けものフレンズR ~Re:Life Again~   作:韓非子

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Ruin-13「反撃」

「ぁ゛……は、ぁ……」

 

 わたしたちを襲ってきたセルリアンはみんな撃破することができた。だが、その代償は大きく、撃破されたセルリアンが撒いた黒い破片…セルリウムに私の体は侵食されてしまった。

 

「と……も、ぇ……」

 

 酷く全身が重い。鈍い痛みが全身を襲う。セルリウムに侵された左目は景色を映すことなく、ただ靄のようなものを映している。

 

「早く……行かな…ければ…」

 

 息も絶え絶えにランスに体をあずけて山を下りていく。ともえたちを守れるのは、今やわたししかいない。早く合流して、ネメアの魔の手からともえたちを守らなくては…。

 

 

…………

 

 

「そう…ですか…。カレンダさんが…」

 

 製鉄所近郊でフィールドワークしていたというカレンダさんの訃報を聞いた。なんでも、例のビーストに護衛もろともやられてしまったらしい。ビーストとは恐らくネメアーさんの事なのだろう。残念だけど仕方のないことだ。この一件でカレンダさんも合衆国側の人間という事が分かったのはとても残念だけど…。

 

「………」

 

 悲しいとは思わなかった。ただひたすらに残念と言う気持ちだけが私の中にあった。国連軍との戦いに、私の心もすり減っているのかもしれない。

 ネメアーさんは今日も国連軍を相手に戦っている。カコは研究室に籠って作戦の立案をしている。私の仕事はというと、避難所におけるフレンズさんたちのサポート、及び、精神ケアをするというものだった。長引く避難所生活のストレスからか、フレンズさんたちに異常行動が認められるようになったのだ。

 爪を噛む。常同行動。不眠。暴食。フレンズさんによっては、その場から動かず、ずっと体を揺らし続ける個体もいる。耳鳴りが止まなくなったフレンズさんもいるようだ。かく言う私も不眠に悩まされているくらいだ。私の目の下のクマを見たフレンズさんにはいらない心配をかけてしまっているようで、余計なストレスを与えてしまっている。

 

「……はぁ…」

 

 一人椅子に座って深いため息を吐く。……とても私一人では対処のしようがない。最近ではジワジワとパークスタッフの離職者も増えてきている。あるスタッフが聞いた噂によると、国連関係者が離職者を中心にビーストについてあちこち聞き回っているのだそうだ。……いずれここにも来るのだろう。怒りに任せて手を挙げたりしないか心配だ。

 

「……っ!」

 

 涙が溢れてきた。もう限界だった。頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。…私たちは、ほんの数か月前まで、かわいいフレンズさんたちに囲まれて、みんなで楽しくパークで過ごしていた。それもこれも、すべてあの日を境に跡形もなく消え去ってしまった。もうあの日常に二度と戻ることはないのだろうか…。…胸が張り裂けそうだ。

 

「ミライさん…」

「サーバル…さん…?」

 

 涙を拭って、なんとか笑顔を作ってサーバルさんへと振り向く。振り向いた先に見えたサーバルさんの顔は、なんだか不安に満ちた表情のように思えた。

 

「どうか、しましたか…?」

「ミライさん…泣いてたよね…。大丈夫…?」

「………。見られちゃいましたか…。ふふっ…。情けないところ、見せちゃいましたね…」

「………」

 

 サーバルさんが隣に歩み寄ってくる。まるで、私の心に寄り添ってくれるかのように思えた。その心遣いにまたしても涙が溢れてくる。

 

「大丈夫だよね…。また、きっと、みんなで笑い合える日が…来るよね…?」

「………」

「ミライさん…?」

 

 とてもじゃないけど、はいとは言えなかった。いつ終わるかもわからないこの戦争に、私たちは巻き込まれたのだ。かつていた友達…カレンダさんはネメアーさんに殺された。言いつけを守らずに外へと出て、ガスを吸って無残な姿となって発見されたフレンズさんもいる。かく言う私もその立ち合いに立った者の一人だ。……未だにその姿が脳裏に浮かぶようだ。この世に体現された地獄のようにも思えた程だった。

 ……憎しみが募っていく。庇護の名の元に進駐して、私たちの国を見捨てて、我が物顔でパークの上に胡坐をかいて、ガスと汚染物質を撒き散らしている…。そんな奴らが許せなかった。

 

「ミライ」

「カコ……」

「客人だ。気を付けろ…。決して手をあげるな…」

「………」

 

 カコに連れられてふらふらと表口へと向かっていく。寝不足で揺らぐ視界の中、とても忌まわしいものを見た気がした。濃い緑のスーツに身を包んだ、長身でひょろっとした、色白の男…。

 

「やぁ…。初めまして…かな?」

「ッ…!」

「ミライ…!」

 

 カコに制されてぐっと怒りを堪える。私の感情は思ったよりも表に出やすいらしい。

 

「そう怒らないでくれたまえ、ミライ。私とて好きでこんなことをしているのではない。私はただ、話をしに来ただけだ」

「戯言を…」

「戯言などではない、本当だ。そうだな…。まずは名を名乗っておこうか。私の名は、エノラ…。エノラ・トゥルーマン…。CARSCの上級職員だ。カレンダの言っていたボスとは、私のことだ」

「あなたが…」

 

 溢れる憤怒の情をなんとか抑えて目の前の敵を捉える。怒りに震える拳は、少しでも理性を緩めれば、すぐにでもこのエノラという男を襲ってしまいそうだ。

 そんな私のことを知ってか知らずか、男は語る。

 

「私がここに来たのは他でもない。聞いてはいるだろうが、ここ最近、合衆国を中心とした国連軍がビーストと呼ばれるものに次々とやられていってね…。そこで、君たちには見てもらいたいものがあるのだ。そうだな…。まずは、私に付いて来てもらおうか…」

 

 そう言ってエノラは歩き出した。歩く先には国連軍と思われるたくさんの兵士と、いくつかの軍用車両があった。エノラはその内の一つに乗り込むと、私たちに乗るように促した。

 

「乗りたまえ。私たちの研究施設に案内しよう」

 

 研究施設…。誰の許可もなしに、いつの間にそんなものを作ったのか…。想像するだけでもはらわたが煮えくり返るようだ。

 車に乗ろうと身を屈めた時、突如、私とカコは拘束された。

 

「申し訳ないが、今から行くところは機密情報でもあるのでね…。少し目隠しをさせてもらうよ」

「なっ…!?は、放しなさい…!」

 

 屈強な男たちに拘束されて目隠しを施される。騒ぎを聞きつけたサーバルさんたちが施設から飛び出してきたようで周りが騒がしくなる。

 

「ミライさん!?」

「動くな!!!」

「ひっ…!」

「心苦しいが致し方あるまい…。連れていけ」

「ミライさん…。ミライさん!!!」

 

 無理やり車に押し込められるや、私たちの意向を無視して車は発進した。後にはサーバルさんの声が聞こえる。

 ……なんと無力で惨めなのだろうか。私たちには意志の決定権も何もない。強者に尊厳は蹂躙され、あるのは慟哭と無残に嬲られるフレンズさんたちの姿のみだ。……いずれはホッカイエリアも完全に国連軍の手に落ちて、私たちはパークから強制退去させられるのだろう。

 ……ただ憎しみだけが募っていく。こいつらを許すことは、絶対にできない…。

 

 

…………

 

 

 どれくらい走ったのだろうか。気付けば、エノラのいう研究施設についたようだった。

 

「降りたまえ。到着だ」

「………」

 

 ふらふらと車外に歩み出る。閉ざされた視界の中、うまく立つことができない。

 

「申し訳ないが、部屋に入るまで目隠しはさせてもらうよ。おいそれとこの場所を見せる訳にはいかないのでね」

 

 ……よく言う。私たちに黙って勝手に占領して、勝手に施設を作って…。誰の許しを得て、そんな傲慢なことを言っていられるのか…。

 カコは何も語らない。ただ黙って兵士たちの後をついて行っているようだ。私とは大違いだ。

 

「来たまえ」

 

 建物の内部に入ったのか、空気がガラリと変わったのが分かった。聞きなれない言葉が聞こえてくる。どうやら、本当に国連軍が占領している施設に来たように思えた。

 通路を進んでいく。階段を上がっていく。なにやら埃っぽいような、薬品のようなにおいがする。いったいどこへ通されるというのだろうか。

 しばらく連れられている内に、何かの部屋に通された。ひんやりとした空気が肌に触れる。じめっとした臭いが鼻腔を満たしていく。

 不意に目隠しが外された。突如明るくなった視界が強い刺激となって、目がくらむようだった。

 

「あれ…。カコは…」

「申し訳ないが、彼女は君とは別の部屋に隔離させてもらったよ。彼女には彼女から聞きたいことがあるのでね」

「……何をしようというんですか。非人道的な拷問や尋問は国際条例で禁止されているはずですよ…。もしやろうものなら…」

「それは戦争法によって保護される対象がある場合の話だろう。これは戦争でもないし、ましてや、ここは国家に所属する施設でもないのだろう?」

「そんな…。ジャパリパークは日本国に籍を置く総合動物園です…!南極のように、どの国にも属していないものではありません!」

「いつの話をしているのだね?」

「ッ…!」

 

 この男は…。……理解したくない。まさか、パークは国連軍に占領されただけでなく、国連に完全に統治されているとでもいうのか?だとしたら…。

 

「…それで本題だが…。我々はビーストという謎の存在に脅かされているのはご存じだね?ビーストは我々の偵察機や兵士たちを次々と葬っていった。だが、その分奴についての多くのデータが取ることができた。幾つもの尊い命の果てにな…。後は、君たち…ミライくんやカコくんから証言をいただくだけなのだが…」

 

 男はなおも語る。

 

「これを見たまえ」

 

 そう言って男はスクリーンに映像を映し出した。モノクロに映し出された映像は荒れた荒野を映し出している。恐らくは、パークの至る所で飛んでいる無人偵察機の映像なのだろう。

 しばらく映像は続く。この中にネメアーさんが潜んでいるのだろうかと思った次の瞬間だった。

 

「ッ…!」

 

 何もない空間から、極至近距離からネメアーさんが姿を現して、一瞬にしてぶった切ったのだ。何が起きたか理解できなかった。

 

「このビーストの姿は一瞬だけ映っている。我々も何度も映像を検証したのだが…。地面から超高速で跳び上がっているわけでもなく、何もない空間からこのビーストは現れて、無人偵察機を破壊しているようでね…。僅かに見えるビーストの姿を見る限り、君たちのパークにいるフレンズと呼ばれる種とそっくりであることだけは分かった。…君たちは、私たちが呼ぶビースト…フレンズについて知っていることはないかね…?」

「……知りません、何も…」

「そうか…。なら、これはどうかな?」

 

 次の映像が映し出される。無数に聞こえる銃声と、合衆国の兵士の怒号が無数に響いている。恐らく、ネメアーさんと対峙しているのだろう。いつの出来事かは分からないけど…。

 

「この映像は、我々合衆国の兵士のヘルメットカメラが捉えたものだ。ビーストと遭遇して生還した兵士はいないが…彼らは貴重な記録を残してくれた。これはその一部だ」

 

 絶え間なく銃声が鳴っている。やがて、その中に悲鳴が混じり始めた。戦車は砲身から火を吹いている。備え付けられた機関銃からは絶えず銃弾が撃ちだされている。

 

「なっ…!?」

 

 ネメアーさんらしき影が見える。影は戦車の砲身を掴んで砲塔を引き抜くや、それを周りの兵士目がけて振り下ろした。

 とても信じられないような光景だった。引き抜かれた砲塔が、右へ左へと大きく振り回される。薙ぎ払われた兵士は形を残すことなく砕かれていく。この映像の撮影者も戦意を完全に喪失してしまっている。息は荒く、ただ助けを求めるように何かを呟くのみだ。

 ……虐殺が終わる。銃声は止み、聞こえるのは最後に生き残った兵士が助けを求める声のみだ。哀れにも生き残ってしまった合衆国の兵士は、死を待つだけの子羊でしかない。

 

「………」

 

 カメラに映し出された姿…その圧倒的な出で立ちで兵士を見下ろすフレンズ…。ネメアーさんの姿がそこにあった。

 

「パークでの聞き込みによると、ごく最近生まれた個体らしいじゃないか。ここでの文献を色々と見させてもらったが、このビーストに当てはまる個体の情報はどこにもない。……まぁ、ケルベロスやジャック・オー・ランタンとかいうよく分からん個体がいる事には少々驚かせられたが…。いずれにせよ、国連軍が進駐した後に生まれた個体であることには間違いない…だろう?」

「………」

 

 映像が消される。嘲笑するように、エノラは私に距離を詰めながら問う。…私には答えないという権利も、逃げるという権利も初めから無いようにも思えた。

 …私にだって考えがない訳ではない。扉が施錠されている様子はない。私自身拘束もされていない。……うまくいくかは分からないけど…。

 

「あまり良からんことは考えん方が良いぞ?」

「ッ…!」

 

 瞬間、目の前が激しく光った。

 

「がっ…!」

 

 みぞおちに何かが入る。姿勢を崩した私にエノラが掴みかかる。

 

「あまりこういうことはしたくはないのだがね…。だが、これで尋問も楽になるというものだ」

 

 両腕に脚と縛られる。冷たい椅子が背中から私を冷やしていく。どうやら、何か金属製の椅子に私は縛られたようだった。

 嫌な予感が私の中を支配していく。いよいよ私は、尋問という名の拷問に掛けられるのだと瞬時に悟った。

 

「さぁ、答えてもらおうか…。率直に聞く。私たちがビーストと呼んでいる個体の正体は…なんだね?」

「し…知りません…!私たちはこの事態に関与していません…!」

 

 そう答えた時だった。

 

「あ゛…!あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛!゛」

 

 体中に流された電流に視界が白黒する。やっぱりこいつはこうするために私を…!

 

「大人しく白状した方が身のためだぞ?まぁ、そういう趣味というのならば止めはしないが…」

「この…鬼…!」

「何とでも言うと良い。それで何とかなるというのならばな」

 

 背を向けて男は私から距離を取る。そのまま備え付けの机の元まで行くと、注射器や警棒のようなものをいじり始めた。

 

「ここでは、君の身の安全はすべて私の手のひらにあると思った方が良い。傷つけるもしないもすべて私の自由だ…。こうして、君に劇物を注射するのもね…」

 

 注射器に何を入れたのか、見せつけるように私に揺らしてみせると、何の抵抗もなく私に注射し始めた。

 

「いやっ…!」

「なに、死にはせん。だが、幾ばくかの夢見心地を与えてくれるものだぞ?」

「あっ…!」

 

 何やらふわふわとした変な感覚に襲われる。時間が経つほどに、クスリの作用か意識が朦朧とする感覚に支配されていく。

 思考が溶けていく。言いたくないのに、うわ言のように私の口から言葉が溢れてくる。

 

「私たちが……作り出した……怪物……。彼女は……フレンズさんでは……」

「フレンズでは…ないと…?」

「………」

 

 電流が流れる。体の内側から身が焼かれていく。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛!゛!゛!゛」

「答えるんだ、ミライ。君たちがアレの存在に関わっているのは既に分かっているんだ。欲しいのは、ビーストの情報と、その確証だけだ」

「誰が…教えるもんか…!」

「まだ自分が置かれている状況が分かっていないようだな…!」

 

 警棒で顔面を殴られる。突然来た衝撃に視界が歪む。

 

「がはっ…!」

「答えろミライ!!!いたずらに我が国の兵士の命を奪う奴は何者なんだ!!!姿は見えず、フレンズという存在でもなく、辺りをセルリウムで汚染して回る奴の正体は何だ!!?私は人類に敵するセルリウムを研究するためにこの身を費やしてきた…!それを奴は我が国のソルジャーを次々と殺して回りながら、セルリウムをばら撒いていく…!私の部下であるカレンダも奴に殺された…!これ以上私は奴に殺される我が国の兵士を見たくない…!いったいどれだけの若者の命が奴に葬られたと思っている!?毎週のように我が国の兵士が棺に入っては我が合衆国に送られていく…。それを私は何回も何回も見てきた…!……答えるんだミライ!!!奴は…奴はいったい何者なんだ!!!」

「ぁ…ぅ…」

「答える気はない…か…」

 

 項垂れる私にエノラは冷たく答える。それは失望のようにも、呆れたようにも聞こえた。

 

「私は…私たちは、なるべく穏便に事を終わらせたいと思っているのだが…。答えんというのならば仕方あるまい…。白状するまで付き合ってもらうぞ」

 

 体に電流が流れる。焼かれる体を気に掛けるまでもなくエノラは拷問を続ける。…私は正気を保っていられるのだろうか。遠のく意識の中、その疑念だけが残った。

 

 

…………

 

 

「ぁ……ぁぁ……」

 

 震える唇から掠れた声が漏れる。蒼くなった顔はクスリの注射によるものだろうか。体は非常に重く、呼吸すら難しい。……恐らく、私に注射されていたのは、液状大麻なのだろう。過剰なまでのリラクゼーション効果が私の体を急速に蝕んでいっている。

 

「…少々やりすぎたようだな。だが、これもさっさと白状しない君が悪いのだよ、ミライ」

「ぅ……」

 

 男は冷淡に答える。横目でうっすら見た男の顔は、少しだけ呆れたような顔をしていた。

 

「少し時間を置いてやるとするか…。私も少し疲れた」

 

 男が出て行こうと扉に近付いていく。男がドアノブに手をかけようとしたその時だった。

 

 ウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー……。

 

 突如、建物内にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

 

「何だ…!?」

 

 突然の出来事にエノラが腰を低く落とす。私といえば、クスリや電気ショックのせいで頭が回らず、ぼんやりとこの状況に身を置くだけだ。

 外で職員の騒ぐ声がする。バタバタとたくさんの人が走り回っているのが分かる。どうやら、何者かこの建物の中でもめ事を起こしているらしい。

 

『エマージェンシー、エマージェンシー。館内職員全員に通達。当基地にビーストが襲来、館内にビーストが侵入しました。館内職員は直ちに避難してください。繰り返します。館な……」

 

 館内放送が途切れる。回らない頭の中で考える。館内にビーストが侵入したという事は…。

 

「ネメアー…さん…」

「なに…!?」

 

 エノラが私に振り向く。

 

「今なんと言った…!?」

「ネメアーさんが…私を助けに来たんだ…」

「ネメアーだと…!?」

 

 ぽろぽろと涙がこぼれてくる。ようやく苦しみから解放されるというよりも、ネメアーさんが私を助けに来てくれたという事の方が嬉しかった。

 

「ネメアーとは何だ…!答えろ!ミライッ!」

 

 エノラが露骨に焦りを見せている。さっきまでの飄々とした態度とは対照的で、滑稽で面白く感じてしまう。

 奥の通路から悲鳴が聞こえる。ドンドンと壁を殴る音や物を叩きつける音が立て続けに鳴っている。もうすぐそこまで来ているんだ。

 

「ここです…!ネメアーさん…!」

「ぐっ…!」

 

 エノラが私の拘束をほどく。そして、私を乱暴に引き上げると自身の前で拘束した。私を人質にするつもりだ。

 通路の扉が破壊される。そこから、全身に血を浴びた、白い毛皮と大きなたてがみのフレンズさんが現れた。その子はエメラルドの瞳で私たちを捉えると、私たちの前に大きく立ちはだかった。

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