インフィニットオルフェンズ2   作:モンターク

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変則的に初投稿です。

5話編につきましては4分割でお送りします。
メイン執筆はNyoseでお送りします。


第5話編
止める者のいない祝祭(げんきをだして) その1


深く、黒い、闇の中。

 

そこに一筋の光が差す。

 

照らされ姿を見せたのは、織斑一夏。

彼は椅子に座らされた状態で、つい先ほどまで意識を失っており、たった今目覚めた。

 

「…っ……!何なんだ?」

 

椅子にはベルトのような拘束具がついており、手足の自由はない。

一夏の視界に広がるのは自身の周囲のみにある明かりと、一面の塗りつぶされたような暗黒。

 

何故、今、彼がこのような状態にあるのか。

 

 

 

 

その始まりを知るには、少し時を遡ることとなる。

 

 

 

 

_

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

激戦となった文化祭襲撃から数日。

ようやく落ち着きを取り戻し、いつもの喧騒が戻ってきたIS学園の食堂。

織斑一夏はその片隅にて、暗い顔をしながら昼食の秋刀魚をつついていた。

少し前から見物にくる女子生徒も段々といなくなり、比較的静かな食事風景を手に入れた彼だが、

最近はそれに加え、友人の箒やオルガ達も近寄らせず独りで食べるようになってきた。

その為、静寂はさらに増しており、また虚ろな目をした彼の口に運ばれる旬の食材や、丁寧に作られた料理の味も、あまり感じられているようには見えない。

 

「よう一夏!今日も一人か?最近冷てぇじゃねえか」

 

「…悪いオルガ。今日もちょっと…」

 

「あー……分かった」

 

親しい仲であるオルガ・イツカが気さくに話しかけるが、本日もフラれてしまう。

落ち込んだ様子からあまりしつこく誘う事も出来ず、

オルガは一夏のいるテーブルに置こうとしたガパオライスの乗ったトレイを運び、「今日も失敗しちまった」と呟きながら、近くに集まるシャルロット達の方へと向かう事にした。

 

「あいつ、結局今日も一人飯?

 なんだか日に日に老け込んでいくみたいだし、どうにかなんないのかしら?」

 

「まぁ、無理もなかろう。襲撃犯の目的が自分自身で、それにより鈴とセシリア、

 そしてファリド先生がああまでなったとあってはな……」

 

「わたくしも鈴さんはかすり傷程度ですし、すぐ治りましたので問題ないとは申しましたのに…」

 

「そこが一夏のいい所でもあり、悪い所でもあるって感じかなぁ。

 前も似た事で落ち込んだりしたことあった気がするけど、今回は長引きそうだね…」

 

「うむ。見ていられんな。しかしこれではおちおち相談にも乗れん」

 

実際、今の一夏は彼女達すら中々寄せ付けず、一度三日月が少し話し合った程度が現状である。

その三日月も先の一件は重く考えており、想いを共有こそすれ気持ちを変えるには至らなかった。

 

「……俺ももっと強かったら…」

 

「ミカ!お前までしょぼくれてどうすんだ…。けどよ、確かにあいつらは尋常じゃねぇ。

 だからといってずっとビビってもいられねえ。ん…次が来たときにやられちまうだけだからな。

 …何とかしてハッパかけてやんねえと。あむ…荒療治でも試してやるか?」

 

「「「「「荒療治?」」」」ですの?」

 

ガパオライスを食べながら語るオルガの言葉に、箒達は一同に首を傾ける。

だが、周囲の様子を気に留めることなくオルガは話を続ける。ついでに、見慣れない名前だったので試しに注文した料理が気に入ったのか、スプーンも止めない。

 

「ま、つっても何をどうやる、てのはあんま決めてねえんだけどな。

 俺らでアイツの心を癒せれたらな、っつー感じだよ。手あたり次第なんかいい思いぶつけりゃあ、少しはマシになんねえかなって思ってさ」

 

「成程…。オルガにしては良い判断だ。私もやってやらんではない」

 

「ただな、やんならいつ頃がいいか正直ピンと来ねえんだ。ほら、準備とか色々時間かけた方がいいだろ?だがかけすぎんのもどうかってな」

 

オルガの言う「荒療治」が日程で悩んでると聞いたその時、ほんの数秒考えて箒が口を開く。が、

 

「…もうすぐあやつの誕生…」

「そういえばアイツの誕生日、もうすぐね。まさにベストタイミングじゃない?

 どうせズボラで鈍感な一夏の事だから忘れてるだろうし、いいと思うわよ?」

 

言おうとした台詞をほぼ同時に発した鈴に取られてしまった。

悔しそうに睨む箒だが、この手の瞬発力はどうしても鈴には及ばない。

 

「わ、私も今それを言おうとしたのだ!」

 

「へー。ならなおさらね。決まりよ決まり!」

 

「ぐぅぅ……!」

 

完全にリードを取られた箒はそれまで静かに食べていた親子丼を豪快にかっ込み始める。

真横のシャルロットが引き気味に眺めているが、

そんな事を箒は知る由もない。視界が丼で塞がっている故に。

 

「…と、とりあえずその為にも色々用意しなきゃだね…?ほら、一夏を癒すといっても何が心に刺さるか、みんなで色々試してみたいし…」

 

「私は常に嫁の喜ぶものを把握している!つまりは男子の喜ぶ物だ!心得はあるぞ!」

 

「わ、わたくしも出来ることがあれば何なりとお申し付けくださいまし!」

 

「みんな…!すまねえ!恩に着る!悪りぃが一夏の為に一肌脱いでくれ!」

 

オルガは両手を膝に置き、座ったまま頭を深く下げる。

鈴やシャルロットは皆笑顔と二つ返事で応えるが、

 

ただ一人ラウラのみ、

 

「うむ分かった!」

 

と自信に満ちた顔で立ち上がり、即座に衣服を脱ぎ捨てた。上下、同時に。

恐らく、言葉を文字通りの意味で受け取ったのだろう。

 

「「「今脱がんでいい!!!」」」

「意味が違う!!」

 

「…可愛い……」

 

「ヴウッ!!」

 

周囲がざわつく中、オルガは目の前で突如として露わになったラウラの姿に驚愕し、

その刺激で鼻から血を流しながら、希望の華を咲かせた。

 

「だからよ…急に脱ぐんじゃねぇぞ……」

 

その直後、

 

 

「――面白そうな話をしてますねぇ~」

 

どこから話を聞いていたのか、皿の横に倒れ伏すオルガの背後から見慣れた人物が現れた。

いつも変わらぬ眼鏡と黄色のスーツが印象深いIS学園教師、山田真耶。

その顔は興味深そうに微笑んでおり、手には食べ終わった皿の乗ったトレイを持っている。

 

「や、山田先生?!気付かなかったぁ…いつの間に…」

 

「とりあえず、ラウラさんは服を着てください。イツカ君が困ってますよ?」

 

「ん、んむ…!」

 

流石に教師に言われたのでは逆らえず、ラウラは渋々脱ぎ捨てた制服その他を身に着けてゆく。

 

「さ、イツカ君、もう大丈夫ですよ?顔を上げてください」

 

「お、おう…すまねぇな。山田先生」

 

「綺麗だったのに……」

 

「三日月くんも!…そ、そういうのはその…公衆の面前ではよくない…ですよ…?」

 

「えーっと……それで、山田先生。私達に何か用ですか?」

 

「あ、そうそう!そうでしたね!」

 

脱線しかけたところで鈴が戻し、慌ててトレイを机に置いた真耶は本題へと入る。

 

「それでですね、私も今の一夏君の状態は正直…ちょっと先生としても心配なんです。

 いまのところ授業への影響はまだ少ないようなんですけど…。ほら、常に顔が上の空で。

 このまま放っておいたら成績が下がったり…あと……その~…。

 と、とにかく最近の一夏君は見ていて不安です!なので、先生も手伝わせてください!」

 

意外な発言。瞬時にオルガ達は揃ってそう思った。

普段の素行は言わずもがな、専用機持ちだからと色々と誤魔化されている手前、この手の企みは最低でも止められるか、軽く注意されるものだとやや警戒していたのだろう。

 

「て、手伝う…ってぇ…え?!」

 

「はい!こうなったらもう大々的に!どっかーんと一夏君を回復させる、最強の大会を開きましょう!

 大丈夫!先生が資金面とか、全面バックアップです!なんでも言ってください!」

 

「おい、それ色々大丈夫なのか?」

 

「もちろん貴方たちはいつもの事ですから、過激な事とか色々やりすぎちゃうでしょうし、ちゃんとチェックはしますよ?」

 

「いや、そういう話じゃなくて…ん?」

 

鈴は何となく嫌な予感を感じたが、それはそれとして、『費用を無視して好き勝手出来るのでは?』と考えた為、周囲に承諾するよう耳打ちする。

その話を聞いた箒も、空となった丼を置いてうなずいた。

 

「うっしゃ…決まりね。それじゃあ山田先生…」

 

「すまねえが、今回は俺達の側に乗ってくれ」

 

「はい!喜んで!」

 

「く、くれぐれも一夏には内緒にして下さいね?」

 

「山田先生、口軽そうだし」

 

「う…き、気を付けます!」

 

なぜか真耶は生徒達に次々と釘を刺され、どちらの立場が上なのかよく分からないやりとりが続く。

 

だがそれもすぐに終わり、各々は食事を済ませ一時解散することにした。

放課後に再び集まり、作戦会議を行う約束をして。

 

そして、そんな会話が行われている裏で、

 

「…なんか向こうが騒がしいな。どっか静かなところでも探すか…ごちそうさま」

 

一夏は全く彼女達の動向に気付くことなく、食堂を後にした。

 

 

 

_

 

 

「で、集合場所の空き教室に来たはいいんだがよ」

 

「何かな?」

 

「なんでチョコの人がいるの?」

 

放課後、俺達は山田先生の指定したIS学園で使われてない教室に集まった。

が、待っていたのは山田先生ではなく、相変わらず何を考えてやがるのか全く分からねえにやけ顔をした、マクギリスの野郎だった。

 

「職員室の方で少々不備があってね。文化祭の事後処理関係の書類が、何らかの手違いでまだ大量に残っていたことが判明した。彼女は他の先生達とそれの消化に奔走していてね。代わりに私が来たのさ。概ねの話は聞かせてもらったよ」

 

「………サボりか?」

 

「……………」

 

マクギリスの奴は何も答えない。…図星かよ…。

大丈夫なのかコイツ。向こうは一大事なんだろ?

 

「と、とりあえず!ファリド先生!私達、最近ずっとあんな様子の一夏の為に、サプライズで誕生会を開いて元気づけようと思ってるんですけど、まず何から始めようか…」

 

シャルが一応念のため尋ねる。…どうせまともな返事じゃねえだろうけどな…。

 

「ふむ。ならばまず用意すべきは、劇的な舞台とそれに相応しい、劇的な演出だろう」

 

「は?」

 

「私と山田先生でステージを用意する。君たちはそこで各々に割り振られた舞台で、それぞれ好きなように彼を喜ばせうる事を行えばいい。一種の波状攻撃だ」

 

「何だそりゃ、随分とデカデカとやるんだな。…山田先生は大会をやるとか言ってたけどよ」

 

「誕生会も兼ねているのだろう?ならばなおさら、通常とはかけ離れた形で行う事こそが意味を持つ筈だ」

 

んな形でやってもあいつの頭じゃ混乱するだけじゃねえのか?と、俺は前髪をいじりながら喋るマクギリスを睨むが、周りの連中は、

 

「おお…!」

「へぇ、面白そうじゃない」

「うむ!腕が鳴るというものだ」

「ふーん」

 

と、かなり乗り気だ。ミカも興味持ってるみてぇだし…。ここはうだうだ言わずコイツの案に乗っておくとするか。実際、一番の目当てはアイツに刺激を与えられる思い出作りだ。その点で言えば効果はありそうだろ。

 

「それならわたくしは裏方で皆様を支えることにいたしますわ。小道具大道具など、山田先生と共に調達や設営のお手伝いを」

 

「すっかり奉仕が板についてんな、セシリアは…。いいのか?何かやりてぇだろ」

 

まぁ、最初に会った頃に比べたらすげぇいい変化だとは思うけどよ。

 

「いいえ、結構ですわ。正直その…あまりそういった芸には明るくありませんし…。

 一夏さんがああなった一因はわたくしにもありますもの。あまり顔向けできませんわ。

 …ですので!わたくし今回は、影で皆様が輝けるよう務めさせていただきます!」

 

「では…お嬢さんの代わりに私が出よう。彼の好みは既に把握している」

 

「は?」

 

何言ってんだコイツ。なんつー図々しい教師だ。

 

「では、セシリア嬢。君のツテの管轄外になりそうなものはこの紙にまとめておいてくれ。

 そのあたりは私や山田先生で対処する事としよう。あの様子だと長くかかるだろう」

 

「はいですわ!」

 

「彼女には書類仕事の合間に私が混ぜて渡しておく。どのような物だろうと、よく確認せずに発注してくれるだろうさ」

 

そう言って、マクギリスは懐から出した紙とペンをセシリアに渡した。

いいのか?それでいいのか? あー…もう考えるだけ面倒くせぇ。

 

コイツと話してると頭が痛くなりそうだ…ここはセシリアに相手を任せておいて…。

……隣でずっとヤシをほおばるミカと目が合った。聞いてみるとするか。

 

「んじゃ…ミカ、お前はどうすんだ?」

 

「ん……俺?そうだなぁ…。オルガのしたいことにするよ」

いつも通りのミカだ。だが、今回は状況が状況だ。ちょっとそうはいかねえ。

 

「や、実を言うと俺もあんまネタが浮かばねえんだ。てなもんで、シャルの手伝いにでも行こうかな、ってよ」

 

「そっか」

 

「ふぇっ!?」

 

一応は授業中とかに色々と考えてはみたんだがな。こういうのは俺なんかよりうんと気配りできて、しっかりしてるシャルについてったほうが確実だと思ってよ。

だったら俺は、そういうのが得意なアイツの傍で手助けしたほうが一夏の為にもなる…っつーか。

ほんと、シャルはいい女だよな…。優しくて、明るくて。俺みてぇなのにもこんなに…。

 

「オ、オ、オルガッ!くち、言葉が口にでてるよぉっ?!」

 

「あっ」

 

いつからか分かんねえが、思考が口に出ていたらしい。

気が付けば近くにいたシャルが恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。

 

「わ、わりぃわりぃ…その…。と、とりあえず、俺はシャルと組みてぇんだが…良いか…?」

 

「も、勿論…だよ…?」

 

「そ、そっか…」

 

「んじゃあ、それなら俺はラウラのとこいくよ。…そっちどう?ラウラ」

 

「あぁ!少しばかり大仕掛けを予定している。

 ミカ、手伝ってくれるならば後で色々頼むとしよう。丁度私も尋ねようと思っていた所だ。

 ついでに、皆に少しばかり提案がある!」

 

「ん?何よラウラ」

 

「先ほど言っただろう?心得があると。まずは衣装から攻めるべきと私は判断する」

 

自信に満ちた笑みで語るラウラ。何だろうか、すげぇ変な予感がする…。

朝といい…いや、ここはアイツを信じよう。

 

「…確かに、パーティでいつもの制服では、少し代り映えしないな。良い案だ」

 

箒もこう言ってるしよ。うん。

 

(ラウラの言葉だと不安しかないわね…)

 

「で、ラウラ、その…大丈夫なんだよな?」

 

「ああ!勿論だ!今こそクラリッサから聞き、ミカで実践した知識を活用するときが来たのだ!」

 

「うん。すごく良かった。大丈夫だよオルガ」

 

「っっ~~~~…」

 

「心配ないよ。無難なやつにしとくから」

 

「あー、信じてっからな、ミカ……」

 

「ラウラ……その意識を少しでもコスプレじゃなくておしゃれに向けたほうがいいよ……」

 

「確か、山田先生はその手の物に詳しい。そちらのルートで取れないものがあれば手配させよう。

 …私は遠慮しておくよ。この服装は一応、正装も兼ねているのでね」

 

「わたくしも裏方なので…。ハロウィンも近いから仮装は良いと思いますが…。」

 

「そっか。残念」

 

…マジで頼むぞ、ミカ。

 

あと予定を聞いていないのは…箒と鈴か。

ちらりと見た様子では、箒はもう決めてんのか、特に変わった様子もない。

一方の鈴は……拳を口に当てて考え込んでいる。料理とかはいつも出してたもんな。

今回は趣向を凝らしてそれ以外で、となると中々出てこねぇのかもしれねえ。

 

「あー…鈴?そっちはどうだ?やるもん決めたか?」

 

「うぇっ?!あ、あぁ~~…。も、もちろんよ!当日を楽しみにするといいわ!

 もうすっごい、アレだから!うん!一夏なんてイチコロなんだから!うんっ!!」

 

「…ならいいが。箒は見た感じ、イケそうだな」

 

「うむ。皆が派手に暴れまわるのは目に見える。私は静かなやり方でいかせてもらおう」

 

「よし。んじゃ、今日はこのへんにして、明日からは準備だ。

 こっからは皆それぞれ練習なり道具の調達なりって事で行こう。一夏の為だ!頑張ろうぜ!」

 

「「「「おーっ!!」」」」

 

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