というか、全体的にこの小説は文字数少なめなので、少しの合間に読んでいただけると幸いです。
「いらっしゃいませー」
やはり、この時間帯が一番混む。
全体的に着物などの和服系統の人間が、この少し狭く感じるお店で席を満席にしている。
時間は正午ぐらい。丁度お昼時だ。
この時間、俺はその中でこのお店の制服で、うどんを席まで運ぶ作業をしている。要はうどん屋の仕事をしている。
基本的に作る役ではなく、オーダーを取り、伝えて、できたものを届ける役だ。料理はできないわけではないが、好んでは作らない。故にこの役割だ。
「ざるうどん1つ!!」
「はいよ!!」
この店の店主兼料理長の中太りのおっさんが、俺の取ったオーダーに対し勢いの良い返事をする。
ここのうどんはそこそこ美味いで有名だからか、この時間帯は毎回混むらしい。そんな店を店主のおっさんとその奥さんとその娘の三人で支えてきたのだから、まさに三位一体なお店なのだ。
こんな感じに客観的に言ってはいるが、俺も今はそのお店の従業員の一人なのだ。
半強制的にこの幻想郷に移住することになったわけだが、必然的にある問題が発生する。
それは、衣住食だ。
この世界に来て、まったくもって一文無しな俺は住むところもなく、しかもこの世界でのルールもわからない。もし、住むところも、お金もあったとしても、いわゆる妖怪という輩に食い殺されるのがオチだろう。
そこで、俺はある案を見出した。
それは俺が幻想入りして1日目の夜のこと。
「すまない、霊夢。俺に幻想郷のルールを教えてくれ」
「ええ、いいわよ。というか、それも博麗の巫女の仕事なんだけどね」
純粋に聞くことだった。
まさにシンプルイズベストな方法だ。
そんなこんなで霊夢から幻想郷のルールや暗黙の了解、簡単な情勢を教えてもらった。弾幕ごっこのルールや人里のこと、他宗教のことなど色々な話を聞かせてもらったわけだが、一つ気になることがあった。
「弾幕ごっこを守らない奴がいないわけがないだろう、その時はどうしてるんだ?」
「その時は勿論殺しあうわよ」
やはり霊夢は当然のごとくさらりと言いのけた。
霊夢と俺は同じぐらいの年齢だが、16歳の女子がこんな態度で物騒な発言が出来るわけがない。流石、幻想郷の管理人。
霊夢は続けて語る。
「正直、こんな甘いルールを黙って守れ、なんて言い聞かせるつもりはないわ。ただ、守らない代わりに私達を敵に回すだけだもの。それができないなら、黙って守れっていうこと」
「なるほど、ということは霊夢自身の戦闘力はかなり高くなくちゃいけないわけだ。そこのところどうなんだ?」
「まぁ、負けたことはないわね」
負けたことがない、というのを堂々と言えるのは凄いことだ。しかし、この状態の彼女を見てもあまり、強者の風格というか、オーラというか、そういうのは感じられない。
だから、この会話の前に話していた、能力のことについて切り出した。
「能力のことなんだが、霊夢はどういう能力を持ってるんだ?」
「え?私?」
聞かれることが意外だったようで、どう説明しようか少し唸りながら考えている。しかし、そのシンキングタイムもすぐに終わった。
「で、どうなんだ?」
「いや、私の能力は意外と地味なのよねー」
「え、そうなのか?博麗の巫女なんだから、もっと派手だと思っていたが」
「弱くもないし、かといって強くもないだけど。『主に空に飛ぶ能力』なんだけど、....うん、地味よね」
「いや、地味っていうか、なんていうのかな、そう、敵にいる雑魚キャラが持ってそうな能力だな」
「地味にバカにしたわね」
まぁそうなんだけど、と霊夢は憂鬱そうに俯いた。しかし、そんな能力なのに博麗の巫女が勤まるとは到底思えない。
このとき俺の中では、霊夢は能力に頼らず他の面でカバーできる実力者、と勝手に解釈した。後になって知ることになるだろう、今代の博麗の巫女は努力を知らない典型的な天才タイプということを。そして、能力名の詐欺というのを。
まあ、そんなこんなで霊夢のほかに魔理沙や他の人物(や妖怪)に協力してもらい、この幻想郷のルールや場所、過去を教えてもらった。
その中に、俺が人里に来てよくしてもらっている半妖の方がいる。
それは夕方ぐらいの時間、前述の一番混む時間帯を超え、人の出入りが落ち着いた頃。
「やぁ、寄人。仕事は頑張ったか?」
「こんばんわ、慧音先生。御夕飯はここで済ませるつもりなんですか?」
青ぽい銀髪を腰まで伸ばし、青を基調とした上下一体となった服を着ている、少し背の高い女性が店の暖簾をくぐって来た。
上白沢慧音、寺子屋の教師の一人で、人里の守護者。数少ない人間側の妖怪。
そんな人に俺は人里に来た時に出会い、この仕事と今住んでる家を紹介してもらった。
「いや、寄人を夕飯に呼ぶために来たんだが、空いてるか?」
「あーいや、もう少し仕事してから帰るんで、今日はちょっと」
100%善意で誘ってきている慧音先生。しかし、ここ最近誘われすぎているので流石に悪いかと思い断ろうとする。
いや、別に嫌なわけではないのだ。ただ、そう何日もタダ飯にお預かろうとするのは悪いんじゃないか、と思ってるだけだ。
そんな考えを基に、断り切ろうとすると、遮るように奥から店主の声がした。
「寄人、今日はあがれー。今日はお前、人一倍頑張ったんだからー」
「...今日は何にもないです」
「そうか、じゃあ外で待っている」
慧音先生は笑顔を見せて店を出る。
うん、まぁ、はい。
要は店主も気を使ってくれたのだから、善意を無駄にするなという天のお示しなのかもしれない。
俺はいそいそと店の奥に入り、帰りの準備をするのだった。
次話は頑張って早めに投稿したいです。(願望)