新・世界樹じゃない迷宮   作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴

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君は懐かしい夢を見る

 

君は、目を開く。

辺りは闇に包まれており一筋の光さえ見えない。だんだんと君の体は下へ下へと沈んでいく。手を伸ばしている先さえもわからない。ただただ、無間に落ちていく中で、ゆっくりと瞼が落ちていく。伸ばす手さえも重くなっていき、動かなせなくなって落ちていく。君の意識が飲み込まれていく。

 

ふと、君を呼ぶ声がする。

 

うっすらと開かれている瞳は、血に染まった君を映し出す。どこからか泣き声がする。小さく揺さぶられる感覚が、君の意識を呼び戻す。

 

 

気がつくと君は何も無い場所に立っていた。目の前には変わらず血まみれの君が存在する。おい、と声をかけられる。振り向くとそこには顔のない白衣の男が立っていた。

 

「お前は相変わらず無茶をする。守ろうとするのはいいが守られた側の気持ちも少しは考えるんだな」

 

そう皮肉げに言うと、白衣の男はまるで煙のように消え去った。よっ!と後ろから肩を叩かれる。赤い派手な外套を纏う顔のない少年が、君に向けて手を上げている。

 

「こんなところで寝んなよ〜?まだやることはたくさんあんだからさ!」

 

少年は変な機械をつけた左手を君の拳と打ち付けあうと、蜃気楼のように霧散した。ガチャリと、金属同士がぶつかり合う音に君は目を向けた。

 

「あなたのこと、皆心配なんてしてないわ。

大丈夫だからって。だから、どんなとこでもどんなときでもガツンと頑張ってきなさい!」

 

盾を掲げている顔の無い少女は、君を鼓舞すると陽炎のように、揺らめいていつのまにか見えなくなった。

 

パァン、と聞きなれた乾いた音がする。咄嗟に振り返ると、背を向けた金色の髪の少女が弾丸で闇を切り裂き、一筋の光を受けてその髪をきらめかせている。そして、振り返ることなく少女は言葉を紡ぐ。

 

「信じてる…貴方は絶対に負けないわ

 

だって…」

 

少女は振り返りながら君の瞳に視線を合わせた。

 

「私のパートナーだから」

 

懐かしい声を耳が感じ取る。君の瞳が少女の顔を映す、その前に…

 

君の瞳に強烈な光が射した

 

 

 

君が目を覚ますと、視界には青空が広がっている。身体が揺さぶられているのを感じ取ると、君は揺さぶられる原因へと目を向ける。大泣きしながら頼りない手で君を揺さぶるのは、君が助け出した少女だった。金色の髪に左右に纏められた髪型(ツインテール)は、懐かしさを君の心の中に生み出した。

 

「おにいちゃん!おにぃちゃぁん!!」

 

名前も知らない君が、自分を助けて目を覚まさない。どうすればいいのかもわからない幼子の必死の呼び掛けは、君を現世へと呼び戻したのだった。

 

呻き声を上げで立ち上がろうとする君に、目を覚ましたと喜ぶ少女は君に抱きついた。血まみれの君はくらりと脳が揺れるとまた、瞼が落ちそうになる。貧血による頭痛と、眩暈、折れた骨の痛みが君を現世と常世の狭間で綱引きをする。君はなんとか少女をなだめると、なぜか奇跡的に潰れなかったオレンジの果実をマルカジリした。

うまい!君は皮ごと食べることで果実の美味みを最大限に引き出した。

体力が少しばかり戻ってくる。

 

やつと戦ってからほとんど時間は経ってない。だが、あの戦いの記憶はあれどあの時の感覚は不鮮明だ。まるで、自分でない誰かが自分を勝手に動かしていたかのような、そんな感じであの戦いの行動に自分の意思は全く反映されてなかった。そして、強制的な力の解放。本来なら使えない技術を、技として行使する。強くなったというより、リミッターを解放したかのような力の使い方。君の知る戦闘技法に一つだけ覚えがある。

 

 

解放(ブースト)

 

 

しかし、これは本来ならば一瞬だけ己の潜在能力を引き出すことができる。それだけなのだ。戦いの最中、本来扱えない技を使うことは決してできず、それどころか何十秒も力を解放し続けることなど不可能なのだ。

君の知る街特有の戦闘技法は、この世界において大きくその形を変えた。まるでレベルが上がったかのように能力があがり、使えないはずの技を放つ。これがなんなのか君は解明しなければならない。

 

 

だが、今そんな余裕はない。なぜか戦いの傷は塞がっておりこれ以上の出血は無いが、骨が逝かれている。なんとか拠点まで帰りたいが体力が持つかもわからない。それどころかこの姿でストリートを歩いていたら、即刻捕まって事情聴取ルート待ったなしだろう。

少女に気をつけて帰るようにいうと、少女は本当に大丈夫?と心配してくれたが、意外と素直に従ってくれた。あとは、この血まみれの姿(ザマ)を誰かに見られないように帰還するだけだ。

 

「あー!そこの君!血まみれだけど大丈夫?」

 

すぐに見つかってしまうとは予想外だ。

 

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