金剛(壊)   作:拙作者

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貴様には死すら生温い!の6話目投稿。
前篇と同じく、もう…言い訳すらできません。

※端くれではありますが作品を投稿させて頂かせている責任上、こんなこと言うのは無責任ですが…
 今回、真面目に酷いです。唯でさえ中身が薄い拙作ですが…今回はその中でも濡れティッシュ以上に薄いです。勘違いという名を騙ったおバカ文(しかも長い)しかありません。
 疲れたり、気分を害されてしまいましたら早急にお戻り下さい。


5 ちんじゅふかいいきげいげきせん・うしろ

 気分はドナドナの歌、金剛(の偽物)がお送りいたします。

 

 Q:大ピンチ中ですが、仲間が助けに来てくれません。

   でも先生、生き残りたいです!

 A:諦めたら?

 

 オワタ。

 潜水艦相手に、戦艦である俺がどうしろと?

 ただ嬲り殺しにされるがままじゃないすか!

 うう…初航海で沈没か…短い命だった…

 

 ――いや、待て。

 ここで俺が沈めば電ちゃんだって危ない。

 そして、あの3人が電ちゃんを見捨てるなんてことはありえない。

 恐らく、今だって救う手立てを考えているか、或いは既に胸中に秘めているだろう。

 …つまり、だ。

 今、動きを止めているのは3人の何かの作戦…?

 そして、その作戦が成功する…つまり、電ちゃんが助かるまで持ち堪えれば。

 一緒に居る俺も助かる…?

 

 これだ!これしかない!

 名付けて[電ちゃんと一緒に助けてもらおう作戦]!

 よっしゃー!

 生き残れる可能性が出てきた!

 

 …ってまたまた待てよ。

 その作戦が、俺を犠牲にして電ちゃんだけ助けよう系だったら…アウトじゃね?

 

 だ、大丈夫だよね?

 そんな作戦、採ったりしてないよね?

 …でも、ここまで彼女達とまともなコミュ取れてないし…

 

 …いかん、不安になってきた。

 ああ…当初の目標通り、第六駆逐隊の皆と仲良くなれてたらなあ。

 こんな時に「見捨てられるかも!?」なんて不安、抱かずに済むのに。

 この表情がもうちょっと動けば。或いは、せめて喋ることさえできれば。

 ちょっとは違ってたかもしれないのに…

 

「(ちくしょう…)」

 

 膨れ上がってきた不満。

 それに耐え切れずに思わず脳内で悪態を吐いてしまうが…思い直す。

 今の行為は、鋼鉄金剛さんに向けてしまったもの。

 俺はお世辞にもできた人間ではないが…さすがに彼女(?)に当たれるような立場では無いのは解る。

 今、ここでこうして思考できているのも鋼鉄金剛さんに憑いてるお蔭だからな。

 素の俺じゃ、この状況下でとっくに精神の均衡が崩れてただろうし。

 その彼女(?)に対して不平を言うのは…ねぇ…

 

 ただ、それで納得して精神を落ち着かせることができるほど俺は大人では無いのである。

 この状況で、周囲からは差し伸べられる手も無くて。

 こんな状態に陥ってしまったことが腹立たしいし。

 いつ潜水艦にトドメを刺されちゃうのか、怖いし。

 元より許容量の乏しい俺の精神は…もう限界です♪

 

 くそう…

 一体全体、何だってこんなことに?

 今日は練習航海で、実戦なんかあるはずなくて。

 存分に幼女ウォッチャーの活動に勤しもうと考えていたのにっ…!

(注・幼女の姿を目に収めるときはくれぐれも良識・常識の範囲で!

   彼女達に不安や恐怖を与えたりなんてする奴は、ロリコンの資格なぞ無い不逞の輩。

   ましてやストーカーとか誘拐とか、死すら生温い!)

 なのに気付いてみたらこの有り様。

 ああ、俺の至福は一体どこに。

 

 そもそも、だ。

 この状況を招いたのは一体誰か?

 この練習航海の計画を立てたイケメン提督か?…いや、奴のせいじゃ無い。

 全身から発している主人公オーラには、凡人としてつい反発してしまうが。

 奴が艦娘を兵器としてでは無く、自らと同立場の者として心から大切に思っていることに疑いの余地は無い。

 だからこそ(妬ましいが)第六駆逐隊の皆から心底慕われているのであろうし。

 そもそも、俺だってそれで救われたんだしな。

 そんな奴が、わざわざ危険な場所を練習航海路として指定するわけがない。

 恐らく、ここは本来は安全な海域であったはずで。奴の調査・計画に手落ちがあったとは思えない。

 つまり―今回のことは鎮守府側には原因が無い、完全なイレギュラーということ。

 

 …と、なるとだぁ…

 悪いのは誰かなんて、解り切ってるよなあぁぁ…

 

 深海棲艦潜水艦共!貴様らのせいじゃああああ!

 貴様らがこんなとこで攻撃仕掛けてこなけりゃ、もっと「第六駆逐隊の皆可愛いよぉprpr」できてたのだ!

 戦争だから攻撃するのは当たり前?

 んなもん知るか!人の平和と至福をブチ壊しにしやがって!

 この行き場のない憤り、貴様らで晴らしてくれるわぁぁぁ!

 

 船体に備え付けられた主砲――35.6cm連装砲を回頭させ、砲口を海面に据える。

 どこにいるかなんて解らんが、魚雷の射出位置を考えるとこの地点付近に潜伏してる筈。

 船体が浸水によって傾いてるせいか、やや撃ち難いが…

 狙いを大まかに定めて――…発射!

 

 ふぁいやー!

 

 轟音と火花を散らし、砲塔が身を震わせる。

 射出された砲弾が海面を叩き、大きな水柱を噴き上げた。

 

 ―これで終わりだとでも思ったか?

 まだだ、まだ終わらんよ!

 続けて第2、第3射!

 

 続けさまに放たれた砲弾が、次々と海水を噴き上げていく。

 それでも砲撃は止めない。

 この程度では終わらせん。

 くくく…追い詰められた凡人の八つ当たりのパワーを思い知れ!

 

 第4、第5射、そしてそれ以降も。

 その度ごとに付近一帯は泡立ち、波立つ。

 

 ふははは!圧倒的ではないか、我が主砲は!

 薙ぎ払え!

 海中にいれば安全だとでも思ったか?その幻想をブチ壊す!

 

 …

 ……

 …海中?

 

 確かに戦艦主砲の破壊力は凄いけど…潜航深度をとった潜水艦に届くもんなのだろうか?

 …いや、届かないよね。

 

 我に返り、滾っていた精神が急速に冷めていく。

 八つ当たりのテンションに任せて攻撃しまくっちゃたけど…冷静になって考えてみれば、海中深くにいる潜水艦に砲撃届くわけがないじゃん。

 あれ、もしかして今までの砲撃…意味、無し?

 それどころか、逆にマズイ?

 海面砲撃の痕跡のデータを取られてたら…もっと正確な位置を計測されてアボンじゃね?

 

 …人の予想とは、悪い時に限って当たったりしてしまうものなのである。

 

 砲撃によって噴き上がった幾つもの水柱。

 その間を擦り抜けるようにして、真っ直ぐにこちらへと突き進んでくる3本の白い航跡。

 今日、イヤというほど目にしたそれは、言うまでも無く魚雷。

 まるで嘲笑うように、こちらの放った砲撃が立てた水柱を置き去りにして迫ったソレらが船体に命中して――

 

 立ち上がる3本の水柱。

 艦の前部・中部・後部。

 ご丁寧にも先程と全く同じような場所に着弾した。

 

 …

 ……

 うん、何というか…

 筆舌に尽くし難い痛みって、本当に、あるんだね…

 

 ――っっっぅ!

 あかんです。

 さらに視界がぼやけてきました。

 あれ…なんか、視界が凄い斜めになって…海が近くなってるよ…?

 …ああ、そうか、もう沈みかけてるのか…

 当たり前と言えば当たり前だな。

 被雷7発。

 これだけ喰らえば致命傷にもなる、か。

 

 くそぅ…マジでここで終わり、か…

 まだ沈みたくは無い。…無いんだが…

 痛みやら何やらで思考が朦朧としてきて…もう、(内心で)喚く気力すら湧かん。

 

 しっかし。

 こんな時になっても金剛ボディは微動だにせず、仁王立ちのままだ。

 こんなになってまで動きを見せない鋼鉄金剛さん、もはやチートの域じゃね?

 マジで凄いわ。

 

 …けど。中身の俺が、もう駄目だ。

 

 こういう状況、ヒーロー属性さえあれば格好のシュチュエーションなんだがなあ。

 瀕死に陥るも、不屈の意志で復活!とか…格好良いよなあ。

 ―しかし、凡庸以下の俺に、そんな鋼の意志なんてありましぇん。

 

 ぐふっ!また意識が…

 …俺のロリコン道もここまでか。

 せめて、最後に麗しき第六駆逐隊の皆の麗しい姿を目に焼き付けておかねば―

 

 そんな思いで、彼女達の姿を脳髄に焼き付けようと意識を集中させた俺の視界に映ったのは――

 

 

 

 ――ぅゎょぅι゛ょっょぃ―

 

 

 …え?突然何言ってんのかって?

 いや、俺、ちゃんと正気デスヨ?

 死に瀕しておかしくなったとかじゃないデスヨ?

 

 

 …おほん。

 まあ、ものすごいざっくり言ってしまえば…

 潜水艦共が潜伏していたであろう海域に暁ちゃん・響ちゃん・雷ちゃんの3人がいて。

 先程まで奴等が猛威を振るっていたその場所が、今は嘘のように静まり返っている。

 

 ゑ?

 3人とも、そのエリア制圧したの?

 ってことは、潜水艦やっつけちゃったの?

 イヤイヤまさかぁ。

 あんなに手強そうな奴等を、こんなにあっさりとやれるはずが…

 

 と思ったけど。

 先程までの時間が嘘のように、海は元の静かな姿に戻っていて。

 もし奴等が健在だったら、こんなに沈黙してる筈がない。

 ということは…やはり、奴等はお陀仏になったということで-

 

 …ここで、先程の言葉をもう一度。

 

 ――ぅゎょぅι゛ょっょぃ―

 

 マジ半端ないっす。

 戦闘場面を直に見たせいか、その実力をまざまざと実感できる。

 今まで、この鎮守府の海域が維持できてたわけだわ。

 イケメン提督が優秀だからということは勿論だが。

 同時に、彼女達――第六駆逐隊の力があったからなんだ。

 これだけの戦闘力なら、大抵の奴では歯が立たないだろう。

 戦い方によっては、それこそ戦艦・空母級の大型艦艇とて容易く餌食にできる。

 そんな並外れた強さ。

 

 ―それにしても、だ。

 何だかんだありながらも、実力者である味方に助けられるって…何というお約束な展開。

 …こういうのって、実は今際の際に見ている夢想であった…とか、ありそうだよな。

 目を覚ましたら無慈悲な現実が待っていた、とか。

 実際はもう俺は沈没していて、最期に自分の理想の展開を再生しているだけだったとか。

 

 まさか、夢じゃないよね…?

 俺、助かったんだよね…?

 

 なんか意識が溶けそうで、今の目の前の出来事が幻なのか現実なのか、定かで無くなってきたその時。

 俺の耳が、福音を捉えた。

 

「それより、金剛さんが…っ!」

 

 甘く柔らかげに鼓膜に響く声。

 心配げに挙げられたその音色は、電ちゃんの発声によるもの。

 

 ―うん、これが夢であるワケが無い。

 これほどの福音を、夢想などという域で再生できるはずがあろうか?

 ―否!断じて否!

 天使のような…いや、それすら凌ぐ慈愛と可憐の権化である彼女達だからこそ発することのできる響きと余韻。

 神ですら再現し得ない、胸の奥底にまで届く聖音。

 その全てが、現実という世界に降臨している彼女達だからこそ紡ぐことのできる奇跡。

 ―それを、(ロリコン求道の中で)研磨されたこの耳が聞き違える筈も無い。

 それはつまり、音を聞くことのできた俺の身も未だ現実にあるということに他ならない。

 

 意識を整え直した俺の視界に映ったのは-周囲に集まった、第六駆逐隊の皆の姿。

 電ちゃんが重傷ではあるが、4人全員欠けることなく寄り添いあっていて―

 

 

 …

 ……

 ………まーべらぁぁぁぁぁぁぁす!

 世界の宝である彼女達が、誰1人欠けることなく此処に居る―

 その事実の、何とも素晴らしいことか!

 この今という時間に祝福を!

 

 さらにさらに、である。

 これだけでも幸福絶頂ものだが。

 素晴らしいのは、その眼差し。

 初対面の時以来、碌に合わせることのできなかった視線。

 それを、今は真っ直ぐに俺に向けてくれていて。

 

 ロリコンにとって、幼女から見つめられるというのは-

 どんな金銭でも代えられぬ価値を持つ宝物であるからして。

 

 おぅふ。

 そんなに見つめないでっ…!

 おかしくなっちゃうからっ…!

 幸せすぎて、おかしくなっちゃうからぁぁぁ♪

 

 ひょっとしたら金剛フェイスの外に出ちゃってるじゃないか?と思うほどの胸を駆け巡る至福感。

 ああ~もう、(内心で)ニマニマが止まらんぜよ。

 完・全・復・活!

 被雷による苦しみも痛みもあるけれど、そんなもんで意識を潰されてたまりますかい。

 

 -え?

 現金過ぎるって?

 お前、さっきまで瀕死状態だったじゃんって?

 

 ふっ…

 幼女の存在さえあれば如何なる状態からでも復活する-それが、ロリコンだ!

 

 

 

 …とまあ、テンションはMAXだが。

 さすがに、肉体の方がもう無理だったようだ。

 

 

 いきなり視界の高さが低下し、体に感じる固い感触と揺れ。

 …違和感を感じる暇も無く、気が付いたら背を壁に預けて座り込んでいた。

 

 おっと、尻餅をついてしまったか。

 こりゃまた、格好のつかない…

 早いとこ、立ち上がらないと-

 

 …そう思っても、体は言うことを聞かず。

 まるで地に結わえつけられたかように、腰は上がらなくて。

 肉体が、固まったかのように動かない。

 

 What?

 一体、何が…?

 

 一瞬混乱しかけたが、すぐにその原因に思い至る。

 …考えるまでもなかったな。

 今や、艦は沈没寸前の状態であり。

 それは、顕現体である艦娘であるこの肉体にも反映される。

 傷付ききった満身創痍の体が限界を迎えたんだろう。

 立っていられぬほどに、疲労困憊して―

 

 

 …

 ……

 というのが表向きの理由。

 もちろん、肉体へのダメージが甚大というのは偽りない事実。

 今もあちこちが激しく痛むし、フラフラするし。

 …だが。

 その他の理由が、ある。

 それこそが、今の事態の本当の原因。

 

 真の理由…それはっ――

 

 

 腰 が 抜 け ま し た 。

 

 だ、だってしょうがないじゃないデスカ!?

 命と命の奪い合いである戦場に臨んだんですよ!?

 ノミ並みの心臓しか持たぬヘタレ平凡人の俺に耐えられるわけないデショ!

 戦闘中は金剛バリアーがあったから全然平気だったが。

 戦闘という極限の緊張から解かれたせいか、または多大なダメージの影響か。

 現在は、肉体が俺の内心を直に投影してしまっているようだ。

 

 ちょ、何もこんな時に「金剛さん憑き」が解けなくてもいいじゃないっすか!?

 お蔭で第六駆逐隊の前でかっこ悪い姿を晒しちゃってるよ!?

 鋼鉄金剛さんに憑いたままだから、傷付きながらも毅然と立ち続ける格好良い姿を見せれると思ったのに…

 それが解けちゃったら、残されるのはビビリの俺の情けない姿だけじゃん!

 結果として、腰を抜かしてへたり込んでいる様を、彼女達に見られているわけで。

 うう…女の子の前では、かっこつけたい男の心理を汲んでくださいよぅ…

 

 しかも、俺の内心を投影しているのはあくまでも肉体だけで。

 表情は相も変わらず死んだまま。

 …せめて、表情を痛みに歪ませたりとかだけでもできたらなあ。

 

「あの金剛さんでも表情を変えるんだ」

 

 っていう、コミュニケーション上の取っ付きやすい隙をつくることができるのに。

 これほどの重傷ながらも眉1つ動かさないって…完全に近寄り難い存在と化しちゃってるよ…

 

 …どうあっても第六駆逐隊の皆とのフラグは立たないってか…!

 ――おーまいごっどっ…!

 

 

 と、内心の憤怒に身を焦がしていた俺は、ふと船体が揺れたことに気が付いた。

 

 何だ何だ、一体何だ?

 …って、おお?

 いつの間にか、船体が2隻の駆逐艦で支えられている?

 これは一体…

 …ちょっと待て。

 今、この海域にいるのは俺と第六駆逐隊だけで。

 その俺の船体を支えている駆逐艦っていうのは、えっと…

 

 今、自分の身に起こってる事態に理解が及ばずに思考が手間取る。

 だが、思考が解答に至る前に。

 ―答えが、向こうから降臨なされた。

 

「…ごめんなさい」

 

 

 って暁ちゃんじゃないですか。

 くりくりパッチリのお目目と、さらさらの長い髪の毛。

 背伸びした意地っ張りさと、優しさの同居した在り方。

 大人ぶりロリッ娘というprpr属性に満ち溢れた天使。

 ああ、頭ナデナデしたい。

 その控え目なお胸に飛び込みたいぃぃぃ!

 

 

 ―ってイカンイカン。

 煩悩に浸ってる場合じゃないや。

 

 暁ちゃんが居るのは、俺の船体の側面。

 彼女は、そこに自身の船体を横付けしていて。

 それは、つまり…こちらを支えてくれている…?

 

 さらに反対側には響ちゃんも同じように居てくれて。

 

 え?

 俺、今、もしかして…2人に支えられてるの?

 

 人間とは(って言っても今の俺は艦娘だが)、己の身に過ぎたことが降りかかると硬直してしまうこともあるという。

 思いもよらない報酬を手にした時とか。

 分不相応な幸を授かった時とか。

 

 今の俺が正にその状態。

 だって、今までずっと避けられてきたし。

 さっきの潜水艦襲撃時だって、てっきり見捨てられたものだと思ってたのに。

 なのに、この待遇。

 ちょ、どゆこと?

 …もしかして、まだ見捨てられたわけじゃ、なかった…?

 

 それが見当違いではないことを、次の瞬間に暁ちゃんが授けてくださった。

 俺の方に、その視線を向けてくれながら。

 

「できるだけ、負担を少なくするようにするから」

 

 …

 ……

 船体を支えてくれている上に、気遣いに満ち溢れたこのお言葉。

 こちらに据えられた視線にも、剣呑な色は一切無く。

 …つまり…?

 …

 き…嫌われては、いなかったぁぁぁぁ!

 キタァァァァ!

 テンションMAX!

 嫌われては、いなかったよぉぉぉ!

 

 

 俺には、支えてくれるロリッ娘達がいる。

 こんなに嬉しいことは無い。

 

 

 某超有名パイロットさんの仰られた至言の改変。

 今の俺なら、彼の言葉の意味と重みが少し解る気がするよ…!

 

 ああ、なんと素晴らしい!

 お、暁ちゃんがこっちを見たままだ。

 その可愛らしい眼をいつまでも見つめていたいが、今はとにかく彼女に応えねば。

 あ、俺の船体を曳航して下さるんですね?

 良いですとも!どうぞご存分に…

 

 と、暁ちゃんに向けて頷いたところで、今更ながら気付いた。

 

 …俺の今の状態って…

 船体の両側を暁ちゃんと響ちゃんに挟まれてる。

 ↓

 幼女に両方から(船体を)挟まれてる。

 ↓

 …つまり、(船体越しの)幼女による両手の華…?

 

 …うっしゃぁぁぁぁぁぁ!我が世の春じゃぁぁぁ!

 

 

 ――とはなりません。

 いや、そのですな…

 

 

 ドウスレバ、イイノデスカ?

 確かに俺は第六駆逐隊の皆とprprしたいとは願ったが。

 それがまさかこんなに早く、しかも向こうから来るとはっ…!

 船体越しではあるとは言え、女の子との接触とか…

 どう対処すればいいのか解らねぇぇぇぇぇぇ!

 あびゃびゃびゃ!

 アカン、頭の中が真っ白になって。

 ま、待ち望んでいたはずの時間なのにっ!

 う、嬉しい、とてつもなく嬉しいはずなのにっ!

 いざ、その時間を前にしながら…戸惑うことしかできないとはっ…!

 自分のヘタレさが、憎いっ…!

 学校の運動会の二人三脚とかフォークダンス以外に異性に触れたことの無い喪男である俺に、(船体越しとは言え)女の子との接触とか…敷居が、高すぎたんだっ…!

 

 

 とと、いかんいかん。

 今、暁ちゃんがこっち見てた気がする。

 とりあえず、挙動不審にはならないようにしないと。

 

 視線を前に据え、壁に背を持たせ掛けながら…けれど俺の心は暗澹たる思いに覆われていた。

 

 うう…

 あれだけのリビドーを内心で叫んでおきながら。

 望んだ時間がすぐ傍にあるのに、尻込みしかできないなんて…

 

 ――俺ってば、ほんとヘタレ。

 

 

 結局、俺は至高の時間をただ身を固くして過ごすことしかできず。

 己の肉体の痛みすら忘却するような、忸怩たる思いで座り込んでいることしかできなかったのであった。

 

 

 

 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 視界を染め上げる夕暮れ。

 優しく迎えてくれるのは、沈みかけた太陽だけなのか…?

 

 

 …なんてな。

 

 先刻の潜水艦との戦闘が終息してから。

 暁ちゃんと響ちゃんに引っ張られ、第六駆逐隊の皆と共に帰還し。

 日が傾き、青さを失った海を航行すること幾時間か。

 橙色に変色した陽光が染め上げる母港に近づいていきながら…俺はひとまず、息を吐いた。

 とりあえずは戻ってこれたか。

 危ない目にも遭ったし、痛い思いもしたが。

 ―まあ、よかった。

 何たって、全員で生還できたんだからな。

 

 

 …実は先程まで自己失望に浸ってましたけどね。

 

 ふふ~ふ…

 …俺の、口だけ野郎。

 あれだけ自分の胸にある情熱(劣情じゃないよ)を内心で叫んでおきながら。

 暁ちゃんと響ちゃんという2人の天使に(船体越しとは言え)挟まれるという絶好のシュチュエーションに遭遇しておきながら。

 何一つ建設的な行動を起こせず、結局、固まってただけかよ…

 至福である筈の時間を味わえなかった己のヘタレさを思い知らされることが、ここまでキツイとは…

 敗北感で一杯ダヨ…

 

 でもねえ…俺のそんな暗黒面(笑)なんぞ、どーでもいいんです。

 今、この場に全員で居られるということに比べれば。

 どれほど敵勢力を削り取れたかという戦果も大事だけど。

 全艦が無事に戻れた、ということに勝る成果は無いと思うのですよ。

 あくまで素人考えだけど。

 

 …正直、未だ暗黒面(笑)を取り払えてないところもあるし。

 おまけに、幾分か冷静になったせいか、体の痛みがぶり返してきてるし。

 明日以降への不安もある。

 けど、ま。今はこうして帰ってこれたことを素直に喜ぼうじゃないか。

 

 

 そうやって前向きになった俺の心を。

 ―奴は、どん底に叩き落としてくれたのですっ…!

 そう…あのイケメン提督は!

 

 先に雷ちゃんと電ちゃんが接岸した岸壁。

 そこには、イケメン提督が出迎えに来ていて。

 ―うん、ここまでは良い。

 むしろ、感心するよ。

 提督という最高位にありながら、艦娘の帰還をわざわざ自分で出迎える。

 それは心底、艦娘を大事に思っているからだろうし。

 そのことについてはホント、尊敬する。

 

 …だが、その後!

 艦の実体化を解いた雷ちゃんと電ちゃんを相手に、奴はイチャつき始めたのだ!

 

 あっ!てめ、電ちゃんを抱き締めるなんて、なんて羨まし…じゃなくて破廉恥な!

 おまけに雷ちゃんの頭まで撫で撫でしやがって!

 サラサラの髪の毛の感触はいかがですか?良ければ後で俺と握手でも…じゃなくて!

 もっと、節度というものをだね!

 

 ―ええい、もう我慢ならん!

 接岸を確認し、俺も艦の実体化を解くと同時に地面に降り立つ。

 

 不埒な行為をしおって!

 なんて羨ま…じゃない、成敗してくれるわ!

 しっとパンチが火を噴くぜぇぇ!

 

 …でも。

 その場から、足は一歩も動かない。

 すぐ近くなのに。ほんの少し、歩数にしてもそう遠く無い。

 そんな近距離なのに。

 …まるで、そこには断崖絶壁が聳え立っているよう。

 

 …本能が、察してしまっているのだ。

 この先は、己のような者が立ち入れる領域ではないことを。

 

 

 ―そう。そこにあるのは…

 

 ―リア充と非リア充という、絶対的かつ無慈悲な境界線!

 

 

 …解ってたさ。

 雷ちゃんも電ちゃんも全く嫌がってない…むしろ喜んでることぐらい。

 そんなイチャイチャ空間に、俺のような喪男(今は女性だけど)が入り込む隙間など、無いことぐらい。

 

 ふふ、ふ…

 さっきの暗黒面(笑)が、ぶり帰してくるようだよ…

 俺とイケメン提督の間にあるのは…エベレストよりも高く、マリアナよりも深い境界。

 …イカン、その事実を認識すればするほど哀しくなってきた。

 途方も無い差を見せつけられて、俺のガラスハートは、もうブロークンだよ…

 涙腺決壊しそうデス。

 泣いても、いいですか?…いいですよね?

 もう、泣いちゃうからねっ!

 

 …なんて言っておきながら何だが。

 この無表情金剛フェイスに「泣く」なんて機能は有るとは思えない、よなぁ…

 

 と変なとこで冷静さを取り戻した俺の知覚が、次の瞬間に躍動した。

 

 体の両側から感じるのは、こちらを包み込む仄かな温もり。

 成長しきっていないからこそ纏っている、柔らかで無垢なる感触。

 未成熟であるからこそ醸し出される、優しげで清廉な芳香。

 

 これは-

 まるで、俺の望みをそのまま具現化したかのような。

 至福なる瞬間で形作られた理想郷。

 

 ―それが幻では無いことを、両側から聞こえてくる声が証明してくれた。

 

「仲間を待たせるのは、レディとしては相応しくないと思うわよ」

 

「-貴女がいないと、始まらないよ」

 

 暁ちゃんと、響ちゃん。

 

 つまり―

 俺は今、2人に支えられているということ。

 それも…先程のような船体越しでは無く。

 直の身体で、だ。

 

 …

 ……

 そんな望外の幸福に身を置いた俺の脳髄がどうなっていたか…

 もう、お解りですね?

 

 

 

 …うん、テンパってました♪

 ほげげげげげげげげげげ。

 や、や~らけえ感触…

 あ、あまいかほり…

 

 ―ご覧の通りです…

 只でさえ乏しい俺の判断力は、もうオーバーヒート状態!

 身に余る幸福の中に身を置いてるが…

 ヘタレの俺には、どーすりゃいいかなんて、わかんねぇぇぇ!

 おかげで、せっかく支えてくれている2人の方に視線を向けることすらできん!

 精神がこんな火達磨状態なのに、この上、その可憐な御顔を見たら…俺という存在そのものが焼き切れてしまう!

 …そんな訳なので、肉体も当然動きません。

 緊張の度合いからして先刻の曳航の比じゃない。

 服越しではあるが、直に肌に触れ、その温もりが伝わってくるのだ。

 まるで、蠟に固められたかのように筋肉が凝固し、肉体が強張って。

 それこそ、指1つ動かせないかのように。

 

 …

 だが…

 

 まだだ!まだ終わらんよ!

 

 今回まで何もできなかった前回(曳航時)と同じ轍を踏む訳にはいかん!

 人間とは、失敗を糧にして成功を導いていく生き物なのだ!

 今度こそ…今度こそはっ…!

 少しでも、この至玉の感触と触れ合いの記録を、我が脳髄に刻み込んでみせる―!

 

 

 …

 け、けど…どこまでセーフなんだ!?

 あからさまに触ったら嫌がられるかもしれないし。

 ロリコンの矜持心としても、あくまでKENZENな範囲に留めておかねばならんし。

 幼女・少女とは汚すものでは無く、愛でるべき存在なのだ。

 そもそも。

 こちらの身体を支えてくれている献身性溢れる彼女達に、ふしだらな気持ちを持って接するなど言語道断。

 

 よ、よし。

 ここはとりあえず、力を抜いて少しだけ寄り掛かってみよう。

 …それぐらいなら、大丈夫だよね…?

 …大丈夫、かな?

 

 …え~いっ!

 迷っててもしょうがない!

 いざ!

 …

 ……そうして、乾坤一擲の覚悟の先には―

 

 

 

 ―天国が、あった。

 

「さ。しっかり掴まって」

 

「無理しないで。ゆっくりで、いいさ」

 

 …

 もう、ね…この瞬間を、何と言ったらいいのか…

 俺の体も心も包んだ、この感動は…表現できないわ…

 題名を付けるなら―[甘美なる温もり]―ってとこだろうか…

 

 はふぅ…

 奇跡も、幸せも、あるんだよ…

 ヴァルハラは、ここにあった…

 

 

 そんな理想郷に浸っている俺の視界に映る、夕日の光。

 ―今は、その茜色の光が。

 まるで、祝福してくれているかのように思えたのだった。

 

 




ここまで来ていただいた方、誠に、誠にありがとうございます。
そして多大なるご負担をお掛けして本当に大変申し訳ありません。

もう今回に関しては本当に言い訳のしようもありません。
ご気分を害された方には心よりお詫びさせていただきます。
中の人がうざくなるわ、文が作れないわ…ひとえに私の筆力不足です。
勘違い文を書こうとしたんですが…他の作品からとりあえずのセリフを着け貼りした、継ぎ接ぎだらけのものになってしまいました。
ギャグを書くのがここまで難しいとは…ギャク作品を執筆されている他作者の皆様の凄さが解りました。
今回はこのような出来のものを皆様にお見せしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
この不始末は次回以降の作成で多少なりとも取り返すべく、より一層精進して参ります!
次こそ頑張ります!


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