けものフレンズR ~Re:Life Again~   作:韓非子

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第7話「和解」

 あたしたちは博士ちゃんたちが住んでいる図書館に向かっていた。フウチョウさんたちがじゃぱりまんを無心しに行くっていうのも気になるし、ちょっとかばんさんに会いに行きたいっていうのもあった。

 

「…本当に行くの?」

「やっぱり…嫌?」

「嫌」

 

 むすっとした顔ではっきりと否定する。でもこのままだとアムちゃんも生きづらいだろうし博士たちも何だかかわいそうな気がする。

 

「でもでも、このままだとダメだと思うんだ!お互い許してこそ初めて前進することもあると思うんだ!」

「…被害を受けたのはあたしだ。許す自由も許さない自由もあたしにある。ヒトに左右される謂れはない」

「うぐっ…」

 

 被害を受けた人のことも考えないといけないのはわかっている。やっぱり加害者のことも認めたり許せっていうのはやっぱり傲慢なのかな…でもあたしは博士ちゃんたちも考え合ってのことだと思ってしまう。そこはやっぱり知ってほしいと思う気持ちもあった。

 

「だからあたしはあたしに殺されたフレンズには許されなくて当然って思ってるし、石を投げられても仕方がないって思ってる」

「うーん…」

 

 難しい問題だと改めて思う。アムちゃんが自身を狂気の渦に落とした張本人だって言ってたから何かあるとは思うんだけど…

 

「アムちゃん…話し合いだけでもしてみよう?博士ちゃんたちにも考えがあってのことだと思うんだ。もちろん許さなくてもいい。でもあたしはアムちゃんと博士ちゃんたちのギスギスした関係を終わらせたいって本気に思ってるんだ」

 

 まっすぐとアムちゃんの目を見てあたしの意見を伝える。ゴマちゃんとイエイヌちゃんがその様子をじっと見ている。

 ギロリとアムちゃんの双眸があたしの目を捉える。その威圧に屈しそうになるけどあたしも自分の意思を貫き通すために負けじと見つめ返す。あたしは真剣なんだ。

 

「…あたしを殺す理由を聞きに行こうっていうの?」

「言い方が悪いよ!あたしはただ…」

「…アム、こう考えようぜ。博士たちの罪を裁くんだ。どうしてあんなことをしたのかお前自身が裁いてやるんだ!そしたらお前もスッキリするだろう?」

「…うん。それだったら…」

 

 よ、良かった…機転を利かせてくれたゴマちゃんに感謝だ。

 

「ゴマちゃん、ありがとう…」

「別にいいぜ…。…実は私もアムと博士たちの間柄をどうにかしたいって思ってたんだ。私からは中々言い出せなくてな…アムのやつも嫌がるだろうしどうしようかと思ってたんだ…」

「そっか…ゴマちゃんもそう思ってたんだね…」

 

 ゴマちゃんもあたしと同じことを考えてたようだ。やっぱりアムちゃんと博士ちゃんたちの間にギスギスしたわだかまりがあるのは嫌だと思うらしい。せっかくのフレンズという素敵な呼び名もこれでは欺瞞というものだ。

 あたしはその問題を解決するために図書館へ向かった。

 

 

…………

 

 

 …なんだか賑やかなことになっている。図書館というのはもっと静かで落ち着くものだと思ってたけど今の状態を見るにちょっとしたお祭り騒ぎだ。

 あそこに見えるのはアライさんだろうか。フェネックちゃんもいる。それになんだかタイリクオオカミさんもいるようだ。それにカラカルちゃんも?あのいっぱいいる小さくて青っぽいぬいぐるみみたいのはなんだろう?それに見たことないフレンズさんたちもいっぱいいる。

 …結構緊張した状態で来たんだけど初っ端から出ばなをくじかれたような気分だ。

 

「な、何が起きているんですか…?」

「さ、さぁ…」

「…帰ろう?」

「だ、ダメだよ!」

 

 どさくさに紛れて帰ろうとするアムちゃんを引き留める。なんとか引きずって中に入るとかばんさんとサーバルちゃんと博士ちゃんたちがいた。

 

「博士ちゃん!お話があるんだけど!」

「おや、ともえたちでは…。っ!?」

「は、博士!?」

 

 ばささささっ!

 

「うわまただ!」

「……」

 

 またぶわってなった。相当警戒しているようだ。未だ誤解は解けていないらしい。

 

「やっぱりこいつら…ッ!!」

「どうしたのですか!」

 

 上から助手ちゃんがバタバタと降りてきた。そしてアムちゃんを見るなり臨戦態勢をとった。

 

「え!?なに!?なんなの!?」

「博士たち!?どうしたの!?」

「ふしゅーっ!ふしゅーっ!ふしゅーっ!」

 

 ギリッと歯を噛みしめる音がアムちゃんから聞こえた。見る見るうちに図書館内の空気が変わっていく。

 

「ア、アムちゃん落ち着いて!」

「うっ…ぐっ…」

 

 全身を震わせ溢れる怒りを抑えるアムちゃん。なんとかギリギリのところで踏みとどまってくれている。このアムちゃんのためにも博士ちゃんたちを宥めさせなければ…

 

「…ぷしゅう」

「博士!」

 

 …博士ちゃんが気絶してしまった。すかさず助手ちゃんが下りてきて博士を介抱する。

 

「い、いったいどういうつもりですか!ビーストなんかを連れてきて!私たちを脅迫しに来たのですか!?」

「ギィ…!」

「落ち着けアム!」

 

 アムちゃんもそろそろ怒りが爆発しそうな勢いだ。

 

「助手ちゃん!あたしたちは話し合いに来たの!決して脅しに来たとか復讐しに来たとかではないの!あたしたちはアムちゃんへの誤解を解きたいんだよ!」

 

 あたしは必死に博士ちゃんたちを説得する。ここはアムちゃんと博士ちゃんたちの双方のためにも勝たなくてはならない。長い戦いが始まる。

 

 

…………

 

 

 ヒトの知恵を活用する時だ。かばんさんと二人で議会の席を設ける準備を始める。あくまでもやるのは博士ちゃんたちの誤解を解くことであるが、場の雰囲気とか格式なんかも時には重要であるとあたしは思っている。だからわざと厳粛な雰囲気を作ることによって、余計な茶々や煽りなどを極力排除するのを目的としてみる。特にちょっと口が悪い博士ちゃんたちのことだ。雰囲気作りは大事だろう。

 

「私にも手伝わせてくれ!」

 

 ゴマちゃんが手伝いを申し出てくれた。

 

「私もアムと博士たちのためにも役に立ちたい!まず何をすればいいんだ!?」

「うーん…ちょっと待っててね」

 

 そう言うとかばんさんは外へ出てしまった。しばらくするとちょっと長めの木の枝を携えて戻ってきた。

 

「ロードランナーさんはこれを持って構えてくれるかな。ともえちゃんは…僕たちと作った剣、持っててくれてたんだ。ちょっとそれ借りるね」

 

 ゴマちゃんが言われた通りに木の枝を構える。かばんさんはあたしから剣を取るとビュッとゴマちゃんに向かって突き出した。

 

「イッ!?」

「…よし。これがちょうどいい距離だね。そこから動かないでね。ともえちゃん、僕とロードランナーさんの前にテープを貼ってもらえるかな」

 

 言われた通りにゴマちゃんとかばんさんの前にテープを貼っていく。どういうつもりなのだろうか。

 

「これはソードラインって言ってお互い剣と剣が交わらない距離なんだ。議会は暴力と暴力によって行われるのではなく、知性と話し合いによって行われるべきという意味だね。お互いこの線を踏み超えないように話し合いを進めるという方向性でいこう」

「な、なるほど…つか私すごいビビったんだぜ!?」

「あはは、ごめんごめん」

 

 剣をしまって椅子を並べていく。ちょっとした模様替えのようだ。椅子を並べていくたびに図書館の雰囲気が変わっていく。

 

「けど僕もうれしいな。剣は本来相手を斬るために作られたものだけど、今日みたいに話し合いをするための物差しとして使われるってすごいことなんだよ。ともえちゃんはその剣でセルリアンを斬ったりってしてないかい?」

「ううん。まだ一回も使ってない」

「じゃあ、今回がその剣の初めてのお仕事だね。武力の象徴じゃなくて知性の象徴としてこの図書館に飾るっていうのはどうだろう?」

「そうだねー…いいかも!」

 

 自衛用の剣が儀仗として生まれ変わった。これからは図書館の知性の象徴としてこの図書館でその役目を果たしていくだろう。

 

「さあ、博士たちを呼んでこようか。ロードランナーさん、お願いしてもいいかな」

「合点!」

 

 ゴマちゃんが博士ちゃんたちを呼びに行った。あたしもアムちゃんを呼びに行こう。

 ちょっと大仰な博士ちゃんたち説得計画が幕を開ける。

 

 

…………

 

 

「な、なんですかこれは…」

 

 ちょっと引きつった表情を見せる博士ちゃんと助手ちゃんの二人。

 

「さ、博士たちも席について。博士たちが席に着いたら議会が始めるよ」

「ぎ、議会なんて聞いてないのです!私たちはあくまでビーストへの誤解を解くと…!」

「そんなことを言わずに。アムールトラさんも席についてるでしょ?ほら、みんなが見てるよ」

 

 ご丁寧に傍聴席まで設けてある。サーバルちゃんやイエイヌちゃんは最前列で傍聴することになっている。

 アムちゃんも緊張しているのか議席で固まってしまっている。計画通りである。

 博士ちゃんたちが席に着くと、かばんさんが議会の開催を宣言した。

 

「今ここに、議題"博士と助手の持つ元ビーストのアムールトラ氏に対する誤解を解く"を始めさせていただきます。僭越ながら議長はわたくし、かばんが務めさせていただきます」

 

 議会が始まった。かばんさんの語り口調もありすごく雰囲気がある。これは予想以上の展開になりそうだ。

 

「まずはアムールトラさん、あなたの主張を聞きましょう」

「は、はぃ…あたし、は、生まれたばかりのあたしを、殺すだとか処分するだとか言って、あたしの存在を否定した博士たちが許せないと思ってました…」

「わかりました…次は博士たちの主張を聞きましょう。博士、あなたの主張を聞かせてください」

 

 アムちゃんはたどたどしく自分の思いを主張した。あたしは必死になってかばんさんやアムちゃんたちの言葉を記していく。すごい大変な作業だ。

 

「我々はパークの巡回中に見慣れないフレンズがうなだれてるのを発見したのです」

「遠目からでもわかる異様な雰囲気からただのフレンズじゃないと判断し、図書館に連行して様々な検査をしたのです」

「結果的にサンドスター・ロウを吸収した新種のフレンズと断定してビーストと名付けたのです。それが皆の知るビーストなのです」

 

 傍聴席からざわざわと声が上がる。

 

「静かに!アムールトラさんは博士たちの意見に言うことはありますか?」

「…何故あたしを鎖で縛った?」

「我々が感じた異様な雰囲気というのはその尋常じゃない殺気だったのです。意識がないはずなのに殺気だけは肌が痛くなるほど感じたので、安全のために鎖で縛ったのです」

 

 前々からあたしも何の鎖なんだろうとは思っていたけど博士ちゃんたちが付けたものだったんだ…

 

「仕方のないことだったのです。今までそういう事例は過去になかったのです」

「前例がなかったからこそ慎重に調査を進める必要があったのです。今回のことを顧みるに行きすぎた対応だったと我々も思っているのです」

 

 目をそらしながら若干気まずそうな表情をしている。わずかながらも申し訳ないと思っているのだろうか。

 

「アムールトラさんは博士たちに何か言うことはありますか?」

「…あたしを殺すと判断した理由を聞かせてほしい」

「…それが最良の手段と思ったのです…」

「我々はビーストという存在を今まで知らなかったのです。言葉も理解できないと踏んでいたのでそこへは考え至らなかったのです」

「で、言葉を理解したあたしに驚いたと?」

「まったくの予想外だったのです」

「その上はっきりと我々に対して敵意を向けてきたのです。我々も怖かったのです。ビーストのような未知の存在をどのように扱っていいのかわからない。そのような恐怖の感情が確かにあったのです」

 

 アムちゃんが目をつむって考えるような素振りをしている。博士ちゃんたちはうつむいてひどく落ち込んでいるようだ。話し合いすらできなかった三人が今こうして話し合いをしている。博士ちゃんたちも話し合いができる相手と知って後悔しているのだろう。今まで自分が何をしてきたか反省してほしいとあたしも少し思った。

 すっとアムちゃんが立ち上がった。ビクッと博士ちゃんたちの体が跳ねる。

 

「ちょ、ちょっとアムールトラさん!」

 

 ソードラインを踏み越えて博士ちゃんたちに迫っていく。

 

「な、なんですか!?このラインは超えてはいけないという約束のはずなのです!」

「私たちをどうする気ですか!?」

「アムールトラさん!今すぐ席に戻って!そのラインを超えるのは禁則事項なんだよ!」

「そんなのどうでもいい」

「っ!!」

 

 会場がざわつく。あたしも急な出来事でどうしていいかわからなかった。

 やがてアムちゃんは怯えて抱き合う博士ちゃんたちの前まで来ると両腕を前につきだした。

 

「これ、外してほしい」

「…え?」

「いったい何を…」

「あたしをビーストと思わないならこれを外してほしい」

 

 何が起きているか分からなかった。依然としてアムちゃんは敵を見ているかのような目をしているけど今までと違う態度を見せている。

 

「ちょ、ちょっと待つのです…」

 

 席を外してごそごそと棚を漁っている。どこに鍵をしまったか忘れたのかあちこち探し回っている。

 

「早くして。腕が疲れる」

「ちょ、ちょっと待つのです!今探しているのです!助手も一緒に探すのです!」

「わ、わかりました博士」

 

 二人で鍵を探し回る。床にいろんな物が散らかっていく。

 

「ない…ない…!」

「あ、あったのです!」

 

 助手ちゃんがアムちゃんの元へ駆け寄っていく。

 

「い、今外してやるのです」

 

 ガチャリと両腕と両足の枷が外れていく。アムちゃんの四肢に繋がれていた枷がすべて外れると博士ちゃんたちに柔らかい笑顔を見せた。

 

「…ありがとう」

「え?」

「お前たちはあたしをフレンズとして認めてくれたのでしょう?だから枷を外してくれた…違う?」

「え…あ…」

「あたしもひどいことをしたと思う。あなたたちも他のフレンズと同じで怖かったんだと思う。この島の長として色々考えて頑張ってきたんだと思う。今回の話し合いでそれがわかった。あたしは今までそれに気付かないで一方的に自分の感情をぶつけてきた。許してほしいとは言わない。けど、申し訳なかったと思う…ごめんなさい…」

「わ、我々のことを許してくれるのですか…?」

「うん…だからこれからはあたしのことを見ても怖がらないでほしい。あたしもあなたたちとお友達になりたい…」

「…は、はい…。歓迎するのです!」

 

 会場から拍手が巻き起こる。あたしは目の前で起きている光景が信じられなかった。アムちゃんが博士ちゃんたちを許しただけでなく、自分から謝ってお友達になりたいと言ったんだ。あまりもの出来事にあたしの理解が追い付かなかった。

 

「ふふふ…じゃあ、今回の議決は…」

「ビーストでもお友達になれる…」

「だね!」

 

 こうして無事に議会は閉幕した。

 

 

…………

 

 

「本当に怖かったのですよ?」

「…ごめん。あたしもやりすぎたと思う」

「悪いと思ってるならいいのです」

 

 ちょっと前なら信じられないような光景が広がっている。アムちゃんが博士ちゃんを肩車して助手ちゃんが背中に抱きついているのだ。

 

「お前は本当に力持ちなのです!」

「これくらいしか取り柄がないから…」

「そんなことはないのです。お前はとても背が高いのです」

「うぅ…」

「それに意外とお前は気が弱いのですね」

「よく言われる…」

「怯えた子熊が精いっぱい威嚇しているようなものなのです」

 

 なんだか楽しくじゃれ合っているようだ。これで博士ちゃんたちとアムちゃんの関係は一気によくなった。良かった良かった。あたしたちの大きなわだかまりが取り除かれたのだ。

 

「へへっ。良かったな!ともえ!」

「うん!ゴマちゃんもありがとう!」

「そんな私大したことしてないぜ?」

「そんなことないよ!ゴマちゃんが背中を押してくれたから達成できたことなんだよ!」

「そ、そうかな…?」

「二人とも、お疲れ様!」

 

 かばんさんだ。今回の話し合いの立役者だ。

 

「かばんさん!今回は本当にありがとう!」

「はははっ、こんなのでも役に立てれたなら幸いだよ」

「ううん!かばんさんの助けがなかったらこんなことはできなかった。かばんさんが引っ張ってくれなかったらできたことだよ!」

「ふふっ、じゃあそんな僕にアクションを起こしてくれたともえちゃんも立派な立役者だね。おめでとう、ともえちゃん」

「かばんさん…」

 

 感激して泣きそうになる。必死に感情を抑えながら精いっぱいのありがとうを伝える。

 

「ありがとう!かばんさん!」

「私からもありがとうだぜ!」

「ふふっ、どういたしまして」

 

 アムちゃんと博士ちゃんたちが仲直りできた。あたしは何よりもその事実がとても嬉しかった。今や二人はいがみ合う関係ではなく、抱き合ったり肩車するようなとても良い関係にある。これからはお互い威嚇し合うようなことはなくなるだろう。あたしたちの悩みの種はなくなった。ゴマちゃんも良い笑顔を見せている。

 さて、次はどこへ行こうかな。とても気持ちよく冒険ができそうだ。どんなフレンズさんに会えるだろうか。とても楽しみだ。

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