インフィニットオルフェンズ2   作:モンターク

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やっと動画本編部分です。
キツいぞぉ…(モンターク)

動画部分ようやく開始
いや、波乱しかないでしょ 多分原作よりひどいぞ!やったね!(Nyose)


止める者のいない祝祭(げんきをだして) その3

9月 27日。

今日は特に何もない一日だった。

最近は箒も鈴も、あんまり俺のところに来なくなってきた。

 

…そりゃ、そうだよな。あの時俺は、目の前の相手にカッとなってこだわりすぎて、それでみんながどうなってるかまで頭が回らなかった。

そのせいで、鈴とセシリアが怪我して、ファリド先生は本当に死にかけた。俺のせいだ。

俺が狙われたりなんかしたから……。俺も、やったんだよ。必死に。その結果がこれだ。

 

「ホント、情けねえよな………」

 

で、箒達もいよいよ来なくなったのを皮切りに、ついに俺は一人静かに過ごすべく、学園の敷地ギリギリの隅にてひたすら空を眺めることにした。

 

ここは本当に人が来ない。静かだ。それまで地図くらいでしか認識していなかったが、こういう場所があることで滅茶苦茶に広い学園だっていうのを実感する。実際使う場所なんてごく一部なんだな。

 

…あぁ。俺は本当に馬鹿だ。自分が傷つくのはいい。でも、俺のせいで傷つく奴がいるのは本当に嫌だ。色んな目にあった気もするけど、あいつらは俺の大切な仲間たちだ。

箒も、セシリアも、鈴も、シャルも、ラウラも、オルガも、三日月も。

それに、千冬姉、山田先生、ファリド先生。みんな大切だ。

 

あの時、俺が大人しく白式を渡していたら……いや、それはなかっただろう。

でも、あの時戦った礼子さ…アラクネも、サイレント・ゼフィルスも、ファリド先生をやった奴も、とてつもない強さだった。福音の時は1機だったからみんなで倒せたようなものだ。今回は違う。相手もチームで、それぞれが凄まじい力を持っていた。

 

これから先、幾ら特訓したって、あんな連中に届くまでになれるのか?

あいつらは次に来るとしたら、それはいつなんだ?

……今度は、俺はみんなを守り切れるのか?

考え出したら、震えが止まらない。もうここのところずっとそうだ。

 

 

空を眺める。

何もない空だ。

 

空を見つめる。

雲が流れてく。

 

空を目に映す。

遠くに薄く星がある。

 

 

 

 

飛べば、届くだろうか。

 

 

 

「……白式」

 

俺は白式を喚び出し、身に纏う。

どうせここは誰も見ない。ばれやしないだろう。

 

少し、ほんの少しだけ、飛びたくなった。

 

ブースト全開。最後に着地ができる分くらい残ればいいだろう。

最高速度で、ひたすら上へ。

 

 

シールドバリア越しの感触で、風が打ち付ける。

とにかく上へ、ただただ飛んでみた。

 

雲を抜けた頃、少し頭がクリアになったような、そんな気がした。

けれども星は掴めそうにない。元々ISは宇宙開発用。本当だったら、今頃はあの星で動いていたのだろうか。

 

高度が何千メートルかになって、エネルギー残量の警告が出る。そろそろ降りよう。

 

こうして脳をまっさらにしながら白式を動かしていると、なぜか頭の中に1つの言葉が浮かぶ。

いつもオルガが言ってたやつだ。

 

『俺達にたどり着く場所なんていらねえ。ただ進み続けるだけでいい。止まらねえ限り、道は、続く。俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねえ限り、その先に俺はいるぞ!だからよ…止まるんじゃねえぞ…』

 

……そう、だよな。

俺はずっと止まってた。止まろうとしてた。それじゃ、終わってるのと一緒だ。

そんなんじゃあいつらとは戦えないし、みんなを守れない。

俺の道を、俺が閉ざしてどうすんだよ。

 

みんなも、俺を守ろうとしたんだ。それはみんなが選んだ道だ。

なら、俺も止まらずに、進み続けなきゃいけない。例え勝てなくても、挑もうと思うのが大事なんだ。

怯えてたって何か変わるわけじゃない。俺はただ止まらなきゃいいんだ。

いつでも来やがれ、亡国機業。今度は絶対、ブッ倒してやる。ブッ倒せなくてもブッ倒してやる。

 

「……よし!!」

 

長かったような、短かったような空の散歩は終わり、元居た場所へ戻る。

そんで、箒達にまずは一言いわなきゃだ。ごめんって。きっと殴られたりするんだろなあ。

なんでかわからないけど。

 

その為にもまずは……帰るか!

 

_

 

寮へ向け歩き始めて数分。

 

「ん?」

 

ラウラだ。なんか、探してるみたいにきょろきょろしている。

何かはしらないが、丁度いい。

 

「おーい!!ラウラー!!!」

 

 

「……!」

 

びくっと反応した。小動物みたいに。いや実際ウサギみたいな所があるが。

そんでそのまま、一直線に俺の所へ駆け寄り、

 

 

 

 

 

 

 

「すまん!死ぬほど痛いぞ」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

ジャンプして俺のうなじのあたりに一撃。

衝撃の後に痛み、そこから秒もかからず俺は意識を失った。

 

 

 

「こちらラウラ。一夏を確保した。これより連行する。皆、集合してくれ。

 

 

 作戦を、開始する」

 

 

_

 

 

 

暗く冷たく広い空間に、ライトが灯る音が響く。

 

強い光に照らされて、俺は目を覚ました。

 

「……っ!…ここは……?」

 

気が付けば、俺は椅子に座らされていた。

動こうと思ったが、手足はベルトで椅子に拘束されている。

 

次に辺りを見渡した。一面、張り付いたような、塗りつぶされたような黒の真っ暗。

俺のいる辺り1メートルくらいだけが真上の明かりで色がついている。そんな状況だ。

 

「……何なんだ!?」

 

…どうしてこんな事になってるんだ……?…ダメだ、眠る直前くらいの記憶がない。

たしか、寮に戻ろうとして…いや、今はそれよりもこの状況だ!

どう見てもヤバイだろ、これ!動けない!

 

「くっ!なんでこんな―――――」

 

とにかく暴れようとした、その時。

 

急に笛の音がした。それも普通のじゃなく、戦国武将とかかなんかが吹く、貝みたいなアレだ。

 

そして次にどん、どん、どん、と太鼓の音が響き、その度に闇の中から3回、赤い文字が現れる。

 

 

 

 

『厄災』

 

 

 

『戦』

 

 

 

『開幕』

 

 

「……?」

 

こちらに迫っては消えていく文字にあっけにとられていると、

 

 

 

 

「深層電脳楽土へようこそ、織斑一夏くん…!フフフフ…!

 

 

 それでは、始めましょう!

 

 

 ISーーーーーーー!チャンネルーーーーーーー!!」

 

 

「へぁ?!」

 

今度は聞き覚えのある声とともに、IS学園のマークが表示される。

少なくとも敵じゃないみたいだ。

…ん?マークの下に何か、文字みたいなものが…?

 

『now hacking…』

 

 

 

 

『now hacking……』

 

 

 

 

『now hacking………』

 

 

 

 

 

『 O K ! 』

 

『Are you enjoying this』

 

 

 

『 織 斑 一 夏 に サ ー ビ ス 対 決 』

 

 

 

「何だよ、それ!?」

 

一連の表示が終わった直後、なぜか月の裏側を連想する、軽快ながらも怪しげな音楽が流れ始め、

周囲に明かりがついて室内の様子が明らかとなる。

目の前の広い空間には、幕が下りた劇場の舞台が設置されていた。なんだこれ。

 

舞台に立っているのは、やや露出多めの、乳牛みたいな恰好をした山田先生の姿。

そして少し視点を手前にやると、片隅でDJブースで忙しそうに操作をしているキラ・ヤマトが。

…あの人なんでここにいるんだ?なんだか毎度の事のような気がするが、疑問は尽きない。

 

「さーて、ついに始まりました!織斑一夏にサービス対決!進行は私、山田真耶!

 そして、音楽その他もろもろのアシスタントを務めるのは~?!」

 

「どうも。キラ・ヤマトです……」

 

「や、山田先生……。あとキラ、何してるんだ…?」

 

「色々あって…。あ、今回は僕一人だから、心配しないで。あの人はいないよ」

 

「はぁ……」

 

いや、その辺は聞いていないんだが。束さん抜きが確定したのは一安心だけども。

 

「内容は各自自由!織斑くんを、一番楽しませた人が勝ちです!さて、それでは早速…」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!何なんですか、一体!ちょっ…」

 

「まずは、エントリーナンバー1番!篠ノ之箒さんの登場でーす!」

 

山田先生は俺の言葉には一切耳を傾けることなく、ノリノリな様子で司会進行をしてステージから降りて行った。…ん?箒?

 

全くもって状況が未だつかめぬ中、舞台の幕が上がり、その向こう側が明らかとなる。

 

「……へ?」

 

現れたのは、並んだ障子。白い部分にスクリーンが投影され、鹿威しのある庭園や、桜、ススキと満月の映像が流れる。

一緒に音楽も切り替わり、和をイメージした落ち着いたものとなった。

やがて障子が開き、隠されていた部屋が今度こそ露わとなる。

 

床は畳が何畳か。壁は襖。奥には昔の時代の夜景みたいな絵。

だが何よりも目を引くのは……

 

 

いつもとかなり変わっている、箒の姿だった。

 

白いニーソは脚を細長く見せ、もさもさと触り心地の良さそうな狐の尾と耳が生えていて、

服装はいわゆる巫女のそれだが、上の辺りがやや着崩されており、肩は完全に、胸も際どいギリギリの辺りまで露出している。あと、なぜか首に鈴がついてる。…猫?耳としっぽは狐なのに?

 

「…ほ、箒?」

 

…なんか、ベタな漫画みたいな恰好だけど、実際に見てみると凄まじい威力があるな。

普段箒はこういう…巫女の姿はたまに神社の手伝い等で見るが、コスプレみたいな事は絶対にしないと思っていた。要するに、すごい。とても似合っている。

本人の恥ずかしそうな顔から、やはりこの格好自体は本意ではないのは何となくわかる。

だが珍しいので、俺は今の箒をしっかり目に焼き付けようと試みた。

 

「はぇ~…」

 

「……あんまり……じろじろ、見るな…」

 

「いや、しかし……」

 

そもそも動けないので他に見れるものがないのである。

何となく向こうも分かったのかどうなのか、しばらくすると躊躇いを振り切るような目に切り替わり、

 

「…っ!一夏!ステージに上がって来い!…もっ…もてなしてやる!」

 

と言った。どう見ても俺は動けないと思うのだが。念のため、勇気を出して言ってみる。

 

「……?!お、おぉ…?じゃあまず、これ取ってくれないか…?」

 

「…!そ、それもそうだな…待っていろ…」

 

やっと気付いてくれたのか、箒は舞台から降り、俺の所へ来ていそいそと拘束具を外し始めた。

ようやく自由になれる…。

 

「心配すんな、逃げないから。ここに座ればいいんだな?」

 

「あ、あぁ…」

 

 

…で、俺もステージに上がって、箒の指差す座布団の上に正座してみたとこまでは、よかったんだが。箒も目の前に座ってから、だ。

 

いざ近くで見てみると…やっぱ目のやり場に困るな…。

どうやって状態を維持してるのか知らないが、はだけかけの胸の辺りなんか今にも…。

ええい、どこだ!どこなら安全に見れる……!

 

「………」

 

「…………」

 

箒も緊張しているのか、一切口を開かなくなった。

くっ…!何か、何か…言った方がいいよな、これ?

とりあえず、落ち着こう。落ち着いて…。そう、なにか心を落ち着かせれるものは…。

 

 

 

あった。箒の、頭の上。ついている耳!

 

さっきからすっげぇぴょこぴょこしている。

前に弾辺りに聞いたことがある。最新型の付け耳や尻尾は脳波を読んで自在に動くという。

あの噂は本当だったんだな。しかもとても触り心地が良さそうだ。もふもふ耳だ。

とても作り物とは思えない精巧なもふ耳。可愛いな…。そして触りたい。

 

「……な、なんか…撫でたくなるな…」

 

「あ……あんまり……見るな……」

 

見るなと言われて素直に視線を下にずらす。その先にあるのはさっき避けた胸の辺りだ。

…う、うわぁ……箒…あんまもじもじするなよ…。見え…。

 

_

 

「ふんっ!!!」

 

一方その頃。鈴とオルガは舞台裏にて二人の様子を隠しカメラで覗いていた。が、

今、映像を映していたスクリーンは苛立った鈴の拳によって割られる事となった。

 

「あんの馬鹿!胸ばっか見て!!」

 

「カッカするなよフフッ…。…ぐっ!あぁ…ぁっ」

 

なんとなく苛立った原因に察しがついたオルガは、つい笑いながら鈴を煽ってしまう。

すると哀れ無言の鉄拳を顔面に食らい、希望の華を咲かせた。

 

「…だからよ…止まるんじゃねえぞ…」

 

_

 

とりあえずお互い落ち着こう、ということで箒がお茶を淹れてくれた。

お茶といっても、急須で出してくる本格的『っぽい』感じだ。

っぽい、と言うのは、あんま正式な作法には詳しくないので何となくとしか…。

お、注ぎ終わったらしい。差し出してきた。湯気が出ていて熱そうだな…。

 

茶を受け取ろうと俺が箒の手に触った、その時だ。

 

「…っ!」

 

びくっ、と箒が震え、容器の中のあつあつのお茶が溢れ、俺の脚にこぼれる。

 

「うわっち!!」

 

「うあ、あ、すまない!………大丈夫か?」

 

慌てて箒はハンカチを取り出して濡れた部分を拭く。…ちょっとシミが怖いが、温度はちょっとした風呂の湯くらいだ。大したことない。

 

「いや…このくらい」

 

「すまない…緊張して…しまって…。

 

………こんな格好、初めて…だから……」

 

今にも消えそうな声で、箒は呟いた。

 

「その……恥ずかしくて、だな。火傷、しなかったか?」

 

何だろう。今日の箒は……いつもと、本当にいつもと違っていて…。

 

「あ、あぁ……」

 

こいつ、こんなに…可愛かったっけ。

俺を心配してる様子だとか、こんな恰好、無理して着てくれたりだとか…。

なんか……なんだか…。

 

 

 

 

 

 

どぉおぉ~~~~~ん

 

「はい。時間終了でーーーすっ」

 

唐突になるドラの音。もう少しで別の音というか音楽が流れていただろうというのに。

山田先生の声で、俺と箒ははっと我に返る。何だろう、この、無情な感じは。

 

「な、何ぃっ!早すぎるのでは?!」

 

「すみません。後がつかえてますので~」

 

「…っ。すまなかったな」

 

「ああ、もう大丈夫だ。ありが…」

 

お礼を言おうとした直後、急に部屋の照明が落とされまっくらになる。

 

「セシリア、行って」

「分かりましたわ」

「うわぁっ!もう少しだけ!よいではないか!折角…わぁ!放せーっ!!」

「終わりましたわ、次!キラさん!そっち!お早く!」

「あ、はい!せーので行こう!」

「「せーのっ!!」」

 

「…何だ?」

 

暗闇の中、小さな声と何かどたばた動き回るような音がする。ついでに俺の座っていた位置が少し舞台の手前の方に引っ張られた気がした。

かすかに鈴の音が遠のいていくのも聞こえた。箒の首についてたのだと思うが、どこへ運ばれた?

 

数秒の静寂の後、再び明かりが灯る。

俺の真隣に立っていたのは運ばれたと思しき箒ではなく、マクギリス・ファリド先生だった。

…いつのまに。

 

「…先生?」

 

「……会えて嬉しいよ、一夏君。君の趣味は、プラモデルだったかな?ならば、

 私は私の所有する――」

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル

プラモ!確かに、昔はバイト漬けで殆どやれなかったけど、それでも少し実家に飾ってあるくらいには好きだ。最近のはすげぇよく動くしな!

…色々調べるのが得意な人だとは、前にオルガに聞いた気がする。ってことは、まさか!

俺がこの近くの店を探し回って全く見つからない、アレも…!

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル

「もしかして、HGシルヴァバレトサプレ―――」

「HGガンダム・バエルを差し出そう。受け取ってもらえないだろうか」

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル

―――ですよねー。

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル

「いや、俺はシルヴァ・バレト…」

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「さらにフルメカバエル、かんたんバエル、バエルコーヒー、バエル饅頭、バエルカップ、バエル充電器、バエルポスター、バエル紋章(シジル)刻印フライパン、バエル包丁、バエルまな板、バエルタオル。バエル!バエル…。バエル!バエル。バエルゥ…!」

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル

ファリド先生は大量のバエルグッズを差し出してきた。そしたら、何か…急に、頭が…!?

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ってか、なんで途中から妙に…実用性上が…ぐ…!バ…バエ…。

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル

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バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバルバエルバエルバエルバエルバエル

バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエ

 

ぴぴーっ!

 

「はっ!?」

 

山田先生が鳴らした笛の音で、俺は我を取り戻す。

危なかった…!なんというか、もう少しで頭の中が一色に染め上げられるところだった。

 

「教師が生徒を洗脳するのはどうかと思います!教育的指導です!強制終了です!」

 

レッドカードを突き出し終了を告げる山田先生。…ありがとう!助かったよ!

しかしファリド先生は同僚の言葉に眉をひそめ、

 

「バエルに逆らう…」

「うるさい…!」

 

抵抗しようとしたところで三日月の声が聞こえ、場は暗転。

思い切り何かでどつく音もしたので、背後から襲ったなりしたのだろう。

で、この時俺の座っていた場所が「動き」、バランスを崩した俺は頭からすっころんだ。

 

「いてててて…」

 

「俺の…目指した…世界に…」

「うわああああ~~~っ!照明つくのまだ早いよぉ~~~!」

 

顔をあげると再び部屋が点灯しており、ついでにシャルの声がする。

振り返ってみれば、先ほどまでいた場所は「上へ」移動しており、「下から」シャルとオルガが立っている部屋が迫ってきていた。

 

「エレベーターかよ…」

 

しかも舞台の両端をよく見てみれば、

 

「えっさ!ほいさ!えっさ!ほいさ!」

「ぜー…ぜー…セシリアさん、ちょっ…間に合ってな…はーっ…はーっ…ぜー…はー…」

「キラさんがバテてるからですわ!山田先生も!つけるのが早いですわ」

「急なトラブルでしたから~」

 

キラとセシリアの二人が必死にレバーを回していた。え?手回し式?このご時世に手動エレベーター?どんな設計だよこのステージ。

セシリアはまだ元気そうだが、既にキラはバテバテの状態である。向いてなさそうだもんな…。

 

そんなこんなで、次はシャルとオルガの番らしい…って…!?

 

「…え?」

 

「えへへ…。一夏、楽しんでもらえてる?」

 

この二人、さっきの箒みたいな、いや、それ以上に凄い恰好をしている。

まずシャルだ。かなり布地が少ない水着みたいな、だけどももこもことした暖かいのか寒いのかよく分からない服を着ている。頭の側面にはもこもこの塊みたいなのが左右に2つ。背後には細い尻尾みたいなものも見える。とりあえずシンプルに目のやり場に困る恰好だ。シャルの白い肌がほぼ全身みえてるようなものだ。

 

しかし、まだいい。オルガに比べたら正直シンプル過ぎて驚きがそちらに持っていかれた。

 

オルガの方は一見して普通のカッコいいコスプレだが、雰囲気が違う。

下は黒の革靴に黒のパンツズボン、金と黒で鎖のついたベルト。全身には蛇のように絡みつく紫のファーストール。背中には三対の大きな蝙蝠の羽根。問題はこの次だ。

上半身は裸の上に薄い紫の模様がついたドレスシャツ。この時、胸と腹は大きく開かれボタンは中ごろで1つ止められているのみ。

つまり鍛え上げられ引き締まったオルガの胸筋と腹筋が惜しげもなく大胆に披露されているのだ。

 

そう、シャルの格好は『分かりやすく露出が激しい』。

だから俺はどこを見ていいか分からず、必然的にオルガを見る事となる。そこに罠があった。

オルガは緊張のせいか、やや汗ばんでおり、その結果強調されている筋肉が妙に艶っぽい。

しかしてシャルを見るわけにもいかず、オルガをじっと見てしまう。

むんむんと醸し出されるフェロモンだとか、肉体美だとか、そういうのに引っ張られ視線がさらに向かう。二人ともなんて刺激的な服なんだ…!

 

「…何の格好なんだ、それ?」

 

「フレンチプードルだよぉ」

 

「破廉恥プードル…最高じゃねえか。そして、俺は……!堕天使、らしいぞぉ………ッ!」

 

シャルは後ろを向いて尻尾を振り、それを見たオルガは鼻血を垂らしながらポージングを決める。

ううむ、二人とも俺には刺激が強すぎる…!

しかも堕天使だって?男なら誰しも憧れるワードじゃないか!カッコイイな!オルガ!

確かにそれならこのセクシー具合も納得だ。

 

「僕らはね、一夏にクッキー焼いてきたんだ」

 

「他にも色んな菓子があるぞ!ほら!どれでも好きなの選べ」

 

強烈な恰好と裏腹に出てくるのはまっとうだ!確かに、近くのテーブルにはクッキーをはじめ、様々な焼き菓子が皿に盛られていた。…ん?見慣れない奴があるな。

 

「…なあ、これなんだ?見たことないけど」

 

形はさしずめパイ生地の太巻きというか…筒だな。中にクリームが詰めてあって、端のところには赤い球体…大きさ的にさくらんぼか?珍しい焼き菓子だな…。

 

「あぁ、そいつはカンノーリっつてな」

 

「イタリアのお菓子らしいから僕も詳しくなかったんだけど、オルガと一緒に頑張ったんだぁ」

 

「へぇ、こういうのがあるんだ。知らなかったな」

 

「実は俺、パティシエでね」

 

「え?!本当か?!」

 

「冗談だ。本当はコイツ、思い出の味って奴でよ…。調べたらレシピがあったんだ」

 

「作るときも言ってたね、オルガ」

 

「まあな。いい機会だからやってみたんだ。…シャルのおかげであん時と同じ…いや、もっとうまく出来たかもな。懐かしいな…すげぇ苦労してさ、その後のもてなしで食わして貰ったんだよ」

 

「へぇ……」

 

珍しく聞けた、オルガの昔話。想い返すその顔は、どこか遠くの空の向こうを見上げていた。

 

「ま、水くせぇ話はここまでだ。とにかく食え食え!遠慮しねぇで思いっきり楽しめよ!」

 

「おう!」

 

「フフフッ」

 

それから俺は、とにかくオルガとシャルの作った焼き菓子をむさぼりまくった。

このごろあんま腹に詰めてなかったからな。優しい甘さのスイーツががつがつ喉を通っていく。

 

_

 

すぐ下の階

 

「あ」

 

「ミカ?どうした?」

 

「オルガのとこ、セシリアのジュースがあったような」




マクギリスあたりの文章ドラッグすると一夏の頭痛の原因がわかると思います
小ネタはいくつわかったかな?(Nyose)

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