インフィニットオルフェンズ2   作:モンターク

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続き所さんです。


止める者のいない祝祭(げんきをだして) その2

日々意気消沈していく一夏へのサプライズパーティ準備は過酷を極めた。

 

無我夢中で必死に書類を片付けていた真耶は、マクギリスによってその中に混ぜられた小道具や衣服の注文書に気付かずサインをし、

後日大量にモンターク商会から自身の名義で来る大小さまざまな荷物に混乱。

さらに後日そのことを思い出したマクギリスによって事の仔細を知る。

 

ちなみに突如職員室に発生した書類の山も、噂を聞きつけパーティに参加したかったマクギリスの工作によるものであり、

あまりに怪しかったため真実を解明した千冬によってしばき倒される事となった。

 

_

 

「ふふ…。まさか馬乗りで殴られるとはね。流石は、ミス織斑だ」

 

「ノックアウトされたって聞いたわよ?そんなになるって分かってても、やりたい事があったの?」

 

千冬に殴り倒された後、再び保健室で手当て(軽傷)を受けることとなったマクギリスは、

暇を持て余していた楯無の話相手をしていた。

 

「あぁ、楯無には言っていなかったか。実は近々、一夏君を元気づけようと誕生会を開く予定でね」

 

「えー!それって、すっごい楽しそうじゃないの!?ワタシもまーぜーてっ!」

 

「勿論構わないさ。人数も多い方が、彼も喜ぶだろう。飛び入りで参加するといい」

 

「やたっ!お姉さんうれしー!」

 

「…ところで、私のバエルの様子はどうなっている?」

 

突如はしゃいでいた楯無の動きが止まる。

露骨にマクギリスから目を逸らし、誤魔化していたのがバレた、といった風の震え声で、

 

「あーー……。正直、お手上げかな~……?」

 

と応えた。

 

「…何?どういう事だ?」

 

「実はね、バエルの修理パーツが……無いのよ。

 前見た時はあったような……。そもそも元から無かったような……とにかく、無いの。

 調達も試したんだけれど、同じ第四世代型でも紅椿とは違い、規格が特殊なバエルは純粋に合うパーツを用意するのはちょっと難しいみたいでねぇ…」

 

「では、先日の損壊した状態のまま、と」

 

「んまあ、そうなっちゃうね~。…そこで、お姉さんから提案」

 

「?」

 

 

そう言って楯無は懐からリモコンを取り出し、空中にスクリーンを表示させる。

映し出されたのは幾つものISのデータ。但し―――

 

 

 

 

 

  ―――大きく、『コンペッション落選』の文字が表示されていた。

 

 

 

「各国が研究・開発している第三世代型IS。その中にはある程度まで作ったりなんだりして、そこそこ実働データとか取ったりした上でどれを作るか、そうやって幾つかの候補から選んだりする事もたまによくあるの。

 コアの数も限られている事だしね。ほぼ完成しても没でポイ、パーツ抜いて初期化して。

 普通は処分されるんだけど、残してるのもあるの。倉庫の肥やしってヤツ?

 

 ウチの力を使えば、そういうのを取り寄せてバエルの強化改修に利用するって事もできるわよ?」

 

「…ならば普通に修復で良いのではないかね?あの機体の外見はあまり変えたくないのだが」

 

「もちろん、ちゃんと形は合わせるわよ?でもフツーに他の機体のパーツでやっちゃったら、

 余りがちな第二世代型を使う事になる。ただ性能を落とすだけになるわ。そ・こ・で!

 こういった試作品の第三世代型を取り入れることで性能低下は最小限。

 更にはバエルに特殊装備を搭載させることも夢じゃないのよ!いい話だと思うけれど?」

 

「成程。…そこまでの事をする、というならば、私に何か条件を?」

 

「ないない。私と貴方の仲でしょう?お祭りにご招待してくれたし。いつものお礼よ」

 

「そういう事であれば…頼もう。完璧なバエルを、私に見せてくれ」

 

「りょーかい。楽しみに待っててね」

 

「では、私も行くとしよう。彼への贈り物の準備があるのでね」

 

何時の頃からか交流のある二人は、互いに心を躍らせながら保健室を後にした。

こっぱみじんに大破したバエルの改修と、一夏の面白そうな反応を夢見ながら。

_

 

同じ頃、セシリアは――

 

「ぜーっ…はーっ…はーーっ……。フ、ファリド先生の意見を参考に設計したはよいのですが…。

 基本、荷運びや大きな作業はISを使ったり、レーザーの溶接でいけますから、まだいいですわ。

 

 でもこれ、一人でするにはやることが多すぎるんじゃないですのーーー?!!」

 

『大仕掛けの使用を前提とした』舞台の製作に勤しんでいた。

始めはそれこそ、「英国面呼ばわりされないように」と気を使っていたものの、

現在組み上げている舞台の形は恐らくそう言われうる物になりつつあるという事実。

だが今更それを直す余裕もなく続行する。

そして何かしらを披露する順番も、まだ未定の為『どの階』にでも置けるよう大道具の手配。

 

大雑把な作業はISを用いることで何とかこなせてはいるが、細かな部分はとても人手が足りていなかった。

かといって準備に忙しい、あるいは集中したいだろう箒やシャルロット達を呼ぶのも気が引ける。

そんな迷いがセシリアの作業の手を遅らせていた。

 

「まぁ…こうしてBTを細かい調整で使う事自体は、いい訓練になるのですけども。

 あの時はしてやられましたが、今度はそうはいきませんわ」

 

そう言いながらセシリアは宙に幾つか浮かせているBTを器用に箸の如く使い、建材を配置。

 

「確かに、凄まじい精密動作でしたが、今のわたくしなら……はあっ!!」

 

適度な位置にしたそれらに向け、偏向射撃《フレキシブル》を行う。

 

結果、

 

 

 

 

 

―――焼いてつなげる予定の建材には穴が開いた。

 

 

 

「……………はぁーーーー…………ぁ」

 

「よう、そっちはどうだ?」

「調子は…微妙なようだな」

 

「ほへ?オルガさん?箒さん?どうしてこちらへ?」

 

俯くセシリアの視界にオルガと箒が突如として姿を現す。

大きな溜息が聞こえたか不安になるも、とりあえず疑問をぶつけて有耶無耶にした。

 

「ま、休憩がてらに他所の様子見ってとこだ。箒とはたまたまタイミングが合った」

 

「見た所、随分と苦戦しているようだな。手伝おうか?」

 

「い、いえ!それに、わたくしの方に行きますとだいぶ時間を割かれる事になりますわ。

 確かに、猫の手も借りたいところですが…。

 あ、三日月さんはどうしていらっしゃいますの?」

 

「ん、ミカか。あいつはな…」

 

_

 

 

『くっ!二号機も失敗したか!排出途中で引っかかるとは…』

 

『中でぐるぐるする仕組みは難しいかもね』

 

『ようミカ、ラウラ。調子はどうだ?』

 

『オルガ。まぁ、ぼちぼちってとこ』

 

『一号機は周辺機器との接続がうまくいかず、二号機はこれだ。

 だが、概ねの欠点はこれで改善できるだろう。三号機で恐らく完成というところだ!』

 

『随分と…でけぇモン用意してんだな…』

 

『黒ウサギ式のもてなしだ。盛大に楽しませてやるぞ…!』

 

『こうやって何か作るの、野菜以外はあんまやったことなかったんだけど、結構楽しいよ』

 

『そっかー!ならいい。うんと楽しくやりゃいいさ。んでよ、こいつ、名前とかあんのか?』

 

『あぁ勿論だとも!完成すれば、このマシンの名は―――』

 

_

 

「とまあ、うまくいってるみてぇだ。しかし…この規模をセシリア一人、っつーのは酷だな」

 

「うむ。しかし私達も準備が…。オルガは確か、シャルロットと料理、であったか」

 

「オルガさんがお料理?!」

 

 

「あー、まぁな。初めてなんで基礎から教わってんだ。案外奥深いもんでよ、中々こっちも楽しんでる。…なんかわりぃな…」

 

「いえ、しかしどういたしましょう…。細かな作業が得意で、基本空いてそうな人がいればよいのですが…」

 

セシリアが要求する人材の条件を聞いた途端、オルガはピクリと眉を動かし、何かを思い出したかのように考え込み始めた。

 

「…!? なんか、いたよな。そんな奴がよ。あーれーはー……。あぁ!!!」

 

「うわっ!急に大声を出すな!」

 

「丁度いい!箒!!携帯出せ!!アイツを呼ぼう!!確か知ってたよな?!」

 

「む、え?へ?…ああー!!いたぞ!確かに!」

 

「…?」

 

隣にいた箒も、はじめは困惑するもすぐに合点がいったのか、手早く携帯を取り出し何らかの操作を始める。分からないのはセシリアのみ。彼女はただ、急に騒ぎ始めた二人の様子に目を点にしていた。

 

「よし!あった!かけるぞ…!」

 

(電話……ですの?誰に…?)

 

_

 

 

 

≪放つ光♪ 空に墜ちる♪

 

          望むだけの♪ 熱を捧げて♪≫

 

「キラくんキラくぅーん。ケータイ鳴ってるよう」

 

「あ、本当だ。すみません、ちょっと」

 

「はいはーい。いってらっしゃっぴー」

 

この世界のどこかにあるという、篠ノ之束の研究室。

作った直後に飽きて用途すら忘れられたガラクタが散乱している開発スペースにて。

キラ・ヤマトと束の二人は今日も余人の目には全く分からない物体の制作に勤しんでいた。

尤も、とにかく指示を叩きつけられているだけのキラも何をしているのかは知らない。

そしてそんな最中、キラは携帯の着信音に応じ、束から距離を取ってどこからかの電話に出る。

 

≪もしもし、私だ。箒だ。いつも姉さんが世話になっている…いや、本当…≫

 

「箒さん?どうかしたの?」

 

≪実はだな―――≫

 

箒は大まかに今の状況を伝えた。

 

「なるほど…。…え?僕なんかでいいんですか?その…」

 

≪構わん。むしろ、他に適任がいないというか…まぁ…そんなところだ。まだあと何日かはかかるが…。その辺り、一応姉さんに話しておいてくれ。

 ただし!流石に来られるとまた何か起きかねん。くれぐれも内密に、それとなく、だ!≫

 

「分かった。束さんにはなるべくバレないよう気を付けるよ。用意したらすぐに行くね」

 

≪頼む≫

 

「うん、じゃあ」

 

通話を切り、キラは束の元へと戻る。

 

「あっ、おかえりー」

 

「束さん、これからちょっと、何日か出掛けないといけなくなっちゃって」

 

「お友達ー?」

 

「ん、はい…」

 

「そっかそっか。いってらっしゃーい」

 

「…え?」

 

あまりに、話が早すぎる。

普段の底知れぬ束であれば、急に日をまたいで出る、と言えばごねるか怪しむ筈だとキラは踏んでいた。

しかしまるでいつもと変わらぬ日常会話のように、基本ラボの外へ出るのもせいぜい買い出しぐらいしか許可が下りないというのにも関らず、あっさりと許しが下りた。

 

「…あの、行先とか…」

 

「ちゃんとキラ君いない間もごはんは食べるし歯も磨くよん。まあ、束さんはそこらへんも別次元の生命体だからぶっちゃけあってもなくても大差ないんだけどねぇ!

 兎にも角にも角煮の豚も、お友達のお誘いなら乗ってあげるが青春だー!

 きちんと私の所に帰ってくる事だけ、約束してくれるなら好きにしていいよ~」

 

「…大丈夫。僕の居場所はここですから。必ず帰ります」

 

「…そっか…。それでこそ、私の助手、だね☆…行ってらっしゃい、キラくん」

 

「はい!行ってきます」

 

 

リュックに手早く工具や端末などを詰め込み、ラボの外へと歩むキラ。

見送る束の笑みは、普段のものとは少し違っていた。

彼女のお気に入りは、ここが辿り着いた場所なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて、と。そういやそうだったねぇ。忘れてたけどいっくんの誕生日だっけ。

 束さんからもなにかしてあげないとなー。うーんうーん。……おっ、そうだ」

 

キラがいなくなった後、何かを思いついた束はポケットから携帯を取り出した。

 

「もしもししもしもー?わたし束さーん。いまあなたのうしろにいるのーっ。

 …やろうと思えばできるけど冗談だよう。ちょっとやってほしい事があってー、日時指定でー。

 んでねー、IS学園にはねー、

 工事の時にだけ使われて、今は誰も知らない地下通路とかが……――――」

 

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