ボロボロになった体に当たる風を感じながら僕は叫ぶ
「くそっ...くそォオオオオオオおお!!!!」
守れなかった!!轟くんを!常闇くんを!!障子くんを!!!かっちゃんを!!!!
何にも守れなかった!!!!為す術なく飛ばされて!!障子くんと常闇くんを残してしまって!!!麗花さんも殺されて!!!!
―大事なことが、なにも出来てないじゃないか...!!!!
「僕がもっと強ければ...マスキュラーに苦戦して無ければ...!!!」
こんな事にはならなかったのに!!
「ぐぶぅ!!」
後悔、怒りに追い遣られている内に顔から地面に衝突。
敵との戦いのダメージが蓄積していた僕は簡単に気を失った...
★
あれから数日が経過。契機の今日まではずっと敵連合のアジトに居た為、世間の情報が全然入ってこない。テレビとかはあったにはあったが、見なかった。それより面白い事をやっていたからだ。
今、私達の目の前には三つの椅子に拘束された雄英生三名がいる。爆豪、カラス頭、後一人雄英生がいる。爆豪は死柄木によって何度もスカウトの話を持ちかけられているが、他の二人は放置、食事こそ食べさせているが死んだように生気を失っている。
死柄木は中々爆豪が話を聞かない事にイラついたのか、他の二人に目を向け、こう言い放った。
「おいコンプレス、余計なのも持ってくるな。食費が増えるだろ。」
「いやいや、この女の子は知らないけどそこのカラス君は中々強い個性を持っている。だから連れてきたのさ。」
「確かに、自らの影を操っていた。私が個性で暴走させた時、膨大なエネルギーを発していた。」
「「...操った?」」
私の言葉に爆豪とカラス頭が反応した。
「君達に私の個性を知る権利は無いんだ。あまり口を開くなヒーローの卵の分際で。」
ギロリと彼等を睨み付ける。カラス頭は青ざめたが、爆豪は
「テメェ...まさか、色村..か?」
...あ~あ、ばれちゃった。何でかな、声かな?見た目かな?口調は変えてるつもりなのにな。
「死柄木、コイツは殺していいか?」
「んだとテメェ!!!」
「待て待て“黒き災厄”、爆豪君には交渉をするためにわざわざ掻っ攫ってきたんだ。」
「“黒き災厄”...まさか、色村のことか!?」
「お前は黙れ爆豪、死柄木、こいつは絶対に敵にはならない。」
「は?何でお前がそんな事わかるんだ。」
私は知っている、コイツは中学の時からずっとずっとずっとヒーローになるとほざいていた事。そしてヒーローらしからぬ行為も行っていた事を。
「...コイツは私の元クラスメイトでな、その時からずっとヒーローになるんだとか、オールマイト以上稼ぐとかそんな事を言っていた。そして
死柄木は考える素振りを見せる。
...そして、私の言い分に答えた。
「お前等の努力が無駄になる。とりあえず拘束は解除して話だけはする、それで交渉決裂した時お前の手で殺せ。」
「...分身。二人がかりで見るぞ、爆豪は危険人物だからな。」
「はいはいわかってるわかってる、ヒミコ、ちょっと離れるからな。」
私も分身も個性を展開。ジーパンに色を滲ませて、そこから黒を発生させて塒状に体に巻き付かせた。この個性の恐ろしさを知るカラス頭は「うわぁぁああああああああ!!!!」と叫びだした。五月蝿いな。
「
私の体に巻きつく黒が蛇の顔の形に変わり、カラス頭に噛み付いた。“黒”と言う名の猛毒を持つ蛇の頭から徐々に徐々に彼を黒く染め上げていった。あまりの痛みに彼は口から泡を吹き出し気絶。顔は染め上げない程度に“黒”を入れ込み、蛇の頭を爆豪に向けて言い放つ。
「選択を間違えれば
「......クソッ...」
荼毘が爆豪に近づいて拘束を解いた。恐怖映像を見せた後だというのに彼は何の気負いも感じさせないような立ち上がり方をした。
「...と、言う事だ爆豪君、君に関しては調べがついているんだよ。」
死柄木はそう言って一枚の写真を彼に見せた。彼は目を大きく開ける。全員に見えるように見せたので私も見たが、少し驚いた。
そこに移っていたのは、緑谷くんのヒーローノートを爆破して、投げ捨てる爆豪の姿が移っていた。
「君はあれだろ、その強い個性で生まれてきたから周りに持て囃されて育ってきたんだろ?だから力を持たない者を見下す癖が付いたんだ。」
「うるせぇぶっ殺すぞ!!」
そこで私は蛇の頭に爆豪を甘噛みさせた。
「ぐぁああああああああああ!!!んぐぅぅうう!!!」
爆豪が噛まれた右腕を押さえようとするがなんと歯を食いしばりその激痛に抗って見せた。
コイツの前では一度も見せた事が無いのに本能で触れてはいけないと察したか。やはり才能あるなコイツ。
「...おい。」
死柄木に睨まれる。
「ああ、ただ一言でも俺はヒーローになるのをやめて敵になりますって言えば抜いてやるから。」
「ク..ソがぁ...!!!」
屈辱だろうなぁコイツは。なりたいモノを諦めなければ殺されるという状況下で、しかも今まで下だと思っていた私に殺される事になるなんて。
かつて威張り散らしていた姿を思い出せば非常に滑稽だ。
「...ならいい、続けるぞ。君は
「......」
「そこで何も言えないならあるって事だ、一緒に壊そうこの世界を。ヒーロー志望の爆豪勝己君?」
「.........寝言は、寝て死ねェ!!!」
瞬間、死柄木の顔が爆豪によって爆破された。顔につけていた手が吹き飛ばされるほどの威力だ。
「
「俺達の戦いは“問い”なんだ...ヒーローとは、正義とは何か、この社会が正しいのか今一度国民一人ひとりに考えてもらう。」
「俺達は...事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに拒絶されてきたんだ...君ならそれを―」
「うるっせぇんだよ!!さっきからゴチャゴチャゴチャゴチャ!」
再び爆豪が死柄木に飛び掛った事に分身がいち早く反応、彼の両腕を手で拘束し馬乗りになって地面に押し付けた。
爆豪は分身を物凄い形相で睨み付けるが分身はなんら怯む事無く睨み返した。
「...言った筈だぞ、
「フッざけんじゃねぇぞ!!!
拘束された手が大爆発を引き起こした。部屋中が爆煙に飲まれ、視界が遮られる。
「分しうぐっ!!!」
「...立場逆転って感じか、なぁ色村ァ!!?」
やがて煙が晴れると、私の上に爆豪が馬乗りして眼前に爆破する腕を突き付けていた。
「......死柄木、交渉は決裂でいいのか?」
私をギラリと睨み付ける爆豪は無視して、問う
「...その様子じゃあな、自由にしろ。」
よし、なら殺すかな。
「テメェ...今までどこで何をしてたッ!!?」
「答える義理があるか?」
そう返すと爆豪は左手を天井に向けて爆破した
「テメェの立場わかってんのか!?なぁ!!?」
「そっくりそのまま返そう。」
口内に黒を生み出してプッとつばを吐き、右腕に付着させた。
「ッ!!!ぐああ...!!!」
只でさえ痛いであろう右腕にさらに絵の具を付着させたんだ。もっと叫んでもいいんだが。
「テメェェッ!!!!」
天井に向けた左腕を私の顔に向けて勢いよく飛ばしてくるが、黒く染まった右腕で左腕の前腕を掴ませて静止させる。右腕全体を黒く染めていた黒が掴んでいる前腕から広がり始める。
「ガァああああああああああ!!!!」
「私に対して優位に立てるわけがないだろ馬鹿が。」
地面に転がり込んで苦しみ出したので拘束は解けた。さて、後は嬲り殺すだけだ
「お前は最初から死柄木のいう事を聞いておけばこんな事にはならなかった。」
「テ..メェ...いったいどんな..個性だよ...」
......冥土の土産に教えてやってもいいな。どうせ死柄木はAFOに聞いてるだろ。まあ念の為に確認するが。
「私の個性はAFOから聞いてるか?死柄木」
「...とんでもチート個性だってな。」
ならいいや、教えちまえ
「個性“色”、体から様々な効果を持つ絵の具を生成、操る事ができる。全ての色に共通するのは、生み出した絵の具と同じ色のものに付着させた場合、それを自分の意思で操れるようになる。たとえそれが生きててもだ...爆豪、何か違和感を感じているんじゃないか?自分の手に。」
「......個性が...
「そう、黒の効果は“死”、あらゆる物を死に追い込める。個性も同様、ただ発動系の場合は発動箇所を染めなければならないし、異形に関しては全身を染め上げなければならない。カラス頭君みたいな影とかそういう実体が曖昧なものに関しては消す事は出来ないが...まあ、お前の場合は手だけだからな。ちなみに今私が黒を抜き取ってもお前に“爆発”が返って来ることは無いんだよ。」
私の説明に爆豪だけじゃなく連合の奴等も声を上げて驚く。
「他の色は今は使えないからね、どんな効果だったか忘れたな...あ、ならこれがお前にとって気絶する事よりも酷い拷問だな!」
悶えている彼に近づき、両腕から“黒”を抜き取った。彼は急いで個性発動確認をするが......発動しなかった
「...嘘..だろ...?」
彼は自分の手を何度も何度も地面に付けたり壁に叩き付けたり私の方に向けて来たりするが、何の変化も無い。
「何でだよ...俺の、俺の個性だぞ!!!何で...」
がくりと、その場に力なく項垂れた爆豪の肩に手を置き、言ってやった
「これが、お前が散々馬鹿にしてきた“無個性”だ...」
顔から生気をどんどん失っていく爆豪。それをみた私は今どんな顔をしてるだろうか。
―笑ってるんだろうなぁ...狂ったように、無邪気に、嬉しそうに!
「...あは、あはは、アッハハハハハハハハハハハハ!!!」
無様だ!あんなに粋がっていた爆豪が、“無個性”だ!!恵まれた個性で全てを下に見下していたコイツが、無個性!!!
「お前は、これから!今まで散々見下してきた没個性“以下”の存在、無個性の爆豪勝己くんとして生きていくんだよ!」
あぁ~、堪らない!コレだよコレ!クックックック...
「...黒霧、適当な場所に送ってやってくれ、この“無個性”くんを!」
「あなたが“黒き災厄”と呼ばれる所以を改めて理解できた気がしますよ...」
項垂れてピクリとも動かなくなった爆豪を、黒霧は個性で飲み込んだ。
「...俺は、敵連合は、とんでもない奴と手を組んだのか...」
死柄木から中々の高評価を頂いた。いや~気持ちよかった!最高だよ、ああいうプライドの塊を地獄のどん底に叩き落とすのは。
「...やりすぎじゃないか、原点。」
「は?何だ分身、お前ならわかる筈だろ?ヒーローと名乗るもの全てに死を与え、新たな世界を築く為の過程さ。」
「......私は...そこまではしたくはない。殺してやる方が良かったと思うんだ。」
私の顔に青筋が走る。
―何だコイツ、分身の癖に粋がるな。
そう思った時には分身の首を締め上げていた。爆豪の爆発で大分カタが来ていた様だ、ドロドロに溶けていっている。
「ああっ!!ああ...嫌、嫌ぁああああああ!!!」
ヒミコが絶叫、そのまま事切れたかのように倒れこみ気絶した。普段の私なら多少は罪悪感が出ているだろうが、今は一切の情も無い。
―分身は死にたがっていたじゃないか。ならこうやって死なせてやるのが分身に対する礼儀というものだろ?
「...わかったんだ、私が、色を取り戻す方法が...」
分身が放ったその言葉に私はありえないと返す。実際どれだけ色を生み出しても出てきたのは黒ばかり、何度も何度も試して出来なかった事が分身に出来るとなったら溜まった物じゃない。
―だが、次の瞬間、私は目を見張る事になる。
「...“白”..だと...!!」
そう、分身のドロドロに溶け出していた体から“白”が生み出されていた。やがて白は彼女の体を覆い付くし、全長二メートルくらいの球体となったのだ。
やがて球体は、どんどん人型の形に戻っていき、色を取り戻した無傷の状態の姿の分身が私の目の前に立っていた。
「......どういうことだ、分身。」
「私は理解したよ、多分、いや恐らく
「.........」
生意気な口を叩くコイツにイライラして、おもわず蹴り飛ばした。思いっきり壁にめり込んだそれは再び白い球体と化す。
「敵連合、あれはお前等にやる。私とは気が合わないみたいだ。」
「......お前、」
「わかってる、今回の報酬は無しでいい。壁を壊したから私の報酬に当てる予定だった金で直しといてくれ。じゃあな、私は帰るよ。送ってもらわなくて結構だ。帰り道でちょっと気持ちを整理してくるから。」
私はこのカフェの出口に手を掛ける。
「ヒミコには謝っといてくれ、悪かったって。」
そう置き台詞を残してドアを開けたのとピザーラ神野と言う所の宅配が来たのは全く同じタイミングだった。
夏休み終わって欲しくねェ...