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第3章
ーBlack Lagoonー
第5話
ー選択は時に迫るー
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ーーー時に選択とは迫られるものである。
ーーー即座に選択が、命運を分ける。
ーーーそれが苦渋の決断だとしても。
ーーー選択しないのであれば。
ーーー可能性はない。
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○とある港○
魚雷艇が停泊した港で、俺は魚雷艇から3人の人間を見下ろしていた。
「ぐっ」
1人は逃し屋………といっても、依頼者を拳銃で撃とうとしたから、廃業する気満々かもしれんが。
「………」
そして、逃し屋を押さえつけているのは、部下として配属予定の無口な男であった。ぶっちゃけ、JP's隊員である。
『[これは、どういうこと?]』
「お前には選択肢が3つある」
俺は指を一本立てる。無論ロックに通訳してもらう。
「1つ、この場でこの男の手によって射殺される。または、バラライカの報復を恐れた俺の部下が改めてお前を殺す」
『[クスクス………笑えないわね]』
少女が銃に手をかける。
「2つ、逃走する。まあ、追っ手は付きまとうだろうが………死ぬなよとしか言いようがないな」
バラライカの手から逃れられるとは思えないが………まあ、元々逃走しようとしてたからそれでもいい気はするが。
「3つ、"俺の手足となって俺の組織に所属する"」
『[どんな組織かしら?]』
「犯罪組織ではない裏組織とでも言っておこうか?」
だって、公表されてるのは名前のみの機密組織だものよ。
『[………まあ、死ぬよりはマシかしらね]』
少女は肩をすくめる。
『[【グレーテル】よ。よろしくお兄さん]』
「ソウだ」
逃し屋から拳銃を奪ったJP's隊員が、グレーテルを連れて行く。
『[おい、坊主。バラライカを説得できる材料はあるんだろうな?]』
黒人の大男が俺に問いかける。
「まあ、もしもの時は"力尽くで"うまくやるさ」
俺は肩をすくめる。
「それに、ここは悪徳の街。この街ならではのやり方もあるだろう?」
ニヤリと笑みを浮かべる。
「まあ、この前の貸しと帳消しにしてくれると、おっかない人に追いかけ回されないで助かるんだが………」
『[そのおっかないバラライカから電話だクレイジーボーイ]』
「クレイジーボーイって………」
俺は電話を受け取り、ロックへと渡す。
「はい」
「え? 俺⁉︎」
ええ、だって英語喋れないもの。
「えっと、『[話は聞いたわ。やってくれたわねソウ]』」
「申し訳ないバラライカさん。我々も人員不足でね。 ああいう良心の呵責なく人を処理できる人間というのは我が国では大変に貴重でね。 ジャパニーズマフィアも人を殺そうとするだけで躊躇っちまう」
「『[それでは、私の怒りはどうすればいいのかしら?]』」
「部下1名の命と死んだ双子の片割れ、それと"バラライカさん、あんたの命でどうだい?"」
「『[⁉︎]』」
俺はケラケラと両手を広げて笑う。
「俺が事務所に行った時に何もしなかったとでも? 餓鬼だと油断したな。 いや、忘れたかな? アフガン帰還兵元ソ連軍大尉殿。武器を持って立ち向かってきたのは大人だけではなかっただろう?」
このくらいの調査は、電話一本で取り寄せられるものだ。 俺は情報を使い、相手を追い詰める。
「『[貴様………]』」
「机の下を見てごらん? 紙が貼ってあるだろう? ああ!触らないようにしろよ? 爆発するからな」
ーーー【起爆札】。
陰陽術の一種で、俺が習った数少ない陰陽術である。念を送り込めば爆発するし、調節すれば触れるほどの衝撃で爆発させる事が可能だ。
まあ、小さい花火程度ではあるのだが。
「(故にこれはブラフ。ハッタリの類だ。嘘は言ってないが真実も言っていない。 さあ、口八丁といこうか)」
舌で唇をぺろりと舐める。
「『[やるじゃないのソウ………でもねソウ。こんな紙じゃ爆発なんて]』」
俺は指を鳴らす。
「ん?何か今爆発したような音が………」
電話を持っているロックが呟く。
「デモンストレーションには満足いただけたかな?………ソファーを爆破した。といってもごく最小レベルの爆竹程度の爆発ではあるけどな」
そう、俺はソファーにも起爆札を忍ばせていた。
「『[なるほど、嘘ではないようね………]』」
「さて、条件は出揃った。 俺はあなたに選択を迫ろうバラライカさん」
「『[…………]』」
「返答はいかに?」
しばらく無言が続く。
「『[………はぁ。まあ、ダッチが逃すのに成功させたら見逃すつもりだったし、仕方ないわね。でも、あの小娘をロアナプラには入れないようにしなさい。 来たのがわかったら小娘の命はないと思いなさいな]』」
「あいあい」
俺は右手をぷらぷらと振る。
「『[それと今度私ともディナーかランチに行きましょう。同じ日本人なのにロックと真逆のソウ………少し興味があるわ。あなたの所属組織とかにもね]』」
「ご自由に」
JP'sを探られたくないが、日本の裏組織ということぐらいは伝えても構わんだろ。
「『[ああ、それとこの爆発物どうしたらいいの? こんな方式見たことないけれど]』」
「ああ、筆で………」
「『[筆なんてロアナプラにはないわよ?]』」
「「『[…………]』」」
「帰ったら至急取り外します」
「『[よろしい]』」
慌てて帰って爆発物処理をやる羽目になった。まあ、自業自得ではあるが。
「はぁ、面倒」
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それからの話をしよう。
あれから危機が去ったロアナプラは、警戒態勢を解除。 いつもの混沌とした街が戻っていった。
バラライカは俺を恨む様子はなく、チャンさんと同様に良好な関係を築いた。
………いや、一応公務員がマフィアと付き合うのもどうかとは思うが、この街だもの。しかたない。
そして、この街についてから"2週間"後………俺はロアナプラを後にした。
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○葬式場○
坊様のお経が会場に響いている。
遺影には父と母が微笑んでいた。
「に、にーに?」
事を理解できていなそうな妹のはやてが、俺の袖を掴む。
「………すまないはやて。俺が家にいれば………そばにいれば」
俺は拳をきつく握り込む。血が出るほどに。
「必ず、お前だけは守るから………」
「にーに………」
ーーー車を運転中の交通事故。それが父と母の死因だった。
おかしいとは思う。 母は運転できないし、父は運転が下手だから運転したがらない。車を運転中の交通事故というのはありえない。
そう警察にも伝えたが、結果は交通事故として処理された。
「(………死者の蘇生、か。やはり考えてしまうな)」
俺に与えられた特典の元となったゲームであるデビルサバイバー2の世界には、蘇生魔法スキルも存在していた。
しかしである。それは神の領域とされ、神により封印されている。使いたくても使えない。
「(すまない。父さん母さん)」
俺は謝る。
「(だが、これだけは約束する。はやてはどんなことがあろうとも俺が育てる。金に不足はないし、仕事の給料もある。どんな事をしても俺が)」
この日、八神家は俺とはやての2人家族となった。
父の転勤のために住んでいたアパートは引き払い。俺たちは昔住んでいた鳴上にある家に帰ることにした。
ーーーまさか、あんなことになるとは知らずに。
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エンド
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第3章完結です‼︎
新章に悩んでいます。よければ参考までに意見をお聞かせください。
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知識がなくとも、とらは
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異世界へ、GATE
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魔法足りてないよ、りりなの
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もっと魔境へ、??ルート
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いやいやもっと別の、その他