収容部屋の左側通路を抜けた先には倉庫があった。倉庫といっても荷物は1つもなく、垂れ下がるクレーンだけがこの部屋が倉庫であることを物語っている。倉庫の中央にあるのはコウモリの死体1つ、その周りに目敏い捕食者が群れている。ラプトル1頭、水棲霊長類1頭、サソリ1頭、スミロドン1頭、アースロプレウラ1頭、そして天井にコウモリ8頭。皆、中央の死体から漂う血の匂いによって引き寄せられていた。そして部屋中に散らばっている肉片、これは呪縛を解かれたコウモリ達により惨殺されたリークの成れの果てだった。コウモリ達はリークを仕留めたがこれは遊び半分だったらしく、体をパーツごとにバラバラにしただけで大部分が食べ残されていた。
久しぶりの生肉を前に食欲を抑えきれなくなったのか、水棲霊長類が周囲のライバルに構わず我先にと残骸を漁り始めた。そのあまりの大胆さに周りの生物達は呆気にとられてしまう。
その瞬間を見逃さなかった者がいた。
この場の注意が全て水棲霊長類に向いている隙にサソリが食料確保に動き、激戦に巻き込まれる前にコウモリの死体を攫おうと部屋の中央へ進んだ。
だが、サソリが中央へ進み過ぎたことが周りの生物のスイッチを入れてしまった。一斉に臨戦態勢に突入しサソリを威嚇する。サソリも捕脚を打ち鳴らして威嚇し返すが多勢に無勢、敢え無く退却しようとした時だった。
迂闊にも中央に進みすぎたサソリが水棲霊長類の標的になった。悪目立ちしていたのはお互い様だが、一足先にメインディッシュへ手を伸ばそうとしたサソリの行動は無礼極まる。残骸を放り捨てた水棲霊長類は、巨体を器用に滑らせてサソリの捕脚と床の間を滑り込み、丸見えの頭部に噛み付いた。上下に生えた円錐形の犬歯がサソリの外骨格を鈍い音と共に砕いていく。サソリも暴れるが、水棲霊長類は捕脚の当たらない下方から器用に噛み付いているため攻撃が当たる気配はない。そこでサソリは自在に動く鞭状の腕を振り回して叩きつけるものの、水棲霊長類は頑強な外皮で鞭を物ともせず跳ね除ける。やがて外骨格の破片が黄土色の体液と共に床に飛び散り始めた。
追い詰められたサソリを救ったのは意外にもコウモリだった。迂闊にも横腹を剥き出しにした水棲霊長類に突撃すると、両腕の鉤爪を使って相手を抱えて押さえ込む。コウモリは水棲霊長類の抵抗を許さず抱え込むと同時にサソリの側から飛び退いた。そして距離を取ると仰向けに拘束した水棲霊長類の喉を噛み切ろうとする。しかし倒れたのはコウモリの方だった。不用意に水棲霊長類の上半身へ接近しすぎたため敵の顎に捕われ喉を噛み潰された。ようやく敵を1頭葬った水棲霊長類だったが、これによってコウモリ達の怒りを買ってしまった。それまでは同族の死体を攫おうとしたサソリを狙っていたコウモリ達だったが、目の前で同族を殺されて黙ってはいられない。至急報復の準備を整えようとする。
だがコウモリ達が攻撃を開始するよりも早くアースロプレウラが動いた。
滑りやすい壁を大量の歩脚に任せて器用に駆け登り、隙だらけのコウモリ達に襲いかかる。奇襲は成功したかに思えた。
しかしコウモリの内1頭が愚かな者に制裁を加えた。天井はコウモリの土俵であり聖域、如何にアースロプレウラが器用に動き回ろうとも天井の動き方を熟知しているコウモリには敵わなかった。余裕を持って噛み付きを躱したコウモリが、しなった裏拳でアースロプレウラを床に叩き落とす。長い身体を使って上手く衝撃を吸収したアースロプレウラだったが、ダメージは少なくない。それでもアースロプレウラは立ち上がると、天井のコウモリ達に対して力の限り顎を打ち鳴らして威嚇した。
こうして新たな犠牲者が出たことで、堰を切ったように争いが始まった。新鮮な血の匂いが捕食動物の本能を刺激し、サソリもラプトルも。 …果ては知能の高いコウモリ達すらも狂乱の渦に巻き込まれていく。
次の犠牲者はアースロプレウラだった。一斉に降下してきたコウモリ達の爪によって全身を蜂の巣にされてもなお戦い続けようとしたが、背後に回り込んだ2頭のコウモリによって頭をもぎ取られて絶命した。それでも胴体の歩脚はしばらく動いていたが、もはやアースロプレウラに興味を持つ者はいなかった。
まず邪魔な巨蟲を葬ったコウモリ達が次に狙うのはラプトル。相手は1頭、取り囲んでして撲殺してやれば良い。
当のラプトルはスミロドンと戦っていた。格闘戦に長けたスミロドンが相手では全身武器のラプトルでさえ近づき難い。シックルクローを見せつけて動揺を誘うが、スミロドンは全神経を集中させており隙は微塵も無い。そこへ4頭のコウモリが乱入した。内1頭がラプトルを切り裂こうと向かってくるが、すかさずラプトルが蹴りで迎撃する。辛うじて蹴りを避けたコウモリは壁に避難するとラプトルに再び狙いを定めて様子を伺う。その間に別のコウモリがラプトルの背後から襲いかかった。両者は組み付きながら床に転がり、互いの最強の武器を同時に行使した。コウモリの爪がラプトルの背中に裂傷を残すが、即座にラプトルが尻尾を振り回して跳ね起き、コウモリを振りほどく。ほんのコンマ数秒の間コウモリは空中で身動きがとれなくなった。その瞬間に再び放たれたラプトルの蹴りがコウモリの胸にヒットする。だがシックルクローに力が入り、胸を切り裂かれる前にコウモリが身体を捩って脱出した。爪は空を切り、そのまま床に爪痕を残す。新旧の切り裂き魔の対決は互角だった。そこに獣の王者たるスミロドンが躍り込んだ。連戦続きのラプトルに襲いかかり、前足の一撃を左肩に食らわせ肩甲骨を粉砕した。必殺の一撃をなんとか肩を犠牲に防いだラプトルが、右腕の鉤爪を敵の腹に突き立てる。ところがスミロドンは身体を捻って爪が食い込むのを最小限に留めると、そのままラプトルの背後に着地した。だがラプトルは畳み掛けるように尻尾を後方の敵へ叩きつけた。威力はあまりないが予想外の攻撃に一瞬怯んだスミロドンはラプトルから目を離してしまう。途端にラプトルがスミロドンの鼻面に噛み付いた。柔らかな鼻周りをナイフ状の牙が抉っていくが、噛み付きに夢中になったラプトルに再びスミロドンが打撃を叩き込んだ。今度は左脇腹に直撃し肋骨のいくつかが折れる。痛みで噛み付きを解除したラプトルにスミロドンがタックルを食らわせた。全身が筋肉と言っても過言ではない程頑強なスミロドンのタックルは敵を軽々と弾き飛ばす。数メートル先に転がったラプトルは骨折の痛みに耐えて立ち上がると、外皮を棘状に逆立てスミロドンを威嚇する。一方のスミロドンも咆哮を上げて威嚇した。更に周りのコウモリ達もスミロドンとラプトルをまとめて取り囲んみ、速やかに殲滅しようと近づいてくる。もはや血みどろの戦いになるのは避けられなかった。
だが一連の乱闘は振動に敏感なサソリを異常なまでに刺激していた。
気が昂ぶったサソリがついに動き出した。
《生存》
ラプトル…2体
スミロドン…2体
サソリ…2体
アースロプレウラ…1体
水生霊長類…1体
スクトサウルス…1体
未来の捕食動物…15体
人間…2人
《死亡》
未来の捕食動物1体…カッターにより殺害
オリバー·リーク…未来の捕食動物により殺害
スティーブン·ハート…スミロドンにより殺害
デリック·バートン(リークの部下)…カミン·シャスにより射殺
カミン·シャス…未来の捕食動物により殺害
ドレイク·ジーン…アースロプレウラにより殺害
未来の捕食動物…???により殺害
未来の捕食動物(コウモリ)…アースロプレウラにより殺害
未来の捕食動物(コウモリ)×3…サソリにより殺害
水棲霊長類…サソリにより殺害
スクトサウルス…コウモリにより殺害
未来の捕食動物(コウモリ)×4…スクトサウルスにより殺害
未来の捕食動物(コウモリ)…水棲霊長類により殺害
アースロプレウラ…コウモリによって殺害