新・世界樹じゃない迷宮 作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴
グリモアの鑑定を終え、次はどのグリモアを装備していこうか悩む君。次は是非ともベルとまた冒険をしたいと考えていた君は、次はサポートができるものにしていこうと考えている。最近はベルの特訓に付き合うことはあれどなぜか別行動を取っていた君だったが、たまにはサポートする側に回ってみるのも悪くないのでは、と考えたのだ。装備するグリモアを決めると、二人のところへと戻る。
時間も経って落ち着いた二人だったが、まだ挙動がおかしな部分が見受けられる。いつまで狼狽えてるのか、やってしまったものはしょうがない、そうベルに伝えるが、うじうじと請求されてしまった時のことを考えていた。その時には一緒に返済を手伝うさ、そんなことより新しい魔法がどんなものなのか気になると君が伝えると、潤んだ瞳で君を救世主か何かのように見つめるベル。
大袈裟だと思いながら、しかし実践は何が起こるかわからないためダンジョンで行うことになった。ベルの新しい力に興味津々な君だが、謹慎中のためお預けを喰らうことになった。
ベルは覚悟を決めたのか、この本をもらったあの酒場に事情を説明しにいくことを決意したようだ。ついでに今日の夕飯の材料も買ってくることを頼んでおく。
出て行ったベルを確認して、さあ何をしようかと考える前に神様に呼び止められた。
「ハイランダー君、君に相談があるんだ。聞いてもらってもいいかい」
真剣な表情をするかみさまの顔を見て近くの椅子に腰を下ろす。君は無言で続きを促した。
「実は、今ベル君はパーティを組んでいるんだ、他のファミリアの子と。
少し心配なんだ。ベル君はいい子だ。だから変ないざこざに巻き込まれないか、他所のファミリアの事情に首を突っ込んでしまわないか気になってしまうんだ。
ベル君がバイト先に来た時に、ベル君とパーティを組んでいる子と少し話してみた。嘘はついていないけど、少し怪しい所があってね。しかも女の子でベル君を見る目が変なんだよぉ…!明らかにあれはベル君を意識してるように見えたんだ!だからダンジョンで変なことをしてないか君に見張ってて欲しいんだ!その時だけ謹慎は解除するから、ベル君があの
最初のシリアスはどこへ行ったのか、後半からはただの嫉妬からくる妄想を聞かされた君。その後もあーだこーだ言うかみさまに、呆れながらも了承することを伝える。かみさまは、頼んだぜ!ボクはバイトに行ってくると言って、
一つため息を吐くと、軽い頭痛が走り君はベッドの上で横になり仮眠を取ることにした。
夕飯を済まし、腹ごなしの運動をこなして就寝。いつもの夕時の一コマだったが、深夜。
ふと人が動く気配を感じた君は目を覚ますと、装備をつけてこっそりと出て行こうとしているベルの背中を見つけた。夕飯の時に実践は明日のダンジョンで行うと言っていたが、今から行く気なのだろうか。ついて行ったほうがいいのだろうか、しかし謹慎中だから出ようか迷っているとすでにベルの姿はなかった。仕方ないので君は一度かみさまを起こすことにする。
寝ぼけ眼で君に要件を尋ねるかみさまだが、君の説明を受けて目が覚めたのか。君にすぐにベル君を追いかけてくれと頼む。君は魔法についての説明をろくに受けてないので、なぜかみさまが焦っているのかがわからず、事情の説明を求めた。
「いいかいハイランダー君。魔法は
とにかく、そんなわけでベル君の身が危ないかもしれないから、探しに行ってきてくれ!!」
成程、迷宮内で気絶したらいつ死んでもおかしくない。戦闘中に幾度も
君はモンスターを狩りながら、しらみ潰しに迷宮を捜索する。五層の半ば程でベルを見つけることはできた。膝枕されているベルを。
見覚えのある少女の膝枕を幸せそうな表情で受けているベルを見つけた時、ホッとため息が出てしまった。すると、こちらの存在がバレてしまったようだった。
誰だ、と言われたが特に何かをやらかしたわけでも無いので堂々と出ていく。もう一人女性がいたことに今気がつく。しかし、その女性に少し警戒されているようだった。整えられたエメラルドグリーンの髪を思うままに流し、白いローブを纏い落ち着きのある緑色の服を着ている。先端に銀の意匠が施された杖を持つ女性は高貴な存在の気配を漂わせる。あと耳が長い。
君は、自分がそこで横になっているベルと同じファミリアの団員だと伝える。しかし、まだ信用されていないようで名前とファミリア名を伝えた。すると何か気がついたのか、気配は警戒から別のものへと変わった。続けて、事情を話すと信じてくれたようだった。
「すまない、同じファミリアの者だったか。いきなり現れたから怪しんでしまった。
それにしても、君がハイランダーか。私はリヴェリア、彼女はアイズだ」
「あなた、この前ティオナと話してた人?」
見覚えのある少女は、この前ティオナと話した時に一緒にいた少女だった。まさかこんなところで出会うとは思っていなかった。君はアイズの問いにそうだと答える。
ベルを保護してくれたことは感謝するが、なぜ膝枕をしているのか不思議に思った君は尋ねることにした。
「この子、ベルって言うんだね。
どうしてかな、なぜかわからないんだけどしてあげたくなったから、かな?」
したくなったから、なら仕方ない。
「私からも聞きたいことがある。あなた、本当は強いのにどうして隠してるの?ダンジョンに挑むなら実力を隠す必要なんてない。強いのにそれを隠すのはなぜ?」
今朝と同じ質問、いや踏み込んだ質問にどう返すか悩む君。
君は過去に世界を救った。
君は
君は英雄と呼ばれる人間だ。
故にその気配は隠し通せるものでは無い。たとえこの世界で改めて強くなっていったとしても。その、功績からもたらされるオーラを消すことはできない。たとえ、今の身に不相応だとしても。
そして、語れない事情もある。君はこの世界において異物なのだ。それは君のかみさまからも何度も言われている。だから、君はこう語る。
「かみさまに頼らず強くなった。
それは、この世界じゃできないことだ」
「っ!」
「かみさまの力は凄いらしい。けど、それだけに頼るのは本当の強さなのか?」
「……そう、なんだ。
だから、あなたは強いんだ」
君は嘘は言ってない。事実だけを話し、なおかつその成分を3割程しか使ってないだけで。あと、質問の答えになってもいない。が、相手が納得したのでよしとすることにした。
君は会心の答えを出すことができたと内心ホッとした。これで何とか質問を切り抜けれたと安心をよそに、今まで身じろぎ一つ起こさなかった少年が目を覚まそうとしていた。
「ハイランダーさん…?どうしたんですか、そんな顔して。あれ、確か僕一人でダンジョンに来て、魔法の実戦をしてたは…ず……!?」
目を覚ましたベルは、君を見つけると寝起きの頭で周囲の状況確認する。頭の柔らかい感触への違和感から、視線を
そこからは早かった。ベルは顔を朱く染め上げると、謎に謝罪の言葉を叫びながら、君を置いてダンジョンの出口へと最速で駆け出してしまった。君はいきなりの行動にベルを止めることができず、その背を見送ることしかできなかった。
「ふふっ、若いな」
「…少し、悲しい」
撫でていたウサギがいきなり飛び出て行ったかのような反応に、完全に小動物扱いされていることを不憫に感じる君だった。その後、君は2人に礼を告げ迷宮を後にする。一瞬引き止められそうな気配がしたがそんなことはされず、君が迷宮から出た頃には時刻はAM05を指しており、既に日が上り始めようとしていた。
なんともまぁ、愉快な一日だ。
そう締めくくって、君は
「世界…か。彼は一体何者なのだろうか?」
「どうしたの、リヴェリア?」
「いや、何でもない。私たちも帰ろうか、アイズ」
君の残した謎を訝しむ者の呟きがオラリオの空気に混じって消えた。