けものフレンズR ~Re:Life Again~ 作:韓非子
「この世界は、奴が心の中で作り出した、自身の最も理想とするものを反映した世界だ。私の作り出したアトランティスもその一種と思っても良い。私はこの世の総て支配するための王国を、奴は背教、冒涜、汚辱そのものをこの世界へと落とし込んだ。この世界を見て分かる通り、奴には何の理念も信条もない。あるのは神を冒涜して嘲笑うという腐ったものだけだ」
「神を嗤うって…。ポセイドンはどうしてそんな子に協力してたの…?」
「奴が嗤う神というのは、私のような下々の者を支配する圧倒的な力を持つ存在ではなく、創造主と呼ばれる者だ。大地を造り、天を作り、人や生物を造った圧倒的な存在を奴は侮辱しているのだ。同じ神であっても、根本の存在が違う」
「なるほど…」
淀んだ空間の沈黙を破るようにポセイドンが話す。足音だけが響くこの地下空間の中では、無機質な音を聞くよりは、敵でもなんでも生き物の発する声を聞く方が良い。何より強大な敵であったポセイドンと近付くチャンスでもあるのだ。今のうちに彼女のことを知るのも良い機会というものだ。
「魔術師は私を召喚し、私と契約を交わした。そして私はそれに従った。それだけだ」
「…外敵を排除し、自身を召喚したマスターを守れ…ということかい?」
「そうだ…。だが、実際はそうでなかった…。奴は忌々しくも巧妙に、私を道化に仕立て上げたのだ…!ペイル、バフォメット…!決して許しはせん…!」
「うみゃあ…。あのポセイドンがこんなにも怒るなんて…バフォメットってどんな子だろう…」
「性根の腐った悪魔と言う他ない。我々の言葉ではディアボロスともいう。奴は、他者を弄んでは自身の愉悦とするこの上ない悪趣味な性格をしている。助けを求める者へ甘美な提言をし、協力するふりをしてはそいつを破滅の道へと追いやるのが奴の生きがいだ。そしてお前たちの思う通り、奴はフレンズと呼ばれるものではない。多少なりともサンドスターの影響は受けているようだが、姿かたちはほとんど元の姿と変わっておらん」
嫌味も憎しみも込めない淡々とした口調でバフォメットについて話す。けど、ポセイドンの解説を聞いていると、少し引っかかるものがあるように思える。ハクトウワシさん…まさかとは思うけど、バフォメットに騙されてるんじゃないか…どうしてもそう思えて仕方がなかった。
「ポセイドン、ハクトウワシさんなんだけど…もしかしてだけど…バフォメットに…」
「…間違いなく奴のおもちゃにされているだろうな…。彼女の根底にある理想に付け込んで、良いように操っているんだ。それを幇助した私も私だが…。だが、奴がペイルと結託してこの騒ぎを起こしたのは事実だ。まさか、本当に死者を蘇らせるとは…。変だとは思っていたのだ。ハクトウワシには生者にも死者にもない特別なものを感じていた…。生者の魂と死者の肉体を持っているというのか…。しかし、よもやそういう事だったとはな…」
ポセイドンの独白は続く。敵だった者の胸の内を知るとは新鮮なことだ。このままバフォメットやペイルちゃんのことも聞ければいいんだけど…。なんだか話を聞く限りでは、あまり接触がなかったようにも思える。
「おしゃべりが過ぎますわね、ポセイドン」
「ッ…!ペイル…!」
突如暗闇の中に五十メートルはあろうかという巨像の姿が浮かび上がった。その上にはペイルとハクトウワシさんの姿が見える。この異質な空間に似つかわしくない大きな巨像がここにあるのだ。これもバフォメットが映し出した一種の心象風景なのだろうか。
「降りてこい!正々堂々と私と向き合えッ!!」
「何をお馬鹿な事を申されるのですか…?何故、わたくし自らが、わざわざ相手の有利な土俵に降りなければならないのですか…?」
ゆらゆらと揺れながら見下すかのように答える。
「ふふふ…。御覧なさい、ハクトウワシ…。こんなにも潰しがいのある羽虫がいっぱいですわ…。フレンズたちが精魂込めて作ったこの巨像の力、見せてあげましょうか…」
「…そうね…。ちょうど良いわ。あなたの力を見せてみなさい、ペイルホース…」
「仰せのままに…。ふふふふ…」
「ハ、ハクトウワシさん…」
生気のない淀んだ瞳があたしたちを見下ろす。あれが、正義を信じる者の目なのか…。正義の瞳というのは、もっとキラキラと澄んでいそうなものだけど、今見えているハクトウワシさんの瞳は、悪に落ちたダークヒーローそのモノのようにしか見えない。これもバフォメットの悪の手によって穢された故なのか。
「どうしてだ、ハクトウワシさん…!何故、キミのような正義のために戦うフレンズさんが、悪に組して無益な殺生を行おうとするんだ…!」
「これがアタシの選んだ正義…。アタシはこの世の総ての正義を敷く者…。…アタシに歯向かう者はすべて排除するわ…。例えかばん、アナタでも…!」
義憤に駆られるかばんさんが叫ぶ。対するハクトウワシさんの答えは冷淡なものだった。自らが理想とする正義の為にヒトとしての心を捨てたかのように思えた。ハクトウワシさんは自らを正義を成す者として、自身を世界を回す歯車としたのだ。
突如背後からゾクッと得体の知れない悪意のようなものを感じた。見ると酷く痩せこけた顔のない女性の姿があった。あの不気味に痩せた修道女のような格好をしたものは…セイレーン…!
「そんな、どうしてセイレーンが…!」
「あら、お気付きでなかったのかしら…?」
ペイルがゆらゆらと揺れながら答える。
「アレはわたくしの分身…アレを使ってゴコクエリアのフレンズから生気を集めていましたの…。すべてはこのおもちゃの為に…」
セイレーンが仮面を外す。黒い煙のようなものがセイレーンの体から抜けると、巨像の体に吸い込まれていった。黒い霧が巨像を包み込む。
「しかし、鵺…。トラツグミと言ったかしら?貴方がわたくしの分身を倒すだなんて思ってもいませんでしたわ…。力の三分の一を無駄にしてしまうだなんて…」
無表情なまま死に体の虫を見るかのような目でペイルが言う。
「さて、わたくしの出番はここまでですわ。あとはお好きになさい、ハクトウワシ…」
「………」
ふわっと舞うとペイルは黒い霧の中に消えていった。後には巨像とハクトウワシさんが残っている。すべてはこの時の為…。まさかとは思うけど、この巨像を動かすという訳ではないだろうか。
「さあ、貴方の力を見せてもらいましょうか、コロッサス…!」
ハクトウワシさんは自身の腕から白い稲妻を走らせると、それを巨像の体へと落とし込んだ。巨像の目に光が灯る。鈍く金属の軋む音がする。巨像の白く光る目があたしたちを捉えると、全身に走る稲妻を辺りに撒き散らしながら動きだした。
「▓▓▓▓████▓▓▓████░███▓▓▓▓█████░░░░▓▓▓▓三三三!!!」
巨像が不気味な絶叫をあげる。無機質な音とも獣の叫びとも言えない怪奇な絶叫だ。
やがて、コロッサスと呼ばれたそれは、ズンズンとあたしたちに迫ってくると、その大きな拳をあたしたちの元へ叩きつけた。確実にあたしたちを叩き潰そうと振り下ろされた拳は、地面に大きくクレーターを開けた。
「あんなの勝てっこねえ…!逃げるぞ…!」
誰もゴマちゃんの意見に反対する子はいなかった。有無を返さずあたしたちは逃げ出した。コロッサスは容赦なく早足にあたしたちを追いかける。目の前に続く、暗く広い一本道は壁へ壁へとあたしたちを導いていくかのようだ。そのうち本当に壁へと追いやられるのではないか?そう思うほどだった。
「ッ…!」
「アムちゃん!」
「まさかこのコロッサスに挑むというの…?…命知らずもいい所だわ。ポセイドンを倒したからって調子に乗らないことね…!やってしまいなさい!コロッサス!」
「▓▓▓▓████▓▓▓████░███▓▓▓▓█████░░░░▓▓▓▓三三三!!!」
巨人が絶叫する。豪速に繰り出される鉄の拳は容赦なく壁を、地面を抉っていく。あんなのに当たれば、並みの生物であればあっという間に挽肉にされてしまうだろう。そんな巨人の攻撃を物ともせずにアムちゃんは巨人に立ち向かっている。
「ウ゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!゛!゛」
両腕に絡まる鎖を大きくしならせて巨人の胴を薙ぐ。金属同士のぶつかり合う甲高い音が地下祭壇に大きく響いている。巨像の体に傷こそ入れど、ダメージ自体は入っていないように見えた。しかし、この巨人に痛みという概念はあるのだろうか。痛みでもなんでも怯まなければ攻撃を与える隙というものが見えてこないのではないか。加えてこの狭い空間での戦いだ。いよいよポセイドンよりも厄介な敵のように思えてきた。
ギィン!
「効いてないわよ!ビースト!」
「クソォッ…!」
巨像は足を大きく上げるとあたしたちを踏みつぶさんと狙いを定めてきた。
「させるか…!」
アムちゃんの鎖が巨人の脚に絡みつく。アムちゃんが力任せに引っ張るとバランスを崩して巨像は倒れこんでしまった。
「今のうちだ!行けッ!」
「うんっ…!アムちゃん、無事で…!」
巨像を背にあたしたちは逃げ出した。アムちゃんの言うことを聞かないでその場に留まっても邪魔なだけだ。多分アムちゃんも激高することだろうと思う。ここは黙って逃げるしかないんだ。
「▓▓▓▓█████▓▓▓▓▓▓████░███▓▓▓▓▓███████░░░▓▓▓▓▓三三三!!!」
巨人の絶叫が聞こえる。恐らく、アムちゃんに転ばされたことに怒ってるんだと思う。心なしかさっきまでの絶叫より幾分か怒りの感情がこもっているようにも聞こえる。
「逃がしませんわよ…?」
「ひっ…!」
暗闇の中から突如、ペイルの顔がぬぅっと現れた。あたしの目と鼻の先まで近づくとすかさず距離を取って嘲笑するかのような仕草をとってみせた。
「ふふふ…いい顔をしてくれるわぁ…。その恐怖に歪み切った顔…大好きですわぁ…。もっと良く見せて下さるかしら…?」
「ペイルちゃん…!」
宙に浮いたままふらふらと揺れてあたしたちを見下ろしている。横目であたしたちを見下ろすと右手に球体のようなものを浮かび上がらせた。
背後からゴウと突風のようなものが駆け抜ける。見ると、トラツグミちゃんがペイルに飛びかかっているところだった。
「あら…」
小柄な体から繰り出される斬撃はアムちゃんの引けを取らない勢いだ。鈍く光る黒い爪は闇をも切り裂かんばかりの禍々しさを湛えている。
「怖いですわぁ…。ふふふっ…こちらへおいで…」
「逃がすか…ッ!」
陽炎のような屈折を残して奥の暗闇にペイルが退いていく。あの不気味な笑みの裏に隠されたものを読み解こうとすると、どうしても追いかける脚が重く感じてしまう。奥からは巨像が迫ってくるのはもう明白だ。嫌でも追いかけなければならないだろう。
「きっと罠なんだろうけど、追いかけなければ…。さもなくばコロッサスにやられてしまう…。みんな、周りには最大限の警戒を払うように…。サーバルちゃんも、少しでもおかしな音やにおいを感じたらすぐに教えて」
「う、うん…!わかった!」
ペイルの残した甘い残り香を辿って奥へと進んでいく。等間隔に並べられたトーチはあたしたちを地獄の奥へと誘っているようだ。これがバフォメットの追い求める黒ミサなのだろうか。やがてあたしたちは、一つの大きな広間へとたどり着いた。
「ようこそ、バフォメットの祭壇へ…」
遠い闇にペイルが静かに佇んでいる。闇の中にポツンと浮かぶペイルの姿は、とても不可思議でこの世のものではないと思うほどだ。
「ここであれば貴方たちも存分に戦えるでしょう…?さあ、哀れな子羊たち…その藻掻く姿でわたくしたちを楽しませなさい…」
突如地面から青白い光が放たれたと思うと、そこへあの巨人の姿が現れた。肩にはハクトウワシさんの姿もある。ペイルは巨像と戦わせるために、わざわざあたしたちをここへと導いたのだ。なんて悪趣味なフレンズだろうか。こんなフレンズさんの為に胸を痛めていたと思うと、過去のあたしを一発ぶってやりたいと思うほどだ。
巨像は立ち上がってあたしたちを見据えると大きな咆哮を放った。
「▓▓▓▓████▓▓▓████░███▓▓▓▓█████░░░░▓▓▓▓三三三!!!」
相変わらずの不気味で奇怪な音だ。こんな叫び声を一日中と聞かされたら並みの精神ではもたないだろうと思えてくる。
「アム…!アイツ…!」
ゴマちゃんが何かに反応した。まさか巨像と戦っていたアムちゃんもまとめて召喚したのだろうか?巨像が何かを放り投げるような動きを見せたと思うと、黒と黄色の何かが放り出された。あの影は…まさか、アムちゃん…?
放物線を描いてあたしたちの元へと飛んでくる。あたしたちの足元へと放り投げられたそれは、紛れもなくアムちゃんそのものだった。
「アムちゃん…!」
「おいっ…!しっかりしろ…!」
「アッ…グっ…」
全身傷だらけでいかにも満身創痍といった様子だ。この様子ではしばらくは戦えそうにない。
トラツグミちゃんとポセイドンが巨像へと向かっていく。あたしたちは黙ってその様子を見守ることしかできない。ここには地上のようなバリスタも弩砲もなにもない。何の力も持たないあたしたちにできることは何もないんだ。
巨人の体躯はポセイドンよりも小さいけど、その機敏さは水を纏ったポセイドンよりも遥かに速い。加えて一撃がとてつもなく大きい。掠りでもすれば細かな肉片となって一巻の終わりだ。
「………」
ハクトウワシさんとペイルはただ黙ってその様子を窺っている。巨像は攻撃の手を緩めることなく、その剛腕で二人を潰そうと鋼の拳をひたすらに叩きつけている。
「▓▓▓▓████▓▓▓████░███▓▓▓▓█████░░░░▓▓▓▓三三三!!!」
巨像が叫ぶ。巨像は体を反らして頭上で指を絡めると、大気を裂かんばかりの勢いでその拳を地面へと叩きつけた。
「おのれ…!」
「くぅ…っ!」
地面に穿たれたクレーターがその威力を物語っている。揺れる地面はあたしたちに明確な恐怖を植え付けた。恐怖から足が震えて動けなくなる。
「口ほどにもないわね…。大人しくアタシに降伏なさい。そうすれば苦しまずに逝かせてあげるわ」
「何を抜かすか…!悪魔に魂を売った小娘が…思いあがるなァ!」
ポセイドンの体に刻まれた回路が青く光る。青い光は稲妻となりポセイドンの体を包み込むと、一閃の光となって巨人の体を貫いた。
「ッ…!アタシに…抗うなァ!!アンタたちなんて黙って死んでればいいのよッ!!コロッサス!あんな奴なんか潰してしまえェ!!!」
「▓▓▓▓█████▓▓▓▓▓▓████░███▓▓▓▓▓███████░░░▓▓▓▓▓三三三!!!」
「本性を現したな、神を騙る愚かな獣よ…!」
ハクトウワシさんの怒りに応えるように巨人が絶叫する。ひと際響くその大きな叫びは、この空間全体を揺るがすようだ。
巨像の絶叫に合わせて、壁に掛けられていたトーチに青い火が灯された。青い火に照らされたこの空間は、どうやら一つの大きな教会のようだ。巨像の背後にはとても大きなステンドグラスが飾られている。幾何学的で耽美的なその模様は、美しくもどこか禍々しさを感じられるようだ。
「▓▓▓▓████▓▓▓████░███▓▓▓▓█████░░░░▓▓▓▓三三三!!!」
巨人が再び叫ぶ。ステンドグラスに照らされたその姿は、狂気に歪められた悪の化身そのもののようだ。悪へその身を堕とした正義の執行者が、黒魔術に手を染めた巨像を動かしている。そう思えて仕方がなかった。
「そうよ!!!アタシは正義の執行者になるの!!!アタシはその為ならなんだってするわ!!!アタシの邪魔をするならば一匹残らず駆逐してやる!!!その為なら悪にだってなってみせる!!!なんだってアタシは正義なんだから!!!」
狂ったようにハクトウワシさんが叫ぶ。
「この力は正義を執行するためにあるッ!!!そしてこのコロッサスこそ正義の体現そのもの!!!暴力と圧政の象徴よ!!!アタシは圧倒的な力と悪魔から授かった権能を以ってこの世総てを平定してみせる!!!すべてはアタシの前に平服して感謝するのよ!!!」
「狂ってる…!そんなの間違ってるよ…!」
ハクトウワシさんは正義に固執するあまりに狂ってしまっている。バフォメットが何を唆したのか知らないけど、ハクトウワシさんは間違いなく強迫観念に駆られて暴走してしまっている。正義の使者にならなければいけないという強迫観念と、ポセイドンから授けられた圧倒的な力、そして正義の執行者としての使命感が彼女を狂気の渦へと落とし込んだのだ。彼女を取り巻くすべての存在が彼女を狂わせてしまった。この狂気から解放するためにできることは…
「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「▓▓▓▓█████▓▓▓▓▓▓████░███▓▓▓▓▓███████░░░▓▓▓▓▓三三三!!!」
ハクトウワシがヒステリックに叫ぶ。まるでこの世のすべてを憎んでいるかのようだ。
その時、一つの影が巨像に向かって突っ込んでいった。
「イエイヌちゃん…!?」
その影は、紛れもなくイエイヌちゃんのものだった。だけど様子がおかしい。ビースト化していて理性を失っていることを抜きにしても、それ以上に何かが違っている。
「イエイヌちゃん…まさか…!」
「サンドスターを過剰に消費して元の動物に戻りかけてる…!急いで止めなくちゃ危険だ…!」
両の腕がアムちゃんみたいに半獣化してしまっている。心なしかポセイドンと戦っていた時よりも、荒々しく凶暴になっているような気がしてならない。元栓が壊れたガス管のように黒いオーラが勢いよく吹き上がっている。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」
両手の爪で巨像の足首を斬りつける。よく見ると四本の裂傷が巨人の足首にできている。器用に巨像の体を登っていく。イエイヌちゃんを潰そうと、虫を叩き潰すかのようにイエイヌちゃんへとその手を伸ばす。
「▓▓▓▓███三!!?」
突如巨人の両腕に鎖が巻かれた。見ると、アムちゃんが両腕に巻かれた鎖で巨像の動きを封じている。自身の数十倍はあろうかという巨大な金属の塊を、その小さな体で縛り付けているのだ。
「お前の負けだ…!ハクトウワシ…!」
アムちゃんは大きく飛び退くと、それに釣られるように巨像も大きく前に倒れた。しかし、そこは神の力を得たロードス島の巨像のことだ。なんてことなく起き上がるとアムちゃんへ向けて大きく叫んだ。
「▓▓▓▓████▓▓▓████░███▓▓▓▓█████░░░░▓▓▓▓三三三!!!」
自身に巻きつけられた鎖を振り回してアムちゃんを壁へと叩きつける。だけど、アムちゃんはうまいこと壁に着地すると、巨像へと一直線に向かって跳躍した。爪を立てて巨像の頬へと飛び乗る。
「いいぞ…!その調子だ…!」
不敵な笑みを浮かべたポセイドンがぼそりと呟く。右手に宿した光の玉が煌々と輝いている。両手をかざして狙いを定めると、巨像の脇腹めがけて光の玉を放った。
「イエイヌ!中だ!コロッサスの脇腹に穴を開けてやった!お前は中に入って内側から破壊してやれ!」
「ク゛ゥ゛・・・ッ゛!゛」
イエイヌちゃんはポセイドンに言われた通りに体を降りると、脇腹に穿たれた穴の中に入っていった。元の動物に戻ってしまうのも心配だけど、今はイエイヌちゃん…みんなが勝つことを信じて待つとしよう。
「クッ…!なんてことなの…!コロッサスが追い詰められるなんて…!」
「後ろががら空きだぞ、ハクトウワシ…!」
「っ…!!しまっ…!」
不意打ちをかけられたハクトウワシが、地面へと落ちていく。今まではコロッサスの圧倒的な力に手を出せないでいたけど、数の有利を得た分別個に戦うのも容易になったのだ。コロッサスから引きはがされたハクトウワシが悔しそうにトラツグミちゃんを睨む。
「不意打ちをかけるだなんてとんだ卑怯者ね…!それに、あたしがコロッサスに頼るだけのフレンズと思ったら大間違いよ…!神の力を手にしたアタシに倒せない物なんてない…!さあ、かかってきなさい!アタシに戦いを挑んできたこと、後悔させてあげるわ!」
白い稲妻を全身に迸らせながらハクトウワシが言う。その様子は、さながら滾る力を誇示させているかのようだ。ポセイドンとは違う威圧感を感じる。ポセイドンが遍く大海と大地を制する王であるならば、ゼウスは天空を制する王と言われている。今、目の前にあるハクトウワシはまさしく天空の覇者、ゼウスと呼ぶに他ならない。
風と稲妻を纏いハクトウワシが宙を舞う。地下祭壇での決戦が始まろうとしている。あたしたちは絶対に勝たなくてはならない。パークの存亡を賭けた戦いが、今、始まる。