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第6章
ーリリカルなのは編ー
第3話
ーホクホクー
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結果から言えば、クソガキはいい情報源となった。俺としては大きな前進である。
クソガキから得られた情報はいくつかあるが、本当に重要なのは絞られる。
そして、転生者についてのことが削られた情報が上層部…峰津院 大和に伝えられる。
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○JP's海鳴支部○
自分のデスクで峰津院からの指示書を確認する。
「まあ、こうなるか」
「隊長、どうかしたんですか?」
「ん?ああ、八木か」
部下が背後から問いかける。
「魔法石の一件だが、結局臨戦体制のまま静観する方針になった」
「静観ですか?」
「ああ」
クソガキからの情報では、今回の一件の最終決戦は【時の箱庭】と呼ばれる場所であり、管理局との協力関係がなければ派兵は不可能である。だが、管理局という得体の知れない組織との接触は避けたい。
さらにクソガキからの情報によれば、既に解決まであと少しとのことだった。
「つまり、峰津院はこの一件で時空管理局のお手並みを見る気だ」
「しかし、得体の知れない組織に任せるのはいささか…」
「だからこそのこれだ」
俺は指示書を部下に手渡す。
「八神 総司の能力制限を全て解除する。また緊急時には、時空管理局及び今回の一件の原因の撃滅を許可する」
「つまり、やばくなれば皆殺しにしろってことだ。小学生に無茶言いやがる」
忘れそうだが、俺小学生なんだがなぁ。
「それと、そこには書いてないが…【菅野 史】を派遣するそうだ」
「JP's最高峰の頭脳じゃないですか⁉︎」
「保険はかけておきたいんだろうよ」
俺は席を立ちバックを手にして、ロッカーへと向かう。
「ど、どちらへ?」
「今日からしばらくはここに詰めることになりそうだからな。飯の確保と家族に電話だ」
ロッカールームに入ると、俺はケータイを取り出して、電話をかける。
『はいもしもし』
「グレーテル」
電話の相手はグレーテルである。
「今日から1週間ほどJP'sに詰める。それと街が戦場になる可能性がある。もしもの時は…」
『ふふっ、久しぶりにお仕事かしら?』
「かもしれん。相手はもしかしたらお前よりも年下かもしれんが…」
『私の事は分かってるでしょう?問題ないわ』
「流石だな。安心だ。それと今回の件ははやて達には伝えなくていい」
『分かったわ』
電話を切ると、そのケータイを地面に投げつける。
「クソが‼︎こんな時に‼︎」
正直言って、俺に支部に詰めている余裕などなかった。クソガキの情報により、想定していたよりもはやてに問題があるからだ。いや、この場合は闇の書が…というべきだろう。
「こんなん上に話せないぞ…‼︎」
魔法を使用する為に必要な内蔵器官【リンカーコア】。それを吸収して覚醒する闇の書…そして吸収し続け、完成した先は。
「暴走の果てに、周囲を破壊し尽くすだと⁉︎どうすれば…」
クソガキが言うには、原作通りであれば問題ないとのことだったが…。
「転生者のせいで原作が崩れてる上に、JP'sがいる。そして俺はJP's所属…」
問題しかない。原作通り進むか疑問だし、何よりJP'sが何も手を出さないとは思えない。
「魔法を使うための内蔵器官【リンカーコア】。そんなものを無差別に奪えば…」
その解決のためにJP'sが出張ってくる。しかもここは時空管理局と今回の一件があるから、上も怪しむだろう。特に峰津院。
「リンカーコア…ん?待てよ?」
ふっと思いつく。
「悪魔も魔法スキル使うよな?ってことは持ってるんじゃないか?リンカーコア‼︎」
よくよく考えれば、下手な人間を襲うよりも確実では?
「上からいくつか悪魔の討伐依頼が来てるし…奴らを連れて行くか」
俺の方針は決まった。あとは今回の一件が無事に終わるのを祈るのみだ。
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結果だけ言えば、今回の一件は無事に解決した…ようだ。
怪事件は無くなったし、原作キャラ達の動きも確認させた。これで一安心だろう。
…まあ、問題がないわけでもないが。
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○翠屋○
「ここで間違い無いか?」
ガスマスクを被った俺は横に立つ部下に確認を取る。
「はっ、間違いありません」
「はぁ〜まさか誘拐事件の関係者の家族だったとは…まあいい」
俺と部下さらに数人のスーツ姿の男たちと共に、店の中に入る。
「(なかなか洒落た店だ)」
こんなガスマスクの小学生には合わないがな。
「にゃ⁉︎な、何ですか⁉︎」
「…」
リリカルなのはの主人公である高町 なのはが俺の奇抜な姿に驚き、誘拐事件の時の関係者である【高町 恭弥】が警戒する。
「初めまして、私は日本気象庁・指定地磁気調査部…通称JP'sの者です。高町 なのはさんと親御さんはご在宅でしょうか?」
「は、はい、私がなのはです。ママとパパは裏にいますけど…」
「ーーーなのは?」
店の奥からなのはの父親らしき男と母…いや、姉らしき女が出てくる。
「あー、娘が何か?というか貴方達は?」
「失礼。初めまして、私は日本気象庁・指定地磁気調査部…通称JP'sの者です。本日は娘さんと親御さんにお伝えすることと、お渡しするものがあり参りました」
俺は部下から一枚の書類を受け取り、彼ら彼女らの前で読み上げる。
「高町 なのは殿」
「は、はい‼︎」
「貴殿は【ジュエルシード事件】において、類稀なる魔法能力を活かし、魔法石ことジュエルシードの回収に尽力。さらには、願望を歪んだ形とはいえ叶えるジュエルシードを悪用しようとした【プレシア・テスタロッサ】一行を撃退。日本国どころか世界的大災害を防いだ。よってここに最大限の感謝の意を示すものである。
ーーー内閣総理大臣より」
「「「…え?」」」
高町 なのはの両親は呆けた顔を。本人は顔を青くしていた。
「ほぼ同文ではありますが、防衛大臣やその他諸々からも感謝状があります。どうぞ」
呆けたままの高町夫婦に感謝状を手渡す。
「さらに…」
俺はとあるケースを部下から受け取り、それを開く。
「本来ならば国の施設で行うべきなのですが、事が事なので、ここで授与します。
ーーー高町 なのは殿、貴殿に大勲位菊花大綬章を授与致します」
「なにこれ?」
受け取った高町 なのはは疑問符を浮かべているが、実はこれ日本の勲章の中でも上から2番目の勲章である。授与されるのは最近であれば国家元首レベルである。それだけ今回の一件を評価しているという証である。
「それとこれは我々の局長からです。まあ簡単に言いますと、魔法の教官として臨時教師をしてもらえないかという提案ですね。学業もあるでしょうから断っても構いませんとのことです」
俺とその部下達が姿勢を直して敬礼する。
「高町 なのは殿。貴殿の献身感謝します」
俺達はさっさとその場を立ち去る。あまり表立って話せないからさっさと帰るのだ。
…世界的危機を、魔法覚えたての小学生に救われた。JP'sは何もできなかったなんていえないからな。
「(さて、これで一先ず無印とかいうのは終わりだな)」
車の中に乗り込むと同時に、店の中が騒がしくなる。
「…ま、感謝はしてるよ。高町 なのは」
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エンド
…勲章がよくわからんとです。