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第4章
ーリリカルなのはー
第4話
ー誕生日ー
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我が八神家の誕生日は家族のみ盛大に行う。それは親が生きていた頃からの家のルールだ。
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○八神家○
「「お誕生日おめでとう‼︎」」
俺とグレーテルがクラッカーを鳴らす。
「にーに、クラッカー鳴らすのもう5回目やで」
「何回鳴らしても一向に構わん‼︎ 何せはやての誕生日なんだからな‼︎ わっはっはっは‼︎」
俺は大きな声で笑う。
「そうよ、はやてちゃん。 祝い事はしっかりしないと」
そう言いながらグレーテルがケーキを皿に乗せる。
「今日は深夜までこのテンションで行くぜー‼︎ なぁ、グレーテル‼︎」
「いっえーい‼︎」
「にーにアルコール飲んでないやろうな?テンション高すぎちゃう? 未成年飲酒は犯罪やで? グレちゃんもテンション高いし」
はやてが呆れている。
「何を言うんだはやて‼︎ 誕生日は祝って騒いでナンボだろ‼︎」
「いえーい♪」
そう、これぞ八神家のルールだ‼︎
「それに今後しばらく忙しくなるから、その前にな」
俺はコーヒーを飲む。
「忙しく?」
「ああ、まだ先の話だが………まあ、色々とな」
そう、リリカルなのはもそうだが、JP'sの方も忙しくなるらしいのだ。
「(俺はあとどれだけこの子のために一緒にいてやれるのだろう………)」
俺の両手はもう真っ赤に血で染まっている。いつかは裁きを受けるかもしれない。
ーーーだがしかし、裁きを受けるその時までは、この子のために選択肢を残してあげたい。
「にーに?」
「ん? ああ、ケーキ食べたら終わりにするか。明日もあるしな」
俺達は誕生日会を楽しんだ。
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○翌朝○
「ふぅ………」
俺は緑茶片手に、息を軽く吐き出す。ついでに近くに立っていたグレーテルが臨戦態勢なのをチラ見で確認する。
「つまり、はやてが主人となった魔導書から召喚されたのが貴方達ヴォルケンリッターと」
俺は目の前に並ぶヴォルケンリッターの戦士達を見る。
「はい、主はやての兄上。我々は主はやてを守るために騎士です」
ピンク髪のポニーテールな女性が、頭を下げる。
「えっと、にーに………」
はやてが不安そうに俺を見る。
「………まあ、はやてに仕えるというなら摩訶不思議な存在だろうが問題ない」
それにこれで原作が無事始まるし、何よりこの前の誘拐の一件もある。護衛人員はいた方がいい。
ああ、ついでにはやてをみすみす誘拐された原因は、グレーテルがたまたま別任務で離れていたためである。
つまり、護衛にこいつらが加われば、かなり安全になる。
「資金は少し厳しいが、最近足長おじさんが支援してくれてるから大丈夫だろう」
俺は緑茶を一口飲む。
「ようこそ八神家へ、ヴォルケンリッター」
こうして、ヴォルケンリッターの4人が八神家の新たな一員となった。
「にーに、意外と慌てへんな? こんなこと起きたら混乱すると思うんやけど」
「………はやてには言ってなかったが、俺の所属はJP'sという組織でな。 霊的国防組織だ。こう言う異常事態は何度か遭遇している」
「霊的国防組織?JP's?」
はやてが訳が分からなそうな表情をしている。
「まあいいさ。 こういうのが慣れっこだってことが分かればな」
俺は軽い笑みを浮かべる。
「さて、そうとなれば今日は鍋にでもするかね」
「わーい♪ にーにの鍋大好きやで‼︎」
「だが、その前に………」
俺は目の前のピンク髪の騎士に視線を定める。
「お前達のチカラを見せてもらう」
「はい」
俺とピンク髪の女が立ち上がり、一般家庭よりも広いであろう庭に出る。
「ハーメルン」
『バリアジャケット展開』
俺の服装が軍服へ変わり、右手にはラッパが握られている。
「バリアジャケット⁉︎」
「ああ、そう言うんだったか? こちらとしても未知の技術でな。まだ俺くらいしか持ち合わせていないよ」
庭に陣取った俺は、ラッパを構える。
「JP's所属八神 総司………参る」
「将【シグナム】………参る」
ラッパに口をつける。
「≪ノイズパレット≫‼︎」
音の弾丸が、シグナムに放たれる。
「っ⁉︎」
しかしたやすく回避される。
「………不可視の弾丸、か」
「よく分かったな。俺の攻撃は"音"だ。ゆえに不可視」
同時に、俺の魔法色自体が無色透明らしく、俺の攻撃自体避けることが難しいのだ。
「なんと………」
「いやしかし、初見で避けられるとは思わなかったな」
初見殺しとも言えるこの技を避けた人間は、今現在皆無だ。悪魔でも、基本的に屠れる。
それが避けられるとは。
「やはり、只者ではないか」
俺はラッパを改めて構える。
「………ふぅ」
一呼吸入れたシグナムが構える。
「ハーメルン」
『YES、マスター。 モード【アサルト】』
ハーメルンが変形していく。そしてその形を長細いラッパに変える。
「≪ガトリング・ノイズパレット≫‼︎」
1分で625発というとある機関砲と同等の発射速度で放たれる音の弾丸が、シグナムに襲いかかる。
「はぁっ‼︎」
しかし、シグナムの剣がすべての弾丸を撃ち落とす。
「直線的な攻撃など‼︎」
「ぐぅ⁉︎」
そう、このアサルトモードはガトリングガンのように魔法弾を吐き出せるが、その欠点として誘導はできない。まっすぐ直線にしか発射できないのだ。
「しかし、それでもこの弾丸を見切るか‼︎ ガトリングガンと同等の発射速度の魔法弾をっ‼︎」
「はぁあ‼︎」
シグナムは弾丸を弾き続ける。
「ーーーちっ」
俺は弾丸を吐き出すのをやめて、モードを通常に戻す。無駄弾撃ちすぎて魔力を消費しすぎるわけにはいかない。
「………守りについてはやるようだな」
「そちらこそ、嵐のような猛攻………見事な腕です。それに魔力量もなかなかの様子」
「では」
「ええ」
俺はハーメルンの変形を開始する。
『ロードカートリッジ。モードマーチ』
薬莢がハーメルンから吐き出される。
「ロードカートリッジシステム⁉︎」
「ほう?知ってるのか?まあいい………来い‼︎ 将シグナム‼︎」
「参る‼︎」
シグナムが斬り込んでくる。
「≪ノイズシフォン≫‼︎」
音の砲撃が、至近距離のシグナムに放たれる。
「はぁああああ‼︎」
音の砲撃と剣がぶつかり合い、爆発を起こす。
「ぐっ」
爆発の勢いを体で受けていると、首元に冷たい物が当たる。
「………全力ではなかったとはいえ、俺の猛攻を耐えて、その上首元に剣を当てるか。あっぱれとでも言っておこうか?」
「ありがたき幸せ」
両者は離れる。
「改めて………ようこそヴォルケンリッター」
こうして、八神家に新たな仲間が加わった。
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エンド
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