ちなみに作者は最近水分不足で倒れました。皆さん、熱中症にはお気をつけて。
(その日の夜、熱が38.9分あって寝込みました)
あのあと、魔理沙はちゃんと麦茶を持ってきて、それを飲みほしたあと、魔理沙は友達の家に行くと言いだした。
「友達ん家行くって言っても、届けものがあるだけだけどな」
と言って右手に下げている、白黒の手提げ袋の中身を広げる様に見せた。中には、じゃがいもやニンジンなどの小ぶりな野菜がたくさん入っていた。
「これは別に私が育てたものじゃなくて、よく行く人里の爺さん家で育ててたものなんだ」
その爺さんが魔理沙の親戚の人なのか、もしくは知り合いなだけの爺さんなのかは知らないが、その爺さんが作った野菜達はすごく美味しそうだった。これで肉じゃがとかを作ったら絶品そうだ。
しかし、俺は魔理沙の言葉に違和感、そう、ほんのちょっとの違和感を抱いた。
魔理沙はそのまま俺を聞き手に、上機嫌に会話を続ける。
「その爺さんは農家なんだけど、よくこうやって作った野菜をくれるんだ。ああいうのを農家の鏡って言うんだろうな」
「農家って結構大変って聞くしな。虫に食われたり、病気にかかったり、結構弊害が多いから若い世代はやらないらしいし」
俺が少し前に8チャンでやっていた情報番組の特集である「急激に減る農家問題!!若者は」の話を出すと、魔理沙は''あれ?''という感じで首を傾げた。
「そんなことないぜ。外来人はともかく若い人らもやってる人はやってるぞ。誰から聞いたんだ?そのネタ。でまかせだぜ」
「いやそんなことない。確かに農家人口は減少しているはず。というかなんだ?そのがいらいじん?ていうの?」
「外来人をしらないのか?...ん?待てよ。外来人を知らなくて、その変な服装で...」
変なとはなんだ、といつもの服装(学ラン)を俺は馬鹿にされながら、魔理沙は顎に親指と人差し指をつまみ当て、思考を巡回させる。
きっかり10秒、すると魔理沙は「ああなるほど」といい俺に問いかける。
「なあ、幻想郷って知ってるか?」
それを俺は当然のように、至極普通に答えた。
「いや知らないな。ゲームの名前か?」
「そうかそうか。やっと合点がついたぜ」
それはまさに、戯言のような話だった。
幻想郷。それは、魔法や妖怪、ましては神が実在する世界。
そして、そんな摩訶不思議な世界に、俺は今存在している。
目の前で魔法を見せられたし、今俺がいる場所、つまるところ魔法の森という危険区域に入ることもわかった。
そして、今そんなところから脱出しようとしている。
空を飛んで。
「んぎぁぁぁあぁぁあ!!!」
「いやっふぅーー!!」
現在俺は空飛ぶ箒を2ケツして、魔法の森上空を高速移動している。
「イヤァーー!!高い速い怖い怖いィィィィィ!!」
「幻想郷線、高速特急列車、魔理沙号をご利用頂き、誠に有難うございます」
「有り難くもなんともねぇよ!!」
「ちょっと、外に出て」と促され、「この箒に跨って」と命令され、「ちゃんと掴まれよ」と言われたあの時の俺に注意喚起をしたくなるほど、今の俺は激しく後悔している。
一方魔理沙は、悪気もなくスピードを下げて、俺に対してニコニコ顔を見せつける。
「楽しかったな!!」
「あぁ、お陰様で喉が痛いよ...」
「友達の家にそろそろ着くぜ」
「そういえば、それが目的だったな...」
こっちの方のインパクトが強すぎて、そっちが頭ん中からすっぽ抜けてた。比喩ではなく。
だが確かに広々とした森の景色から、石畳の階段が一本の筋を木々が囲んでいるような景色に変わり、やがて石畳と鳥居のある神社の真上に着いた。
俺と魔理沙を乗せた箒が徐々に降下し足がつく。
「ご到着。ここが博麗神社だぜ」
普通の神社だが、場所が場所だけにすこし神秘的にも感じる。ここは相当高い場所らしく、鳥居の向こう側からはかなり向こうまで見える。
「ようこそ、幻想郷へ。っていうところよねここは」
博麗神社からの景色に黄昏ていると、社側から女の人の声が聞こえた。その声が聞こえると、魔理沙が振り返り、まるで親友に接するかのように話しかける。
「よう、霊夢。これ人里の爺さんから貰った野菜だ、やるよ」
「あら魔理沙、ありがとう。いただきますって伝えておいて」
魔理沙は例の野菜入りの袋を差し出して、霊夢という紅白の巫女装束少女は受け取る。
そして魔理沙は「あ、そうだ」と続けて喋り出す。
「そんでこいつが私が保護した外来人な「あぁ、それは知ってるわ。紫から聞いた」んだ.....また紫関係か」
そういうと、魔理沙は俺のことをご愁傷様と言わんばかりの目線で見てくる。かくいう霊夢は受け取った野菜のことで頭いっぱいなのか、中の野菜ばかりを見つめている。
「そんで、あなたのことなんだけど。あなたどうしたいの?」
「どうしたいのって...」
いきなり話を振られ、戸惑いつつも思考巡回させる。
というか、一考するまでもない。
「俺は帰りたいです」
「帰ってどうするの?」
「帰ってどうするのって...普通に生活するんですよ。あっちで」
ふーん、と彼女は俺のことを正面で、観察するように見ている。俺はそれに対抗するように、同じように霊夢を見張る。
すると、彼女は驚くべき言葉を発する。
「嘘よ。あっちに帰ったって生活する気なんてさらさらないでしょう」
何を根拠に、と感情的になりつつ、それを自制心で抑えることを本能的に意識しつつ言いかけると、
「紫から聞いたわ。自殺しようと、いや、自殺したんですって?」
あぁ、なんだ知ってたのか。
それを聞いて、俺は、怒ったような表情から、何もない無表情に変わる。
内心、すこし、安らぎのようなものを感じた。
それと同時に俺の口が勝手に開き始める。
「知ってたんですか?」
少しだけ、威圧的に、かつ淡白に質問する。
「えぇ。私ではないけれど。教えたのは、あなたをここに連れ込んだ正体。八雲紫っていう妖怪よ」
白々しいな、でも嫌な気にはならない。
「なんで連れてきたんですか?」
また同じように、質問をする。
「知らないわよ。本人に聞きなさい」
また同じように、白々しく返される。
あぁ、多分この人はいい人なんだ。
死人(僕)を笑うような人ではない。きっと、手を差し伸べてくれる人なんだろう。それでも、それだからこそ、俺は
眩しくて苦しいんだ。
「なら、僕はどうすればいいですか?」
言ってしまった。
こんなことを聞いても、真面目に答えてくれるわけ無いのに。
早くいつも通りの上っ面に戻そう。
しかし、霊夢はさも当然かのように、俺(凡人)を救う一言を放った。
「わからないなら探せばいいじゃない。ここは幻想郷よ、これからどうすればいいかなんて、生きがいなんてすぐ見つかるわよ、ここなら。そんなことより、ご飯を食べましょ?」
そうか、そうだった。
そんな一言で解決するとは思わなかった。
「は...はは...そうだよな。ここはもうあの世界じゃない」
ここはあんな真っ黒い世界じゃないんだ。
生きようか死のかかなんて、そう、ご飯を食べてからでも考えよう。
それでも彼の目には、濁った悪夢が残っていました。
「そんであなた。あっちの世界に戻れないから」
「は!?」
それを告げられたのは、あの霊夢の説得(説教?)の後に、霊夢の家(博麗神社の社)の居間でちゃぶ台を囲んで食べた、お昼ご飯の直後だった。
魔理沙が食器類を片付けに今から出て、俺と霊夢が休みをとっている時で、食事の直後だったからか少し油断していて、思いがけない一言につい声が大きくなる。
「そんな...話が違うぞ!!」
「私がいついいっていったのよ」
「良さそうな雰囲気だっただろ!!」
「けど、いいとは一回も行ってないでしょ?」
俺の反抗も虚しく、霊夢に冷静にいなされる。
確かにいいとは一言も言ってはないが、ないが、ないけれど。
「卑怯だ!!」
「名誉毀損ね」
そもそも、と呆れ顔で霊夢は俺に対して問い正す。
「紫にあなたを返すなって釘を刺されてるの。返して欲しいなら、本人に言いなさい」
「そんな...」
「あと、紫に言ったところで相手にされないわよ。諦めなさい」
「そんな...」とまた一つ呟いて、少し古い天井を見上げる。
零した言葉には落胆と、ほんの少しの希望が混ざっていた。
『凡人も簡単な映画のセリフで救われる』