新・世界樹じゃない迷宮 作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴
来てーー
紡がれる言葉とともに飛び出す躰。
放たれる一撃は重く、だがそれを繰り出すハイランダーはそれを軽々と逸らすアイズに舌を打つ。弾き、打ち合わせては速度を上げていく。その光景はあまりにも異様だった。端からみればレベル1のルーキーの攻撃に合わせている様に見える。が、違う。レベル5の冒険者が、剣姫が、あのアイズ・ヴァレンシュタインが、君に攻撃を合わさせられている。突きは弾かれ、振り下ろせば反撃が飛び、払えば逸らす。切っ先が掠るように身を捩り、致命傷にならないように確実に受け流される。加速する応酬は一度の競り合いを経て、その閃きを止めるに至る。
次に動いたのは、果たして剣姫か
それは戦いの勘から生まれた咄嗟の反応。間合いは届いていないはずなのに、防御に構えた武器からびしりと衝撃が手を走り、体を駆け抜ける。
それは戦いの勘から生まれた経験の反応。槍を引き絞り、初動を潰すべく相手よりも早く踏み出された攻撃の一歩。伸ばした腕から手応えが返ってくる。
きつい、な。
すごい、ね。
この打ち合いでわかることは一つ、決着をつけるなら早くだ。
「キミ、だよね。あの時あのモンスターを倒したのは」
「あの時?」
「
「…」
「多分キミならあのモンスターを倒せたと思う。それにこの前ダンジョンで言っていた、あの言葉…だから、知りたい。
君は答えることなく、構えを取る。同時にアイズも口を結び、
息を吸い、吐く。左手を槍で貫く。血しぶきは螺旋を描き、相棒《アルケス》に纏わりつく。己が使える手を全て引き出す。
雰囲気が瞬間の内に変わる。
君の鼓膜は誰かの息を呑む音では震えない。アイズの摺り足が石畳をジャリッと削る。その音と同時に、踏み込んだ。
飛び出した体は、勢いを余すことなく槍に力を伝える。君とアイズとの間合いが詰まる瞬間、アイズの目の前に
砕かれた氷の隙間を縫い、冷気を纏わせた槍はアイズに届くことはなかった。鞘によって逸らされた一撃。逸らされた力の流れ、それに抗うことはできず。トドメの一撃が君を強かにーー
まだだッ!
突如としてアイズの眼は閃光に焼かれる。ハイランダーの不意打ちは防いだはず。しかし、まだ何かしらの手段が残っていたのか一瞬だけハイランダーの手が光った時には視界が白く焼き付いていた。まるで目の前に雷が落ちてきたかのように。
空気の流れが二つ、変わる気配がした。鋭く裂ける様に、こちらへと飛来する。勘が告げる。止めなければと。
視界が無くても、彼女はそこに
ーー獲るッ!!
テンペストッ!!ーー
二重の衝撃を受けたアイズの全身に重い衝撃が走る。
しかし、それだけだった。
力任せの強引な振り抜きで、振り払う。風が吹き荒れ、ドサリと地面に打ち付けられる音を聞く。苦しいながらも眼を開き視界を広げた。明滅繰り返しながらも、レベルによる肉体の強度が数秒のうちに視界をクリアにする。
「ハイランダー…さん?」
そこには、血溜まりの中仰向けになるハイランダーと、慌てた様子でポーションを片手にハイランダーへと近づくベルがいた。