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第5章
ー戦姫絶唱シンフォギアー
第5話
ー響チャンの伝説ー
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○??side○
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○日本○
○ホテルの一室○
目の前で俺よりもいくつも年齢が下の少女が、椅子に腰をかけてテレビを見ている。
「…………お前達には護衛を命じておいたはずだが?」
「「「ッ⁉︎」」」
その冷たい声に俺達は震え上がる。これはソウさんの声だ。この冷たい感じは間違いない。
ソウさんは俺の所属するジプスという組織の大幹部だ。そして最も残忍で冷酷で酷いまでに強いのがこの人だ。
1人でいくつものマフィアを潰して傘下に加えたその手腕は【鬼子】という異名を与えられるほどだ。
「相手がたとえノイズだろうと"戦えるだけのチカラ"は与えたはずだが?」
「も、申し訳ございません‼︎」
護衛班のリーダーが頭を下げる。
「………まあ、今日は気分もいいし、記念日だ。恩赦としておこう………恩赦とは少し違うか?」
んん?とソウさんが頭を捻らせている。
「っと、そんなことはいいんだ。これからジプスはとある組織と連携を取る。戦闘部隊を、対ノイズ部隊を日本へ送るよう本部に伝えろ」
「は、はい‼︎」
リーダーが電話を手に取る。
「これから面白くなるぞ♪お前達にもしっかりと働いてもらうぞ♪」
今までにない高いテンションのソウさんが日本のドラマにチャンネルを変える。
「(あ、これ絶対やばいやつ)」
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○下っ端マフィアsideEND○
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おいっす、やっと物語が動き出したソウである。いや、総司である。
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○響精神世界○
「さて、この後だが………」
「原作開始だね」
精神世界でリツがコーヒー片手につぶやく。
「で?今後はどう動く?」
「全体的には響が原作通り戦うって流れかな?ただしジプスの支援と私達による強化が入るけどね♪」
「確かにあれは驚いたな………」
どうやら、原作響は俺の戦闘能力を使えるようになったらしい。ガングニール展開中のみという但し書きは付くが。
「≪メギド≫の黒い炎をまとうとは、恐れ入った」
「調整も万全だよ♪」
「本当にガングニールは大丈夫なんだろうな?」
「勿論だよ♪ 予想外のことが起きない限りは、侵食が進むことはないよ」
「そうか………」
原作響の胸の中にあるガングニールは、原作では響の体を蝕みその身体を聖遺物に変えんとした。それはつまり響の死を意味する。
現在、その侵食はリツの手で止められていた。
「感覚的に俺達の"タイムリミット"も近い………やれることはやっておきたい」
「先ずは第2課との関係構築か………まあ、うまくやろう♪」
「んじゃ、俺はいっちょ"お迎え"に行ってくるかな?」
俺は再び体の主導権を握った。
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○空港○
○エントランス○
空港の広いエントランスで待っていると、十数人の人間達が俺の前に現れる。
「はぁい、元気かしらリツ?それとも立花 響?」
ピンク髪の女が俺に挨拶する………が、見当違いである。
「よく来た。それと俺はソウだ」
「ッ⁉︎ ………貴方がソウ?初めましてね」
女は驚いた様子で、しかしなんでもないかのように挨拶し直す。
「ソウさんデスか?」「大幹部の………」
ピンク髪の女の後ろに立っている少女2人が俺をじーっと見る。
「………飴ちゃん食うか?」
「いただくデ〜ス♪」「ちょっ⁉︎」
2人に飴(ミルクチョコレート味)を渡す。
「ありがとう………ところで、いつも飴を持ち歩いてるの?」
「癖だ。それより改めて………遠路はるばるよく来てくれた。【マリア・カデンツァヴァ(舌噛み)………マリア・カデンツァヴナ・イヴァ(言い間違い)………マリア・サデンツァヴナ・イグ(舌噛み)………」
「マリアでいいわ」
マリアが頭を抑えている。頭痛でもするのだろうか?
「【月読 調】………」
「【暁 切歌】デ〜ス♪」
「ああ、よろしく」
俺達は握手を交わす。
「早速だが、諸君ら3人にはこの国で対ノイズ機関第2課に参加してもらう。我々ジプスからの出向扱いでな」
「ノイズ………第2課………」
俺は3人の背後に並ぶマフィア達と錬金術師達にも声をかける。
「例の物は?」
「ありったけですぜ」
「よろしい」
俺はニヤリと笑みを浮かべる。
「さあ、行こうか」
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○風鳴 弦十郎side○
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響君が帰って翌日の夜。彼女は約束通り第2課に戻ってきた………多数の人間を引き連れて。
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○第2課○
「それで、話を聞かせてもらっても構わないか?後ろの人間含めてな」
未来君と翼が見守る中、俺は響君に問いかける。
「ええ、全て答えますよ」
「………」
響君に違和感を感じる。話し方も違うし、気配もまるで別人だ。
「彼女達は俺の作った組織の戦闘部隊です。主に対ノイズ戦闘を行う、ですが」
「対ノイズ戦闘部隊だと?」
対ノイズ兵装………シンフォギアをいくつも保有しているということか?しかしあれはそう簡単に作れるものでは………。
「シンフォギアも5つ保有しています」
「なっ⁉︎ 5つだと⁉︎」
我々と段違いの数に思わず声を上げる。
「通常兵装も対ノイズ兵器です。おい、見せて差し上げろ」
「はっ‼︎」
響君が後ろの人間から何かを受け取り、それをそのまま机の上に置く。
「【対ノイズ用特殊弾:G弾】です。小型くらいなら1発で仕留められる優れものです」
「ノイズに効果のある弾丸だと?」
「ええ、問題なく使えますよ。実戦経験もありますし」
響君が腕を組む。
「我々からの支援として30ダース分の弾丸はお渡しします。お好きにお使いください………と、言っても生産量が圧倒的に少ないから、それっきりになる可能性もありますが」
「いや、助かる。避難の際に隊員に持たせれば生存確率がかなり上がる」
俺は机の上に弾丸を手に取る。見たところ弾頭がオレンジ色なこと以外は普通の弾丸だ。
「それでシンフォギアについてだが………」
「内2つは【試作量産型ガングニール】ですね」
「が、ガングニールだと⁉︎」
「見せて差し上げろ」
「「はっ‼︎」」
2人の女性がシンフォギアを展開する。その姿は随分と機械的なシンフォギアであった。アームドギアである槍は奏君のものよりも細く、脆そうだ。
「これは胸のガングニールを元に、特殊な技術で作り出した量産型ガングニール。 その先行量産型です。。性能ははるかにオリジナルに劣りますが、戦うだけなら問題ない。それにオリジナルと違って拒否反応も少ないから適合者が見つかりやすい利点もあります」
「なん、だと」
それはある種の革命であった。シンフォギアを量産できるならば、人類はノイズを根絶させられるかもしれない。
「ふざけるなッ‼︎」
そんな中、翼が吠える。
「それは、そのガングニールは奏の物だ‼︎ それを使うだけでなく弄くり回すというのかッ‼︎ それは奏への侮辱だ‼︎」
「ーーーそれで勝てるのですか?」
「なっ⁉︎」
響君が強い視線を翼に向ける。
「勘違いされては困ります。これは人類とノイズとの戦争なのです。貴方の感情と故人への未練を引きずったまま戦って勝てると本気で思えるのですか? これまで死んだ人間に、これから死んでゆく人々に死んだ人間のために戦力強化をしなかったから貴方達は死にましたと言えるのですか?
ーーーそれはその死んだ人に誇れることですか?」
「ッ⁉︎ そ、それは………」
翼が怯む。
「まあいいでしょう………話を戻しますが、彼らを俺の組織からの出向という形で第2課に所属させていただきたい」
「それは助かるが………」
これほどのシンフォギア奏者を抱え、そしてオリジナルに劣るとはいえシンフォギアを生み出す技術………彼女の組織は一体………。
「ジプス………といったか?響君の組織は」
「ん?ああ、成る程成る程。ええ、ジプスという組織です。"我々立花 響"が作り出した組織ですよ」
「我々立花 響?複数人で作ったのか?」
しかしそれにしては言い回しがおかしい。我々立花 響………まるで響君が何人もいるような言い方だ。
「突然ですが、人間は様々な要因………特にストレスで人格が分裂することがあるというのをご存知ですか?」
「二重人格とか、そう言うもののことか?」
「ええ、そうです。そして弾圧された立花 響が正常な精神の状態でいられると思いますか?」
「………ま、まさか」
ありえるのか、まさかそんな事が。
「改めてご挨拶させていただく。
ーーー立花 響が人格の1つにしてジプスの大幹部【武力のソウ】と申します」
目の前の人間は響君であって響君でなかった。
ーーードサッ。
「こ、小日向⁉︎」
倒れた未来君を、翼が介抱する。
「おやおや、衝撃が強かったかな?」
ソウと名乗る人格はニヤニヤと、いたずらが成功した少年のような笑みを浮かべている。
「………他にも人格はいるのか?」
「ええ、私に【知識のリツ】………それと"もう1人"がね」
「リツ………異端技術学者の」
なるほど、簡単に表に出てこれないわけだ。なにせどんなに人格があろうと体は1つなのだから。
「まあ、そう言うわけで………よろしくお願いします。司令官殿」
「ああ………」
俺たちは握手を交わした。
ーーーこの日、第2課は多くの仲間を手に入れた。
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○風鳴 弦十郎sideEND○
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エンド
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シンフォギア編は次で最後となります。第6章もお楽しみに‼︎