新・世界樹じゃない迷宮 作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴
あと、ネタバレとオリジナル設定注意報
始まりはあの日
君は戦いが生業の部族に生まれた。技や戦いの術を知り、君以外の部族の人のように傭兵や冒険者を目指す1人でしかなかった。
「ほぼ1人で迷宮に潜れと?」
依頼を受けてエトリアに赴き、執政院からミッションを受けダンジョンに潜る。先輩2人に見守られながらといえど、初の実戦。辛くも勝利を収めた。地図を描き、ミッションを終え、また次のミッションを受ける。
そのミッションが転機であった。
君は遺跡調査で3人の仲間と出会い、遺跡の中で記憶喪失の少女と運命の出会いを果たした。
「俺は冒険者だ、あんたらとは目的もやり方も違う。それでも協力はできる。それでいいなら、よろしく頼む」
それからは、常に進み続けた。
クエストを受け迷宮を探索し、素材を売って武器や防具を整え、時々宿で休んではまた迷宮を探索する。常に戦い、死線を潜らねばならない迷宮の魔物たち。油断が死につながる、世界は変われどそれは変わらず、しかして殺意はオラリオのダンジョンとは比べ物にならないものだった。
「必ず記憶を取り戻させてみせる」
遺跡を探索し少女の記憶の手がかりを探す。その為に色々無茶な戦いもした。大型のFOEやフロアボスの魔物よりも巨大な機械の敵や、巨大な弾丸を放つ戦車と呼ばれる機械など魔物とは質の違う戦い。
「我らを殺すのだろう?ニンゲン?」
モリビトと呼ばれる亜人の少女。巫女の力を持つ彼女とは、何度も対立した。
そして熱病によって葬らなければならなくなった少女の同族を、君は何度も殺めた。和解の道も、探した。
それが水を掴むような行いであることに気がつくのに時間はかからなかった。だから、捕虜になった少女に、生きてほしいと言うわがままを無理矢理形にするのに、躊躇いはなかった。何を思って受け入れてくれたのか、本人に聞くことはもうできないのだろうが。
「ハイランダー!一緒に行きたい場所があるの」
「ニンゲン、我と話せ」
休む日がなかったわけではない。宴に舌を濡らす日もあれば、二日酔いのせいで探索を諦める日もあった。モリビトの少女とコミュニケーションをとったり、時に仲間と2人で出かけたり、商店で武器を見繕うだけの日もありはした。
そして、状況が一変した。
君はとある戦いを経て、執政院の長が暴走し世界を滅ぼそうとしていることを知った。
それを止める為に一度は戦いに勝利した。しかし、深層に逃れた男を追撃するべく古代の機械を使って追いかける。
「お願い、止まって!私たちが絶対に何とかするから!」
追いかける為にたどり着いた遺跡。そこで、暴走した古代の機械によって、滅びの原因を断つためにエトリアの街が滅びかねない事態が起こった。記憶喪失だった少女の友であったその古代の機械を倒し、阻止することができた。
そこは悪意と魔物の巣窟だった。辿り着いた深層は、一体一体の強さが段違いで、もしこの魔物たちが地上に解き放たれてしまったら、世界は滅亡の道を大きく進むだろう。そう感じざるを得ないほど、力の差を感じた。しかし、魔物たちはこちらを襲うことなく、ただ見ていた。まるで、見届け人を買うかのように。
「辿り着いたか…貴様らに殺されてなどたまるものか。私は生きる。
生きる残るのは、私だァ!!」
「トドメを刺してあげる、それが私の役目…千年の時を超えた意味!!
眠りなさい、千年の遺物!」
最終決戦
君は持ちうる全てを絞り尽くして、滅びの運命を止めるため戦った。
戦いは壮絶なもので、何度も死の言葉が鎌を振り上げる姿を幻視するほどだった。こちらを弱体化し、必殺の一撃を何度も叩き込んでくる。その度に仲間とともに防ぎ、攻撃の機会を隙間を縫うように見つけては全力で叩き込む。されど、弱る気配を見せない千年の遺物。
そこに本来ならここにはいないはずの少女の声が、木霊した。
ーー我を使え、ニンゲン
我の信じる「神」を、救ってくれーー
止める間もなく、モリビトの少女が魂を賭けた。巫女としての
暖かい光を纏う槍はーー瞬間君は歪んだ視界を拭いーー敵を狙い定める。君は、吠えた。
叩き込まれた一撃によって、ついに揺らぎを見せた。その隙を見逃さず、騎士が、術式使いが、医師が、記憶喪失だった銃使いが己の最大限の火力を叩き込む。君はトドメの一撃を放つべく、全てを込める。傷ついた身体から溢れる血液を、痛みを、全てを力に変えて、秘伝の技を放つ。
トドメだァァァァァ!
背中を預けた仲間たちに、最期に和解の未来を捨て命を賭した少女に押され、最後の一撃を撃ち放った。
ーーニンゲン、お前たちと過ごした日々
悪くなかったーー
君は
いや、君たちは世界を救った。
3人の仲間は各々自分が帰るべき場所に帰っていった。
君と記憶喪失だった少女の2人はエトリアの街から離れ旅をした。だが、旅をしていた途中、エトリアの迷宮で最深部への入り口が見つかったらしい。そう風の噂を聞きつけた君たちは、最深部を目指した。
新たに仲間を集い、冒険者の生活を続けることを選んだのだ。
短いようだが、一年にも満たないならこんなものだろう。端的な言葉だけにすると短いが君は戦いや探索の時は饒舌に喋り、出会いや別れ、仲間との思い出やその時に感じたことを語った。
そして突然、この世界に来てベルたちに出会った。何故か、身体だけが
そう言って君は語りを締め括る。
どうだった?
君は語り終え、聞き手の2人にそう問う。
それは本来なら語られることのない英雄譚。
自身の生き様、強さの理由、違う世界の生き証人であり、世界を救った英雄の物語。
ーー自らを英雄と名乗ったことは一度もない。対外的に英雄と呼ばれることはあれど
記憶を無くした少女を救い、世界のために命を散らした少女の見届け人。
ーー手を取り合おうとして、その手を救世の力へと変えてしまった力なき者。
それが、