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第4章
ーリリカルなのはー
第3話
ー我らは裁くー
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ーーーJP'sは、超法規的組織である。
組織的ランクで言えば警察や消防に自衛隊などよりも上である。
そして同時にJP'sは、警察と同様に調査や取り調べ、身柄の確保逮捕などの権利を有している。まあ、さらに言えばーーー【殺しのライセンス】も所有している。
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○とある廃墟ビル前○
「まあ、つまり、俺達も悪事は見逃せないってわけさ」
俺はハンドガンに弾倉を入れる。
「まあ、それだけが理由じゃないが。 全殺しだ」
俺は周囲にいる職員達に語りかける。
「さあ、JP's局員諸君………
ーーー正義の時間だ」
「「「「はっ‼︎」」」」
☆☆☆☆☆☆☆☆
○語りside○
☆☆☆☆☆☆☆☆
廃墟となったビルの中。普段全く人の気配がないそこは、何人もの男達がいた。
そして、その奥に3人の幼女が捉えられていた。
「なんなのよこいつら‼︎」
【アリサ・バニングス】が簀巻きにされながらも、怒りの声を上げる。
「あ、アリサちゃんおちついて。あまり刺激しないで」
【月村 すずか】がアリサを宥める。
「なんで私だけギャグ漫画的縛り方やねん⁉︎」
ギャグ漫画のように、異様なほどぐるぐる巻きにされた八神 はやてが、ツッコミを入れる。
そう、3人は図書館からの帰りに拉致されたのだ。犯人は目の前にいる男達。
「ちっ、うるせえな」
男の1人が舌打ちする。
「まあ、いい。旦那さっさと済ませてくれよ」
「人間風情が………まあいいさ」
男達の奥から、中年の男と付き添いのメイド3名が現れる。
「氷村………叔父様」
すずかがその男の名前を呼ぶ。
「ふん、月村の小娘が」
氷村は見下すような視線をすずかに向ける。
「下等種族に媚び売って友達か? やはり人間などという下等種族に媚びを売る月村などよりも、夜の一族のトップは我が氷村がふさわしい」
自分に陶酔するかのように氷村は言葉をこぼす。
「(夜の一族?)」
ふっと、はやての中に兄の言葉が蘇る。そう、グレーテルと話していた時に出た単語に夜の一族があったはずだ。
「よ、夜の一族?」
「や、やめて!氷村叔父様‼︎」
「そうさ‼︎ 僕とそこにいる月村 すずかはなぁ‼︎ 夜の一族‼︎ "吸血鬼"なのさ‼︎」
その瞬間、すずかから涙と声にならない悲鳴が上がる。
「ーーーなるほど、夜の一族とはそういう存在か」
「「「「「っ⁉︎」」」」」」
全員が振り向くと、そこには黒いコートを着た青年が立っていた。顔は黒い帽子で見えず、たとえ見えたとしてもガスマスクをかぶっていてその顔は見えない。
足元には2人の見張りだった男達が倒れていた。
「ふん、誰だか知らないが………そうさ‼︎ そうだとも‼︎ 人間という下等種を遥かに上回る強靭な肉体‼︎ 頭脳‼︎ そして吸血衝動に狩られ、人の生き血を啜る選ばれた種族‼︎ それが夜の一族だ‼︎」
「なるほど、調査の手間が省けて助かる。 おまえの頭脳はあれだがな。 まあ、そのかわり手早く済ませよう」
青年は右手を上げる。
「突入」
瞬間、青年の後ろから飛び出た黄色い制服を着た男2人が、アサルトライフルを乱射する。
ーーーダダダダダダ‼︎
「ぐぁ⁉︎」「ひぎっ⁉︎」「かぺ」
男達が次々と殺されてゆく。
「いいことを教えてやろう。この地球上で最も残酷で恐ろしく、そして"殺すこと"に特化した生物こそが人間だ」
青年は拳銃を取り出して発砲する。
「く、クソ‼︎ おい、奴を殺せ‼︎」
メイド達が青年に攻撃するーーーしかし。
「邪魔だ【なぎ払い】」
メイド達は一気に壁に叩きつけられ、体から火花を散らせさせたまま壁に埋まる。
「ぼ、僕の自動人形が………」
「あ?人間じゃなかったか。 まあ、証言を回収するにしても、こいつらはいらないな」
青年は氷村に拳銃を向ける。
「人間は古来から貴様らのような人外に対抗するために備えをしてきた。いかに人間を守るか、いかに人外を殺すかーーーそして、善良な、または有益な人外と共に生きていくかとな」
青年が携帯を操作すると青い光に包まれ、それが現れる。
「【幽鬼:クドラク】」
『あっひゃっひゃっひゃっ‼︎』
青白い顔色の男が、大笑いをしている。しかしその場の全員に分かった。その男が人間ではないと。
「今日だけ吸血を許可する。吸い殺せ」
『ヒャハハハはは‼︎』
「や、やめ⁉︎」
クドラクの牙が、氷村の首に刺さる。
「ぐぁあああああああああ‼︎ や、やめ、やめでぐ…………」
ドサリと氷村は地面に落ちる。すでにその体から命は失われていた。
「状況終了」
「他の場所も確認しろ。まだ残党が残ってる可能性もある」
「「「はっ‼︎」」」
黄色い制服を着た人間達が、ビルの中を探索する。
「さて、次は君達か」
すずかの肩がブルリと揺れる。
「やめて‼︎」
そんなすずかの前に、アリサがおどり出る。まだ簀巻きにされているアリサがである。
「その状態で、自分をこんな境地に招き入れたかもしれない奴をかばうか………娘っ子、どういうつもりだ?」
「すずかが吸血鬼だろうと夜の一族だろうと関係ない‼︎ 私はすずかの親友なのよ‼︎」
「アリサちゃん………」
「ごめんね、すずか。でもこれだけは覚えておいて。
ーーーあなたが何者でもどんな秘密があっても受け入れる。なんたって"親友"なんだから」
「アリ、サちゃ…………うぁああああああああん‼︎」
すずかがアリサの胸元に頭を埋める。
「いやーいい話だなぁ」
青年が拍手する。
「さて、まずは縄を解くとしようか」
クドラクが爪で糸を切っていく。
「これから君達を解放する。 一応街中までは護衛するからそのあとは………ん?」
青年が注意を別の場所へ向ける。
「隊長?」
「戦闘用意。外の奴らがやられたようだ」
「「「っ⁉︎」」」
中にいた黄色い制服の人間達が銃を構える。
「最優先防衛対象少女3名」
「「「はっ‼︎」」」
その時、何人かの人間達が部屋に侵入してくる。
「すすか‼︎ アリサちゃん‼︎」
女性が大きな声で2人の名前を呼ぶ。
「身内か………」
青年達が警戒を解く。
「3人とも無事だ」
「3人?」
女性が名前を呼んだ以外の少女ーーーはやてを見る。
「あ、図書館ですずかちゃんと仲良うなった八神 はやてです」
「あら、巻き込んでしまってごめんなさい。でも、無事でよかったわ」
女性は3人を両手で包む。
「それで、貴方達は………」
「日本の裏組織とでも言おうか? まあ、政府の裏の顔という奴だ」
青年は説明にならない説明を行う。
「今回は別件調査中に誘拐事件を目撃したために、介入させてもらった」
「それは、ありがとう」
青年はフゥとため息を吐き出す。
「まあ、結局はその件とも関わりがあったわけだが………なあ、夜の一族さん」
「「っ⁉︎」」
女性の背後に立っていた剣を持っていた青年が前に出る。
「なぜその名前を………」
「1つはそこの死体が生前に語ってくれたというのもあるが、最近ここら辺で起きている事件を調べていて、昔の文献に夜の一族の記載があって調べていたんだ」
青年は肩をすくめる。
「まあ、そっちの事件もある程度のことはわかった。誘拐事件も解決したし、これで退散するよ」
「待ちなさい‼︎ 貴方達には少し話があるわ」
「こっちはないぜ? まあ、夜の一族の存在を知ったことによる守秘義務というところか? 安心しろ。我々はお前達のような人外達を相手にするために作られた組織だ。 今更吸血鬼の一族が1つ2つ増えたところでなんてことはない」
青年の前にクドラクが降り立つ。
「一族に関することは報告しない。今回は一般家庭の子供達が誘拐された事件として処理する………それで不満ならば、もう一度殺戮せねばならない。今度は助けた命もな」
青年から殺気が放たれる。
「………分かったわ。相互不干渉といきましょう」
「ああ、それで構わない」
クドラクが消える。
「一応、またこちらから人を派遣しよう」
「分かったわ。そういえば、貴方達の組織名を聞いてもいいかしら?」
「ーーー"JP's"」
こうして、1つの事件が終わった。
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○語りsideEND○
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エンド
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