【二次創作】 after Rance X-決戦-   作:むさん

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ぶきみな しずけさ

「話を聞かせてもらおうか」

 

 そういって部屋に入ってきた村長キタに対し、唾をのむ二人。

 

 そう、事態は何一つ解決していない。当事者は負傷し、これから被害も増えるかもしれない。キタとしては、厳しく問題に対処しなければならないのだ。

 

「なにが、あった?」

 

 ボルドンとアレクはお互いに目を合わせ、頷く。

 

「俺から、話します」

 

 キノコ採取をするアレクのお目付け役として付いていったボルドンが、独断で薪割を始め作業を分断したこと。ゴリラの群れを連れて逃げかえってきたアレクを助けるため戦ったこと。それ以降の記憶がないこと、を伝えた。

 

「アレク、おぬしの方では何があった?」

 

「は、はい! キノコ採取をしていて、たくさんキノコを採っていたらゴリラに見つかって、おいかけられてました!」

 

「以上です! ……あれ? そいえば、ボクが集めたキノコはどこに? 」

 

「あ、これだ。あったあった。 よかったー、ほくほく」

 

 えへん、とボルドンとキタが同時に咳ばらいをする。

 

「う、すいません……」

 

 暴走しかけたアレクは、気まずそうに身を縮める。

 

「なるほど、とりあえずは二人とも、大変な目にあったことを、労ろう」

 

「じゃが、しかしだな」

 

「ボルドンはわしからの命令違反の責任。アレクは、うーんまあ、とりあえずよくないことをした責任を」

 

「とってもらうぞ」

 

「キタのじいさん……すまんかった……」

 

 本当に申し訳なさそうに、頭を下げるボルドン。

 

「ボクの責任ずいぶんふわっとしてますね……」

 

「ええぃ、うるさい連帯責任じゃ! ……とにかく」

 

「今はそれどころではない。現在の状況はな……」

 

 今日の日没に集会をひらき、状況の説明をすること。その場に二人が居合わせるようにすること。そして、女性から、事情聴取をしたことを伝えた。

 

「パワーゴリラが知性を……?信じられねぇな……」

 

 地面に書かれた文字と、パワーゴリラが二人を運んできたことを聞いて、ボルドンは驚いた顔をした。

 

「でも、魔物の中には喋るのもいますよ?」

 

「確かにそうだが……。パワーゴリラが言葉を使うなんて聞いたことがない」

 

「ゴリラたちなりのコミュニケーションはあるんですかね?」

 

「バカ、話はそこじゃない。ゴリラ同士の意思疎通が問題なんじゃなくて、人間と意思疎通のできる能力があることが問題なんだ。……でも、何か企んでるのは確かだろうな、明日の夜襲撃してくるかもしれない、村総出で逃げる準備をしたほうがいいかもな」

 

「うぅ……」

 

 話が脱線させるじぶんの悪い癖だと反省しながら、項垂れるアレク。

 

「そうじゃな、わしもそう思う。しかしだな、ではなぜおぬしたち二人を生かしたのだ? それに襲撃をするならすぐすればよかったじゃろうに」

 

 襲撃をするなら、村に来たついでにすればいいのだ。ソレをせず帰ったということは

ほかの意図があるのか。そう考えるキタ。

 

「むむむ……、はっ! ボルドンさんが強すぎて村の人たちを警戒したのかもしれませんよ!」

 

 顎に手をあて、むんむんうなっていたアレクが閃いたとばかりに伝える。

 

「いや、俺はすぐやられた。ゴリラどもからすれば楽勝だったろうよ。それに、俺たちの命がある理由になっていない」

 

「むぅーん、そうですか……」

 

 村で一番の力自慢のボルドンでさえかなわないのならパワーゴリラと戦うのは無謀だ。となれば、もう逃げるほかないのか。だがそのあとは? 村を失った私たちはどのように暮らしていけばよいのだろうか、とキタは考える。

 

「いや、答えは出んな。今日の暮れ、領事館で集会を開くから、お前たちも来てくれ。それまではやすんでおれ」

 

 そう言い残して、キタは部屋を出ていった。

 

 

 キタが部屋を後にして、暫くたった――

 

「お前、なにしてんだ?」

 

 ボルドンは集会までに体が動くよう体を休めていた。気づいたら脇でアレクが何やらゴソゴソとしているのに気付く。

 

「これはですねぇ、ボクの戦果の確認です!」

 

 ふんふんと鼻を鳴らしながらアレクは言う。つまり、キノコを選別しているところだった。

 

「これは、ボクが命を懸けた証。これがボクだってやればできるんだという証明をしてくれるんです!」

 

 手に取っては、袋に分ける。種類別に分けているようだ。

 

「ふーん、お前にそんな才能があったなんてねぇ」

 

 ボルドンから見てもたしかに、アレクは採取の才能があるように見える。大量に集められたキノコを前にして、ボルドンは関心をする。

 

「そうでしょ! そうでしょ! 見てください! これが黄金キノコ! 高級品ですよ!」

 

 これが特産キノコでぇ、などと息を荒くしながらどこで身につけた知識なのか一つ一つ解説をしていくアレク。そこであるキノコを手にしてアレクの手が止まる。

 

「あれ、これって何だろう……?」

 

 確かに、アレクが手にしているものはボルドンも見たことのないキノコだった。

 

「へんなキノコだな、毒見してみたらどうだ」

 

 からかうようにボルドンは言う。

 

「危ないからダメなんですよ! こういうのは」

 

 身を乗り出し、アレクは真剣に言う。

 

「うーん見たことない……なんだこれは、後で調べようっと」

 

 そういって、別の袋にしまった。

 

 あれこれ言っているうちに、全てのキノコの分別が済んでいった。

 

「その袋はどこに持っていくんだ?」

 

「とりあえず、食用と薬用に分けたので、それぞれのお店に持って行ってきます」

 

 ふーん、と言いながら、ボルドンはブーツの紐をキュッと締めた。

 

「そろそろ日暮れだな、領事館に行くぞ」

 

 立ち上がりながらアレクに声をかけ、その場を後にする二人だった。

 

 

 

ナジャコリャ村――領事館、とある広間

 

 青かった空は、今や赤く染まり闇を知らせようとしている。昼間はギラギラと力を奮っていた太陽も今は弱弱しく地平線に消えようとしていた。

 

 領事館の広間は珍しいほどに人が集まっている。普段は閑散としているこの場も、今だけはその役割を果たしているようだった。

 

 人々の話題は専ら昼前の出来事。ボルドンとアレクが意識を失ってここに戻ってきたことだ。

 

「やーねぇ、あの赤髪の子って何かとトラブルを起こすでしょ~。勝手にやる分はいいけど、私たちに迷惑がかかるのはやめてほしいわ~」

 

「おいおい、あまりそういうことを言うなよ。確かにちょっと間の抜けた子だが根はいいやつだぞ」

 

「いいか悪いかじゃないわよ、迷惑がかかることが問題なのよ。村長さんが集会をわざわざ開くくらいだから、何か起こっていないわけないじゃないの」

 

「確かにそうだが……、あの子も大変なんだ、親を亡くして、一人で頑張ってる。あまり攻撃的になるのはかわいそうだ」

 

 などと、今回の出来事について各々が考えを言い合っている。アレクに対して攻撃的になるものもいれば、保護的に立ち振る舞う者もいた。

 

「おっと、村長……と当事者のお出ましだぜ」

 

 青年が指さした方向から、村長とボルドン、そしてアレクが現れた。

 

「あー、みんな、わざわざ集まるよう言ってすまんかった。これから、今回のことについて今わかっていることを報告しよう」

 

「だから静かに頼む」

 

 三人の登場に、ひときわ喧騒が強くなる広間だったが、村長がゆっくりしゃべるのを一人また一人と耳を傾けていった。

 

「うむ、ではわしが聴取した内容をまとめよう」

 

「今回の騒動は知っての通り、キノコ狩りに向かったボルドンとアレクの二人が被害にあった」

 

「キノコの里に足を踏み入れた二人じゃったが」

 

 ここで、キタはボルドンの方をちらりと見る。事実は、ボルドンが独断でアレクを一人で行かせていた。しかし、混乱を防ぐためそれを伏せた。

 

「居合わせた魔物の群れ……、パワーゴリラの群れに襲われたのじゃ」

 

「そしてどういうわけか、二人は、パワーゴリラに村まで送られてきた」

 

「あとの展開は、皆の知っとる通りじゃな」

 

「ここまでで質問はあるか?」

 

 キタがそう呼びかけ、先ほどまで続いていた静寂が少しだけ解除される。すると先ほど談話していた青年が手を上げる。

 

「なぜキノコの里に魔物がいたんだ? あそこに魔物がいたなんて話聞いたことがない」

 

 それを聞いたキタは答える

 

「その通り、いないはずじゃった。危険はない場所じゃ、理由はわからん。ただ環境の変化で魔物も住処を変えたのではないか、と考えておる」

 

 手を上げた青年は手をおろす。説明しているようで、実態は分からない。聴衆の間では、村の周りで何かが起きているのではないのか、そんな不安が広がっていった。

 

 若くはない年齢の女性が手を上げずにしゃべる。

 

「そこの赤髪の子が何か余計なことをしたんじゃないの? いつも何かしら問題を起こすし、今回もその子の責任じゃないの?」

 

 間髪入れず続ける。

 

「それに、ゴリラがこの村まで運んでくれたんでしょ? 魔物たちは戦うつもりはなくて、攻撃したあなたたちから身を守ろうとしていたんじゃないの?」

 

「もしかしたら、あなたたちのせいで、魔物たちから恨まれて仕返しされるかもしれない! いやよ! 私は!」

 

 攻撃的な口調で繰り出された言葉が、アレクの体を打つ。背中に冷汗が伝い、体がわずかに震えているのがアレク自身にも分かった。糾弾される覚悟はしていた、しかし、わかっていても体は強張る。小さいころから冷たい目で見られていた過去を思い出し、汗が噴き出す。だめだ、と心があきらめかけたとき。

 

 おい、ボソッと呟きながら横に並ぶアレクを小突く。アレクが震えながら横を向く。

 

 大丈夫だ、そういうボルドンの横顔。どっしり構えていて、何が起きても動じない、そんな表情。そんな表情にアレクは救われた。

 

 先ほどのやり取りを思い出す、強くなると、そう宣誓した。ほかでもないこの人の前でそういったのだ。弱気ではいけない、気をしっかり持つのだ、とアレクは自分を叱咤した。

 

「あー、まあ確かにアレクにそういうところはあるがな、そういう印象を与えてしまうかもしれない」

 

 コホンとキタが咳ばらいを一度する。

 

「当事者から話を聞いて、話を聞き客観的に考えた結果、今回は事故のようなものだと儂は結論付けておる」

 

「それを踏まえた上で、この場を糾弾するとか責任を追及するとか謝罪をさせるとか、そういった目的で開いたわけではない、ということを、伝えておこう」

 

 動じず、淡々と言葉をつなげるキタ、そこには威厳が、皆を納得させる説得力があった。

 

 声を上げた女性は、何もなかったかのように、またキタの言葉を待つ。

 

「では、話を続けよう。今更じゃがこの集会の目的は、事態の説明、それと――みなの意思決定をすることにある」

 

 意思決定、それをきいた聴衆はざわつく。それは最高責任者であり村のトップであるキタが行うことであり、私たちがすることではないのでは。そんな声でざわつく。

 

「パワーゴリラじゃが、奴らに知性らしきものが見られている。この二人を襲撃し、村まで運んできた。それだけでなく、地面に『アス ヨル イク』と書かれていた」

 

「つまり、明日の夜、ちょうど24時間後、ここにパワーゴリラの群れがやってくる」

 

 キタがそう言い切ると、聴衆たちはひときわ大きく喧騒を起こした。のっぺりと張り付いた不安が破裂し、混乱になりかけようとしている。

 

「そこで!」

 

 混乱のなかでも、通る声でキタはぴしゃりと言い切る。一瞬静まる。

 

「皆には二つの道がある」

 

「この村に残るか、この村から出るか、じゃ」

 

「今からカスタムに応援をよんでも、明日の夜に間に合うかわからん。それどころかパワーゴリラがどういった目的でここに来るのかもわかっておらん」

 

「判断は、各々に任せる」

 

 やんちゃそうな男が立ちあがった。

 

「村の男総出で撃退すりゃあいいじゃねぇか! 俺たちがこの村をでる必要はねぇだろうよ!」

 

 威勢の良いやんちゃ男であった、しかし、キタは静かに首を横に振る、そしてボルドンの方へ視線を向けた。

 

「あー、それはいい考えだ。俺もそうするのはありだと思ってる」

 

「なら……!」

 

 やろうぜ、と続けようとしたやんちゃ男

 

「ただし、俺たちが全員戦闘慣れしていてレベルもあればの話だ」

 

「相手は十匹以上いる。体格は普通の人間の二倍以上だ。正直、俺は全く歯が立たなかった。殺されていないのが不思議なくらいだ」

 

 息をのむ聴衆。

 

「言っちゃ悪いが、この村で俺以上に腕の立つ奴はいない。勝ち目はない」

 

 好戦的だったやんちゃ男の威勢が徐々に萎えていく。

 

「今は、パワーゴリラが襲撃してこないと信じて村に留まるか、襲撃されるかもしれないと考え村から出るか、この選択をするときなんだ」

 

 何も言わず、座るやんちゃ男。沈痛な雰囲気が場を占める。どう楽観的に考えても楽しい気分にはなれない、皆がそんな表情をしていた。

 

「そういうことじゃ、みなはそれぞれよく考えてくれ、村から出るものは明日の朝までに準備をしておいて――」

 

「ボクなら、出来ます!」

 

 キタの発言を遮ってアレクが張り上げる。キタとボルドン、聴衆がみなアレクに注目する。

 

 その中でもボルドンはぎょっと驚いた顔をしていた。

 

「ボクなら、パワーゴリラを撃退できます!」

 

 聴衆は、アレクがまた間抜けなことを言い始めたと、嘲笑するもの、または困惑するもの、僅かに期待を見出すもの、と別れていた。

 

「おい、おい! アレク、お前何言ってんだ!」

 

 ボルドンが困惑半分焦り半分といった表情で声を上げる。アレクはそれを聞いて、懐にあった袋からあるものを取り出した。

 

「これを見てください」

 

 そういって、取り出したのはキノコだった。ボルドン、キタを含めてその場にいる全員はぽかんとしている。

 

「これは、松たけ子。最高の滋養強壮効果のある幻のキノコです」

 

 そういってアレクは一歩前へ踏み出す。その眼には自信が宿っている。

 

「人を超える力を身に着けることができるキノコなんです」

 

「これを使って、ボクがこの村を守ります!」

 

 胸を張ってそう言い切るアレク。それを聞く者たちは、半信半疑といった様子だった。それもそうだ、そんなキノコ聞いたことがない、アレクの言うことだ信じないほうがいい。また被害が大きくなるだけだ。……しかし、本当にそうなら……。希望を持つ者たちがいたことも確かだった。

 

「戦うことになれば、ボクが前に出ます。この村は絶対に守ります」

 

「そのキノコ、……本物なのか?」

 

 訝しげにボルドンが問いかける、ちょんちょんと松たけ子とやらを突っついている。

 

「間違いないです、珍しいキノコです。図鑑で調べました」

 

 そう自信満々にうなずくアレク。その眼はうそをついていない、ようにボルドンには感じられた。

 

 

 

 

 

 キタが病室を去った後のこと。

 

「そろそろ日暮れだな、領事館に行くぞ」

 

 アレクに声をかけ、部屋を出ようとするボルドン。

 

「先に、行っててください。ちょっと用事を済ませてきます!」

 

「そうか? 遅れんなよ」

 

 そういって、部屋を出るボルドン。アレクは一つの袋を抱え、静かに立ち上がった。

 

「ふむふむ、こんなキノコがあったんだなぁ~」

 

 ぽけぇ~としながら図鑑を読むアレク、そう彼は図書庫に来ていた。

 

 松たけ子の説明が書かれているページを開いている。大きな外見的特徴があり、ほかのキノコと特徴がかぶっていない、と記述されていた。

 

「間違いなく松たけ子、しかも激レア……。あぁボクの才能が怖い……、ぷるぷる」

 

 採取しただけなのに、まるで自分の手柄かのような間抜けなことを言いながら記述に目をやるアレク。そこには、摂取すると超人的な力を発揮する滋養強壮効果があるが、その後死んでしまうということが書かれている。

 

「これを食べればボクでも強くなれる……!? って死んだら意味がないよ……」

 

 淡い期待は浮かんだ直後すぐはじけた。それを何より落ち込んでいるアレクだった。

 

「なになに~……、摂取量を調整することで死を回避することができるのではといわれているが、その希少性から研究が進んでおらず仮説の域を脱していない……」

 

 これは

 

 もしかしたら、もしかしたらという淡い期待が再び浮上してきた。

 

「ボクも強くなれる……?」

 

 力を求める青年がとりこになるのにそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 集会は終わり、広間から人がぞろぞろと出て行っている。そんななか、残っている人影があった。

 

「いずれにせよ、わしは残る。パワーゴリラがどのように動くかわからんからな。対話を要求する可能性もある」

 

 キタが少々疲れた様子でいた、明日の動きを説明しているようだった。

 

「アレク、お前はその松たけ子とやらで万が一の時は対応してくれ」

 

 アレクは、はいっ、と元気よく返事をした。キタとは対照的にまだまだいけるという感じだった。キタは、これが年の差か、と内心思わずにいられない。

 

「おれも残るぜ」

 

 ボルドンがそういうと、キタはゆっくりとボルドンの方へ向かい直る。

 

「ボルドン、お前には避難民を先導してほしい」

 

「おい! それはないぜ!」

 

 思わず食って掛かるボルドン、村の一大事。村から離れるなんて考えられない、守らなければ散っていった仲間たちに手向けができない……。その決心がボルドンを動かした。

 

「理解をしてくれ、適材適所じゃ。村だけじゃない……、人を、命を、守れなきゃ、意味がない」

 

 そうだ、避難がうまくいく保証はない。だったらそちらに戦力を割く必要がある。多少の魔物程度ならボルドンなら楽勝で撃退できる。パワーゴリラが強すぎるだけで、ボルドンは実力を持っているのだ。

 

「……わかった、俺に任せてくれ。……アレクよ、村はたのんだぞ、俺は俺のすることをやる」

 

 アレクをまっすぐ見つめて、硬い意志を伝える。お互いの弱いところを見せあった仲の二人。二人の間には信頼があった。

 

「……! ボルドンさん! ボクに任せてください!」

 

 強い言葉で、熱く答えるアレク。

 

「よし、じゃあアレクは朝儂のところへ来てくれ。……ボルドンよ、そっちは任せた」

 

 三人は頷き合った。一蓮托生でつながった男たちがいた。

 

「……今日はもう遅い、各自休まれよ」

 

 そういって、キタは解散を告げる。この老体、平和なナジャコリャ村でここまで夜を更かすことはまれだった。つまり、眠くて仕様がなかったのだ。あくびを噛み殺し、そう伝える。そこに

 

「よるおそう、もうしわけないんやけど。ちょっと、まってもろうてええかなぁ?」

 

 ポルトガル訛りの強い声が、扉の外から響いた。それを聞いてキタは今夜は眠れそうにないな、と、だれにも気づかれないくらい小さく頭を振った。

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