しちゃった、と。そういうことか。
簡単に言えば――悩んでいるうちに、弾みで主砲発砲してました、ごめんちゃい♪
…
……
おいぃぃ!?何やっちゃってんの俺!?
ごめんちゃい♪で済む問題じゃねーし!
戦力不明の敵がどこからか迫ってる時に、意味も無く一発かますとか……馬鹿なの死ぬの!?
しかも、である。これ、ただの砲撃じゃないんだよなあ……
上を見上げれば、分厚い黒雲で覆われた上空に瞬いている鮮やかな光。
…
……
[わあ~、きれい!あんなに光ってるんだったら、水平線の向こうからでも存在が判るね!]
[ええ、そうよ。これこそが特製砲弾[信号弾(戦艦主砲弾型)]よ。戦艦の主砲弾で作り上げた信号弾だから、規模も効果も桁違いなの]
[すごいんだねえ。でもおねえさん、ここに向かってる誰かにも判っちゃうんじゃない?]
[完全にバレるでしょうね。避難中に味方に早く見つけてもらうために撃とうと1発だけ装填しておいたみたいだけれど……それをこのタイミングで、しかも敵が来る方に向かって撃ってしまうなんて……]
[いみがまったくないっていうことだね!]
[そうね、簡単に言うなら――『きみはじつにばかだな』というところね]
[ふ~ん、すっごいおバカさんなんだね!]
……
…
思わず1人脳内寸劇を繰り広げてしまいましたよ、うふふのふ。
特別製の信号弾をこのタイミングで撃っちゃうとか……アホここに極まれり。
――って他人事みたいに暢気に考えてる場合じゃねぇぇ!
どうしよどうしよ!?
と、とりあえず気を静めよう。目を閉じて~、気持ちを楽にして~……
…
……無理っす。
こんな状況下で精神を静めるなんて、ビビリの俺にできるわきゃあない。
むしろ、不安やら何やらがどんどん積み上がってきてテンパりそうである。
少しはリラックスできたらな~と思ったから、目を閉じて瞑想の真似事をしてみたんだが……俺に、そんな精神的成熟性は無かった。
むしろ視界を閉ざしたせいで、心許なさが増大しているような……
ええい、ヤメヤメ!とにかく、もう一度考えを整理しよう。
そう思って目を開け、状況を確認しようと視線を動かしたら。
そこには、小さな身体とつぶら(?)な瞳を持った、小さな童女が居た。
ちょっ!?妖精さん、いつからそこに居たんですか!?
ビビった、マジでビビった。気配なんて全く感じられなかったからね。
腰が抜けるかと思ったい。
金剛さんボディだから、そういった動揺は毛ほども表れなかったけど。
まったく。せめて声くらい掛けてくれれば……って、妖精さんは喋らないんだった。
というか、俺が彼女達と交信することができないんだから、意志疎通は無理か。
そう、妖精さん達との感応能力が無い俺は、彼女達の言葉は解らない。
……うん。
解らない、はず、なんだけど……目は口ほどにものを言うとは、よく言ったもんだ。
こちらに向けられた妖精さんの目が何を言っているのか、言わずとも解る……
それ即ち――
「てめえ、なんてことしてくれてんじゃ(意訳)」
ってことですよね解ります。
ワーイ、コトバナンテナクテモ、ココロヲカヨワセルコトハデキルンダー。
……い~や~!
よ、妖精さん怒ってらっしゃるぅぅ!?
って怒って当然ですよねえ!
避難指示を出した当人である俺がノロノロとしてた挙句、信号弾発射しちゃったんですもんね!
と、とりあえず謝らないと…!
え~っと、小学校の頃に習った教訓その2!
――謝るときは、キチンと相手の目を見て謝りなさい――
これを守らないと!
っても、妖精さんは小さいから、今はこちらが見下ろす形になっちゃってる。
これを少しでも解消するためにも、できるだけ近づくべし。
腰を屈め、妖精さんに目を合わせる。
口が利けないのだから、せめて動作で誠意を示さないと……って、あれ?
……妖精さん、表情が少し硬くなってません?……もしかして……
ちょ、「お前なんて絶対に許さない」ってことすか!?
やばい、ここで妖精さんに臍を曲げられたら非常に不味い。
妖精さん達は、艦娘の武器弾薬の補給から船体の修理・整備までを一手にこなしている。
今は艦娘である俺にとっては、生命線そのものと言っていい。
そんな彼女達と不仲になって、手抜き整備とかされたら……!
か、勘弁してください!わざとじゃないんです!
ええい、こんなときに謝罪の言葉1つ出すことすら叶わないとはっ……!
今だけは恨みますよ、金剛さん!
ど、どうするどうする?なにか、他の手は……!
…
……
後から冷静に考えれば、単純に頭を下げりゃよかったんじゃないかと思う。
けど、この時の俺は混乱するばかりで。そんな当たり前の手が思いつかなかったんだ。
……
…
と、とにかくわざとじゃないってことだけは、解ってもらわないと!
故意にやったんじゃないんです!こんなつもり無かったんです!
そんな必死な思いを、何とか体の動きだけで伝えようとして。
――結果:鉄仮面金剛さんには、勝てなかったよ……
元の身体であったら、口から泡を飛ばして喚き立てていたであろう弁明。
……けれど、この金剛さんボディでできたのは、小さく首を振ることだけだった。
金剛さん。ああ、金剛さん。
何でも出来る貴女様を、俺は尊敬しているし、心から感謝もしております。
……けれど何故、感情に類することだけは、こんなにポンコツになってしまうのですか?
「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」という言葉がありますが、貴女様は俺を〈ボッチ〉という名の孤独地獄へと突き落とすつもりですか?
[ボディーランゲージで解ってもらおう作戦]は失敗!
とりあえず、このままではアカンな。……ならば次なる手を打つまでよ!
名付けて――[他のことでごまかしちゃおう作戦]!
巫女服の懐に仕舞っておいた手作り海図を取り出し、妖精さんの前に突き出す。
妖精さん、あなたが怒るのは良く解る。でも……よく考えて、今の状況を。
そう、今は時間を無駄にしてる場合じゃないよ!早く逃げることが先だ!
手を取り合って、この場を乗り切ろうじゃないか。
そのための証として、一時的にこの海図を預けるから。支度を存分に整えてくれ。
さあ、一緒にこの局面を乗り越えよう!
――このように、別の問題提起をすることで、相手の思考をそちらに向けるという高等技術――それが[他のことでごまかしちゃおう作戦]なのです!
……え?時間を無駄にさせる要因を作ったのは他ならぬお前じゃないかって?
フ。それを言っちゃあ、おしめえよ。
……うん、まじでオシマイです。その突っ込みされたら撃沈不可避です。
でも、こうでもして誤魔化さないと……!
や、やましいところなんて、なんもありませんよ~。誤魔化そうなんてしてませんよ~。
早く逃げなきゃと思ってるだけですよ~。
そんな内心の動揺を悟られないように、一心に妖精さんに視線を注ぎ。
威厳を保つために、小さく頷いたりもしてみる。
こういう時には、金剛さんの能面フェイスが役に立つなあ。
これだけの無表情なら、内心を悟られることはまずあるまい!
……ってアレ?妖精さん、身体震わせてどうしたんですか?
どこかお具合でも……って、まさか!?
――(俺の内心が)バレタ?
……肉体の反応というのは正直なものだ。
抱いた思考や精神状態を、時として言葉以上に明確に伝えることもある。
まさに、今の妖精さんの姿のように。
今の姿を見れば、会話を交わさずとも考えていることを察することができる。
彼女は、何を言いたいのか――それは、ズバリ!
「何ふざけたこと言ってんだゴラァ!(意訳)」
……Deathヨネ~
Hahaha……って笑ってる場合かい!
や、やべえ……!身体を震わせるほど、怒ってらっしゃる!?
妖精さん、感情噴火寸前。激おこぷんぷん丸待ったなし!
こ、こういう時はどうしたら……!
えっと、小学校で習った教訓その3!
――怒られてしまったのなら、しっかりと正面から受け止めなさい――
…
……――ゴメン、ムリ!
ここまでの直接的な怒りを直視できるほど、俺は人間できてないんです!
……自分で言っといてなんだけど、情けないったらありゃしないな。
恥ずかしいやら、後ろめたいやら……そんな自己嫌悪と居た堪れなさで妖精さんから目を背け、背を向ける。
はあ……穴があったら入りたいよ。……ここ海だけど。
とほほ……
……って、んん?
しばらく物思い(笑)に浸ってたら、何やら後ろでエンジン音のような物音が。
一体何なんだろうか?そう思って振り向いてみたら、妖精さんが……いねえ!?
あれ、いついなくなったの!?
……ただ、本当に驚くところはそこではなかった。
視線の先、海上に浮かんでいる避難艇。
さっきまでは沈黙していたその船体が、今は動力の唸りを上げつつ身を震わせている。
その舳先は、俺とは逆の方向――つまり、これから目指す目的地である避難場所の方に向けられていて。
いつ脱出するの?――今でしょ!
い、何時の間にここまでの準備を……
と、びっくらこいてたら、避難艇の甲板上にわらわらと妖精さん達が上がってきた。
ちょ、皆さんお揃いとは何事?
え、何その反応?なんでこっち向いて驚いてるんすか?
むしろ驚くのは俺の方じゃね?
一体、何が……?
……そうか、解ったぞ!
すっかり整った出発の準備と、甲板に揃った妖精さん。
つまり――Here We Go! ってことですね!
ということは、俺のしでかした失態については今は目を瞑ってくれるってことですね、
ヤター!
ありがとうございます、ありがとうございます!
全員で姿を見せたのは「こっちの準備は整ってるんだから早くしろよオラァ(意訳)」ってことですね。
はい、勿論ですとも!お供させていただきやす!
の前に、不始末を見逃してもらえるんだから、お礼と謝罪を示しておかないと。
本当なら口に出して言うべきなんだが、それは叶うべくも無い。
だったら、仕草で代用すべきだな。
とりあえず敬礼をしておけば、最低限のことは伝わるんじゃないだろうか。
そう思って動作に移ったが……金剛さんが作動せず。
た、たのんますよ金剛さん。こういう時ぐらい……と思っても動かないものは仕方が無い。
うろ覚えで何とかやってみたが……礼儀作法のなってない俺にゃ無理です。
妖精さん達も敬礼を返してくれたけど、きっと内心「プゲラwww」なんだろうね~
ほら、みんな踵を返して船の中に戻っていく。
見るに堪えないほど無様だったんだろうな~……って。
…
……
え、避難艇のエンジンがもう全開?
いやいや、こっち準備全然できてないんですが?
というか、何で誰もこっちの様子を見てくれないんですかね?
一緒に避難するんだったら歩調を合わせないとダメなんじゃないですかね?
これじゃあまるで、妖精さん達だけが避難するみたいじゃないすか?
――あ、わかった!さっきの俺の失態への意趣返しを込めたジョークですね?
あははは!もう、妖精さんったらお茶目さん♪本当にびっくりしちゃいましたよ♪
ははは……
…
……うん、びっくりしたからさ。そろそろ止めてくれないカナ。
ここまでになると、ちょおっと冗談としては行き過ぎているような……
反省してます、心から反省してますから。そろそろ勘弁してくれませんか?
あれ、エンジン音大きくなりましたよ?もしかして動力全開モードに入ってないすか?
――って。ありゃりゃ。発進しちゃいましたよ、勢いよく。
そんなにスピード出しちゃって。どんどん遠ざかっていっちゃうよぉ。
…
……
ちょっと待ってちょんまげ。これじゃ、本当に俺だけが置き去りに……
というか……このシチュエーション、戦記物とかの創作物で結構な頻度で見かけるぞ。
――これって、いわゆる[SU☆TE☆GO☆MA]ってやつじゃね?
……もしかして、冗談じゃ、ない?
さっき全員で返してくれた敬礼は――
「せいぜい良い壁になってね♪アバヨ♪(意訳)」
――ってこと、だったの……?
…
……ちょ、マジすかぁぁぁぁぁぁ!?
などと(内心で)叫ぼうが、動き出してしまった事態が巻き戻せるはずもなく。
俺はどうすることもできずに、水平線の向こうへ遠ざかる避難艇を呆然と見ているしかなかったのであった。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
――こうして今に至る。
ふう……(絶望で)燃え尽きたぜ、真っ白によぅ……
すぐに避難艇を追いかければ追い付けただろうって?
……こんな言葉を聞いたことがあります。
人の本当の器が試されるのは、窮地に陥った時か、不測の事態に直面した時だと。
……何が言いたいか、もうお解りですね?
そう。パンクした自転車のタイヤの如くスッカスカな俺に、この事態に対処できる臨機応変さなどありゃしません。
予想の埒外の出来事に、ただ動転し、硬直しているだけで。
結局、1人こうして取り残されるまで何もできなかったのであります。
笑っちゃうよね、あっはっはっはっ……はぁ。
……これから、どうすんべ。
今からでも急いで追いかけるべきだろうか?
でも、海図を妖精さん達に持ってかれちゃったからなあ。
金剛さんの明晰な頭脳なら、正確なデータを記憶してるとは思うけど……現物が手元に無いと、やっぱり不安だ。
何より、中身へっぽこぷーの俺が金剛さんの能力を扱いきれる保証が全く無い。
何の目印も無い大海原。迷子にでもなったら一巻の終わりである。
……かと言って、危険地帯である此処に残り続けるなんざ御免だし……
――などと思考の迷路に入っていた俺は、何気なく顔を反転させた。
避難方向へと向けていた視線を、真逆である敵が来襲するであろう方角へ。
理由があったわけじゃなく、ただ本当に何気なくである。
――ソレは、[虫の知らせ]とでも呼ぶべきだったのかもしれない。
あるいは、金剛さんボディが何らかの超越的感覚で何かを感じ取ったのか。
視界に広がるのは、分厚く重く垂れ込めた黒雲を背景にして荒れ狂う嵐。
先程から何ら変わっていない光景。
……だけど。そこに紛れ込んだ異物を、この金剛さんボディは見逃さなかった。
黒い雲の下に浮かぶ、先刻までは無かった1つの黒点。
艦娘である金剛さんの超人的な視力は、その輪郭をはっきりと捉えている。
その正体は、大気中を滑るかのように飛翔する機械――飛行機だ。
…
……って、ちょぉぉぉ!冷静に分析してる場合じゃねぇぇぇ!
いや、何すかコレ!?何すかコレ!?
この局面でさらに飛行機とか……馬鹿なの死ぬの!?
というか、俺に沈めと!?そういうことですか!?
あの飛行機、飛んできた方向とか諸々の点を考えると、どう考えても敵機な訳で。
さらにアレ、戦艦や巡洋艦等が載せる水上偵察機や観測機の類じゃない。
空中を制することを目的とした、空母搭載機だ。
なんで解ったかって?金剛さんブレインのおかげです。冴え渡る金剛さんの頭脳は、何でも御見通しなのですよ。
……そのおかげで、状況が俺にも解りました。
近付いてきている相手が、航空戦力を有していることが、ね。
空母搭載機が有る
↓
敵には空母戦力が居る=航空戦力が存在する
……このことから、厳然たる1つの事実が判明致します。
それは――
――金剛(の偽物)は逃げ出した!⇒しかし、まわりこまれてしまった!
……逃げられないじゃないですか、コレ。
金剛さんは速いけど、飛行機相手じゃどうやったって追い付かれる。
むしろ下手に背を向けて逃げ出そうもんなら、後ろから雷爆ズドン!です。
つまり、逃亡という選択肢が潰されたワケで。
そうなると残された道は1つしか無い。
⇒たたかう
…
……――ハイ詰んだ!詰みましたよ今!
諦めが早いって?
いや、俺だってこんな早々と白旗を掲げたくなんてない。
大言壮語にしか聞こえないだろうが、今の俺なら大概の事態は乗り越えられると思う。
何故なら――
今の俺は阿修羅すら凌駕する存在だからさ!
…と言っても全部金剛さんのおかげなんで、俺が威張れることじゃありませんがね。
うん、ちょっと言ってみたかったんス。あいむそーりー。
ま、大抵のことは金剛さんのお蔭で何とかなるわけです。
――でも、今の状況はお手上げ侍だろ。
未だに姿を見せない敵戦力の規模・隊形は不明。
ただ、侵攻作戦を行う以上は艦隊編成で仕掛けてくると考えるべき。
そうなると、恐らく艦数は6隻。
さらに、さっき述べたように、その中に空母も含まれているのは確実。
今見えてるのは、先行偵察の役割を負っているのであろう1機だけだけど…
果たして、その後ろに何機の航空機を有しているのか。
何十機…いや、下手をすれば100機超えてるかもしらん。
対して、こちらは戦艦1隻。
…
……オ ワ タ 。
んな大軍相手に、たった1人でどうしろっちゅーんじゃあぁぁ!
かってどこぞの将軍様が仰られたように、戦いとは数なのである。
物語上だと、個が数を打ち破ることは珍しくないし。
歴史上でも、少数ながら多数相手に勝利を得た逸話というのは幾つもある。
……しかし、である。
そんなことができるのは主人公補正や英雄属性のようなチートスキル持ちか、運命をも味方につけられるような望外の幸運持ちぐらいなんだよおぉぉぉ!
俺がそんな立派なモン持ってるわけねぇぇ!
くっそ、何だってこんなことにっ……
今頃は(金剛さんブレインで)とっとと書類を片付けて、「ちょっぴりドキドキ、だけどワクワク!ひとりきりのお留守番♪」を満喫している予定だったのにっ……!
それが何時の間にやらこの修羅場。いったいどうしろと?
え?白旗?……んなことできないです。
深海棲艦に、降伏を受け入れるなどという概念が有るとは思えないし。
何よりも、戦火を交えもせずに早々と降参するなんて……
こんな俺を受け入れてくれている第六駆逐隊の皆やイケメン提督君に対して、余りにも不義理ってもんだろ。
いくらヘタレの俺とはいえ、弁えるところは弁えているのですよ、ふふん。
……そうなると、やっぱできるのは1つだけだよなあ……
⇒たたかう
……コレ、明らかにプンプン匂ってるよね。地雷臭という名の芳しい香りが。
後方の味方の為に、1人だけ残るという状況。
こう、「俺にまかせて先に行け!」的な。
で。そういう場合には、残った者の末路って大抵決まってるよね。
…
……デッドエンドキタ?
い、いや、まだだ!
世の中には「絶対」というものはないのだ!
どこぞの偉い先生のお言葉にもあるじゃないか!
「ギブアップしたらそこで終了DE☆SU☆YO」と!
そう、俺はこんなところで諦めるわけにはいかないんだ!
第六駆逐隊の皆と、至福の時間を過ごすためにも!
……イケメン君への恩も返してないしな。
正直なところ逃げ出したくて堪りませんがね。
でも駄目なのです。
幾ら愚図で無能でも、退いてしまっては駄目な場面というのがあるのです。
それが今なのDeath!
という訳で(やけっぱちで)戦闘態勢へ移行!
主砲の35.6cm連装砲を回頭させ、敵機へと向ける。
……といっても、脅しにしかならんだろうなあ。
三式弾みたいな対空装備無しに飛行機を狙うというのは、バットで羽虫を落とそうとしているようなもんじゃないだろうか?
ハッキリ言えば、撃っても無駄弾になる可能性が大。
……でも撃ちますけどね!
何故って?
――そうしないと、(怖さで)昂る精神を抑えきれないからさ!
この気持ち、まさしく恐怖だ!
……平たく言いますと。
怖くて堪らんですたい。
ちびってもよかとですか?
……その、ですね。
何か行動起こしていないと、怖さで今にも意識が涅槃に飛んじゃいそうなんですよぉ!
一体どれほどの数が居るのか解らん化け物共を相手に、1人で立ち向かうという状況。
ヘタレな俺が、そんな地獄逝きに耐えられるような強靭な精神を持つワケが無い。
こ、このままじゃ、マジで恐怖心で魂が昇天しかねん。
そうなる前に行動を起こして、体を無理にでも動かさないと……!
という訳で。
喰らえ!35.6cm連装砲砲撃(という名のやけっぱちアタック)!
どうせ当たらんだろうけど……――墜ちろ、蚊トンボ!
爆音という鋼の咆哮を轟かせた35.6cm連装砲が、火花と硝煙と共に砲弾を吐き出す。
砲身から解き放たれた砲弾は、大気を瞬時に翔け抜け――
数瞬後。宙に、1つの爆炎が咲いた。
…
……あ、あれ……?
ひょっとして……当たった?
見間違いではないのかと思い、目を擦り、もう一度視線を沖合に向ける。
視界の中に映るのは、嵐によって荒れ狂う空と雲。
……そう、それだけだ。
先程まで飛翔していた敵機は、影も形もない。
どこへ行ったのか……そんなことは考えるまでもない。
先程空に咲いた爆炎と、消失した敵機。
――撃墜されたのだ、35.6cm連装砲から放たれた砲撃によって。
……マジすか。
空中を自在に機動する飛行機に対して、この距離から戦艦主砲を直撃させるとか……
なんちゅうスナイパー能力。
言うまでも無く、俺にこんなことできるわきゃありません。
俺がやったのは砲撃の実行のみで、照準や調整などについては全く意識していなかった。
正確に言うと――撃とうと思った時には、もう当然であるかのように標的を照準に捉えていたのだ。
……もはや言う必要はありませんよね。そう、金剛さんの御力の賜物でございます。
細かな調整は金剛さんが行い、俺はそのお膳立てで引き金を引いただけ。
……おんぶに抱っこってレベルじゃねーぞ!
ほんとに、我が肉体ながら頭が上がらん。足向けて寝れんわ。
だが、だがである。
こ、これは行けるんじゃあるまいか?
俺は確かに平凡以下のぽんこつだけど、金剛さんは間違いなくチートキャラだ。
彼女の御力があれば、この絶対絶命の場面も切り抜けられるんじゃないか?
ひょっとして、行けるのでは…・・?
――いや、行ける!
金剛さんが居てくれれば、死亡フラグの1つや2つ、簡単に圧し折ってくれるわぁ!
…
……
………
…そう思っていた時期が、私にもありました。
え~、先程、敵機を墜としてから幾時か。
今ワタクシは、そいつが飛来した方向を見ております。
何も浮かんでいなかったその水平線上に、先程、遂に幾隻かの艦影が出現致しました。
これほどの距離を隔てていても伝わってくる禍々しさから、奴等が間違いなく敵――軍艦に負の化生が宿った存在である深海棲艦――だと断定できます。
数は6隻。予想が的中してしまった展開です。
しかも。こちらへと迫ってくるその敵艦隊、その全てが大型艦艇。
甲板上に顕現している化生は、何れもが美しいが故に悍ましい女性体。
おまけに。そのお目々には、漏れなく黄色い光を灯しております。
それは、数多の深海棲艦の中でも特に能力に秀でている個体であることの証明。
並の艦種とは一線を画す能力を持つ高戦闘力艦――フラグシップ級。
……それが、5隻。
戦艦ル級フラグシップが2隻。
戦艦タ級フラグシップが1隻。
空母ヲ級フラグシップが2隻。
戦艦群は、こちらの装甲すら撃ち抜く大口径主砲を向けてきており。
空母群は、雲霞の如く上空へと艦載機を飛び立たせております。
しかし、ワタクシの絶望は終わらない。
残りのもう1隻。敵艦隊のど真ん中に居座っている超大型艦。
コイツの外観が、戦艦でもあり、空母でもあり、さらには魚雷発射管まで備え付けられている。
そして艦上に顕現しているのは、レインコート状の衣で身を包み、こちらへと獰猛な笑みを浮かべる少女の姿で……。
こいつだけ、目が赤い――つまりエリート級。
でも、そんなの何の慰めにもなりません。だってコイツは……
ゲーム上でも数多くの猛者提督達をも恐れさせた超越艦――戦艦レ級エリート。
…
……神様、1つだけ言わせてほしいです。
――勘弁してください!
いや、何だよコレ!?
化物じみた戦闘力を有する敵艦隊。
それに対し、こちらの武装は――
35.6cm連装砲
15.2cm単装砲
7.7mm機銃
……工廠機能が無いこの鎮守府では装備開発はできない。要は初期装備のままということ。
近代化改装に関しては、ゲームとは異なり資材でもできるため(効率は落ちるが)、イケメン君が限界まで行ってくれたが……
それにしても、この手持ち武装であの大艦隊に挑むのは……余りにも、厳しい。
――いかん、これは……今度こそジ・エンドだべ。
……みんな、俺はお星さまになっても、みんなのことを見守っているからね……
などとおセンチに入っている俺の内心など誰に顧みてもらえるワケも無く。
――絶望的な戦闘の幕が、切って落とされたのだった。
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ここまで来ていただいた方、誠にありがとうございます。
そしてご負担をお掛けして大変申し訳ありません。
まず、お詫び申し上げます。
前話からこれほどまでに期間を空けてしまい、大変申し訳ありませんでした。
間隔の空いていた前回更新のさらに2倍とか……遅筆ってレベルじゃありませんね……
また、それにも関わらず感想を下さった方、見てく下さった方には感謝の言葉もございません。
本当にありがとうございます!
さて、今回についてですが……今回も反省点しかありませんね……orz
ノリだけで書いた上、最後が突貫工事になってしまったため、読み苦しい点が多々見受けられたと思います。
反省点・改善点についても相変わらず改善できずです。
話は進まず、亀の歩み以下。乏しい筆力についても向上の兆しが実感できません。
書けない→期間空ける→さらに筆が鈍る という悪循環を何とかしないといけませんね…
意欲(だけ)は全く衰えておりませんので、僅かずつでも拙作を良いものにしていきたいです!
毎回愚痴ばかりで申し訳ありません。
長々と失礼致しました。
ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございました!
皆様のお時間の足しに少しでもなりましたら幸いです。
P・S
やっと金剛ちゃんとケッコンできました。