新・世界樹じゃない迷宮   作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴

24 / 42
君は感謝を伝える

 

君たちはB12Fの下り階段、つまりB13Fへの入り口の目の前にいる。ここから下は中層と呼ばれる領域になり、モンスターの強さやダンジョンがトラップを仕掛けてくるなど大幅に様変わりするとのことだ。とくに準備などをしないと、ヘルハウンドというモンスターの炎の息吹(ブレス)に焼かれて致命傷を受けるか、ミノタウロスの圧倒的強さに蹂躙されるなどで、数々の冒険者たちが命を落としてきたらしい。君は経験しているだろう。物理攻撃ではなく属性攻撃によりダメージを大きく受けてしまうこと、対策をしないと全滅の一助になってしまうことを。君はシャルネルの話を聞いた後、撤退をすることに決めた。自分の中でどこか物足りないと思いつつも、君はヘルハウンドの対策をしてから挑むことを判断する。備えあれば憂いなしとは、冒険者のための言葉とあって違いないだろう。

 

君はシャルネルに帰還する旨を伝える。シャルネルも君の意見には賛成のようで、二人は一度帰還することになる。今まで通ってきた道を地図を頼りに戻って行くと、既にオラリオは街灯の灯る時間帯にまでなっていた。

 

バベルでシャワーを浴びて装備などの点検をしてからギルドへと向かう。ギルドでは夜にもかかわらず人だかりができている。自慢話不幸話雑談、換金後のヴァリス袋を持って酒場へと行くだろう人々や、ヘトヘトで今にも倒れそうな足取りでホームへと帰るものもいるだろう。忙しなくギルドの職員も働いている。が、どうやら我らがアドバイザーのエイナは既に退勤後のようで換金終了後も見かけることはなかった。本日の収穫は38400ヴァリス。素材諸々はシャルネルへ今回の付き添いのお礼として渡すことにした。シャルネルは流石に貰えないと言うが、モンスターとの接敵中の援護や一対一になるように場作りしてくれたこと、試運転に付き合ってくれた(勝手についてきた)ことや最後には相棒(アルケス)を生み出してくれたことへの感謝などを伝えて、報酬の半分である19200ヴァリスと一緒に押し付けた。

 

君は少し頰を掻きながら、くすぐったい気持ちを心の中に押しとどめてシャルネルにまた頼む、そう一言だけ伝えてギルドから去っていった。頼むことに慣れてない君はシャルネルに何かを頼むのがこっぱずかしかったのだある。一方シャルネルは、君が恥ずかしそうに(シャルネル視点)「また頼む」と言ったことにちょっとだけドキッとしていた。こう、無口な感じの人が恥ずかしいけどなんとか人にものを頼む姿は、心にくるものがあったようだ。ーー()それクーデレと言う(なお違う模様)ーー。シャルネルは頰を朱くして、先ほどの情景を噛みしめるようにニッコニコな笑顔でホームへと帰って行くのであった。

 

 

 

君がホームに帰るとベッドの上で寝ているかみさまと、机に体を預けて眠っているベルの姿があった。君はあまり音を立てないように装備を外して纏めておくと、ベルに毛布を掛けてから自分もソファーの上で横になり、まどろみの中へと意識を落としていった。

 

次の朝、起きて槍だけを手に取り、ルーチンワーク(朝の鍛錬)をする。少し時間が経てばベルがヘスティアナイフを手にやってきた。先日同様ベルを素手で相手する。しかし、先日よりもベルの動きは確かに良くなっている。一手一手に余計な力を込めず牽制と本命を混ぜ合わせて繰り出してくる。ナイフ以外にも時々蹴りを混ぜている。しかし似たか寄ったかな攻撃パターンのせいで、パターンが読みやすくあっさりと払える。めげずに振るわれた足は容易く捕まえることができ、背を向けるようにしてその足を払うと背中を蹴り込む。ベルの体はうつ伏せに草っ原の上に投げ出されると、荒い息をあげながら仰向けに体を向けなおした。

やはりベルには才能がある。先日の動きから進歩が見える。手数は増えているし、前より隙は減ってきている、それでいて力の緩急を意識し始めている。甘いところはあるが 時間が経てばそれもだんだん洗練されていく。

 

ベルは強くなれる。

 

君は起き上がり始めたベルを見て、口角が上がるのを止めることはなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。