新・世界樹じゃない迷宮 作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴
君は冒険者である
君はまどろみの中にいる。体を動かそうとするが感覚はなく、無意味に終わってしまうだろう。起きようとするが意識が覚醒する兆しはない。ふと、君に語りかけてくる声が聞こえる。
「君は目を覚ましてもいいし、覚まさなくてもいい。覚ませば新たな冒険が、覚まさなければ日常が君を待つだろう。言うまでもないが、新たな冒険には新たな仲間、新たな武具、新たなアイテム、新たな出会い、新たな敵、新たな街、新たなライバル、新たな戦い、そして新たな
もう一度言うが、君は目を覚ましてもいいし、覚まさなくてもいい。
そうかい、やっぱり君にこの質問は野暮だったか。では、目醒めの刻だ。世界樹の加護が君を見守り続けることだろう」
目が覚める。君は見知らぬ場所に仰向けに倒れている。体を起こし周りを見渡すと石でできた建造物が、廃墟という形を作っている。記憶に残っている武器もなければ、防具もない、あるのはいつもつけていた冒険用の衣服のみである。素手で戦えないこともない君だが今はやけに気だるさを感じるだろう。まるで自分の中身がごっそりと無くなってしまったかのような感覚、原因不明のだるさを気にしないようにしつつ、あの場所にいるときのように思考をする。考えつつも注意を怠らず、思考を冷徹にする。とにかく拠点となる場所が必要だろう、そう結論付けた君はその場から移動を始める。約2、3分ほど歩くと代わり映えのない廃墟群の中に一つだけ整った教会を見つける。整ったと言っても他のものよりもいくらかマシなだけで廃墟であることに変わりはない。鈍い感覚のまま君は教会のドアに手をかける。開け放たれたドア、キィと開く音が教会内に響くが何者かの気配は感じられない。人がいないなら、ちょうどいいか、そう思うと君は近くにある参列者のための長椅子に体を横たわらせると、泥に沈むかのように、鉛の重りで瞼が引っ張られるように目を閉じ、意識を深い底へと、沈ませていった。
ふと君は目をさます。なぜなら物音で無意識に体が起きてしまったのだ。臨戦態勢をとりつつ、音がなった入り口を確認する。そこには、
「えっ、えっと…ど、どちら様でしょうか?」
混じり気のない白髪、人を警戒させることのない童顔、そして、血のように赤い瞳を持つ、頼りなさそうな少年が日が落ちる夕暮れの光を背に、君を見ているだろう。
君は油断することなく白髪の少年を観察するだろう。
確認できる得物はナイフ一本、太ももあたりに何かのホルスター、あとは防具だろう。こちらは素手だが戦えないこともない、などと考えていると白髪の少年は言葉を続ける。
「な、何かご用でしょうか?
ここはヘスティアファミリアのホームですけど」
どうやら君は知らぬうちに他所様の住居に忍び込んで睡眠をとっていたようだ。それに気づくと君は構えを解いて白髪の少年に謝罪するだろう。
「い、いえいえ。ここボロいですし、有名なファミリアでもないので知らなくても仕方ないですよ」
君はここを勝手に借りてしまった。何か返すべきだろうと、白髪の少年に何かして欲しいことはないか、勝手だが恩返しをしたい。という旨を伝えるだろう。白髪の少年は大丈夫ですよと言うが、君としては一宿の恩はどうしても返したい。白髪の少年が渋るせいでなかなか話が進まず、問答を繰り返していると白髪の少年とは違う声がかかった。
「ベルくん、こんなところでなにしてるんだい?それととなりの君は誰なのかな、もしかして入団希望者なのかい!?」
君が振り向くとそこには身長は小さく、白い肌に白の服、そしてあの街の酒場の女将よりも巨大な胸とその周りについている謎の紐、一体何者なのか思考を回すと、白髪の少年がその答えを口に出す。
「あ、神さま、お帰りなさい」
「うん、ただいまベルくん!
それで2人でなにを話してたんだい?というより上で話さずに下で話そうじゃないか、せっかくのお客さんなんだ、もてなしてあげないと」
かみさま、かみさま、かみさま、いくら頭をひねっても、君からかみさまという言葉に心当たりはない。あってもかつて君が出会った少女が言っていた不確定かつ不特定なものでしかない。君はかみさまと呼ばれた人物に手を引かれて教会の奥へと連れて行かれていった。
君は少し急な階段を下ると小部屋と呼ばれる部類の広さの一室に招かれる。どうやら彼らの居住スペースの様だ。薄暗い中見えるのはソファや机、ベッドといったもの。それが狭い部屋の中にしっかりと収まっている。
「さあ、話そうじゃあないか!
ところで君は誰なんだい?ベル君と楽しそうに話していたからベル君の知り合いだと思っていたんだけど、どうやら違うみたいだね」
ソファに座るやいなや君のことを教えてくれと言ってくる、かみさま。ベルと呼ばれた白髪の少年は少し戸惑っている様だが。
君は自分のことを話す。自分の名前、職業、自分の獲物や出来ること出来ないことを話していく。そして最後に、世界樹の迷宮を踏破したことを告げる。
「待ってくれ、世界樹の迷宮って何だい?君の口はからはボクやベルくんの知らない事ばかりが出てきていて戸惑っているんだ。1つずつ教えてくれると助かるんだけど」
かみさまは少し険しい顔をし、ベルは話の途中で頭がオーバーヒートしたのか、ただのカカシの様に突っ立っているだけになっている。かみさまにはどうやら警戒されている様だ。ここは慎重に語っていく必要があるだろう。
君はそう判断するとかみさまに1つ1つの解説をしていく。
「つまり君は、何十層にも至る迷宮を踏破し、数々の修羅場をくぐり抜けてきた猛者だと、そして今は無一文で何も持っておらず、たまたま見つけたこの教会で仮眠を取っていたと、そしたらたまたまベル君と僕に会ったと、そういう事だね」
だいたいその通りだ、と言うとかみさまは頭を抱え始める。何かをぶつぶつと言っているのはわかるのだが言葉を上手く聞き取れない。そうしているうちにベルはようやく復帰できたのだろう、ようやく気がついた様だ。
「神さま、えっとその人は、自分がこの
かみさまは、ベルの一言で一瞬呟きを止める。そして、ガバッと顔をベルの方へと向ける。立ち上がりながらベルの腰を掴み揺さぶると、それは本当なのかいベル君!?と少し大きな声で言う。揺さぶられながらもはいと答えるベルに、かみさまは決心したのか表情をキリッとさせ、君に、
「僕たちのファミリアに入ってくれないかい?」
と言った。