『肉塊』とサソリが衝突する。
そうなれば勝つのは自分達、そう確信した3頭のコウモリ達は高みの見物を決め込むために壁や天井に張り付いた。
サソリは敵の乱入に驚いて反応が遅れてしまった。拘束しているコウモリを放してから捕脚を振り回して迎撃するが、水棲霊長類の突進のほうがコンマ数秒速く捕脚は空を切った。辛くも反撃を躱した水棲霊長類が正面から邪魔者に突っ込んだ。
この衝突により互いに致命傷を負う。
はずだった…
だがサソリは鞭のような尻尾を敵の顔面へ叩きつけると同時に、先端で水棲霊長類の軟骨性の柔らかな鼻をへし折り、無理やり切り裂いた。
鼻は大抵の動物にとって急所になるが、それは水棲霊長類にとっても同じことだった。顔面を凄まじい痛みが襲い、さしもの水棲霊長類も突進を中断してしまった。
その刹那、彼の身体が吹き飛んだ。
サソリが水棲霊長類の動きが止まった一瞬を逃すはずがなかった。この愚かな乱入者に渾身の右ストレートを叩き込む。捕脚の棘がコウモリの傷跡に深く食い込み相手の肉体を完全に捕えると、勢いそのままに叩き飛ばした。
幸か不幸か『砲弾』と化した水棲霊長類の進路には、壁に張り付く1頭のコウモリがいた。何時もなら弾丸の雨だろうと何だろうと軽く躱せる彼らだったが、勝利を確信していた今、この瞬間だけは油断してしまい反応が遅れた。
鈍い音が『砲弾』と『悪魔』の悲鳴をかき消し、そのまま2頭は文字通りの『肉塊』と成り果て息絶えた。
思いがけず仲間を惨殺されたことで逆上したコウモリ達は、この世の物とは思えない金切り声と共にサソリの胴体に飛びつくと両腕の爪を相手の鎧に突き刺した。いくら頑丈な外骨格でも本気になったコウモリの連撃は防ぎきれず、脆くも砕けていく。コウモリ達は2頭がかりでサソリを攻めたてるが、サソリは既に敵の行動パターンを読み切っていた。
コウモリは持ち前のエコーロケーション能力を活かして敵の弱点を探ることができ、更に優れた頭脳とバネのような身体で正確に弱点へと飛びかかって確実に殺すことが出来る。
事実、サソリが最初にコウモリ達と戦った時は弱点である腹部を一方的に攻撃されることで殺されかけた。
しかし、今はその経験が物を言った。
――敵が弱点を正確に探知して攻撃してくるのであれば、弱点を狙う瞬間を狙って反撃してやれば良い――
そしてサソリは敢えて飛びつきに対して反撃も逃走もせずに攻撃を耐え続けていた。
そして血に狂い、冷静さを欠いていたコウモリ達は狡猾なサソリの罠に嵌ってしまった。外骨格に刻まれたヒビの密集地へ、2頭同時にトドメの一撃を繰り出すべく腕を最大まで振り上げた瞬間、サソリが突然バックダッシュした。くの字に曲げた歩脚に溜め込まれた力を開放し通路を逆走する。
慣性の法則は無慈悲にも働き、コウモリ達はサソリの正面に転がり落ちた。
勢いよく後退したサソリは通路に転がる巨大な『肉塊』を踏切台することで急発進し、コウモリ達を死神の鎌にも似た捕脚でガッチリと抱え込んだ。両方の捕脚を挟み合わせて捕脚の棘を獲物の体内奥深くに食い込ませる。こうなると獲物は自力で脱出することはできなくなる。コウモリ達は死神の抱擁から逃れようと必死に鉤爪を振り回すが、サソリは獲物の抵抗を意に介さずトドメを刺した。複数の捕脚による全力の挟み込みは、例え同種のサソリであっても一度決まれば抜け出すことは不可能。ましてや柔らかな皮膚しか持たないコウモリがそう長い時間耐えることはできなかった。
アースロプレウラがコウモリの首を切り裂いた時には、サソリは2頭のコウモリの体内を粉々に砕き終わり、消化液でコウモリの内臓を溶かして中身を吸い尽くしていた。
この狩りによってサソリの食欲は満たされていた。だが、今やサソリを動かしていたのは『食欲』という原始的な欲求ではなかった。それは、
――殺戮による『快楽』――
途中経過
《生存》
ラプトル…2体
スミロドン…2体
サソリ…2体
アースロプレウラ…2体
水生霊長類…1体
スクトサウルス…2体
未来の捕食動物…20体
人間…2人
《死亡》
未来の捕食動物1体…カッターにより殺害
オリバー·リーク…未来の捕食動物により殺害
スティーブン·ハート…スミロドンにより殺害
デリック·バートン(リークの部下)…カミン·シャスにより射殺
カミン·シャス…未来の捕食動物により殺害
ドレイク·ジーン…アースロプレウラにより殺害
未来の捕食動物…???により殺害
未来の捕食動物(コウモリ)…アースロプレウラにより殺害
未来の捕食動物(コウモリ)×3…サソリにより殺害
水棲霊長類…サソリにより殺害