けものフレンズR ~Re:Life Again~   作:こんぺし

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Ruin-22「祝福」

「ミライ…ミライなのか…?」

「あなたは…ネメアーさん…?」

「お、オレだ…ネメアーだ…!そんな…本当にミライなのか…!?」

「う、うそ…。あなたは確か…死んだんじゃ…」

「オレは…戻ってきたんだ…。お前に…会いたくて…」

 

 状況がうまく呑み込めない。あれは本当にミライさんなのか?そして、ミライさんに出会ったネメアはどうしているか。それまでのネメアからは考えられないような弱々しい姿と声でミライさんに近付いていく。

 

「ミライ…」

「っ……」

 

 震える手でミライさんへと手を差し伸ばしていく。ミライと呼ばれる女の人は、怯えるような震えた手でネメアに手を伸ばしていく。

 

「会いたかった…」

 

 しかしその時、突如ネメアの様子が一変した。何やら苦しむように身を抱えると、そのまま蹲ってしまった。

 

「ネメアーさん…!?」

「おのれ…!このような時に…!やめろ…ヤメロォ…!貴様の体はオレのものだ…!誰が…貴様なんぞにィ…!」

 

 苦しそうに体を震わせている。息は荒く、額に脂汗を滲ませて何かを呟いている。

 やがて、ネメアは信じられない行動に出た。自らの衣服に手をかけると、そのまま切り裂いたのだ。

 

「い゛ま゛た゛ッ゛!゛!゛!゛」

「えっ!?」

 

 ネメアが叫ぶ。

 

「あ、あれはまさか…。ライオンだ…!おい、アム!!!今のうちにネメアをぶった切れッ!!!」

「ッ…!!うああああああああああああああああああああああッ!!!」

「ガッ…!!!」

 

 ネメアの体から、これまでに見たことのない血の飛沫が舞う。明らかにネメアの体から流れ出たものだ。あたしたちは、初めてネメアの体に傷を入れたのだ。

 

「た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」

 

 拳が、爪が、ネメアの体に入っていく。ネメアは十分な態勢を取る間もなくその攻撃を一身に浴びていっている。

 両者の体が血に染まっていく。アムちゃんの体はネメアの返り血に、ネメアは自らの血に体を染めていく。これまでの戦いからは想像できない光景だ。ただ蹂躙されるだけだったアムちゃんが、一方的にネメアを攻めているのだ。

 

「ウ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!゛!゛!゛」

 

 ネメアが絶叫する。全身を血に濡らした修羅が如き形相は、さながら鬼神を思い起こすようだ。

 

「オレの毛皮を剥がしたからと良い気になるんじゃないぞ…!オレは絶対に負けん…。せっかくミライに会ったというのに…!こんなところで死んでたまるか…!」

 

 ネメアはそう言って大きく飛び退くと、あたしたちに向かって火炎弾のようなものを乱射した。

 

「エトナの地に眠る我が父よ…。今こそもう一度目覚めよ…。今、我が目の前に組する不倶戴天の大敵を滅するのだ…!目覚めよ、我が父君、テューポーンッッ!!!」

 

 ネメアの詠唱のようなものが唱えると、突如、ドンと空気が張りつめた。ただならぬ空気の変わりように緊張が走る。中でも、ゴマちゃんの怯えようは普通ではなかった。

 

「ゴマちゃん…?」

「ぁ……テュ……テューポーンだ……」

「テューポーン…?」

 

 みんなが一点を見つめている。その視線は、遥か上空の彼方に釘付けにされている。みんなに釣られて空を見上げた時、あたしの思考は停止した。

 あれは何だろう…?ヒト…?岩…?隕石…?いや、あれは…。

 

「きょ、じん…?あ…あぁぁぁぁぁ…」

 

 天を覆いつくす影があたしたちを覆う。まるで黒く炭化したような巨人の頭が、そこにあったのだ。

 空を呑み込まんとするその巨大な頭…。あれがオリンポスの神々を脅かし、様々な神獣を生み出したタイタンの怪物……テューポーンなのか…。

 

「我が父よ!!!あれなティタン神族に仇名す劣等種を叩き潰してしまえェ!!!」

「ッ…!!そ、そんなことをしたらミライさんまで犠牲になっちゃうよ!!!」

「黙れェッ!!!」

 

 テューポーンの巨大な頭がこちらを捉える。顔を動かしただけだというのにすごい大風だ。少しでも気を緩めれば足が地から離れそうになる。

 隕石のような巨大な拳が振り上げられる。そして、あたしたちを押し潰さんと振り下ろされた。

 

 ズンッ!

 

「ッ…!?」

 

 テューポーンによって振り下ろされた拳があたしたちを押し潰す。あたしたちは吹き飛ばされまいと踏ん張るだけで何にもできない。もうダメだと思った。

 だけどその時、奇跡が起こった。

 

「なっ…!?貴様ッ…!・・・き゛さ゛ま゛世゛界゛蛇゛ァ゛ッ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」

 

 岩を砕くような大きな音と共に、巨大な白い柱が空を切った。あの大きな白い体は…ヨルムンガンドさんだ…!

 その大きな頭でテューポーンの拳を押しのけ、大きな体でテューポーンの体を縛っていく。怪物の大きな体が、世界蛇の身体に縛られて海の底へと沈んでいく。ネメアの召喚した巨人が、突如現れた世界蛇の手によって封印されたのだ。

 目の前にネメアが下りてくる。最強の切り札を封じられたであろうその姿は、なんだか惨めなようにも思えた。血まみれのその姿は、もはや抵抗することの無意味さをあたしたちに示しているかのようだ。

 

「ッ……」

 

 ギリギリという歯ぎしりがあたしたちにも聞こえてくるようだ。オリンポスの神々を脅威に陥れた怪物が、いとも簡単に封じられたのだから当然と言えば当然なのだろうけど。

 エメラルドの瞳があたしたちを捉える。その瞳は憎しみに満ちている。

 

「もう…ダメです、ネメアさん…。もう…やめてください…!」

「ダメだ…。オレは…こいつらを…殺らねばならん…!」

 

 ネメアが戦闘の構えをとる。まだあたしたちとやり合うつもりらしい。

 もはや、ネメアの絶対の鉄壁は破られた。サタンの力を授かったアムちゃんにとっては、勝利を約束されたも当然だろう。

 それにネメアはガンドを受けたことによって弱っている。イエイヌちゃんやゴマちゃんでも勝てるだろう。勝負は決したも同然だ。

 ネメアが先攻と躍り出る。しかし、その攻撃もアムちゃんのカウンターに破られるだけだった。

 

「ギッ…!」

 

 鮮血が舞う。確実にネメアは追い詰められていっている。しかし、その様子を喜ばない者がいた。

 ミライさんだ。目には涙を浮かべて、その痛みと苦しみに胸を裂こうとしている。

 しかし、その声も届くことは叶わない。アムちゃんは攻撃の手を緩めずに、ネメアに一撃、また一撃と傷を刻んでいっている。

 

「ガハァッ…!ハァ…ハァ…」

 

 ネメアの髪を掴んで執拗を殴打する。二発、三発と加えていき、身が吹き飛ぶ程の重い一撃が加えられた。

 顔面を殴打されたネメアの体が吹き飛ばされる。もはや体を支えるだけでも精一杯のようだ。その姿は見ていて胸が苦しくなるようだけど、放っておいてはあたしたちの身にも危険が及ぶ。

 

「やめてください!!!」

 

 突如、ミライさんがネメアの前に飛び出してきた。

 

「ミライ……」

「もう…やめてください…!ネメアさんは悪い子じゃないんです…。全部…私が悪いんです…!パークがこうなったのも…ネメアさんが苦しむのも…全部…私が…!」

 

 ミライさんが涙を流して訴えている。全部私が悪いのだと、そう訴えている。

 あたしにはどうしていいか分からなかった。事実、あたしはこれで良いのかと迷っている。

 これは正しいのだろうか。あたしたちのホッカイエリアの"現代"で起きた経験から言えば、ネメアが討たれるのは当然だ。しかし、あたしたちは夢やホロテープを通じてホッカイエリアの過去を知った。……ネメアがミライさんたちによって作られた命だという事も知った。あたしたちは、どうして良いのか分からなかった。

 

「どけ、ミライ…」

「ネメアさん…」

「……決着はオレがつける。ミライは邪魔しないでくれ…」

「そんな……」

 

 ミライさんを押しのけてネメアが立ち上がる。その眼には覚悟のようなものが見て取れる。死を覚悟した者の眼だ。

 ネメアはこの戦いで玉砕しようとしている。もはや、それ以外の道がないと言っているかのようだ。自ら他の道を断って、死にに行こうとしているのだ。

 

「ッ…!!」

 

 立ち上がったネメアがアムちゃんへと飛びかかった。対するアムちゃんは静かに構えを取ると、特攻するネメアを迎え撃った。

 ネメアの体に傷が増えていく。しかし、ネメアは攻撃の手を緩めずに狂ったようにアムちゃんへと特攻していく。

 血と爪が乱れ舞う。ネメアにはもちろんだが、アムちゃんもじわじわと追い詰められていってるのか、アムちゃんの腕や体にも傷が入ってきている。

 

「ミライはオレのものだ…。貴様らなんかのものではないッッ!!!」

 

 ネメアが喝を飛ばす。そして、自らの両手に火炎を纏わせると、アムちゃんに向けて投げ飛ばした。

 

「ぐっ…!」

 

 ネメアが懐へと入っていく。炎に彩られたベールからネメアが躍り出てくる。

 

「ッ…!このっ…!」

 

 先手を取ったのはネメアだ。反撃の隙を与えないネメアの猛攻にアムちゃんは攻めあぐねている。

 しかし、ただネメアに攻められるだけのアムちゃんではない。ネメアの無敵の毛皮はもう既に破られている。そして、ネメアは自身の無敵の毛皮を活かした圧倒的な攻めを得意としていた。

 ……これを耐え凌げばいつかは隙が出てくる。ネメアはただ滅茶苦茶に爪を振るってるだけだ。ならば、この攻撃のどこかに必ず隙が出てくるはず。それを狙えば倒せるはずだ。

 

「だァッ!!!」

「ギィッ…!?」

 

 腕を振り払い、逆袈裟に黒い爪を叩き入れた。赤い鮮血がきれいに放物線のような弧を描いている。

 一瞬ネメアは怯んだようだが、すぐに体勢を立て直した。再びアムちゃんを倒すべく立向かっていった。

 命を刈り取るべく、互いの体に傷を入れていく。一進一退の攻防戦だ。しかし、自身の強みを失ったネメアに勝利の機会は既に無かった。

 

「ガァッ…!!」

 

 ネメアに重い一撃が入った。満身創痍となったネメアは力なく地面に伏すのみだ。

 足元に伏したネメアを息を荒げながら見下ろしている。とどめを刺そうと思えば、いつでも刺せる状態だ。

 倒れたネメアは自分の体を支えるだけの力は残されていないようで、弱々しく自分の体を起こすのが精いっぱいのようだ。

 

「ネ、ネメアーさん…」

 

 倒れたネメアにミライさんが駆け寄る。血で汚れる事も厭わずに抱きかかえるさまから、信頼のおいている相手だという事がよく分かる。

 抱きかかえられたネメアが弱々しく手をミライさんへと伸ばした。ミライさんは目に涙を溜めてネメアに何かを語りかけようとしている。

 

「ぁ……。あぁぁぁ……。いてえ…いてえよ…。こんな痛み…味わったのは初めてだ…」

「もう…いいんです…。あなたの気持ちは…十分に分かりました…。分かったから…もう…やめて…!」

「………」

 

 声を押し殺して泣いている。自身の顔を伝う涙にネメアは何を思うかは分からない。けど、ネメアはそんなミライさんを見て何かを決意したようだった。

 

「ぐっ…」

 

 ミライさんの膝から離れたネメアが立ち上がる。目には光を灯し、アムちゃんとやり合おうとしている。ロクに立つこともできないようで、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。そんな状態でどうしてまだ戦おうとしている。

 

「待って…!」

 

 ミライさんの言葉も待たずにネメアは走りだした。アムちゃんは静かにそれを見守って、迫りくるネメアを迎え撃とうとしている。

 ネメアの爪が空を切る。身体を貫いたアムちゃんの右腕からは、赤い血が滴っている。勝負は決したようだった。

 ネメアの腹部からアムちゃんの右腕が引き抜かれる。眼からは光が消え、膝を折って地面に倒れこんだ。

 

「ネメアー…さん」

 

 ミライさんがネメアの元へと弱々しく歩み寄る。やがてしゃがんでネメアの手を取ると、必死に声をかけた。

 

「ダメです、ネメアーさん…!死んだら…!私はまだ…!」

「ぁぁぁ…。オレは…これで…ようやく…」

「何を言ってるんですか!!どうしてこんなになるまで戦うんですか…!?」

「お前たちがそういう風に造ったんだろう…?ハッ…。でも、気付いたのさ…。オレは、本能の赴くままにヒトを殺してきた…。そのために作られたのだと信じてただひたすらにな…。けど、違ったんだ…。オレは守ることを忘れ、殺すことだけを求めるようなっていた…。だから…捨てられたんだ…」

「そんな…。捨ててなんていませんっ!!!私たちはずっと…あなたの帰りを待ってたんですよ…?」

 

 ネメアの目から涙がこぼれる。今までに見せたことのなかった、悔悟の念からくる涙だ。

 

「オレは…オレは、命令を放棄したどころかミライたちを裏切ったんだ…。こんなにもオレを想ってくれてるヒトがいるのに…オレは…それに応えられなかった…」

 

 ネメアの手がミライさんの頬へと触れる。

 

「本当に…すまなかった…。オレは…ただそれだけが言いたくて…こうして蘇ったんだ…。ミライ……許してくれ……」

「そんな…!許してくれって…!許さないはずなんてありませんっ…!あなたはよくやってくれました…。……ネメアさん…?ネメアさん…!?」

 

 ネメアの四肢がだらんと垂れ下がる。ネメアが…死んだのだ。

 

「あっ…。あああああああぁぁぁぁぁっ…!」

 

 ミライさんが慟哭の声をあげる。そして、胸に秘めた思いを自身の感情と共に吐き出した。

 

「どうして…!私だって言いたい事がいっぱいあるのに…!言うだけ言って勝手に死んじゃうだなんて…ひどいですよ!!!お別れの言葉も労いの言葉も言えてないし、謝ることだって…」

 

 亡骸に触れる手に力が入る。大粒の涙がネメアの亡骸を濡らしていく。 

 

「こんなの…あんまりです…」

 

 ミライさんが身を伏して泣いている。あたしたちは命懸けでネメアと戦った。それこそ本当に死ぬ思いだった。そして、見事にネメアを討ち倒したのだ。そして、その結果得たものは、かばんさんがずっと追い求めていた者の涙だったのだ。

 かばんさんは呆然と立ち尽くしている。目の前にある光景に思考が追いついていないようだ。

 やがて、かばんさんは意を決したようにミライさんの元へと歩き出した。直接ミライさんと話をするようだ。

 

「ミライさん」

「………」

「ぼ、ぼくは…かばんって言います…。ぼくも…ネメアと同じで…ずっと、あなたのことを…探してました…」

「私を…?……どこかで…お会いしましたっけ…」

「いえ…。ぼくは、その…。……この帽子…あなたの物のはずです」

 

 そう言ってかばんさんは帽子を脱ぐと、ミライさんに渡した。やや訝しみながらもそれを受け取ると、ミライさんはまじまじと観察し始めた。

 やがてミライさんは驚いたような様子を見せると、かばんさんへ声をかけた。

 

「これ、私の帽子…。どうしてこれを…あなたが…?」

「……ぼくは気付いたとき、この帽子を被ってキョウシュウエリアのサバンナ地方で一人立っていました。自分が何の動物かも知らないで、不安でいっぱいだった…。やがてぼくは、図書館で自分が人のフレンズということを知った。……そして、ぼくはそれまでの旅で、ミライさんの髪の毛から生まれたフレンズだっていうことが分かったんです。……ぼくは、ずっとそのヒトを探して、ここまでやって来たんです…」

「………」

 

 とても信じられないといったような顔をしている。無理もない話だ。自分は、貴方の髪の毛から生まれたフレンズなんだと、その人は言っているのだ。受け入れる方が難しいというものだ。

 ミライさんは俯いてしばらく思案した後にこう言った。

 

「とりあえず、私たちの隠れ家に行きましょう。ここにいても冷えるだけですし…。話はそこで聞きます」

「いいの?ミライさん…」

「外の者じゃないと分かっただけでもいいです。この子たちの言葉に嘘はないでしょうし…」

「うーん…ミライさんがそう言うなら…」

「それと、ネメアーさんの亡骸を持ってきてください。私たちで埋葬しましょう」

「……うん。わかった」

 

 ミライさんの後について行く。険しい岩山の道ではあるけど、獣道があるおかげでそれほどきつくはなかった。

 しばらく山の斜面に沿って歩いていくと、一軒の家にたどり着いた。山小屋に到着した。そばには何やら卒塔婆のようなものが立っている。

 

「………」

 

 私の親友、カラカルの墓…。カラカルさんのお墓…?

 

「どいて」

「あっ、ごめん…」

 

 ミライさんのサーバルさんがつっけんどんに言い放ってきた。慌ててその場をどくと、サーバルさんはネメアの亡骸を丁寧に置いた。

 

「まさか、ネメアのお墓を掘ることになるなんて…」

 

 どこからか持ってきたであろうスコップを手にすると、サーバルさんは墓を掘り始めた。その顔はなんだか気難しそうだ。

 

「これ…カラカルさんのお墓…?」

「そうだよ。見ればわかるでしょ」

「そ、そうだけど…」

「……カラカル、戦争で死んだんだ。むかし、世界中を巻き込んだ大きな戦争があって、ジャパリパークもそれに巻き込まれたんだよ。ネメアもその時に死んだはずなんだけど…。ミライさんに会うために生き返ったって…」

 

 目に涙を浮かべて地面を掘っている。昔を思い出してしまったんだろう。どんな子かはあたしには分からないけど、こうして涙できるくらいなんだから、かけがえのない親友だったはずだ。

 ……そういえば、あたしの両親も昔死んじゃったんだっけ。戦争が起きる前の大災害…。あたしは…確か…。

 

「あたしのパパとママも…むかし、死んだんだ」

「……そういえば、あなたって若いっていうか幼いよね。外の世界にもヒトってまだいるの?」

「わかんない。あたしは、パークの中のカプセルで目が覚めたんだ。戦争が起きる前の、世界を襲った大災害…。あたしのパパとママは、あたしだけでも生き延びるようにって、カプセルを作ってあたしを閉じ込めた。それからずっと眠ってた感じがする…。それからは…わかんない。生きてるかも死んでるかも…。ただ、あたしがカプセルから目覚めた時には、すでにパークはこうなってた。たぶん…もう死んじゃってるんだと思う」

「ぇ…。そ、そうだったんだ…。ご、ごめんね?今までちょっときついこと言ってたよね…」

「いいよいいよ!気を使わなくても…。あの大災害や大戦争からずっとミライさんを守ってきたんだよね?心もやさぐれて来るよ…」

「う…。そういわれると傷つく」

「ああ、いや、そういうつもりで言ったんじゃ…」

 

 なんだか二人でわちゃわちゃしてしまった。サーバルさんとの距離も縮まったような感じもするし、あたしもサーバルさんを手伝おう。

 

「あたしも手伝うよ。一緒に掘ろう」

「うん…。ありがとう」

 

 そうしてもう一本スコップをもらうと、あたしたちはネメアのお墓を掘り始めた。あたしたちの命を狙ってたフレンズのお墓を掘るっていうのも変な話だけど、サーバルさんやミライさんにとっては、パークを守ろうとした英雄なのだ。無下に扱う訳にもいかない。

 ある程度掘り終えたところで、サーバルさんがネメアをお墓の中に入れた。上から土を被せて埋葬していく。

 

「ネメアー…」

「………」

 

 埋葬を終えたサーバルさんが墓場を後にする。なんだかあたしも居たたまれないような気持ちになってきた。

 

「行こう…。イエイヌちゃんどこかな…?」

 

 墓場を後にする。あたしたちはネメアを倒し、ミライさんと出会った。ライオンさんは助けれなかったけど…。

 ミライさんはどうするんだろう?かばんさんと一緒にキョウシュウエリアに帰るのかな?それを含めて今話し合っているんだろう。

 

「っ……。眩しい……」

 

 雲間から太陽が覗いている。なんだか久々に日の光を浴びるかのようだ。暖かくて気持ちが良い。

 あたしたちがホッカイエリアを去る日は近い。それまでにイエイヌちゃんたちと少しこの島を巡っておこう。


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