「えーっと、俺の席は……」
「蒼司、こっちこっち。蒼司は私の前だよ」
「見てくれてたのか、悪いな。おはよう雫、ほのか」
学校二日目、教室に一人で入った蒼司は自分の席を探そうとするが、先に来ていた雫に前の席が自分のだと教えられたので荷物を置き、二人と挨拶を交わす。そして、二人と話そうとすると、突如教室にいる生徒が一点に注目する。その一点には登校してきた深雪の姿があった
「突然なんだと思ったら…ああ、司波さんが来たのか」
「……あ、司波さん。私の後ろかもしれない」
「えっ!?…そ、そういうことは早くいってよー」
「今気づいたのに、これ以上早いのは無理」
「まぁ、確かにな。けど雫、自分の席解ったときに見なかったのか?」
「うん」
「なら仕方ないな」
「蒼司君まで!?」
こうやっている間にも深雪は自分の席である雫の後ろまで向かってくる。それにつれて、ほのかの慌てようも大きくなる。
「ほのか、自己紹介のチャンスだよ」
「う、うん。……あ、あの司波さ……はわっ!ぶっ!」
「ブフッ」
雫に後押しされ、自分の席にいる深雪のところまで自己紹介するために向かうほのかだが、緊張のしすぎで数歩の距離なのに自分の足がもつれ司波さんの前で転けてしまう。それを見た深雪は、ほのかを心配して手をとり、声をかける
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう、司波さん」
「どういたしまして。……あの、」
「光井です。光井ほのかです!」
「司波深雪です。光井さん、仲良くしてくださいね」
続けて、雫もほのかのフォローに回るように自己紹介をしにいく
「すいません、この娘おっちょこちょいなもので」
「酷いよ雫!たしかに迷惑はかけたけど!」
「こちらは…?」
「北山雫です。ほのかが司波さんの凄いファンでして」
「ちょっと!?」
「どこかでお会いしましたっけ?」
「試験会場が一緒だったみたいで、そこで一目惚れしたそうですよ」
「やや、やめてよ恥ずかしい!」
クラス内で始めはほのかへヒソヒソとどんくさいやつと話す声が聞こえるが、今は女子同士の会話に羨ましそうな目を向けながら自分達が一目惚れと言っても引かれるよなと愚痴を溢していく
「蒼司は自己紹介しないの?」
「蒼司さん?」
「あ、俺に飛んでくるんだ……じゃあ自己紹介を。俺は枳殻蒼司です。名字は皆呼びづらいとのことなので、中学から基本名前呼びをしてもらってますんで呼びにくかったら名前でも大丈夫です」
「先ほども名乗りましたが、司波深雪です。よろしくお願いしますね、枳殻くん」
自己紹介を終えた雫から振られ、蒼司も自己紹介をする。そんな蒼司の背中には、クラスの男子連中の嫉妬と羨望の混ざった視線が刺さり、多少気分が悪くなっていた
『ただいまよりオリエンテーションを開始します。生徒の皆さんは席についてください』
蒼司の自己紹介が終わってから少し時間がたち、オリエンテーションを始める放送がかかり、全員が席に座っていく。蒼司たちとは離れた席のほのかと一旦別れ、自分の席に着席し担当の先生からの話を聞く。その後、先生の解説付きの授業見学か、又は先生の解説は無いが自分の興味のある授業の見学を選択することになる。クラス全体の意見として二科生とは違い、先生の解説付きの方が良いと先生についていく方が大多数である。ただ、言い方が二科生を見下すような感じゆえに、深雪の顔は険しく、そのことにほのかは心配する。と、話が終わるやいなや、共に回ろうとする男子に深雪が囲まれることとなる
「ちょっといいですか?司波さん!」
「なんでしょう?」
「司波さんはどちらを回る予定ですか?」
「私は先生について……「奇遇ですね!僕もです!やっぱり一科なら引率してもらうほうですよね!補欠と一緒の工作なんていってられませんよ」
「いえ、そういうわけでは……」
「だったらもう集合場所に急がないといけませんね!」
「そうですね、光井さん、北山さん、それと枳殻君もいきましょうか」
深雪にどちらにするのか聞いた男子は、自分達と同じだと解った途端、自分のペースで話を進めていく。と、そこにほのかが強引に割り込み、深雪に集合場所に行こうと声をかける。深雪は前の席の雫と蒼司に声をかけ、四人で集合場所へ向かおうとする。蒼司は、断るかどうか一瞬判断に迷うが、変な感情を向けられるよりマシだと誘いに乗り、集合場所へと向かう
「急に割り込んでごめんなさい」
「ううん、助かっちゃった」
「(……気の毒)」
先程深雪に声をかけた男子たちは、気まずそうに少し距離をとって着いてくる。目的地が同じためそうなるのは必然だが、雫は彼らを見て気の毒だと心の中で溢していた
連続投稿の場合、基本後書きはないです。連続投稿の最後くらいしか後書きはないと思ってください