勝っても負けても   作:冠龍

10 / 30








 殺戮の快楽に駆られたサソリと猛ったアースロプレウラが睨み合っていた頃、収容部屋の竜達にようやく動きがあった。

 

数分前から『巨竜』スクトサウルスとの距離を詰めていた『恐竜』ラプトルは、既に相手の弱点を2つも見抜いていた。

1つ目は『目の前の獲物は体が大きいぶん、一つ一つの動作が大振りとなること。』

2つ目は『巨体ゆえに、動作が非常にゆっくりとしたものになること。』だった。

 

彼の推察は当たっていた。

スクトサウルスの突進自体は中々のスピードだったが、あれは直進時に限られる。収容部屋中のように障害物の乱立する入り組んだ場所なら、機動力に勝るラプトルが有利だった。

不意にスクトサウルスが天井を見上げた。先程から頭上で蠢く『悪魔』の動向を探っているのだろう。自身への注意が逸れている今なら警戒させることなく側面に回り込めるはず。 …そう考えた彼は相手を刺激しないように細心の注意を払いながら、敵の側面へゆっくりと回り込み始めた。

 

案の定スクトサウルスは、目の前のラプトルよりも天井や壁に潜む『ギャラリー』のことを警戒していた。

 

スクトサウルスとラプトルの様子を伺っていたのは4頭のコウモリだった。彼らは戦いが遅々として始まらないことに苛立ち、この場を支配する静寂に多少怯えながらも、標的の動向を絶えず探っていた。それはスクトサウルスかラプトル。どちらか片方が隙を見せた瞬間… 否、場合によっては両者をまとめて始末するために。

しかしスクトサウルスには興味も惹かれていた。彼らの故郷にこれほど重々しい爬虫類は存在しない。更に未来の住人は揃って超音波へ何かしらの対応を身に着けている事が多かったが、この獲物は音などお構いなしに地響きを立てて走り、大破壊を繰り返して腹の底から震えるような唸り声を上げた。

ここまで大胆な行動をする獲物が存在するとは思わなかったコウモリ達は、無闇矢鱈と攻撃を仕掛けるのは悪手だと判断し、厄介な獲物の小手調べを気性の荒いラプトルに任せて高みの見物を決め込んでいた。

 

こんな不気味な生物が頭上に群れていてはスクトサウルスも警戒せざるを得なかったが、その一瞬がラプトルの待ちわびていたタイミングだった。既に側面に回り込んでいたラプトルは、一気に駆け出して獲物の横っ腹に飛びつき、そのまま後ろ脚に装填された双剣 ――シックルクローで無防備な脇腹を深々と切り裂いた。そして反動を利用して数メートル飛び退く。

 

突然脇腹を襲った激痛。スクトサウルスは痛みを堪えて振り向いた。そこにいたのは先程まで正面にいたはずのラプトルだった。辺りに潜むコウモリに気を取られているうちに側面に回り込まれてしまったのだろう。見ると襲撃者の爪は真紅に染まっており、それが敵の武器であることは容易に理解できた。

 

しかしそれだけだった。

たかが一筋の切り傷、そんなものはかつての天敵ゴルゴノプスの一撃に比べれば掠り傷も同然だった。傷口からは鮮血が溢れるが、その量はスクトサウルスの巨体からすれば何ら微々たるもの。出血多量になどなるはずがない。

 

しかしスクトサウルスの見通しは甘すぎた。

 

ラプトルが突如として駆け出し、加速しながらスクトサウルスの周囲を回り始めた。大抵の爬虫類がそうであるように、スクトサウルスも優れた視覚の持ち主だか、相手が小型だったため捕捉は困難を極めた。スクトサウルスがラプトルを見失って混乱したその刹那、再度ラプトルが攻撃を仕掛けた。今度はシックルクローを左右共に剥き出しにしてスクトサウルスの頭部に飛び掛かり、獲物の首筋を左右同時に切り裂いた。スクトサウルスの装甲の隙間を狙って振り下ろされた双剣は的確に分厚い皮膚を貫通し、同時に首の筋肉を半ば綺麗に切断する。

 

かろうじて大動脈を切り裂かれずに済んだスクトサウルスは、このラプトルが凄腕の『捕食者』であることをようやく理解し、やおら巨体を揺さぶって反撃を開始した。左前方に陣取ったラプトルへ向き直り、猛然と突進する。直撃すれば誰が相手であろうと一撃で粉微塵に出来る破壊力だが、ラプトルは剣舞のままに突進を躱すと、ダメ押しとばかりに首の傷口に喰らい付いた。ズラリと並んだナイフ状の牙が首筋から新鮮な肉を一切り取ったと同時に、ラプトルは一目散に部屋を走り去った。

 

突然ラプトルが戦意を喪失した事に困惑したスクトサウルスだったが、直ぐにその答えが頭上から大挙して押し寄せた。

 

頭上を覆う灰色の殺意。

 

機を見るに敏なコウモリ達は、スクトサウルスが押され気味と見るや即座に行動を開始した。散らばって檻の支柱に飛び降り、スクトサウルスの逃げ道を遮断する。ただならぬ殺気を感じたスクトサウルスが再び暴走を始めるよりも早く、飢えたコウモリ達が四方八方から襲いかかった。

 

 

 

 

途中経過

 

 

 

 

 

 

 

《生存》

 

 

 

ラプトル…2体 

スミロドン…2体

サソリ…2体

アースロプレウラ…2体

水生霊長類…1体

スクトサウルス…2体

未来の捕食動物…20体

人間…2人

 

 

 

 

《死亡》

 

 

 

 

未来の捕食動物1体…カッターにより殺害

 

オリバー·リーク…未来の捕食動物により殺害

 

スティーブン·ハート…スミロドンにより殺害

 

デリック·バートン(リークの部下)…カミン·シャスにより射殺

 

未来の捕食動物…???により殺害

 

カミン·シャス…未来の捕食動物により殺害

 

ドレイク·ジーン…アースロプレウラにより殺害

 

未来の捕食動物(コウモリ)…アースロプレウラにより殺害

 

未来の捕食動物(コウモリ)×3…サソリにより殺害

 

水棲霊長類…サソリにより殺害

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。