金剛(壊)   作:拙作者

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12話目投稿します。
恒例のウザ文ですが……今回は、それなりに削ってみました。
そのため、短めです。


11 ちんじゅふぼうえいせん・うえ

 

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 大嵐の中からhelloえぶりわ~ん。

 内心で号泣している金剛(の偽物)デ~ス。

 え?何に泣いているかって?

 

 ――今、俺の身に起こってる不条理にだよ!

 

 1人置き去りにされた鎮守府で。

 暴風雨が吹き荒れるという極度の悪天候の中。

 迎え撃つのは、フラグシップ級大型艦×5 + レ級エリート×1

 ……理不尽にも程があるでしょ!?無理ゲーってレベルじゃねーぞ!

 

 ちょっとばかし運命(笑)に当たり散らしたくなりましたよ。

 ……でも、諸々の理由で逃げられないし。

 そもそも、ここまで来ちゃったら逃げられる距離じゃない。

 だったら、いっちょ腹を括って――っと頑張ったんですよ、臆病者なりに。

 ……でもね。

 

 ――あかんです。苦しい苦しい。

 

 ガタガタ震える内心を何とか奮い立たせながら敵艦隊を再度確認。

 まずは先手を取って、少しでも戦いの主導権を――

 と思った矢先。なにか違和感を感じて、下に視線を向ける。

 そこにあるのは、嵐によって色を失い、波立っている海原。

 その灰色の色彩の中に浮かび上がる、一筋の白い航跡。

 それは、真っ直ぐにこちらに向かって伸びて来ていて。

 

 ……どこかで見た覚えがあるぞ、この光景。

 というか、元より忘れられる筈も無い。

 脳裏に甦るのは、あの初航海の時の記憶。

 計7発も叩き込まれた、あの痛み。

 沈没寸前まで追い詰められた、あの恐怖。

 忌まわしいその存在は、今でも拭い難い恐れとして身体に刻み込まれている。

 

 そう。それは……魚雷DEATH!

 

 ……って!ちょ、いきなりかよ!?

 砲撃戦開始前の、一方的な雷撃。

 これは……アレか!?ゲームでいう開幕雷撃か!

 

 開幕雷撃――接敵後、戦闘開始前に一方的に相手に雷撃を見舞うという凶悪な能力だ。

 実行する艦の能力によって、攻撃力に幾らかの差こそあるが……

 うまくすれば撃沈、そこまではいかずとも有効なダメージを与えられる可能性が非常に高いという、半ば反則気味の強力な攻撃。

 これを実行できる艦娘は、ごく僅かなんだけど……

 深海棲艦側でこの能力を備えちゃってる、「お前空気読めよ!」な奴がいるのだ。

 

 それが、今、俺が相対してる艦隊のど真ん中に居座ってる超越艦――戦艦レ級エリートである。

 ゲームプレイ中でも幾度となく悲鳴を上げさせられた、その開幕雷撃攻撃。

 その脅威は、一目見ただけで感じ取れた。

 ……いかん!こんなのまともに喰らったら、腹に大穴開けられてしまう……!

 ってな訳で慌てて回避。

 駆動機関を勢いよく稼働させ、航路を懸命にずらす。

 そうやって捻った船体の真横。

 そう遠く離れていない所を、魚雷は海中を切り裂きながら突き抜けていく。

 ……と、とりあえず、回避成功、か。

 いや~(顔には全く現れていないだろうけど)凄く焦ったわ~

 金剛さんボディのおかげで、なんとか喰らわずに済んだけど。

 ……でも、おかしいな?

 ゲームだと、開幕雷撃よりも先に航空機による攻撃が入る筈なんだが……

 ――なんて考える間もなく、敵戦艦群から雨あられとばかりに砲撃が浴びせられて来た。

 その精度は非常に高く、次々と付近に着弾して海面を割り、幾本もの水柱を立てる。

 やっば!完全に相手に主導権を握られたか!?

 慌てて相手側に反撃しようとしたら、今度は遥か頭上から聞こえてくる駆動音。

 ――見るまでもない。敵艦載機による航空攻撃だ。

 上空からこちらに迫ってくる幾多もの機影。

 整然と陣形を敷き、一糸乱れずに隊列を組んで突っ込んでくる。

 雲霞の如く群がってくるその様は、言いようの無い薄ら寒さを感じさせて――

 アレに取り付かれたらマズイ!

 そう思って対空攻撃の準備をしたら――

 ……あれ?なんか一斉に離脱していく?

 一体、何がしたいの?

 

 と、そこで再び脳に電気のような感触が奔った。

 さきほどの開幕雷撃のときと同じ感覚。

 無意識のままに視線を海上へ向けると、こちらへと牙を剥いて海中を迫ってくる航跡。

 

 航空機は、この攻撃から目を逸らさせるための陽動か!

 その上、また雷撃かよ!とりあえず、回避行動を……!

 そう思って回頭した舳先の直ぐ傍の海面が、割れた。

 あ、あぶねっ!マジ危ない!

 一体、どこから……って考えるまでもなかった。

 此方に砲口を向けている敵戦艦群からの砲撃だ。

 

 ……その瞬間、悟った。

 こいつら――脳筋じゃない。

 

 破壊しか頭に無いなら、一斉に突撃してくるはず。

 だが、奴等は各々でタイミングをずらして攻撃してきた。

 雷撃→砲撃→空撃→雷撃→砲撃→……

 しかも、それら全てが見計らったかのような絶妙なタイミングで、だ。

 航空攻撃を最初に仕掛けなかったのも、他の攻撃との兼ね合いのために敢えて放棄したんだな、多分。

 ゲームのシステムと違うことすんなし!……などと、突っ込む余裕も無い。

 圧倒的な戦力差の上に、計算された戦い方。

 ……こんなの相手に、どうやって光明を見つけろと?

 力だけで押してこられたのなら何とかなったかもしれないけど、こうも徹底して来られては……

 こりゃ早くもチェックメイトですかい。とほほほ……

 

 

 ……

 ………

 などと思っていたのは、どれくらい前のことだったでしょうか。

 開戦してから、既に結構な時間が経過したように感じられるけれど……

 

 今も、こうして無事に立っております。

 夥しい数の砲弾やら爆弾やら魚雷やらが休む間もなく降ってくる中で。

 ――まともなのは、一発も貰っておりません。

 相手は間違いなく最高レベルだ。

 各艦の息の合った苛烈な攻撃。

 先程までは牽制に回っていた奴が、何時の間にか攻撃役を担っていたり。

 前に出て来ていた奴が、気が付いたら後方に下がっていたり。

 速攻性と連携性を組み合わせた、変幻自在の波状攻撃。

 

 ……そんな中で、未だに五体満足でいられる訳は1つ。

 ――見える!――

 ……これであります。

 え?ふざけてないでちゃんと説明しろ?

 いや、これがマジなんデス。

 今、接近してきている航空隊は囮だな~、とか。

 この砲撃は牽制で、この後に本命の一撃が来るな~、とか。

 そういうふうに、あらかじめ解ってしまうのだ。

 で、それに従って体(というべき船体)が動く。

 これら一連の動作が、意識するまでもなくできるのです。

 呼吸するかのように、ごく自然に。

 そうやって、相手の怒涛の攻撃を全て紙一重で躱していく。

 ……図体のでかい戦艦でここまで避け続けるって……相当凄いんじゃね?

 ここまでできているのは、もちろん俺によるものなんかでは無い。

 装備の問題でも無く、ましてや運なんていう次元じゃない。

 奇跡とも思えるような難行を成しているのは、金剛さんの技量によるものだ。

 

 ひたすらに積み上げてきたであろう、戦歴・経験。

 身体に染み付くまでに昇華された、結晶化した極限のカタチ。

 

 金剛さんが創り上げた、ソレ――気取った言い方をするなら[心眼]とでも呼ぶべきだろうか。

 それが、未来予知のような対応を可能にしているのだ。

 金剛さん、マジぱねぇ……!

 よっしゃああ!これならいける!

 

 …

 ……とはならないんですな、これが。

 まず、余りにも酷い戦力差。

 相手の攻撃の手数が多すぎて、それを防ぐだけで精一杯なのだ。

 いくら金剛さんでも、有効打となる砲撃を放つには幾らかの集中力と時間が必要になる。

 目標を定め、距離を測り、照準を合わせる――この動作は省けない。

 無論、チートキャラの金剛さんである。この機動に要する時間は限りなく短い。

 ……けれど、その微かな時間ですらも要することは許されないのだ。深海棲艦艦隊の一斉攻撃の前では。

 今は、全精力を防御に注ぐことで何とか持ち堪えている状態。

 そんな状況下で、奴等の攻撃に対する回避や牽制に費やしている時間を少しでも他の所へ回したりなどすれば……次の瞬間には蜂の巣になってしまう。

 故に、反撃を繰り出す暇すらなく。できることと言えば、威嚇と牽制が精々。

 ……それでも、ごく稀に訪れる空白の時間を縫って、相手に砲撃を繰り出して被害を与えているんですけどね……ホントにスゴイわ、金剛さん。

 彼女なら、相手が最上級の深海棲艦であろうが。

 1対1なら確実に撃沈できる。

 1対2でも負けは無い。

 1対3でも戦ってみせる。

 ……でも、1対6は些かキツい。数の暴力という奴である。

 

 ……そして、もう1つ。

 その、ですね……

 …

 ……

 ――中身の俺の精神が、もういっぱいいっぱいなんですゥ!

 戦闘開始当初から、相手の砲撃が至近に着弾しまくるわけですよ。

 喰らったら一発KOなのが、何発も何発も船体の直ぐ傍に着弾して、特大の水柱を立てていまして……

 

 ――絶叫系マシンに安全装置無しで乗ってるかのようなこの究極状況に、俺のガラスハートが耐えられるわけないデス!

 

 って、ひぃぃっ!?

 今、またすぐ傍に、多分レ級のものである砲弾が着弾したし!

 だ、だいじょぶダイジョブ!

 あ、当たらなければ、どうということは無い!

 …

 ……でもね。

 ――当たったら、お終いなんですよぉぉぉ!

 ムリぽ!もうムリぽ!

 胸中大泣きです!誰か、誰か助けて下さいっ!

 

 ……なんて悲鳴を上げようとも、鋼鉄金剛さんは眉1つ動かさず。

 俺の悲痛な叫びは、誰にも届くことはないのであった……

 

 

 …

 ……

 え~、ごほん。

 とまあ、そんな風に魂が体から離れかけ、幽体離脱体験をしていたワタクシですが……

 今再び、意識を取り戻しております。

 へ?

 その理由っすか?

 まあ、簡単に言ってしまいますと……

 

 金 剛 さ ん 、 壊 れ す ぎ 。

 

 開いた口が塞がりませんよ。

 金剛さんボディじゃない、本来の俺だったら馬鹿みたいに大口開けたままだったろうな。

 ……うん。でも、大抵の人ならこうなっちゃうと思うんです。

 目の前の、この情景を見れば。

 

 圧倒的な数と戦闘力を以て展開していた深海棲艦勢力。

 ゲームなら間違いなくリセット一択であったろう、理不尽艦隊。

 ――それが、次々と傷を負わされていく。

 群れを成して襲い掛かってくる航空機部隊も。

 大火力とともに迫ってくる戦艦部隊も。

 そして、ゲーム上で理不尽なまでの強さを発揮するレ級エリートですら。

 

 おっと、今、遂にレ級エリートに砲撃が当たりましたよ。

 かなりいい位置にヒットしたんだけど……流石に35.6cm連装砲じゃ、装甲を簡単には貫き切れないか。

 ――と、甲板上からこちらを見ていたレ級エリートと目が合う。

 負の感情のみを灯した、人ならぬ化生の瞳。

 何の温もりも感じさせない目は、例え難いほど悍ましいように見えて……

 ――ハイ、ぶっちゃけ怖いです!

 おま、そんな目をこっち向けんなし!

 ち、ちびっちゃうだろ!?

 な、なにか。

「てめえ、よくもやりやがって」ってことか?

 じ、上等さあ!文句があるなら掛かって来いやあ!

 たっぷり相手をしてくれるわ!

 ……金剛さんが、ね。

 

 なんて、言い返せるだけの気力を持てているのも、金剛さんの凄まじい御力があるからなんですが。

 

 正直、色々と甘く見ていました。

 1対6が些かキツイ……?

 うん、そりゃあきつかったですよ――最初の頃は。

 でも、今は何というか……標的が増えたなあ、くらい?

 ざっくり言ってしまえば――金剛さんが慣れちゃったのだ。

 相手の攻撃のパターンや、艦隊行動の動きに。

 読み切るまでは対応する相手が多いから大変だったし、危険性も高かった。

 ……だけど、分析が済んでしまえば些か手間が増えてしまうだけ。

 おかげで、徐々にではあるが、防御に回していた力を攻撃に転ずることもできるようになり。

 少しずつではあるが、砲撃に割ける時間も多くなってきた。

 もちろん、それだけで直ぐに終局まで持って行けるほど甘くは無い。

 相手側――深海棲艦だって意志を以て動いているのだ。

 全てがこちらの思惑通りには行かない。

 ――ただ、徐々にこちらが有利になりつつあるのは、紛れも無い事実だ。

 

 ……これだけの時間で、深海棲艦の精鋭部隊の行動を読み切り、おまけにそれに対応しちゃうとか……

 これ、もはやチートって域じゃないな。

 バグレベルだ、この凄まじさは。

 

 …

 ――金剛さん。貴女は、何者ですか……?

 

 ……なんて。そんなことはどうでも良いよな。

 ここでシリアス系の主人公ならば、様々な思考や悩みに懊悩するところなんだろうけど……

 俺にとって、そんなことはどうでも良いのだ!

 この場面で大切なのは、ただ1つ――

 

 ――これで、生き残れる――

 

 この1点のみ!

 かっこ悪いのは百も承知。

 情けない、醜いなどと言われても何も返せない。

 でも、凡人の俺にとっては、生き残るということが最優先課題なのデス!

 ……物事を楽しめたり。また、悩んだり。

 そういった「生」の醍醐味は、生きているからこそ味わえるもので。

 もし、命が絶たれてしまえば……もう二度と味わうことはできない。

 命というものは、無くしてしまえば二度と取り返しのつかない重いモノなのだ。

 それがあるからこそ、人の様々な幸福があるのだ。

 

 ……そう。

 第六駆逐隊の皆の姿を愛でたい、ハァハァしたいという俺の幸福だって!

 生きていればこそ、なのだ!

 

 ……まあ、それに。

 ワケ解らん運命(笑)で降り立ったこの世界だけど、ここでの日々は悪いもんだけじゃない。

 いつかは夢から覚めてしまうように突然終わってしまうかもしれないけど。

 それまでの間だったら、出来る限り無事で過ごしたいな、とも思う訳です。

 第六駆逐隊の面々と一緒に過ごしたり。

 鎮守府での仕事をこなして、彼女達の力になったり。

 あと、イケメン君の笑顔だって…

 …

 ……いや。最後のは、ちゃいますがな。

 イケメン君に恩も返さないといけないし、だな、うん。

 

 ま、そんなことで。

 此処を、なんとか生き残らにゃならんわけです。

 

 という訳で……

 

 ――覚悟するがよい、深海棲艦共!今、引導を渡してくれるわぁ!

 …

 ……金剛さんが、ね♪

 

 

 ――

 …

 ……

 ………

 この時の俺は、勝利を疑っていなかった。

 それは決して自惚れでは無かったと思うし、事実、このままいけばそうなっていたはずだ。

 ……そう。何も、なければ。

 

 こんなことを、誰かから聞いたことがある。

 

「偉人の築いた道を壊すのは、いつだって凡人だ――」

 

 

 




ここまで来ていただいた方、誠にありがとうございます。
そしてご負担をお掛けして大変申し訳ありません。

まず最初にお詫びさせて頂きます。
引っ越しに伴うPCネット環境の移行不備の関係を活動報告にて、報告させて頂いていましたが……
その際、最初は12月6日か7日に次話投稿と述べていましたが……結果的に遅れる形となってしまいました。
以後、同じようなことを繰り返さないように致します。
大変申し訳ありませんでした。

さて、中身についてですが……
何時もの通り、反省の嵐ですね。
特に前半(11話目)は量が多過ぎて纏めきれず、対してこちらは量も中身もスッカスカ。
これだけ更新期間空けといてこれとか……ダメダメですね。もっと精進します。
もっと上手く書けるようになりたい

でも書けない上に遅い

結果として更新も遅くなる

という悪循環エンドレス。
これをなんとかしたいです。
正直、道は遥か彼方ですが……少しでも拙作を面白くすべく、なんとか頑張ります!
唯でさえ乏しい筆力は衰えても、意欲だけは衰えませんので!

恐らく、年内の投稿はこれで最後になると思います。
最近は一段と寒くなってきていますので、お気を付けください。
皆様が良い年を越せますように。

P・S 秋イベント、参加したかったなあ……秋月ちゃんを、お迎えしたかった…(涙)

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