けものフレンズR ~Re:Life Again~ 作:韓非子
炎がオレの周りを包み込んでいる。オレが今立っている船は、どうやら空母というものらしい。戦闘能力を失った空母は、もはやただの漂流物でしかない。豪華な設備だけが整った、ただのイカダだ。
中にいた人間は全員殺した。周りを囲むように浮かんでいる船にも、戦う力は残されていない。オレに敵対的なモノは全員壊してやった。もはやオレに敵う者はいない。なんと愉快な事だろうか。
戦闘機が轟音を立ててこちらに向かってきている。意味もないのに性懲りのない奴らだ。
そいつらはいつものようにロケットをオレに向けててばら撒いてきた。オレは金羊毛を翻して防御すると、そのままやり過ごした。
度重なる攻撃にガタが来たのか、空母は少し傾いている。このまま転覆するのも時間の問題だろう。他の適当な船に乗り移らなければならないだろうが、周りには少し衝撃を与えれば転覆してしまいそうな船しかいない。どうやら、少しやり過ぎたようだ。
『アメリカ合衆国の原子力空母、USS ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュが撃沈されました…』
いつの頃か、そんなニュースを耳にした。その頃だったか、奴らの攻撃が激しくなった。普通の爆弾ではない、激しい閃光と轟音を伴う爆弾がオレを襲ったりもした。幸い、オレは空母の中にいたので助かったが、外に出たままではオレの命もなかったかもしれない。それほどの激しい爆発だった。
再び戦闘機がやってきた。綺麗な編隊を組んでいて…オレを殺るつもりらしい。ここは少しオレも反撃してやるか…。
そう思ったときだった。突如、奴らの編隊が乱れてバラバラに行動し始めた。
背後を見遣ると、見慣れない形の戦闘機が轟音と共に数機やって来た。そいつらはミサイルを撃つと、オレを襲ってきた戦闘機を次々と撃ち落としていった。どうやらオレの味方らしい。
撃破された戦闘機が海に落ちていく。洋上で燃える様子は実に奇怪な感じがする。
「………」
水平線を遠くに見る。なにやら光の粒に赤黒い火の柱が空へと伸びているのが分かる。どうやら、オレ以外にも奴らと戦っているのがいるらしい。
目を覆う程の激しい閃光がオレを襲った。閃光が収まり、オレの目も視力を取り戻してその方向を見てみると、巨大な水の柱のようなものが海上から伸びていた。見上げんばかりの巨大なそれは、奴らが撃ち込んだものだとはっきり分かった。
……そうか…。オレを殺さんと、奴らはアレをオレに撃ち込んだのか…。確かに、アレをまともに喰らっては、オレもただでは済まないだろう。少なくとも無傷では済まないかもしれない。
白い壁が押し寄せてくる。天にも届く白い柱を中心に、すべてを薙ぎながら白い壁がオレを呑み込もうと迫ってきている。
金羊毛で身を包み衝撃に備える。やがて、息もできないような熱風がオレを包むと、体勢を崩してそのまま地から足を離してしまった。
オレの体が宙を舞う。金羊毛で体を覆っているせいで何も見えない。
意地で体から金羊毛を引き剥がす。開けた視界の中、眼下にオレと同じく熱風に吹き飛ばされてる戦闘機の姿が見えた。
体勢を整えて狙いをそれに定める。金羊毛を足場にしてソレに飛び跳ねると、そのままキャノピーへと乗り移った。
遠くに空母を中心とした艦隊が見える。アレに向かって飛び移るとしよう。
戦闘機を踏み台にして、空母にめがけて大きく飛び跳ねる。明らかに飛距離が足りないけど、なんとかなるだろう。
ふと、オレの横を何かが掠めて行った。見ると、いくつものミサイルが空母艦隊に飛翔していっているのが見えた。どうやら、オレ以外の奴らがガッシュウコクと戦っているらしい。
ようやく全貌がつかめてきた。オレらジャパリパーク以外の勢力がガッシュウコクと戦っているのだ。これを利用しない手立てはない。
背後から戦闘機が猛スピードで迫ってきている。しめたと思い、体勢を整えて戦闘機に飛び移ると、爪を機体に刺して体を固定した。
中の奴も何かに捕まれたと察知したのか、機体を回転させてオレを振り落とそうとしている。
機体に何かが命中する音がする。やがて、強い衝撃を感じたとともにオレは吹き飛ばされてしまった。戦闘機が炎をあげて落ちていく。どうやら、迎撃用のミサイルに命中してしまったらしい。
だけど、だいぶ空母艦隊に近付けた。金羊毛で滑空していけば十分にたどり着ける。
空母直上まで飛行して甲板に着地する。甲板上にいた人間どもは、不意に現れたビーストにひどく驚き混乱している。こいつらは地上の奴らとは違って無意味な抵抗はしてこない。ひたすら虐殺するのみだ。
「──────ッ!!」
逃げ惑う人間どもを次々と切り伏せていく。甲板を血で濡らしていく。こうして無抵抗な人間どもを次々と殺害していくのだ。なんだってオレはその為に作られたのだから。
十人、二十人、百人…。次々と葬っていく。船の内部にいる人間も見かけ次第殺害していく。あまりにも一方的だ。
そうして、一通り狩りつくした後に甲板に戻ってみると、辺りは火の海になっていた。周りの船がミサイルを撃ち落とすために光の弾を撒いている。中には燃えながら墜落する戦闘機の姿も見える。敵か味方のかは分からない。
「………」
少し体が冷える。体を濡らす返り血が風に当たって少し寒く感じる。早く片付けてミライの元に戻らねば…。
「よくやったのです、ネメア」
「……誰だ?」
不意に女の声が聞こえた。まだ生き残ってるのがいたか。
だが、少し様子が違う。明らかに場違いな落ち着いた声だ。
「まったく…。パークの平和を取り戻せとは言われたかもしれないですけど、ここまでやれとは誰も言ってないのです」
「お前は…」
「わたしは…ワシミミズクなのです…」
炎に照らされたワシミミズクが答える。ひどく見下した目だ。見ていると無性にイライラしてくる。
「お前は少しやり過ぎたのです、ネメア。周りを見てみると良いのです。これはすべて…お前がすべてを壊したのです」
「壊したのはオレじゃない。壊したのは人間共だ。略奪し、ありとあらゆるものを破壊して周った。オレはそんな侵略者共を始末しただけだ」
「その結果がどうなのですか。パークは核の炎で焼かれ、進駐する人間共の侵攻は強くなり、更なる災禍を招いたのです。それにお前は、更なる災厄を招く獣になろうとしているのです。……お前は少しやり過ぎた…。自らの快楽の為にその手を血に染め、破壊者と化したのです」
「……何が言いたい…」
殺意を湛えた目でワシミミズクを睨む。野生解放もしてしまえば少しは怯むかとも思ったが、奴にはどういう訳か効果がないようだった。それどころか、奴の見下した目は相変わらずオレを下に見ている。
そして、そいつは隠し持っていたであろうナイフを手にした。それをオレの足元に向かって放り投げると、奴はこう告げた。
「自害するのです、ネメア。もはや我々に、お前は不要なのです」
「……なに?」
あろうことか、こいつはオレに自害を求めた。当然、そんな要求など呑めるはずもなく、オレは自らの感情をぶちまけた。
「オレはお前らに命じられて、人間どもを殺してきた…。オレはその為に作られたのだ…!それをお前はやり過ぎたなどと宣い、自害を命じるとは何事か!!?貴様に何の権限があってそのような命令を下すのだッ!!?」
「聞こえなかったのですか。誰もお前の考えなど聞いていないのです。さっさと首を切って自害するのですよ」
「貴様ッ…!」
ワシミミズクを叩き切ろうと大きく振りかぶった時、オレは見覚えのあるものを見た。青銅鏡のような楯がワシミミズクの体を隠す。オレの一撃はそれに塞がれ、振り払った楯がオレを退かせた。
……アレには見覚えがある。楯にはめ込まれたメドゥーサの頭に神々しくも禍々しい青銅の楯…。忌々しいオリンポスの神々が一柱、アテナを象徴するアイギスだ。それを何故アイツが…。
「貴様…。何故、貴様がそれを持っている…」
「わたしが持っていては変なのですか?わたしは持つべくして持っている、それだけなのです」
「……妙だ…。貴様、まさか…」
「……さすがはポセイドンの孫なのです、ネメア。察しが良いのです。人の体を得たことで知恵が回るようになったのですね。……そうです。わたしは聖鳥、梟の姿を借り、この世に顕現したのです。……では、褒美にこれをくれてやるのです」
そう言って、ワシミミズクはオレに妙な液体をかけてきた。瞬間、想像を絶する苦痛が全身を襲った。……これには覚えがある。我が仇敵、ヘラクレスを死に追いやった、ヒュドラーの毒だ…!
「ッがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛!゛!゛!゛」
今までに感じたことのない苦しみに悶える。全身の筋肉が千切れるようなひどい痛みだ。それを見ても奴は眉一つ動かさず、苦痛にのたうち回るオレを見下ろしている。
「き゛さ゛ま゛ァ゛・・・!゛ア゛テ゛ナ゛ァ゛・・・!゛!゛!゛」
「……見苦しいのです。静かにするのです」
アイギスの楯が光る。瞬間、オレの体に異変が起きた。
「ッ…!!!」
……メドゥーサ、ゴルゴーンの石化の魔眼だ。アイギスにはめ込まれたメドゥーサの首がオレの体を石に変えたのだ。
……幸いにも石に変えられたのは体の一部だ。
痛みに悶える体に鞭を打って必死に立ち上がる。そして、渾身の力を振り絞ってワシミミズク…アテナに向けて、オレの爪を振り上げた。
呆れたような、冷めたような冷たい目が向けられる。最後まで抗い続けたケダモノを哀れむような、見下した目だ。
ドン。
アイギスがオレの爪を撥ね退ける。そして、再びメドゥーサの瞳がオレを捉えた。
手や足、胴体が石に変わっていく。もはや、オレは何の抵抗もできなくなっていた。
跪く膝にひびが入る。そして、ワシミミズクはナイフを手に取ると、草でも刈るかのようにオレの首を切った。
「ッ゛ッ゛・・・!゛?゛」
「これで終わりなのです…」
ワシミミズクがナイフを捨て去り、去っていく。そして、アイギスを天高くつき上げると、眩い閃光が辺りを照らした。
…船が石となり沈んでいく。飛行機が石となり沈んでいく…。光に照らされたあらゆるものが石となり、沈んでいく。これが彼女なりの制裁の加え方なのだろうか。
血が喉を塞ぎうまく呼吸ができない。切られた喉から息が漏れて変な音を出している。身体を石に変えられたせいで、寝返りを打つこともできない。
……ひどく惨めな気分だ。オレも死ぬのかと思うと、ひどく遣る瀬無い気持ちになる。人を殺すために作られたオレは、こうして惨めに捨てられるのだ。
ゆっくりと死が近づいてきている。船も傾いてきているし、水底に沈むのも時間の問題だろう。
「あ゛・・・は゛、ぁ゛・・・」
うまく呼吸ができない。うつ伏せになった体が、切られた喉を開かせていく。
涙が溢れてくるようだ。オレのやり方は間違っていたのだろうか。だからこうして捨てられることになったのか。そう思うと、非常に悲しくなってきた。
あれほど感じていた溢れんばかりの破壊衝動と殺害衝動が嘘のように静まっている。体から漏れるセルリウムも今は感じない。これが…これが普通のフレンズなのか…?
ああ…。……せめて…せめてもう一度…もう一度ミライに…カコに会いたい…。オレのやりかたが間違っていたというのならば…どうすればオレは捨てられずに済んだのか…。ただそれを、オレは…。
オレは…。カコ…ミライ…。もう一度会って…謝ることができれば…。
…………
ヨルムンガンドさんに連れられて、次の手掛かりがある場所へとあたしたちは来た。ひどくボロボロな廃墟のような建物だ。今まで見てきたような軍事施設とは違う、パークの建物のようだ。
建物の中に入っていく。中は埃とぺんぺん草でいっぱいだ。それに動物の白骨死体のようなものも所々にある。建物自体が大きな墓所のようだ。
ふと、壁に刻まれた文字が目に入った。近付いて埃を払い、その文字を読んでみた。
20XX年 ○月×日 △曜日 ジャパリパーク研究員、カコ ここに眠る。
20XX年 ○月×日 △曜日 サーバルさんの親友、カラカル ここに眠る。
20XX年 ○月×日 △曜日 歌を愛した歌姫、トキ ここに眠る。
……どうやら、やはりここは一つの墓所のようだった。周りの白骨死体の他にも、この建物の下にはフレンズさんやスタッフさんが静かに眠っているのだ。あたしたちは、その上に立っているということだ。
あまり長くいて良いような場所ではない。用がないようであれば、早く立ち去った方が良いだろう。そう思ったときだった。
「ほれ、これもお主たちの求めているものなのだろう?」
「それは…」
ホロテープと黄色い髪の毛と思われる髪の束を差し出された。
……かばんさんが腰に提げている薄緑色の髪の毛の束を見る。あれは恐らくミライさんのものだ。と、すれば…。これは誰のものなのだろう…?
……嫌な予感が頭の中を駆け巡っていく。横目でちらりとその子の方をのぞくように見る。
サーバルちゃん…。考えられるとすれば、恐らくは彼女だろう。認めたくないけど、色の具合からしても、恐らくはサーバルちゃんのものだ。けど、仮にそうだとして、どうしてサーバルちゃんの髪の束が…?
サーバルちゃんが髪の束を手にしてにおいを嗅ぐ。少し顔を顰めてから、それを自身のものだと認識したようで、信じられないといった様子でそれに目を落とした。
「これ、知ってるにおいがする…。……私のにおいだよ、これ…。でも、どうして…?こんなところ、来たことないのに…。こんな…ホッカイエリアなんて…」
「……考えたって仕方がない…。ラッキーさん、お願い」
「ワカッタヨ」
いつものようにやって来た奇妙な姿のラッキーさんにホロテープを挿入する。ガガガとノイズを発した後、音声を再生し始めた。
『○月×日、△曜日。記録者、ミライ…』
ひどく沈んだ声だ。いつになく暗く重い声色に思わずたじろいでしまう。
『ネメアーさんが去ってから…どれくらいの時が経ったのでしょうか…。アレから、更に月日が経ちました…。もはや、国連は国連としての機能を完全に失い、合衆国を中心とした連合国軍という様相を呈しています…。海でも、空でも、地上でも、中国軍と合衆国の軍隊が来る日も来る日も戦っています…。カコさんは…心労が祟って倒れてしまいました…。酷く衰弱していて、一刻も争えない状態です…。私が思っていた以上に苦労していたみたいで、それに気付けなかった私がとても恨めしいです…。…ナナさんたちが乗った船団の情報も未だ掴めていません…。……最悪の覚悟はしておくべきなのかしら…。……私の周りからも人が去っていくだなんて…。これが…戦争というものなのでしょうか…』
語られる口からは悪い情報ばかりが漏れてきている。本当に良い情報が入ってきていないのか、本能的に悪い情報ばかりとっているかは分からない。ただ、戦争という特殊な状況が、このミライさんという人格を形成しているとだけは、はっきりとわかる。
ミライさんの口上はなおも続く。
『カラカルさんも体調を崩してしまったみたいで、寝たきりの状態が続いています…。BC兵器の被害でなければいいんですけど…。念のため、私たちの安全のためにも今は隔離しています…。サーバルさんは必死になって面会したいとおっしゃっていますけど…。私だって面会させたいのは山々です…!だけど、もしサーバルさんが新たなウィルスキャリアになったら、私は…!』
その他にも、ミライさんの周りに起きた出来事をぽつぽつとを話している。聞いているだけでもこちらも暗い気持ちになってくるようだ。
合衆国が空爆を始めたこと。核ミサイルは毎日のように撃ち込まれていること。凶弾に倒れたフレンズもいるらしいこと。
10秒ほどの沈黙が流れる。ミライさんの静かな息遣いだけが再生されている。小さくも整ったその息遣いは、どこか泣いているようにも思えた。
『このホロテープの記録を最後とします。記録者ミライ。記録を終わります』
そう言って、ホロテープの再生が終わった。後には、何とも言えない重々しい空気が残っていた。
「人類を襲った未曽有の大災害、そして、人類が起こした最後の戦争…。その後、地球上からはほとんどの人類は死に絶えた。それらの災禍に生き残った者は、やがて飢えと渇きに苛まれ、再び互いに殺し合った。秩序も何もない、荒廃と暴力だけの世界だ。殺戮の歴史に始まった人類は、殺戮の歴史に消えていったのだ。禍々しい閃光の連続と、無限に続く死屍累々の光景は、まさしく地獄と呼ぶに相応しいものだった。わしの住まうミズガルズではそういったことは起きなかったが、ここではそうでもなかった…。ルシファーの愛した人類というものは、このようなものであったのか、些か疑問が残るな」
「……俺の愛した人類は、互いに愛しみ、懸命に生き、地べたを這ってでもその命を未来へと繋げるものだった…。俺はその生き様に惹かれたのだ…。このような…血で血を洗う光景を見たかった訳ではない…」
「皮肉なものだが、神々の判断が正しかったという事だな。認めたくはないが」
「………」
ヨルムンガンドさんの言葉にサタンが俯く。良くは見えないけど、唇を噛んで悔しがっているという事は何となく分かった。
「しかし…。どういう訳かな。今見ているこの世界は夢でも見ているかのようだ。わしはあの時、確かに死んだ。アースガルズの神々が、わしを葬らんと確かに鉄槌を下した。どういう訳か、こうしてミズガルズの民の体を得、暮らしている。……もしや、わしの及ばん原初の力が働いているのやもしれんな…。ユグドラシルの外からやって来たか、果ては、巨人ユミルの前に存在した、カオスの中にいる存在か…。いやはや、興味の尽きんものよ」
そう言ってほっほっほっと笑っている。相変わらずサタンは俯いたまま黙っている。かばんさんもホロテープの内容に希望を失ったのか、どこか上の空だ。ヨルムンガンドさんの話す内容が頭に入っていないような感じがする。
「だが、希望を捨てるでないぞ、人間らよ。人類は滅びておらん」
「…えっ……」
虚空を見つめるかばんさんの目に光が戻る。
「かつていた地上の九割の人間は死に絶えたが、絶滅はしておらん。このパークのどこかにも確かに人類は存在している。それはわしが保証しよう。だが、それを探すのはお主たちの役目だ。わしはその手助けをする、ただのお節介者に過ぎん。わしはできるかぎりの力添えはするが、そやつらを探しきれるかはお主たち次第だ。……今してやれるわしの手伝いはこれくらいかの。さて、お主たちの次に向かう先は、アークティカ地方じゃ。そこに行けば、何か分かるやもしれん」
「アークティカ地方…。北極…って事だね」
かばんさんが答える。
「うむ。氷で形成された絶海の孤島だ。海底には無数の船が沈んでおるし、氷上にはいくつかの建物が残っておる。アークティカ地方と連絡するターミナルもあるし、何か手掛かりが掴めるかもしれぬぞ」
「…分かった。ありがとう、ヨルムンガンドさん」
「うむ。わしも久々のミズガルズの民との会話であった。楽しかったぞ、人間よ」
そう言って、あたしたちはヨルムンガンドさんと別れた。次に向かう先はアークティカ地方…。北極地方という名を付けられた、ホッカイエリア最北端の地だ。そこに行けば何か手掛かりがつかめるのだろうか。
ミライさんのホロテープはこのロッジで最後の記録のようだったし、どうなるのだろうか。
あたしたちは、このパークで起きたかつての戦争の物語の最深部に差し掛かってきている。ここで引き返すわけにはいかない。絶対にミライさんの辿った行き先を突き止めてみせる。
あたしたちに敗北は絶対にないんだ。