「さてと……圧勝するかエンターテイメントか。判断に困るな」
クラウドボール男子が行われる会場の控え室にいる蒼司は一人、手元でラケットを回しながら一人ぽけーっと時間が来るのを待っていた。そこに応援として真由美と摩利の二人が姿を見せた
「蒼司くん。お姉さんが応援に来たわよ!」
「あ、そっすか」
「素っ気ない!素っ気ないわよ!」
「はぁ、全く。蒼司くん、優勝はできるかな?」
「出来る出来ないじゃなく、優勝しか見えてませんが?」
「ほう、言うじゃないか」
「それでは、時間なので……」
「…ッ!」
応援しに来たという真由美を軽くあしらった蒼司は、摩利に優勝しか見えてないと告げたあと試合のため部屋を出ようとする。その際に一変した雰囲気に摩利はゾッとした寒気に襲われた。
「………」
「どうしたんじゃ?羽衣。そんなに険しい顔をして」
「ちょっとね(相手を威圧するにしても会場の雰囲気まで呑み込むつもりか、ソウのやつ)」
愛理たちと一緒に観戦していた界斗は会場の誰よりも先に蒼司の雰囲気に気づいたため、一人険しい表情を浮かべていた。沓子がどうしたのかと聞くが明確な返答は得られなかった。が、愛梨や栞を含めた三人とも蒼司の姿が見えた瞬間、界斗が浮かべた表情の理由を察することができた。そして、蒼司の対戦相手も蒼司の雰囲気に呑まれ一点も取れず大敗を喫するのだった
「おっし、こっちも優勝目指して頑張りますか」
「その格好でいうことではないだろう」
クラウドボールに続いてバトルボードの予選に出場する蒼司は着替えてはいるがベンチに寝そべりアプリゲーム。クラウドボールの時と同じくどうみても今から試合のある選手の姿ではなく、担当エンジニアではないが、観客席にいる深雪たちに変わって応援にきた達也は突っ込んだ
「しかし、あの三種類の魔法だけで本当に勝てるのか?」
「おう。といっても戦法自体は誰でもできるぞ。内容は見た方が早い。そら、達也も観客席にいったいった」
達也を部屋から追い出し、先程とはうって変わって、頭を抱える蒼司。追い出したのは、約十分前ということで、一人になりたかったというのもあるが、ある気配を察知したからでもある
(父さん……見に行くとは言ったけど、後から英霊の皆が来るとか聞いてねぇよ)
「まぁ、いいや。勝てばいいんだし。……それじゃあいきますか」
「出てきましたよ!蒼司くん!」
「あいつ、戦術は当日のお楽しみっていってたけどよ。どんなのを出してくるんだろうな」
「あっ、達也くん」
「お兄様、蒼司くんがどういう魔法を使うのかご存知でしょうか?」
観客席の一番前の列にて観戦するため、座っている深雪たち。このあと、女子のバトルボードに出場するほのかは緊張でガチガチになっていたが、その他は本人が秘密にしている蒼司の戦法を予想しあっていた。そこに合流した達也に深雪が、どういう魔法を使おうとしているのか質問した。
「俺は蒼司の担当エンジニアじゃないから担当した五十里先輩に聞いたんだが、蒼司がCADに入れた魔法は移動魔法と加速魔法と硬化魔法だけらしい」
「は?渡辺先輩でもあるまいし、そんなので勝てるの?」
「それは見ないとわからない。本人は自信満々だったが」
「お兄様、もうすぐスタートです」
全選手が並び終え、スタートの合図が鳴ると一番に飛び出したのは蒼司だった。移動魔法と加速魔法で先頭に躍り出る。が、最初の難関。鋭角カーブに近づいても蒼司は加速を緩めようとはしない
「ち、ちょっと!?蒼司くん。完全にオーバースピードよ!?」
「これじゃ、渡辺先輩の事故と一緒だぞ!」
「………まさか!」
達也が蒼司の狙いに気づいたときには、既にコーナー入り口。悲鳴が所々あがるが、何故か蒼司はオーバースピードのまま曲がりきった。その後も全てのコーナーでオーバースピードであるにも関わらず簡単に曲がり、蒼司は大差を着けて予選を一位通過したのだった
「あ、あの…達也さん。蒼司くんは、どうやって曲がったんですか」
「そ、そうよ!完全にオーバースピードだったのに」
「恐らく硬化魔法を使用したからだろう」
「硬化魔法で?どういうことだよ、達也」
蒼司の組である第二レースが終了すると、わかったような反応をした達也に質問が飛び、達也もあくまで予想ではあるがと自分の予想を説明し始めた
「硬化魔法の定義は対象を硬くするのではなくあくまで相対位置の固定だ。蒼司は恐らくカーブの前で硬化魔法で自分のボートとコースの端の相対位置を固定し、曲がったんだ。そうすれば、コーナー前で減速せずとも理論上は早く曲がることができる」
「相対位置を固定して……ですか?」
「ああ。わかりやすいイメージならレールの上を猛スピードで駆け抜けていくと思えばいい。だがこれも一歩間違えれば即コース外にぶっ飛んでいくものなんだがな」
三校側も同じく、界斗以外はどう曲がったのかわからず界斗と一緒にいた愛梨が蒼司の動きをみて笑っていた界斗に質問し、界斗は達也と同じような説明をし、愛梨やその他の三校生徒はそれを聞いて理解していた
「アハハハ、あいつらしい戦法だ」
「じゃが羽衣。あの速度であれば、硬化魔法より遠心力の方が高くなり、自身がぶっ飛ぶ可能性があると思うんじゃが」
「それはあいつも承知の上。多分だけど硬化魔法が効かなくなったら体勢を前のめりにして、わざとコースの端にボードをあてて同じく無理やり曲がったんだろうと思うよ」
「むちゃくちゃ強引じゃな」
「同じ戦い方はしようと思えば誰でもできるんだよ。原理は簡単だからね。ただ誰も真似出来ないだろうね」
アイツらしいと、説明後も笑い続ける界斗の姿に呆れる沓子たち。だが普段見慣れない界斗の姿に珍しさを感じた沓子たちは少しの間界斗の顔をじっと見つめていた
最後の方、ねぼけながら書いてしまっている部分が少しあったので、訂正あるかもしれません。ごめんなさい