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第5章
ー戦姫絶唱シンフォギアー
第2話
ー急転直下ー
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○響精神世界○
おいっす、給料の前借り(物理強行)を行った総司だ。
「いやー、見事に混乱しているな、原作響は」
映像からは何これと現金50万を手にして慌てている様子がありありと伝わってくる。
なお、筋肉痛に苦しみながらである。うん、体は共用なのよな〜。
「それは、急に手元に50万円と好きに使ってって書き置きがあればねぇ………」
「ま、兎にも角にもこれで少しの間は持つだろうよ」
それに、今回の襲撃で基地内の月を破壊するための兵器【カディンギル】にダメージを与えられたはずだ。
これでボスキャラの【フィーネ】の月破壊計画は後退したはずだ。
「(あとは原作響だが………ちょいちょい助けていくしかないか?)」
問題は金である。生活費がなければあるのは良くてホームレス生活か悪くて死が待っている。
「(まあ、最初は大きく動くかね)」
俺はニヤリと笑みを浮かべた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
○原作響side○
☆☆☆☆☆☆☆☆
ーーー私の中には私以外の人間がいる。
気付いたのは時々記憶が飛んでいたからだった。
気付いたら大金が手の中にあった。気付いたら日本を出国してロシアの港に着いたところだった。気付いたら私を誘拐しようとしたマフィアが目の前で倒れ伏していた。
そして気付いた。私の中には別の人格があることを。
だから、試しに交換日記をやってみた。結果は上々だった。
ーーー私の中には2つの別人格が存在した。
1人目は"ソウ"と呼ばれる男性人格。大金を手に入れたりロシアへ行ったりマフィアを倒したのはこの人格だそうだ。本人曰く、荒事に慣れているらしい。
2人目は【リツ】と名乗る女性人格だ。頭が良くって、交換日記2号(ほぼ勉強ノート)で私に勉強を教えてくれている。
この2人のおかげで、私は数ヶ月の間無事にロシアで生活できている………いるのだけれども。
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○マンションの一室○
「どうしてこうなったんだろう………」
「どうかされましたか?ボス」
机に向かって勉強する私の席から少し離れた場所で、チェスをしているロープ姿の男達の1人が私に問う。
「な、なんでもないよ」
「そうでしたか、失礼しました」
ロープ姿の男は、明らかに一般人ではないマフィアなロシア人にロシア語で語りかけている。
「(もう、訳わかんないよ⁉︎)」
リツの話によるとロープ姿の男達は錬金術師と呼ばれる異端技術を使う者で、ソウによるとマフィアなロシア人達は元ロシアンマフィアの構成員達らしい。
んでもってその2人によると、彼らは【ジプス】という裏組織の構成員であり………その、なんというか………私の部下とのことらしい。
うん、正直訳がわからないけれども、簡単に言えばリツとソウの所為だった。
まず私を誘拐しようとしたロシアンマフィアを組織ごとソウが破壊。残党が暴れられたりしても困るので、かき集めて自由に動かせる組織"ジプス"を作り上げた。そして、そのジプスの販売網で、リツが作った異端技術アイテムを売っていたら、フリーの錬金術師達が何人かジプスに加入した。
うん、ちょっとよくわからないデスネー。
「(オマケに少しづつではあるけど、勢力を拡大させ続けているのがまた怖いよ〜)」
ロシアンマフィアだけではなく、最近ではチャイニーズマフィアやコリアンマフィアにヤクザまでジプスに加入し始めているらしい。さらには、錬金術師の組織がジプスと協力関係を構築しようとしていると報告も受けた。
「(世界はファンタジーで溢れてたんだなぁー)」
「あ、そうだボス」
「な、何かな?」
錬金術師の構成員が私に書類を渡す。
「ソウさんに頼まれていた日本行きのチケットが用意できましたので渡しておきますね」
「えー、私知らされてないんですけど………」
「そうでしたか。5日後に日本に向かうとのことでした。護衛に錬金術師1名とマフィアが2名付きますのでご安心を」
「う、うん」
私はチケットを受け取る。
会話で分かったかもしれないけど、彼らは私が多重人格であることを理解しており、おまけに派閥が存在しているらしい。
まずマフィアを中心とした【ソウ派】。最も数が多く、野心家や危険思考の人間もいる。ソウによると単純な荒事担当らしい。ソウに忠誠を誓っているが、弱いところを見せれば多少噛み付いてくるかもしれないとのことらしい。
次に【リツ派】は、錬金術師やインテリ系マフィアの派閥で、この組織で一番稼ぎのある派閥だ。リツをトップと考えて行動しているようだ。
そして、考えたくもないけど………【立花 響派】。私に忠誠を誓う派閥だ。彼らが言うには、リツもソウも私が手綱を握っているとのことらしい。
「(いやいや無理だからね⁉︎)」
手綱どころか、2人がいなければのたれ死んでいるところである。
「(それにしても日本、か。取引か何かかな?)」
日本と聞くと思い出す。
お母さんは元気だろうか?おばあちゃんは無事だろうか?お父さんは家に帰ってきたかな?引っ越した親友は新しい友達はできただろうか?
「………」
正直日本に帰るのは怖い。でも、海外にずっといるのもストレスが溜まる。
「(そういえば、最近日本のニュースとかも見てないな………どうなったんだろう?)」
学校については元の学校はもう強制退学だと思ったから、ソウが裏から手を回して、ロシアの日本人学校を卒業"したことにした"らしいから現在は中卒………ということになる。
「(はぁ、憂鬱だなぁ)」
引っ越してしまった親友は元気かな?ご飯をしっかり食べてるかな?
「(ま、知ってるところに行くとは限らないよね?)」
私は今日の分の勉強を終わらせた。
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○その頃精神世界○
「お前、どうしてシンフォギアの異端技術が頭に入ってることを言わなかった?おかげでいい商売になっているが………」
総司ことソウが頭を抱える。
「言い忘れちゃった。テヘペロ♪」
転生者の立花 響ことリツがテヘペロとかた目をつむりぺろりと舌を出す。
「まあ、これで原作までに戦力も整えられた」
「【パヴァリア光明結社】まで接触してくるとは思わなかったけどね〜」
パヴァリア光明結社は錬金術師の秘密結社である。
「動向を掴むには丁度いいさ」
総司はニヤリと笑みを浮かべる。
「ーーーさて、そろそろ始めよう。原作をな」
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○5日後○
○日本○
懐かしい祖国の地。もう2度と来れないかもしれないと思っていた日本に私は入国した。
ーーー【八神 響】という偽名で。
「(いやいや、入国審査雑ゥ‼︎)」
違うのは苗字だけである。日本の入国管理システムは大丈夫なのだろうか………。
「(………ま、私には関係ないか)」
黒いスーツにコートを着た私は、背後にジプス構成員の護衛を引き連れながら街を進む。
「(今日は自由にしていいってソウ達も言ってたし、どこか日本料理でも食べに行こうかな♪)」
ロシアで日本食を食べることもあるけど、やはり日本食とは味付けが少し違うのだ。
「(うーん、どのお店がいいかな〜♪)」
幸いにもお金には困っていない。というよりもリツの異端技術アイテムがかなりの収益を上げていて………正直言って昔のお父さんよりも懐は暖かいと思う。
「(ん?【フラワー】?お好み焼き屋さんか………うん!ここにしよう‼︎)」
私はのれんをくぐった。
「ーーーひ、びき?」
「ん?」
見ると、お好み焼きのたれを口元に付けた親友がいた。
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○原作響sideEND○
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エンド
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