新・世界樹じゃない迷宮 作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴
前話で誤字報告してくれた方、ありがとうございます
ダンジョン上層
始まりの迷路
B1F 〜希望に満ちた冒険者が踏みしめる大地〜
ふと思い出すのは初めて世界樹の迷宮へと足を踏み入れたときのことだ。迷宮内の神秘的な光景に思わず生唾を飲み込んでしまったことを鮮明に覚えている。その時のショックをまた感じることができたのだ。普通とはかけ離れた景色、完全な洞穴の中に壁に植生している謎の苔が光を灯し道筋をほのかに照らしてくれている。
君はこの景色に感動してしまった。その場で感動に飲まれ続けるのもいいし、意識を冒険へと戻してもいい。
ベルが呼ぶ声がだんだんと大きくなっていくことに気がついたあたりで意識を呼び戻すことができた。1分間ほどその場で固まってしまっていたらしい。どうやらベルも初めて冒険に来た時はこの景色に圧倒されたそうだ。
君は感動を胸にしまい込みダンジョンの奥へと歩を進めた。
ダンジョンを歩く中、君は長年頼りにして来た自分の勘を頼りに敵の接近を感じ取る。だんだんと近づいてくる気配にベルへ警告をするだろう。
魔物が近づいて来ている。ダンジョンであれ迷宮であれ何処であっても近づいてくる敵意はわかってしまうようだ。少し口の端が釣り上がってしまう。この世界で初の戦闘、ワクワクと恐怖が入り混じるこの緊張は何物にも変えがたい。ベルは気がついてないようなので警告を飛ばし、戦闘態勢へと入りながら慎重に歩いていく。
接敵する、そう感じた瞬間、奥の見えない暗がりから人の足が見えた。それがダンジョンの明かりに照らされてゆっくりと正体をあらわにして行く。そこには人の形をした醜悪な顔の魔物が現れていた。かつて遭遇した彼女の同胞たちとは全く違う。同じ人型とは思えないほどの姿に、人型の魔物とこのように接敵することに驚きを隠せなかった。
醜悪な魔物たちは君たちへの敵意を隠さない。下衆な笑みを浮かべ君たちに襲いかかってくるだろう!
さあ、得物を手に戦うのだ!!
僕は驚きを隠すことができなかった。かつて自分が初めてダンジョンへ冒険に挑んだとき、ゴブリン一体を倒すことにも苦労したのだ。それどころか一匹倒すことができただけで大喜びで神様の元へと帰って来てしまったのだ。あの時の恥ずかしさといったら今でも顔が熱くなってしまう。
しかし、ハイランダーさんは違った。槍という閉所にはあまり向いてない武器を巧みに扱い、三匹同時に飛びかかって来たゴブリンをたった一閃で全滅させたのだ。そう、
のちに聞くとシングルスラストという技で自分の体力を大きく使って一度にたくさんの敵を倒すための技だそうだった。それを聞かずしてもハイランダーさんは僕と違って強い人だった。
そう、強い人なんだ…
あまりに弱すぎる。初めて迷宮に潜った時、先輩たちをすり抜けて攻撃して来たあのクソモグラとクソネズミどもは一撃で、余裕がなくなってしまうほどに攻撃力が高く、そして一撃で倒すことができないほどタフではあった。なのに、ベルから聞いたこのゴブリンというやつらは全くもって強さを感じることができなかった。
君は不満げな顔を隠さずに倒したゴブリンを解体しようと心臓のありそうな場所に目星をつけて解体用のナイフを入れ込む。するとピシッ、という硬い何かにヒビが入るような音とともにゴブリンが灰へと変わり霧散していった。異常事態に君はベルに問い詰めるがなんと、この世界の魔物は核としている魔石というものがあり、それを砕かれると灰になって消えてしまうのだそうだ。そして、ランダムで部位のドロップ品を落としたりするらしい。つまり、属性攻撃や状態異常によって倒したりすることで剥ぎ取れるレア素材のようなものはなく、どうあがいても確率によって全て決まるようなのだ。
君はその事を聞くと大きく落胆してしまう。
冒険者にとってドロップ品は友であり敵であるのだ。その結果に一喜一憂するのが冒険者の常であるだろうに。そう、ボソボソと呟く君を尻目にベルはゴブリンから魔石を取り出していた。核を失ったゴブリンは灰となり霧散していった。
君は初めての戦闘に勝利することができた!
しかし、失うものの方が多かったようだ。