初っ端から飛ばしていくぞお前ら!
一周年でも止まるんじゃねえぞ……
朝
IS学園寮
三日月・一夏の部屋
三日月「……ん?」
ゴソゴソ
三日月が眠りから目覚めると、ベッドの布団の中に自分ではないもう一人の誰かが紛れ込んでいた。
「……」
侵入者とあればすぐさま警戒する三日月だが、今朝の彼は全く警戒する様子もない。
それもそのはず……
ラウラ「うっ……」
その布団の中に侵入していたのは
「もう…朝か……?」
「ラウラ、おはよう」
「ううっ、また寝てしまった……夫であるならば起きてなければならないのだが……」
ラウラは寝ぼけ眼をこすりながら、こう続ける。
「横になってるといつの間にか眠ってしまっていた……ふあああっ…」
大きなあくびをする彼女を優しい眼差しで眺めながら、三日月はこう言った。
「別に良いよ?眠たいなら寝ていれば、休みだし」
「そうはいかん、今日は……」
ラウラは何かを言いかけたが、その前に三日月がとあることに気付く。
「ん?今日は裸で来てないんだね」
「ああ!よくぞ聞いてくれた!」
ラウラはベッドの上で、えっへんと仁王立ちをする。
ラウラの服装は学園指定の水着──いわゆるスクール水着というものだ。
「優秀な副官からのアドバイスだ!これを着ていけば大丈夫だと」
「ふーん……」
「どうだ?どうだ?」
「可愛いと思うよ」
「そ、そうか///」
その三日月の真っ直ぐな好意の言葉に嬉しさを隠せず、赤面するラウラ。
数秒程、恥ずかしがっていた彼女だが、時が経つにつれ、冷静さを取り戻してきて、自分が
「あ、そうだ!これを伝えておかなければ……」
ラウラは胸のところから一枚のチラシを取り出した。
「ん?これって……」
「ああ、アミューズメントプールのイベントだそうだ……鉄華団の親睦を深めるためにぜひ行きたいのだ」
「ふーん……」
三日月はラウラの取りだしたアミューズメント施設『ニューレインボーアイランドプール』のチラシを眺め、そのチラシ一文を声に出して読む。
「へー……縁日広場で浴衣のレンタル?」
「あ、ああ……浴衣を着てみたいのだ……///」
「……うん、じゃあ行こう…皆で」
「そうか!」
ラウラの喜びの声か、ただ単に朝日で目覚めただけなのか。
三日月のルームメイトである織斑一夏が目を覚ました。
一夏「んん……ふあああっ……!?」
一夏は起きるなりスクール水着姿のラウラを目撃し、驚きから一瞬で目が冴える。
「あ、イチカおはよう」
「おはようだ、イチカ」
「ラウラ、お前またミカのところに潜り込んだのかよ!」
「別に良いだろう?私達は夫婦なのだから」
「うん」
三日月とラウラのバカップル振りに頭を抱える一夏。
「はぁ…」とため息をつきつつ、彼は少し声を荒げる。
「だったら同室の俺のことも少しは考えてくれよ……仲がいいことは良いけど…それでも!」
「まぁまぁ、そう怒るな。これを見せてやろう」
ラウラは声を荒げる一夏をそうあやしつつ、三日月に見せたチラシを一夏にも見せる。
「ん?これって……今年できたアミューズメントプールのイベントか!ここ行ってみたかったんだよなぁ……」
「あぁ、鉄華団の皆で行こうと思っているのだが、お前も行くか?」
「ああ!いいぜ!楽しそうだしよ」
「そうか!」
「よかった。じゃあイチカはホウキとリン誘っておいて」
「おう!」
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IS学園 食堂
俺──オルガ・イツカはシャル、ミカ、ラウラの三人と一緒に食堂で朝食をとっていた。
俺とシャルは朝のランチを、ミカとラウラは購買で買ってきたあんぱんを食べている。
ったく……相変わらず好きだな、それ。
その食事の途中でミカとラウラが俺とシャルに遊びの提案をしてきた。
どうやらアミューズメントプールっつーところに鉄華団の皆で行きたいらしい。
三日月「明日ここに出かけたいんだけど、良いかな?」
せっかくの長い休みだ。
こういう時こそしっかり遊んでおきてぇな!
イチカの家に押しかけた時以降、あんまり遊びらしい遊びはしてねぇしよ。
オルガ「良いんじゃねぇの?なぁ、シャル」
シャル「うん、良いよ!折角の夏休みなんだから皆で思いっきり遊びたいしね!」
ラウラ「そうか!」
その後、希望の花ではなく、他愛もない雑談に花を咲かせていると、シャルがふいに手を叩き、こう言った。
「あ、そうだ!皆、今日時間ある?」
「ああ、あるぞ?」
「うん」
「特に用事はねぇな……」
俺たちの今日のスケジュールを確認した後、シャルは嬉々とした愛らしい笑顔でこう提案する。
「ならデパートに皆で買い物行こうよ!ラウラの洋服も買いたいし」
あぁ……そういうことか。ラウラのやつ、制服か軍服くらいしかちゃんとした服ないらしいもんな。シャルに聞いたぜ。
前のイチカの家行った時も、一人だけ制服だったしよ……
「何を言っている。服なら軍支給の……」
「うん、ラウラにはもうあるよ?」
ミカのやつ、こういうのには疎いんだよなぁ……ったく、しょうがねぇ。
「いやそういうわけじゃねぇだろ。……つかラウラのそれは軍服ってやつだろ?」
「うん、それで外出したら変に見られたり、本国の人に怒られちゃうかもしれないよ?」
「だ、だが……」
その時シャルが何かラウラに耳打ちした。
「……もしかして三日月君にそれ以外の服装、見せたくないの?」
「い、いや…そういうわけではないが…」
「もっともっとアタックできるチャンスかも知れないよ?……いいのかなぁ?」
「それは……!」
「ね?夏休みも終わらないうちに行こうよ」
「あ、ああ……」
俺とミカには聞こえないように注意しながらヒソヒソと何やら話してやがる。
疑問に思ったらしいミカが俺に小さな声でこう聞いてきた。
「何の話してるの?」
「女同士の会話ってやつじゃねぇのか?こういうのはあんまり邪魔しないほうが良いんじゃねぇの?」
「…ふーん」
俺の答えに納得したらしきミカと二人でシャルとラウラの内緒話が終わるまで大人しく待つ。
すると、話を終えたらしきシャルがスケジュール帳を広げて何やら確認した後、こう言った。
「……じゃあ10時位に出るので良いかな?」
「…わ、わかった…」
「良いんじゃねぇの?なぁ、ミカ」
「うん、良いよ」
「じゃあ、待ち合わせ場所はいつもの駅で!」
「うむ」
「うん。わかった。早速準備しなきゃね、オルガ」
「あぁ…行くぞ、ミカァッ!」
ということで、俺たちはラウラの服を買いに行くという名目でダブルデートに出掛けることとなった。
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10時頃
モノレール IS学園前駅
シャルが指定した
そこにはすでに準備を終えたシャルが待っていた。
「おぉ、シャル早ぇな」
「うん。オルガと遊びに行くのも久々だしね。張り切って準備しちゃった///」
「おぉ、サンキューな」
なんだよ……可愛いこと言ってくれんじゃねぇか……
そう言うシャルの服装は自身のイメージカラーでもあるオレンジの半袖シャツの下に白いチューブトップ?っつーんだっけか? そんで下はデニムショートパンツだ。
相変わらずオシャレだな、シャルは。
「ラウラは?」
「うーん……。あっ!来たみたい!」
シャルがそう言って、俺とミカもラウラの来た方向へと振り向く。
すると、そこにはIS学園の制服を着たラウラの姿が見えた。
「どうだ!外出用に着替えたぞ!」
「うん、良いんじゃない?」
ミカはそう言ってるが……
「結局制服なんだね…」
シャルは困り顔でそう言った。
……それに名瀬の兄貴が言ってた「女は太陽」だって「太陽がいつも輝いてなくちゃ、男はしなびちまう」って。
女を輝かせる要因の一つが服なんだと俺は思う。
「やっぱそれはな…」ピキュ
ラウラのその服に無頓着な面を否定しようとした時、急にミカが胸ぐらを掴んできた。
「…ヴェ?」
「俺の女をバカにしないで」
「……」
ミカは見ただけで誰でも殺せるくらいの殺気を込めた目で俺を睨みつけてくる。
勘弁してくれよ……
だけど、ミカのやつ……前より感情が出るようになったじゃねぇか……あの時より……
「フッ…」
「何?」
ミカが感情豊かになってきているのが嬉しくてつい顔に出ちまった。
ミカはラウラのためを思って怒ってるんだ。ここは笑うとこじゃねぇよな……
「いや、悪りぃな」
「……良いけど、次はやめてね」
「ああ、もう言わねぇよ。約束だ」
それにあの目は本気だからよ……あんまり言わねぇほうが良いな。
下手するとまだ銃弾が飛んできそうだしよ……もしそうなったら俺は確実に殺されるぞ。
「オルガと三日月君ってたまに僕たちでも入れないような時あるよね?」
「ああ、まるで何かを隠しているかのように……だな」
「あんまり昔の話とかも聞かないしね……いつかは僕たちにも教えてくれるのかな?」
「そうだな、だがそのためにはもっと親睦を深めなければな…」
「うん……」
「ん?どうかしたか?」
「あ、え…な、なんでもないよ!オルガ!」
「そっか……」
シャルとラウラがまた内緒話をしていたが、食堂の時みてぇに楽しそうな感じじゃなく深刻そうな感じだったから今度は尋ねちまった。
……けどまぁ一応何もねぇんならそれでいいか。
重い話なんて今日は置いといて……
「さーて、張り切って……ん?」
「行くぞー」とそう言いかけたが、駅のホームに立っていた他の女子生徒たちの大きな声が俺の声を止めた。
「ねえねえ」
「何?」
なんだ?なんかあるのか?
俺が耳をデカくして聞き耳を立てると、こんな噂話が聞こえてきた。
「臨海公園で幻のクレープの噂、知ってる?」
「知ってる知ってる!好きな人とミックスベリー味を食べると恋が叶うって!」
「!」
「そうそう!でもいっつも売り切れなんだって!」
ミックスベリー……!
もしかしたらそいつを使えばシャルと…!
どうやらミカも同じく女子生徒たちの噂話を聞いていたようだ。
「ミカ、これは最高に上手い話なんじゃないか?」
「ああ、それが本当ならラウラともっと夫婦になれると思う」
ミカもノリノリじゃねぇか…!
そうと決まれば……ってまずは買い物が先だな。
「……よし、まずは買い物いくぞぉ!」
「「おー!」」
(ミックスベリー……その噂が本当だったらオルガと…///)
この時、シャルロットもオルガと全く同じ思考でその噂話を聞いていたのだが、そんな事をオルガは知るよしもなかった。
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所変わって鈴の部屋
鈴の祖国『中国』では夏の最高気温は上がったとしても28℃。それに対してこの国の真夏日は30℃を軽く超える。
彼女は中学の頃からこの国の『夏』という季節が大の苦手だった。
そのせいか彼女はブラ一枚とショートパンツというラフすぎる格好でベッドに寝転がり、一人でアイスを食べていた。
鈴「はぁ…夏休みも中盤なんだし、早く一夏と思い出を……。っていうか帰国しないでこっちに居てやってるんだから、一回くらいアイツが誘ってくれても…」
未だに想い人と思い出らしき思い出も作れていないためか、彼女は愚痴をかなり言い始めていた。
自分から誘えばいい、と分かってはいるが、想い人から誘ってほしいという儚くも美しい純粋な乙女心に揺らされ、彼女は悶々と頭を振る。
(オルガとシャルロットも、三日月とラウラも……二カップルともホント羨ましいわ…)
「……はぁ」
ため息を漏らし、溶けかけて小さくなったアイスをみじめな自分と重ね合わせ、口へ運ぼうとしたその時。
部屋のドアがコンコン、と2回ノックされて彼女はドアの方へと目を向けた。
一夏「おーい、鈴!」
ノックの音の後に聞こえた声の主は彼女のその想い人、織斑一夏であった。
彼女は自分の格好を見て、ハッ、と重大なことに気づいてしまう。
だらしないどころの格好ではない。
もしもこのような姿を一夏に見られれば……
脳みそがその事態の大きさに気づいた途端、彼女は冷や汗を噴き出し、ベッドから飛び降りる。
「えっ…えっ?…一夏!?」
「入るぞー?」
「ちょ、ちょっとまって!」
(鍵が開けっ放しなのに…これじゃ!)
こんな格好を一夏にみられるわけにはいかない。
ドアを閉めようと駆け込む彼女であったが、その制止も間に合わず……
ガチャッ
「ん?……」
ドアを開けた一夏の目に止まったのはラフな格好をした鈴の姿だった……
「………」
「………」
その沈黙の中、一夏は鈴をガッツリと見ていた。…否、見ていない……思考停止である。
「うっ……あああああああっ!」
バシンッ!
もちろん一夏は鈴に全力でビンタされ、一夏の視点は暗転する。
「ぐあっ!?」
その様子を双眼鏡で密かに覗いていた一人の男がいた。
アグニカバエルバカ、とオルガたちの間で馬鹿にされている金髪の男、マクギリス・ファリドである。
マクギリス(あれがオリムラ・イチカの第二の幼馴染のファン・リンイン……か)
そして鈴のその
(……300アルミリアポイントだ)
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「邪魔するぜぇ?」
俺たちはモノレールから降り、大きな百貨店とやらに来た。
そしてまずはラウラの服選びということでそのまま女性服売り場へ足を進める。
すると、女性服売り場の店員がすぐさま声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ」
「よろしければ、新作の試着などいかがでしょうか?」
その店員にシャルが対応する。
「えっと、とりあえずこの子に似合う服を探してるんですが、いいのありますか?」
「こちらの銀髪の方ですね!今すぐ見立てましょう!」
そんなシャルの後ろで俺はミカにこう言った。
「……シャルに色々服の話も聞いちゃあいるが…やっぱ女性服ってのはわかんねぇな」
「だね、ここはシャルロットに任せたほうが良いと思う」
「ああ」
その会話を店員と話しつつも聞いていたらしきシャルが振り向いてこう言った。
「うん。任せといてよ!」
──数分後──
「へぇ、薄手でインナーが透けて見えるんですね……ラウラはどう?」
「うーん…白か…悪くはないが…今着ている色だぞ?」
「んー?ならこれとか?」
「うっ……かわいいようなやつか…」
「せっかくだから色々試着してみたら?」
「いや…面d…」
「面倒臭いは……なしで」
「……」プクー
服選びを渋っているのかラウラはプクー、と頬を膨らませた。
そんなラウラの姿を見たミカが大きく目を見開く。
「……!!」バキューンッ!
ピキュ!
「ヴェ?」
急にミカが俺の胸を掴んできた。
え?なんか俺悪いことしたのかよ…?
「…かわいいでしょ?」
「ェ?」
「ねぇ、かわいいでしょ?」
「お、おう……」
ミカお前……
けどまあ、感情を表に出せれるようになってきたのはいい傾向だからよ……
でも……怖ぇぞミカ……
シャルは色々と服を持ってラウラに渡し、ラウラは渋りながらも試着室へと入っていった。
まぁシャルの押しには勝てねぇよな……
ってか、さっきミカも緑色のパーカーをラウラに渡してたな……
そんでまぁ、俺たちはラウラが試着するのを待つことにする。
……つかなんか集まってくる野次馬多くねぇか?
ガヤガヤガヤ
……いくらシャルとラウラが物珍しい外人だからってここまで来るのかよ…?
まぁ俺とミカはその外人ですらない異世界の火星人というやつだがよ……
「……」ソワソワ
「ミカ、そんなにラウラのこと気にしてんのか?」
「……別に」ソワソワ
否定してても体に出てるぞミカ……
よほど気にしてるみてぇだな。
カシャッ
と言ってる間に着替え終わったらしい。
試着室から出てきたラウラは黒いドレス風の袖無しワンピースを着ていた。
「!!!」
「うわー!かわいい!」
「綺麗だ…」
「妖精みたーい!」
野次馬も色々と言ってんな…
…ったく、シャルのほうがかわいいってのによ……
「ラウラ、これ」
「靴まで用意したのか?驚いたぞ」
「せっかくだもん、ね?」
「あ、ああ……」
ラウラはシャルからヒールだっけか…?の靴を受け取り、その場で履き始めた。
「う、うわっ!」
だが慣れないヒールのせいなのか、そのままラウラは姿勢を崩す。
「……危ない」
しかし、それをミカが間一髪で支えた。
瞬時に夫の危機に向かえるなんて……
しかもラウラがあまり痛がらねぇように、負担のかからねぇ場所に腕を回して抱えてやがる……
……すげぇよ、ミカは……
「み、ミカ……」
「大丈夫?」
「あ、ああ……その…ど、どうだ…?」
「………」
「や、やっぱりダメ…か?」
「……かわいくて、綺麗だと思うよ」
「……な、なっ!?///」
ラウラはミカに言われるなりそのまま赤面しちまった。
……ごちそうさまってやつか?
そんなミカとラウラのやり取りを聞いて、黙って見ていた野次馬共が一斉に騒ぎ出す。
「うわあああ!?なにこの尊さ!」
「写真撮っていいかしら!?」
「くっ、一眼レフカメラもってくればよかったわ!」
カシャカシャカシャ!
そのままミカとラウラは野次馬共の撮影の餌食となってしまった。
「あ、ああ……」
「はははは……確かに撮りたいって気持ちもわからなくはないけど…」
苦笑いするシャルだが、そこも可愛い。
クソッ!なんだって俺はこう言う時にシャッターを切る勇気が出て来ねぇんだ!
シャルの色んな表情や色んな服、そういうのを写真に収めて……と、思ってはいるが、なかなか行動に移せない自分がいる。かっこわりぃな……。
そう心の中で思いながらも俺は無難にシャルに返事をする。
ついでにシャルの表情を目に焼き付けておかねぇとな。
「ま、そうだな…」
「………オルガ」
野次馬共に写真を撮られながらも、ミカが俺に声を掛けてくる。
「ん?」
「写真撮っていいから、あとで俺とラウラに送って。思い出にしたいから」
「お、おう……」
ミカに頼まれ、俺はバッグからカメラを取り出し、シャルに向けてぇ気持ちを抑えつつもミカとラウラのツーショットにシャッターを切る。
ちなみにこのカメラはイチカからもらったもんだ。あいつ写真撮るの好きだからよ……
そして、俺はファインダーにミカとラウラの姿を収め、シャッターを切る。
カシャ!
おお、結構お似合いカップルって感じでいいじゃねぇのぉ…なぁ……
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所変わって剣道場
箒「……ふーっ…」
シャワールームから制服姿で出てきた箒。
洗ったばかりのためか、まだ髪も結んでいない。
(今日も剣術をしっかりと磨くことができた……だがまだまだ未熟だ。
福音の時には私が足を引っ張ってしまい、そして結果、三日月が負傷してしまった……。
あの時のことはもう繰り返したくはない……もっと己を鍛えなければな…)
今までのことを回想しながら、箒は決意を新たにする。
そんな彼女に一夏が声を掛けてきた。
一夏「箒、いいか?」
想い人からの予期せぬ声が届き、驚きと嬉しさが混同する。
「い、一夏か?シャワーから出るのを待っていてくれていたのか?」
「まあな」
「そうかそうか!そうか…私を……」
一夏が自分を待っていてくれたと言う事実に箒の表情は嬉々としたものへと変わっていく。
そんな笑顔の箒に首を傾げながらも、一夏は早速、本題を切り出す。
「箒?」
「///……そ、その私に何か用なのか?」
「ああ、これに誘いたくてな」
一夏はラウラからもらったアミューズメントプールのチラシを箒に見せる。
「ん?これは今年できたばかりのやつか…」
「ああ、思い出つくりたいから鉄華団の皆で行こうって話になったからよ!箒も行こうぜ!……まぁ、急だから無理にとは言わねぇけど……」
「あ、ああ!いいぞ!」
(い、一夏が私を誘ってくれた///)
箒は天に舞い上がれるくらい嬉しかったようだ。
(ふ、二人っきりのデートではないのが仕方ないが…皆とも遊びらしい遊びもしてなかったからな……これはいい機会だ!)
そしてマクギリスは遠くから再び双眼鏡でその光景を覗いている。
マクギリス(ほう…あれがオリムライチカの幼馴染であり、シノノノタバネの妹でもあるシノノノホウキ…か)
マクギリスは鈴の時と同じく、双眼鏡のレンズを胸の方へと下げる。
(……なんとも虚しい胸だ)
お気に召さなかったのか、双眼鏡で見るのをすぐにやめて、服の内側に双眼鏡をしまい込むマクギリス。
そんなマクギリスの様子を見ていた織斑千冬が後ろから声を掛けた。
千冬「……何をしている」
「これはミス・オリムラ……私は単純に鉄華団の団員の様子を見ていただけだが?」
「だったら何故双眼鏡を持ち込む必要がある?」
「い、いやこれは……」
「問答無用だ。来い」
ズルズルズル
そのままマクギリスは後ろ襟を引っ張られ、千冬に連行されてしまった。
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そしてラウラの服を買って、野次馬たちの写真攻撃も止んだ後、他の必要なものも買い終えた俺たちは昼飯も兼ねてカフェに居る。
「せっかくだからそのまま着てればよかったのに……」
「い、いや…今は良い…汚れては困る」
「もしかして三日月君との二人っきりのデートに取っておきたいとか?」
「な、なっ!?ちが…わない…が…///」
シャルとラウラが
今回は食堂の時と同じような感じで、ラウラが顔を真っ赤にしたり、シャルがふふん、と言わんばかりの顔をしたりして話している。
女同士の会話ってやつは邪魔しちゃいけねぇ。食堂の時にそうは言ったが、やはりミカは気になるようで、ラウラにこう尋ねた。
「どうしたの?ラウラ」
「!?……べ、別に……なんでもないぞ///」プイッ
「?」
ミカがラウラに話しかけてもラウラはプイッ、と顔を背けるだけだった。
と、そこにカフェの店員が声を掛けてきた。
「ねぇそこの彼女さん達」
「ん?」
「バイトしない?」
「え?」
シャルとラウラはカフェの店長(店員かと思っていたが店長だった)にそのまま連れられ、奥の方に行ってしまった。
どうやら少し人手が足りないらしく、シャルとラウラに手伝って欲しいのだそうだ。
バイトとか言ってたが……ここは店員が執事姿かメイド姿をしている……
シャルとラウラもそれに着替えてんだろうなぁ……
ってことは……
シャルのメイド姿が見れるじゃねぇか!
「へへっ……」
「?」
ミカはまだラウラがメイド服を着てくる、ってのを理解できてねぇみたいだな。
けどラウラのメイド服を見たらミカも大喜びだろうよ……
そして、数分後。まずはラウラが着替えを終えて、奥から戻ってきた。
「待たせたな!」
「あ、ラウラ」
「どうだ!このメイド服とやらを着てみたぞ!どうだ!」
「うん、可愛いと思う」
「そ、そうか!嫁が喜んでくれて私も嬉しいぞ!///」
そして、ラウラに続き、シャルも出て来る。待ってたぜ!
「おまたせ……」
「おお、シャル……え?」
シャルが恥ずかしそうな声を出しながら俺に声をかけてきたからなんだと思いきや……
「は?」
……執事服…だと?
……クソ!クソ!クソ!
なんでシャルに今更男装させねぇといけねぇんだ!
なんでシャルにメイド服を着せねぇんだよ!
「………なぜ僕は執事の格好なんでしょうか?」
「だってそこいらの男よりずっと綺麗でカッコいいもの」
「は?」
シャルはカッコいいとかじゃねえ、なんつーか……その…
あんた頭おかしいんじゃねえのか…?
「おばさん、あんた正気か?」
俺がカフェの店長に目を見開いて全力で睨みつけながら言うと、店長は怒りを露にし、思いっきり俺の頭を殴りつけた。
ドガッ!
「グッ……グアアッ!」
その時、
キボウノハナー
「だからよ……妙齢の女性におばさんとか言うんじゃねえぞ……」
「オルガ!?」
────────────────────────────────────────────
シャル(確かに僕って中性的に見える時もあるからなぁ……仕方ないのかな…)
シャルロットはメイド服で給仕をしているラウラのほうに視線を向けていた。
(でも僕もラウラみたいにメイド服着たかったなぁ…)
複雑な乙女心を持て余しながら、シャルロットはラウラをジーっと、横目に眺め続ける。
すると、そのシャルロットの視線にラウラが気付いた。
ラウラ「ん?なにか考え事しているのか、シャルロット」
「な、なんでもないよ!さあ、さっさと終わらせよ?」
「ああ」
シャルロットはそう言って、慌てて仕事に戻る。それに対して、ラウラも少し疑問に思いはしたが、あまり気にせずに仕事に戻った。
────────────────────────────────────────────
シャルとラウラが働いてるのを見ながら、俺はシャルのメイド姿が見れなかったことを悔やみ続けていた。
「クソクソクソ!」
そんな俺の前に座るミカはカメラを片手に働くラウラへ正確にピントを当てて写真を撮ろうとしていた。
店の注意書きに『執事・メイドスタッフの撮影禁止』って書いてあるんだがなぁ……
「オルガ静かにしてて、ラウラを撮るのに邪魔になるから」
「ミカお前……」
……まぁ、いいか。
こんなミカ、この世界に来られなきゃ見れなかったかも知れねぇ。ここは無粋なことは言わず、好きに撮らせればいい。
だけど、ミカのやつなんで急に写真なんて……
そう疑問に思った俺はミカにこう聞いた。
「……でも急に写真なんか撮りはじめてどうしたんだ?」
「思い出を残したいんだ……ラウラと俺の…夫婦としての」
「…そっか」
ミカも色々と考えてるんだな…すげぇよミカは……
その時、事件が起こった。
「全員動くんじゃねぇ!」
ドアを破るようなの勢いで店に入ってきた覆面の男三人がそう言いながら、天井に向けて銃を発砲する。
バン!
その銃声に喫茶店内の店員や客が悲鳴を発した。
「「きゃああああああああっ!」」
「騒ぐな、静かにしろ!」
ちっ、見る限り、強盗ってやつかよ…こんなときに……
「オルガ、これって…」
ミカが銃を片手にそう聞いてくる。
昔のお前ならすぐに撃ってたんだろうな……
「ああ、間違いなく強盗だ……面倒なことになっちまったな」
「この世界の日本は治安良いところだと思ったけど、こういうこともあるんだね……」
「まぁ、俺らが居たところよりかはずっとマシだがよ…」
「そうだけど……あっ、ラウラが!」
俺とミカがしゃがみこんで小声で話している時、強盗共がラウラに向け、銃を突きつける。
強盗共以外にただ一人ラウラだけが店内で立っていたのだ。
「おい、そこのお前、喉が渇いた。メニューをもってこい」
「……ふん」
ラウラは頷くでもなく、男たちを
そして、持ってきたのは氷が満載された水だった。
「なんだこれは」
「水だ」
「は?」
「さあ、飲むが良い……飲めるものならな!」
「ラウラ……そういうことか……っ!」
ん?どういうことだ?
次の瞬間、ラウラはその冷水を強盗たちにぶちまけた。
「がっ!?」
「ミカ!」
「何だおま」
「うるさいな…」
「まっ!?」
ラウラの合図にミカはすかさず拳銃に手をかけ……
パンパンパンパンッ!パンパンパンパンッ!パンパンパンパンッ!
「ぐ、ぐおおおっ……!」
「ぐああっ……」
「ち、ちくしょ…うっ…!」
バタンッバタンッバタンッ
強盗三人組は為す術もなくそこで倒れた。
「全制圧終了…流石だミカ」
「うん、ラウラも上手くやったよ」
「助かった…」
「ありがとう!」
助かったんだという実感を得たからか突然店内はわっと騒がしくなる。
そんな店内の様子にシャルが安堵の息を漏らした。
「よかった、皆無事で」
「同感だ。……でもよぉ…」
俺はミカに一つ確認を取る。
「ミカ…その銃は…実銃じゃねえんだな?」
「ああ、これ?ラウラが用意してくれたゴム弾を発射する銃だよ」
「殺傷力はないものだが……距離によってはプロボクサーのパンチに匹敵するものだ。護身用に黒うさぎ隊から取り寄せておいて正解だったようだな」
「まあそうだな……実銃だと色々と面倒だしよ……」
そう言って、俺は少し外を見た。
外では強盗たちを追い詰め、店を包囲していた警官隊がおり、その店内の様子から状況に決定的な変化があったのかと読み取り、突入態勢に入っていた。
「ふむ、日本の警察は優秀だな」
「ああ、だがここから退散したほうが良いみてぇだな」
「うん、僕たちが公になると面倒になりそうだしね」
「じゃあとっとと行こうか」
「ああ、失敬するとしよう」
その後、俺たちはそそくさと退散し、そのままの足で臨海公園に行った。
もちろん『ミックスベリー』目当てだ。
シャルが店員に注文を頼む。
「すみませーん、クレープ四つくださーい…ミックスベリーで!」
「あーごめんなさい、今日ミックスベリー終わっちゃってて」
「あ!?」
何だと!?
「……!」
ミカも少し怒ってるみてぇだ……
これは許しちゃおけねぇな…!
「ああ、そうなんですか……」
「待ってくれ!俺ならどうにでも殺してくれ!なんどでも殺してくれ!首を跳ねてそこらに晒してくれても良い!ソイツだけは…!」
「い、いや…そうは言われても……」
もちろん、そんなことは通るはずもなく、断られちまった。
わかってんのにな……ラスタルの時も駄目だったしよ……。
「そんな……!だがそれでも!」
「オルガ、クレープ屋さんが困ってるよ……流石に命乞いまでしなくても大丈夫だよ?」
「す、すまねぇシャル……」
クソッ…かっこわりぃな……俺。
「まて、ミカ……これは…」
「……そういうこと?」
「ああ」
ラウラとミカはクレープ屋の中の厨房を見ていたのか何かに気付いたようだ。
ん?二人共どうしたんだ?
なにか変なのでも見ちまったのか?
「ん?二人共もどうしたの?」
「いや……では注文は、イチゴのやつを二つを貰おうか」
「ブルーベリーのやつ、二つで」
「……はい、ありがとうございます」
「?」
「?」
俺とシャルが顔を見合わせる。
一体……どうしたんだ、ミカとラウラ?
クレープを受け取り、ベンチに座る俺たち四人。
俺とミカはブルーベリーのやつを、シャルとラウラはイチゴのやつを食うことにした。
「で、一体何に気付いたんだ?ミカとラウラは」
「ああ、あのクレープ屋にはミックスベリーはそもそもないぞ?」
「え?」
「そもそもメニューにもなかっただろう、なぁミカ?」
「うん、あと厨房の中それなりに見てみたけど、ミックスベリーのソースらしいものはなかったよ」
「そうなの?二人共よく気付いたね」
「当然だ。あれがもしテロリストの偽装だったらどうする。あの距離でグレネードが起爆でもすればISを緊急展開しても命に関わるからな」
「そ、そういう観点から見てたんだね…」
「ラウラの観察力は凄いからね。俺もラウラに言われるまでわからなかったよ」
「すげぇよ……」
「だが、ミックスベリーは確かに
「どういうことだ?」
「……あ!ストロベリーとブルーベリー!」
「そういうことだ……よし、やるぞミカ!」
「うん」
ミカとラウラは自分が持っているクレープをその相手の口のところに持っていった
「はむっ……うむ、美味しいな」
「うん、美味しい」
「……これで更に夫婦になれたのか?私達は」
「わからないけど……」
確かにストロ
「よし、僕達もやろ!」
「お、おう」
ミカとラウラがやっていたように互いに食べさせ合う。
「はむ……うん、おいしい…よ///」
「うっ……お、おう……///」
……全く味がわからねぇじゃねぇか……
あっ
「…///」
シャルの口元にクリームが……そうだ!
確か前に見たマンガとやらではこういう時は……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『シャル、クリームついちまってるぞ』
『ふぇ?…あっ!』
『んんっ……結構うめぇじゃねぇか…』
『もぅ……オルガったら…』
『悪いな、だけど今度から気ぃつけろよ?』
『ふふっ…』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よし!想像通りにやって、最高に粋がってカッコいいオルガ・イツカってのを見せてやる。
と、俺が人差し指を伸ばしてシャルのクリームを取ろうとしたその時……
「お、お……」
「シャルロット、クリームがついてるぞ?」
ペロッ
「え?…ふぇ!?///」
「……え?」
ラウラが先にシャルロットの口元のクリームを
舐めとったのだ。指すら使わず、舌で……
「なにやって……ぐっ…!」
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
そのまま、俺は項垂れた。
「なんか、ごめん」
……ミカに謝られても何も意味ねぇぞぉ……
一方、その頃……
北アメリカ大陸北西部にあるとされている軍の極秘施設『
軍内部でも一部のごくわずかな関係者以外にはその存在すら知らされていないこの場所に、今はけたたましく警報と銃声が鳴り響いていた。
《侵入者確認!6-Dエリアに至急応援求む!繰り返す!侵入者確認!6-Dエリアに至急応援求む!
侵入者は
薄暗い廊下を所狭しと完全武装の軍人達が駆け回る。
アサルトライフルにショットガン、更には
だが、それでも倒れ伏していくのは鍛え抜かれているはずの兵隊のみ。
しかし同時におかしな部分も幾つかあった。
まず、先ほどから火砲を向けられ続けている侵入者は、黒衣の少女と白衣の男性の二人組。
一見、黒衣といってもそれは羽織っている外套のみで、その下には紫のIS用インナースーツのようなものを身に着けているのだが。
むしろ異質なのは相方らしき白衣の男。
重武装の屈強な軍人達に対し、拳銃一つで確実に仕留めていく技量も確かに凄まじいが……この男の一番に目を引く点は……
────顔が、白い仮面で隠されている事である。
「……お互い、退屈な初任務になると思っていたのだがね。ここまで丁重な歓迎とは」
「無駄口はよせ。お前は私の代わりにトドメを刺すことに専念しろ」
「勿論そうしているさ。何せ君は本作戦加入の条件として一部条件下で人を殺せない。そして命令違反を起こせば体内の監視用ナノマシンにより死に至る。だからこそ私がこうしてグレーゾーンとなっている。むしろ礼の一つでも言うべきではないかね、お嬢さん?」
「フン……。今の状態なら接触しない筈だが、それでも加減の慣らしとしては常にやる方が楽だ。まったく………面倒だな」
こうして軽口を互いに叩きつつも、二人は合計三つの拳銃のみで次々と進軍を続けてゆく。
そして、どういう訳か負傷・行動不能に留めている少女に代わり、制圧した兵に対して仮面の男が念入りにとどめを刺す。
結果、彼らの通った後の道はただひたすらに紅く染まっていた。
やがて、ようやく二人の歩みを止めうる可能性を持つものが到着する。
分厚いはずであろう通路の壁を壊し、人の倍はあろう
「……?!」
「ほう…ようやくのご到着か」
「ああ。散々やってくれたようだな。ここまで大勢の仲間達をよくも……!
だがこいつはアメリカ合衆国!第三世代型IS、『ファング・クエイク』!
そして私は国家代表、イーリス・コーリング!
言っとくが、超つえーぞ? だから撲殺前の最後に聞いておいてやる。──目的は何だ?」
兵士達を討たれた怒りと、自身の力量に自信が混じった女性の声。
重装甲・高機動・高安定が特徴の最新鋭第三世代型ISが、二人の前に立ちふさがる。
しかし──
「この基地に封印されているIS、『
丁度、雑兵ばかりで飽きていたころだ。……展開」
全くそれに怯む様子もなく、黒い少女の淡々とした声と共に、少女の全身は光に包まれ、紫の蝶のような装甲に覆われる。
一方、仮面の男は巻き込まれぬよう様子見といった風合で数メートルほど引き下がる。
「へぇ、面白ぇ。そっちも第三世代、奪われたっていう『サイレント・ゼフィルス』か!
んな実験機でこっちのほぼ完成品に勝てるわけねーだろぉーがよぉー?!」
────サイレント・ゼフィルス。イギリス製の第三世代型試作IS。
何者かによって盗まれたという情報が裏で出回っていた、特殊武装・BT兵器搭載二号機。
噂に聞いていたそれが目の前に現れ、
『けれど同じ実験機といえど、稼働効率重視のこっちと違い、向こうは所詮未完成品』
とイーリスは嗤い、ファング・クエイクの両手の単分子結晶ナックルをぶつけて鳴らし、殴りかかる。
「…ッ!」
突き出された拳を、ゼフィルスは瞬時に左手に呼び出したナイフで受け止める。
重い一撃にナイフは大きくひび割れるが、形は保ってるのでそれはまだ使えると踏み、今度は右手に大型銃『スターブレイカー』を展開。
その身の丈以上の長銃身の側面を思い切り叩きつけ、クエイクを弾く。
「がっ!」
「速攻で終わらせる」
勢いよく壁に叩きつけられ、クエイクの周囲を粉塵が覆う。
そしてその中へと向け、ゼフィルスは特徴ともいえる装備、BT兵器を射出。
宙に浮かんだ幾つもの子機からビームを発射、壁にめり込んだであろうクエイクに追撃を加える。
少なくとも直撃の感触はした。
何せ煙の中からさらに爆発が起きたのだから。
「……やったか」
「リ……バー………スト……!」
「…ん?」
爆煙の中から、かすかに声が聞こえる。それと同時に、何かが空回りするような音も鳴る。
それが何かは、次の瞬間、すぐに判明した。
「ああくそ!
第三世代型IS、『ファング・クエイク』に搭載された特殊装備。
先ほど一回試みて失敗したように、成功率は40%とこれに関しては未だ不安定だが、4基のスラスターを連続で稼働させることにより他の追随を許さぬ超加速を行うことができる。
その力が最も猛威を振るうであろう直線軌道に拳を乗せ、普通では目に見えぬほどの速さでゼフィルスを穿とうと突き進む。
「ーーーグ…!!!」
「エムッ!」
しかしやはりそこは直進。何か来ると瞬時に理解したゼフィルスはひび割れたナイフと、一号機にはない盾の機能が付いた子機の二重の防御を張り、結果ナイフは粉々に砕け、ビームシールドの子機も爆散。
直撃は免れたが衝撃でゼフィルス自身は大きく吹き飛ばされ、地面に背を打つと同時に引き下がっていた仮面の男とフルフェイスのバイザー越しに目が合う。
「……大丈夫かね?」
「心配するなら、アイツをどうにかしろ…!」
「フッ、それもそうか。全く、手のかかる娘だよ、君は」
「うるさい…」
仰向けに倒れるゼフィルスを見つつ、仮面の男は前へと歩みだす。
イーリスはその様子にほんの少しの疑問を抱く。
「あぁ?次はお前か?そっちのISといい、仮面舞踏会でも流行ってんのか。大体、ISを前に男一人で何が出来る?そっちも大した事ないが、今度は秒で終わらせてやる」
「済まないが、
「な、何を言って…?」
訳が分からない、といった様子のイーリスを前に、男は不敵に笑み、
その顔を覆う仮面に手をかざす。
「──起動せよ。
男の体は少女と同様、光に包まれ、ファング・クエイクを身に纏うイーリスの眼前には……
「なん…何だお前?!まさか、
「ほう、もう
『それ』は身体の各所、特に背部からゼフィルスと似て非なる子機を射出。
クエイクに向けられると思いイーリスは防御の姿勢を取るが、子機達はなぜか壁や天井へと突き刺さっていく。
「……あぁ?!何だよ、ヘタクソか?!やっぱりISは女のモンだ!テメーなんぞに!満足に動かせる訳がない!舐めやがってぇ!一発でぶち壊してやる!
はぁあああっ!!!
「全く…弱い者ほど、うるさく飛び回りたがる。エム、参考までに見ておけ。こういった武装は、このように使うのだ」
針のような子機が抜け、無防備のような状態になった『それ』目掛け、再び一直線に超高機動でナックルをぶつけようと迫るファング・クエイク。
実際、『それ』は他には手に持つ大型のライフル以外にめぼしい武装は見当たらず、高い破壊力を持つ拳が迫っているにもかかわらず、防ごうとも、避けようともする様子はない。
必要が無いからだ。
「消え失せろ。
「…へ、な…?あぁああああああああっ!!!!」
高加速での直進、敵への直撃コース。
その進路上に突如、光の…否、
細かく、そして高出力のビームの塊で作られた網の壁。
もちろんファング・クエイクは高速移動の最中で、ブレーキなど効く筈が無く。
一番前に突き出した拳を始点とし、全身くまなく夥しい量のビームの中へと勢いよく突っ込んだ。
結果、第三世代型IS、ファング・クエイクは見るも無残にバラバラとなり、その破片は光の網の向こう、辺り一面に広がった。
……あれだけの巨体が、今では細かな破片のみ。
ここまで派手に撒かれては、恐らく貴重なコアも含めて修復不能だろう。
「…完全に破壊してくれたな。これではこいつは拾って帰れないぞ」
「そのようだ。少々やりすぎたかね?」
「だが、確かに勉強にはなった」
「では、見られたからには後に報告されても困る。このまま片すとしよう」
「…っぐ…畜、生………!!」
ISの基本機能、絶対防御。その守りで果てた機体から辛うじて弾き出され、それでも重傷を負い、意識を失ってゆくイーリス・コーリングが最後に見た映像は……
やがて。
基地の最奥にて、量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』の残骸が積み上げられた頃。
「こちら襲撃部隊。任務を達成した」
《こちらも映像で確認したわ。思ったよりも早かったわね。
戦闘に使うのは二人とも初めてというのに、手際も中々…いえ、貴方に関しては凄まじいわ。
国家代表が来たときは下がらせようとも思ったけど、あんな簡単に仕留めるなんて。
私たちが敵対を選ばなかった事につくづく安堵しているわ。ホント、恐ろしい男ね》
「いえ。エムの手柄です。彼女がいなければ私もどこまで渡り合えたか。部下としてとても優秀な少女だよ。今後も共闘したいものだ」
《謙遜を…。どこまで演技なのやら》
「フッ…」
「…おい」
退屈そうに奪取したコアを眺めるエムは、通信を終えた仮面の男に問いかける。
「私は組織でISを使う条件として、いくつかの制約をかけられている。
それをなぜお前はわざわざ打ち消す真似をし、そして私の手助けをする?」
「何、この程度は構わんさ。その昔、私は軍人として戦場にいてね。そして大勢を手にかけた。今更多少増えた程度、何の苦も無い。
だが、君はまだ未熟。このような事に慣れる必要性は薄いと思うがね。
特に……きちんと決めている『相手』がいるのだろう?ならば初めは尚の事大切にすべきだ。乙女とは一般的にそういうものだと、私は伝え聞いているが?」
「…フン。ならば勝手にしろ。邪魔はするな」
「ああ。恐らくお互い、これからも組むことになるだろう。よろしく頼むよ」
破壊され尽くした基地、その鉄と血にまみれた道を帰路とし、二人は闇の中へと消えていった。
ここは元々機密扱いの場所であることもあり、更には情勢を崩しかねない不祥事という事情も相まって。
大勢の死傷者を出したにも拘らずこの事件は表沙汰にされず、わずかな筋にのみこう伝えられた。
───『
途中で雰囲気が変わったと気づいたあなた
そのとおりでございます。
こんな感じの合作で2期ノベライズは進行します。
(やっぱ雰囲気変わりすぎィ!)