新・世界樹じゃない迷宮   作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴

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追記

前半に書き足しと展開を少し変更しました。


友縁 騎士乃力

息を吐き、吸って、飛び出した。

角鹿に只々槍を振るい続ける。

目を口を鼻を顎を首を脳天を、

奴の命を屠らんと先ほどよりも更に速く早く穿たんとする。目にはその忌まわしき存在しかあらず、耳は奴の息遣いと足音だけを捉える。

 

お前を殺す

 

狂った脳の命令系統はその全てを目の前の存在への殺意へ実行せんと指揮し、体は痛みを本来の人間の可動域を筋肉の限界を忘れて躍動する。

だが、力任せの攻撃は功を奏した。少しずつだが、角鹿には出血量を増やし切傷や刺傷が増えている。しかし、その分こちらもダメージを多く受けざるを得ないのは明らかだった。足蹴にされ、体当たりをもろに喰らい、回避の判断が鈍りから腕や上半身に角が掠ったことによる擦り傷がいくつもできている。

 

それでも、攻撃の手は緩めない

 

あと何撃入れればいい?

 

あと何回奴の急所を狙えばいい?

 

あと何回奴の攻撃を受ければやつを殺すことができる?

 

そんな疑問は無意識が考えても表層に至ることはなく、戦いは、いや角鹿による遊びという名の蹂躙は続いた。

 

 

 

角鹿は致命傷を負ってない。しかし、君はすでに満身創痍だ。このままでは先に動けなくなるのはキミだろう。

 

槍を片手持ちにし、左手にナイフを構える。

 

 

 

 

 

『まだ死んでもらうには早い。この程度の試練、乗り越えてもらわねば困る。何せお前は私の世界(世界樹)を救った英雄なのだからな』

 

 

 

 

 

ふと、君の脳髄の奥、狂った意識に呼びかける声が聞こえてくる。

 

『ハイランダー君!こんなところで寝てどうしたんだい?僕たちの(ホーム)はここじゃないだろう?さあ、早く帰ってきてくれよ、死んだりしてボクとベル君を悲しませたりしないでくれ』

 

誓いを立てた女性の声が聞こえる

 

アタマガ、イタイ

 

 

 

『ハイランダーさん、まだ一緒に冒険したりないです。僕にとってあなたはーーだから…だから僕にその背中を追いかけさせてください!』

 

共に歩むようになった仲間の声が聞こえる

 

ソウダ、オレニハ、なかま(・・・)ガイる

 

 

 

『キミのためにキミだけの装備を作る。君に会ったのは偶然だけど、それでもアタシを認めてくれたのはキミだから…だから!』

 

偶然(運命)に導かれ出会った鍛治士の悲鳴のような声が聞こえる

 

マダ、まだ、新しいものを見たい

 

 

 

微かな理性がナイフを持った左手を天に突き上げ、振り下ろした。

 

 

 

 

 

そうだ、俺はこんなところでくたばりそうになってる場合じゃない。帰る拠点…いや、(ホーム)ができた。新しい出会いと新しい仲間、新しい武器や魔物がこの世界にはある。目を覚ませよ、まだ倒れるわけにはいかねぇ、こんなところで死んじまったらアイツらにまた会うことができなくなってしまう。

 

ベルの特訓もまだまだ終わってない

かみさまには死なないといった

この冒険を語る仲間に会わなければいけない

 

 

 

 

 

 

失われた感覚を急激に取り戻していき、理性は取り戻した皮を纏っていく。左の太腿(・・・・)に突き刺さったナイフを強引に抜き取り、相棒(アルケス)を杖に立ち上がる。正面で立ち止まった鹿へ向けて理性の光るひとみをむけた。

 

 

君は 自傷することで 理性を 取り戻した!

 

 

しかし、その代償は深い。全身は先程までの戦いの反動で痛みを感じないところが無い。もろに食らった体当たりで肋骨が何本も折れてる。肺に到達してないのは幸運だろう。

太腿にナイフを刺した所の痛みを根性で我慢し、踏ん張りを効かす。が、まるで生まれたての子鹿のように震えている。それでも、君は帰るために最善を尽くす。

 

鹿はつまらなさそうに頭を一度振ると、今度こそと言わんばかり君を睨みつけ突進の準備をする。君は覚悟(・・)を決めると杖にしていた相棒(アルケス)を背中に収め、左手の短剣を構え、鹿へ突撃した。

それと同時に鹿も君へと走り出す。一歩も緩まることのない足は、ついに互いの体を交差させた。

 

角鹿の眼には血が流れていた、交差の直前で跳び上がった君の短剣が左眼へと深い傷をつけた。瞼を閉じ、息を荒くする。鹿は痛みとプライドに傷をつけられたことに大きく嘶き、激怒した。確実に次の一撃で殺してやると、君へと振り返った。

 

君の脇腹は大きくえぐれていた。跳び上がったことによって眼孔にクロスカウンター気味に放った短剣の一撃、代償は脇腹へのクリティカルヒット。勢いのついた角鹿の角は君の血と肉、鎧の破片でドロリと飾られている。鎧に守られていたはずの箇所だが、その鎧はその部分だけが物の見事に砕かれ、血みどろの脇腹は臓器がこぼれ落ちるギリギリを保っていた。しかし、君は立っている。あれだけ大きな傷を負っても、君は今、決死の覚悟(・・・・・)でこの場に立っている。

 

そして、君の周りには君の脇腹から流れ出ている血が、螺旋を描いて君の周囲を走る。ブラッドウェポンが発動している証拠だ。君はナイフをしまうと相棒(アルケス)を抜きはなち、

 

大きく力を溜めた。

 

鹿は君へと瞬時に駆け出す。殺意を角に、脚に込めて全力の一撃を叩き込むために、君へと一直線に駆け出した。なんの対応もなく、君と鹿の距離はどんどん近づいていく。あと接触まで5,4,3,2…

 

鹿は動けない(・・・・)君を見て勝利を確信した。

 

だが、

 

解放(ブースト)!」

 

 

その言葉と共に、鹿の巨体は大きく真上へと弾かれた。

 

 

ーー君は力を溜めていた、次で最後になる。足はもう限界だ。だからこそ負けないための一撃を放つために大きな隙を作らなければならない。だからこそ、限界の解放(リミットレス)をする事で最大限の力を出すための用意をした。

ふと、胸が熱くなる感覚がした。グリモアが君にだけ光を放っていた。だから、君は勝利を確信したーー

 

 

君の仲間の力、受け流し・弾く技術(パリング)によって、鹿の突撃を大きく弾いた君は、構え直した相棒(アルケス)に血の力を全て纏わせて、まるでドリルのように螺旋する血の穂先を、狂乱の角鹿(強敵)の喉元へと貫かせた。皮と肉の層を貫き、骨を砕いてまた肉と皮の層を貫く。抵抗がなくなり槍が重くなった感触に、溢れ出る自分の血液ではない匂いに、横倒れになっていく影に、君は勝利を手に入れたことを実感した。

 

角鹿は横倒れになると、その巨大な角の一部を残して、光の粒子となって君の中に消える。君は横腹に違和感を感じるとそこには、えぐられていたはずの脇腹が怪我のない状態に戻っており、太腿の傷も無く、折れていた骨は元通りに、痛みも全身から消えていた。君は角鹿を喰らった(ハーベスト)のだと直感的に理解すると、そのまま仰向けに倒れた。痛みはなくても疲れてはいた。だから、不思議な心地よさに身を任せ少しだけ休むことにした。

 

 

霧の晴れた周囲はモンスターを寄せ付けることはなく、静かなダンジョンの中で君は軽い休息をして、ダンジョンから抜け出すために立ち上がり、階段へと向かっていった。その時、なぜかモンスターたちに出会うことが無かったのは偶然なのだろうか。しかし、君は一つの偉業を成し遂げた。

 

大物喰らいは英雄の花だ。

 

英雄好きのベルに土産話ができたと、君はバベルの出入り口から見える朝陽を見てふと思うのだった。




小説とかアニメって肋骨を折りがちですよね(実際心臓マッサージとかで折れるくらいには脆い)

人間には肋骨が24本あんのよ、5,6本ぐらい何よ!
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