新・世界樹じゃない迷宮 作:激遅新世界樹1ストーリークリア兄貴
オリキャラが出ます
あと、評価が赤くなってました。ありがとうございます
朝、君は声によって目を覚ます。ソファーの上に寝ていた君は身体を起こすと軽く伸びをする。近くでゆさゆさと衣擦れの音と眼を覚ます原因となった声が聞こえる。君は声の主方向へ目を向ける。そこには我らがかみさまがいた。ゆさゆさとベッドの上にいるベルを起こそうとしているが、器用にもその顔をベルの顔に近づけて今にもキスをしそうな雰囲気を漂わせていた。かみさまは一瞬だけ君の方を見る。君とかみさまの目と目が合うと、かみさまはすぐに目をそらして顔を赤くしながらアハハハ、と誤魔化すように笑いながらベルから離れていった。しかし、かみさまが耳まで真っ赤にしているのを見て君は察するだろう。君はそれを見なかったことにして槍を持とうとして昨日壊してしまったことを思い出すだろう。仕方ない、と君は素手で技術の修練をしに外に出た。途中井戸で水分補給と顔を洗うといつもの場所、君がこの世界で目を覚ました平原で槍を振るった。
君が
「ベル君、新しい武器って欲しいかい?ハイランダー君も」
「どうしたんですか神様?いきなり新しい武器が欲しいか、なんて」
「まあまあ、気にしないで気にしないで。で、どうなんだいベル君?」
「たしかに今使ってるナイフも昨日まででかなりボロボロになっちゃいましたし…新しいナイフが欲しいです」
「ふむふむ、ならハイランダー君は?」
朝食後、昨日までのことを話した君たちはかみさまに心配されながら怒られるという、エイナより器用な怒り方をするかみさまを宥めた。まさか、本当にやるとは思ってなかったようだ。そして、ベルが今度新しい武器に買い換えたいという話からかみさまが食いついてきたのだった。
ベルはかみさまから新しい武器を貰うようだ。君はベルのように武器をもらってもいいし、もらわなくてもいい。
「そうか、ハイランダー君はいいんだね…
本当に?」
かみさまは君に後悔しないかと暗に聞いてくるが君は意見を曲げないだろう。君は自分の武器は自分で見繕うことにしているのだ。その様子にかみさまは、ならベル君のだけだね、と言うとまたホームを空ける旨を君たちに伝える。ベルはまたですかとかみさまを心配しているようだ。危ないことをしてないか心配なのだろう。連日の外出が珍しいそうだ。君もかみさまを心配するがかみさまは君たちに笑顔で大丈夫と告げて、地上に出るための階段を登りきる途中で振り返る。
「ハイランダー君もベル君も何日もダンジョンにはこもるんじゃ無いぞ!まったく、僕を心配するのもいいけど僕に心配をかけさせないでおくれよ」
そう言うとかみさまは拠点から出て行った。
君は今、ベルと共にバベルに向かっている。ベルはエイナに教えてもらっているダンジョンの講習を受けにいくそうだ。きっと昨日のことを何度も言われるだろうがベルはそれを気にしている様子はない。いや、昨日で終わったと思っているかもしれない。そして君もバベルに用があるのだ。借金の返済に新しい装備はどこで見繕えばいいのかを相談するためだ。一応君もエイナに呼ばれてベルと一緒に講習を受けなさいと言われている。
しかし、君は授業を受けなくてもいいし、受けてもいい。
君は借金を返済し、エイナから新しい武器の調達の仕方を聞くことができた。そして、ベルと一緒にエイナの授業を受けた。
内容は12層まで、つまり上層と呼ばれるダンジョンの区域についての情報だった。7層から出現するようになり、大量発生することがよく見られる蟻型のモンスター、10層からはダンジョンの地形が変わり霧が発生する広い草原のようになり、出現するモンスターたちも一変する、そんな情報を君はエイナから聞かされた。時々説教も入ったが。蟻型のモンスターと聞いて君は巣はあるのかを聞くが、無いと聞いて安心した。君が過去に戦った蟻の魔物は巣を作り、そこからは強力な魔物が生まれ続けるというものだったのだ。それゆえの疑問だったのだが杞憂に終わったようだ。
授業が終わり解放された君はベルにバベルに新しい武器探しに行くと伝えた。ベルは君が何を選ぶか気になるようでついていくことにしたのだった。
バベルの一階にある鉄柵で閉じられた穴は、どうやら君の知る施設の一つだったようだ。エレベーター、かつて君が探索した迷宮の中にこの施設は存在していた。人を上や下の層に運ぶ機械であったが、君が知るエレベーターとは見た目が違うようだ。ここのエレベーターは鉄柵で閉じられており密室ではなく階層を指し示すものも数字が点灯するものではなく、針で指し示すものだった。君はエイナから教えられた階層のボタンを押すとエレベーターの鉄柵はガラガラと音を立てて閉まり、君たちの乗る足場は静かに上昇を始めた。ベルは感じたことのない感覚に驚いていたが君は余裕の表情を見せていた。
目的の階層にたどり着くと、チーンと特徴的な合図を鳴らして鉄柵が開いた。瞬間、君はここの独特な雰囲気に包まれた。そこにはたくさんの冒険者が各々の目的で歩き回り、並べられている商品を鑑別している。談笑する者もいれば店主に値切り交渉をする者もいた。しかし、皆その眼にはここには自分と戦う武器を選びに来ているという真剣さが垣間見える。君は雰囲気に飲まれる前にエレベーターから降りて歩き始めた。
ベルが後ろから感想やあれなんてどうですか?うわっ、あの武器あんな値段するの!?あんな値段の武器買えるようになれるかな?といろいろ言いながらがついてくる。この場の雰囲気や、見たこともない武器や防具に興奮しているのだろう。確かに見たこともない武器や防具は見ていて面白いが今回は目的を持って探しているので見向きはしない。槍と軽鎧、手甲とブーツが今回の目的だ。金は借金と食事で消えた分を除き、さらに生活費に充てるものを除いて30000ヴァリス、これが今回の予算である。これで何とか用意できるといいのだが…
君はふと懐かしい姿を数ある商店の中から見つけ出す。そして君は迷わずそこへ進むと店主に声をかけた。
「え?私の名前?シャルネルって名前だけど、どうしたのおにいさん?」
どうやら人違いだったようだ。君が知るあの街で世話になった少女にほとんどそっくりだったので声をかけたが、見た目や雰囲氣はそっくりでも声が少し違ったようだ。君はシャルネルに、君に似た人が知り合いにいて声をかけたんだ、すまない。と言って謝った。シャルネルは、アマゾネスの私に似てるってことはその人もアマゾネスなの?と君に聞くが君は多分違うと答えた。君はシャルネルの商店の中身を見る。君の視線が商店の中に向いたことでシャルネルはぼそりと呟く。
「アマゾネスが武器を売ってるなんて珍しいでしょ。私たちは本来なら戦って使い潰す側で作る側じゃないって。でも、最初にここに来た時に武器を作る先輩たちの姿や作られた武器を見て思ったの、私も作ってみたい!ってね。それからヘファイストス様のところで修行して、こうして店を構えさせてもらったんだ」
そこには目的の槍の他、剣や盾様々な防具が所狭しと並べられている。スペースに対して置いてある品の数が多いのだ。君はシャルネルの話を聞きながら中に入って物色し始める。
「けど、最初はみんなアマゾネスが作った武具だ、って見ていってくれたんだけど誰も買ってくれなくて、しかも知らない冒険者からアマゾネスが作った武器なんて雑な仕事ですぐに折れちまうだろうな、なんて勝手に言われてね…それからだんだん見ていってくれる冒険者がいなくなって、自信無くしちゃってね。そろそろ店じまいしようかなってヘファイストス様に相談しようと思ってたんだ」
君は数ある武具の中から、光るものを見つけるとニヤリと笑った。シャルネルの独白に一緒にいたベルは涙目になっている。俯きながら呟くシャルネルの呟きは段々と大きくなり、声には震えが混じっている。きっと顔を上げるとそこには涙が流れているかもしれない。
「だけどさ、最後に君が来てくれて、私の作品たちを見ていってくれて嬉しかったんだ。ありがとね。だから…」ドンッ
無理に買わなくてもいいから、シャルネルはそう告げようとした。君はシャルネルの言葉を遮るようにしてカウンターの上に
「えっ、何、何なの!?」
シャルネルは次々置かれていく自分の作品を見て涙が吹き飛んだ。驚くことしかできないシャルネルは、君がカウンターの前に立ち止まるまで動くことも声を出すこともできなくなってしまった。ようやく君が立ち止まると、君とシャルネルの目と目があった。
震える声でシャルネルは君に尋ねる。
「もしかして、買っていってくれるの?」
君はコクリと頷いた。
「ど、どうして?アマゾネスが作った武器と防具だよ?それを…何で…」
シャルネルの言葉は最初は大きかったが、だんだんと項垂れ萎んでいき、それ以降が聞こえなくなる。しかし君は、
「最初は君が知り合いに似てたからこの店を見つけた」
シャルネルはその言葉に項垂れた頭がさらに角度を落とす。90度ほどまで曲がってるだろう。
「でも、君の作った武具を見て光るものがあった。この武具たちなら買っても安心して使えるって思った」
その言葉にシャルネルは思いっきり顔を上げる。
「武器や防具は嘘をつかない。君が丹精を込めて作ったものを買いたいと思った。だから買うんだ」
「本当に私の
シャルネルは一度上げた顔を君に尋ねながらまた項垂れさせる。君は、そうだと言って目を逸らさない。
「……がとう」
?
「ありがどぉぉぉぉぉぉ!」
シャルネルは泣きながら君の手を掴むと、感謝の言葉を何度も繰り返しながら思いっきり君の手を上下に振りまわす。ウワァァァァァと泣き声がフロア中に拡がると、周りの視線が彼女と君に釘付けになる。
「今までぇ、そんなごとぉ!言ってくれる、人、ひとりも、うぇ…いながったがらぁ!」
君は疲れを感じながらも彼女のなすがままにされている。よほど嬉しかったんだろう。落ち着くまで君は待つことにした。蚊帳の外にいるベルはつられて泣いていた。
君の肩の感覚がだんだんなくなってきた頃、目元を赤く腫らしながらようやく落ち着いたシャルネルは君に謝罪をした。
「ぐすっ、ごめんね。君が買ってくれるって言ってくれて本当に嬉しくて、ちょっと振り回しちゃった」
君は構わないと肩のことはおくびも出さず、平然とした顔で言うとそのまま幾らなんだと聞く。
「そうだね、この子とこの子、それとこの子とこの子だから、占めて31000ヴァリスってとこかな」
君は唇が少し引きつると、冷や汗を一つ、たらりと流した。君の所持金は30000ヴァリス。合計の金額にはあと少し及ばない。流石にベルに借りるわけにもいかない。そう思って店主に素直に話して、お金を持って買いに来ると伝えようとする。
「ねぇ、 もしまた私のお店に来たら私の作品たちを買っててくれる?」
先にシャルネルの口が開き君の言葉は言えず仕舞いに終わる。君はシャルネルの問いに答えた。
「今回は君の店で買いたいと思えるモノが有ったから買った。だけど、次は別の店に行くとかもしれない。でも、君の作品がまた買いたいと思えるモノだったらまた、ここに来たいと思う。そして、君の作品を買いたいと思う」
君の言葉にシャルネルは一度瞬きをすると、表情を綻ばせて笑顔を作る。
「ありがと!君の言葉のおかげでまた頑張ろうって思えた!君にまた買いたいって思わせられるように、もっと上手く作って待ってるから。
だから、その子たちを君に使って欲しいな。流石にタダであげるのは無理だから…うーん…よし、6000ヴァリス抜きの25000ヴァリスでどう?」
君はその言葉に大きく頷くと袋から5000ヴァリスを別の袋に入れ、25000ヴァリス入った袋をシャルネルに手渡した。シャルネルは中身を確認すると、よしと頷いて、君の方を向く。
「25000ヴァリス確かに受け取ったよ!その子たち、大事に使ってあげてね。メンテナンスとかなら格安で請け負うからさ!」
君は購入した武具をその場と取り付ける。流石に武器を振るうスペースはないものの、見立てた通り槍も防具もしっくりと来る感じがした。君はこの武器に出会えたことに感謝しながら、シャルネルに礼を言って店から立ち去るだろう。
「まいど、ありがとうございました!
また来てね〜!」
君はシャルネルの声に懐かしさを感じながらバベルを後にした。
一方その頃ベルはまだ泣いて…まだ泣いてたのか!
「うう、いい話だなぁ」
この後君の手で連れて帰られたとか帰らなかったとか。