序章という名の果て、終局という名の前夜   作:Tutu-sh

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エピローグ - ニック・カッターの追憶

「教授、血が……」

「ああ大丈夫。気にするな。もう止まっている。」

ニックの顔についた血を目にして傷を心配する兵士に、彼は片手を上げて静止をかける。涙はもう止まっていた。否、枯れていたという表現の方が正しいのかもしれない。もはや涙さえも流れることのできない、悲痛な事故だった。

 

彼らは既にオリバー・リークの陰謀が渦巻いた基地を後にして、亀裂調査センターに帰還する車へ乗り込もうとしていた。ドアを閉めると、安全を確認した運転要員の特殊部隊がエンジンをかけ、2速3速とギアを変えて加速していった。

収容エリアに残された死体や血液の処理は亀裂調査センターが作業員を動員して片を付けるのだという。そして生物収容施設自体は亀裂調査センターの管理下に置かれる。センターは亀裂から侵入した生物を原則過去へ戻す方針であるが、運悪く亀裂が閉じてしまったこともある。そんなときに生物を一時的に収容して飼育し、再び亀裂が開くまで待たせておく施設が必要だった。既にマンモスがセンターにはいるが、今後も増えていくと管理のしようがない。そういう点でリークの生物収容施設はセンターに思いもよらない贈り物をもたらしてくれた。

政府所有の車の中で大臣への報告や今後の運営について兵士たちの業務連絡や憶測が飛び交うが、当のニック・カッターの意識の中にそれらの音は届いていなかった。ただ鼓膜を振るわせるだけのノイズの中で、ニックは沈黙を貫いていた。

 

彼は窓越しに見た物を改めて目に焼き付けていた。本人にその気はなかったが、あの光景は見た者の脳を無理矢理に侵食し、侵入してくるほど強烈なものだった。皆を救うために部屋の中央へ歩むスティーブン。彼を取り巻く捕食者。彼らがスティーブンの命を奪った瞬間。

 

──そして、最後の生存者。

 

あの叫びには何の意味があったのか。勝利の余韻か。我々への威嚇か。無数の候補が脳内に上がったが、異種族の思考プロセスなど理解しきれるはずがない……と考えることを放棄した。すると別の思考が浮上した。

私が亀裂を抜けて白亜紀へ足を踏み入れた時、あの荒涼とした広大な岩石砂漠で、スティーブンは言っていた。

 

『じゃあ何かを変えられたとしよう。今度は俺たち皆消えてしまわない保証がどこにある。無数の変化を生んでも、クローディアは戻らないかもしれない。』

 

 

私が歴史を変えずとも、スティーブン。お前は消えてしまったじゃないか。クローディアに続き、お前までも。

 

 

 

──クローディアが消えたときも、あの未来生物がいた。今回もそうだ。

あの生物は私と何か因縁があるのかもしれない。

世界が変わっても、歴史が変わっても。

全てが変わっても繋がる因縁が、あるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

お前たちは一体、何者なんだ?

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