相変わらず波乱なIS学園である。
なんとかしろオルガ……
オーバーチュア・デ・フェイト
なんやかんやあって……楯無さんは部屋に居座ってしまった。
この部屋は実は以前、俺とオルガとミカ、そして箒の四人で暮らしていた時期があって、その時の名残でベッドは一応四つあるのだ。二つは小さい折り畳み式のベッドではあるのだが……。
ちなみに折り畳み式ベッドがあって四人部屋にもなる部屋はこの一室だけだったらしく、人数の関係で一人あぶれた箒がこの部屋にねじ込まれたらしい。
シャルロットとラウラが転校してきて、空き部屋が作られた時にオルガとシャルロットがその空き部屋に、箒は退学者が出て一人となった部屋へと移動した。
その後、また空き部屋が一つ出来たことから千冬姉の部屋に一時的に住んでいたラウラと女子であることが発覚したシャルロットがその空き部屋に移動となった。
……とまぁ、そんな経緯があったこの部屋なので、三人で住むことも出来なくはない。
そして「生徒会長権限」というジョーカーを切られてしまったので、退去させようにもさせられない。
一夏「はぁ…」
寝る前の歯磨きをしながら、俺はため息を溢す。
ミカと同室だから、流石にこの部屋に住み着く訳じゃないだろうと甘い考えでいた先日の自分を殴りたい……。このまま楯無さんのペースに乗せられ続けていたら、俺の胃が死ぬ……。
一方、ミカのほうは「邪魔しなければ……別に」と特に否定もせずにまあ受け入れたようだ。
そんなことを回想していると、楯無さんの俺を呼ぶ声が聞こえた。
楯無「一夏くーん」
「ん?……って、うわああっ!?」
歯磨きを止めて部屋に戻ると、ベッドの上で寝転んだ楯無さんが足を泳がせていた。
──いや、それは良い。
問題はそのラフ過ぎる格好で、下着は薄紫のパンツのみ、上はワイシャツ一枚でブラもしていない。そしてそのワイシャツのボタンも全て開いている。
……かなり露出していた。
それを見た俺は慌てて洗面所へと戻る。
「あれぇ?どうしたの、一夏君」
「ど、どうしたのじゃないですよ!ちゃんと服着てください!」
「え?着てるわよ?」
「ズボンを穿いてください!あとシャツのボタンも閉めて!!」
ガチャッ
楯無さんは洗面所のドアを開けようとする。
もちろん俺が押さえているため、開くことはない。
「もう!観念して上手いと評判のマッサージを私にもしなさい!」
「はぁ!?」
楯無さんのあの体をほぼ直に触ってマッサージをしろと!?
まぁ……って、いやダメだ!
なんかまた嫌な予感がする…!
俺は自分の全体重を掛けて、ドアを必死に押さえる。
「開かないわね……これ以上抵抗するなら、無理にでも開けるわよ!」
「ぐぬううっ……。そうはいきません……!」
絶対に開けさせるものか……!
……っていうか、それ以前に生徒会長が器物損壊はダメだろ!?
「開かぬなら、
ISを部分展開させる時の独特の音とともに楯無さんの川柳のような掛け声が聞こえる。
アンタ、生徒会長でしょうが…!
生徒会長自ら校則違反は……
と、そんなことを思考していると──
ガーンッ!
凄まじい重い鈍器がぶつかる音の後、俺はドアごとふっ飛ばされた。
「ぐおっ!?」
数秒後、部屋に舞い上がった土煙が引いていく。
「うっ……」
すると俺の目の前には楯無さんの胸があった。
「うわっ!?」
「っ……ううっ……!」
そして俺に倒れ込んでいるような形で楯無さんが居た。
──のだが、その楯無さんの頭部には大きなたんこぶが出来ていた。
「…あれ?」
てっきり楯無さんがISを部分展開してぶっ壊してきたと思ったのだが……その楯無さんがやられてる……。
──ってことは
「ミカ…か?」
洗面所の入り口のところには、一年生最強として名高い風紀委員で俺の仲間のミカが居た。
「ねぇ」
「な、なんだ?」
「そいつ迷惑なんだけど。邪魔するなって言ったよね」
ミカは睡眠を邪魔されたからか、ひどく眠たそうだった。
あまりにも楯無さんが騒いでたからだろうか……。
まぁ確かに結構な大声だった。ここが防音設備もガタガタだったら俺やミカもかなりヤバかったかもな……。
「追い出せないの?これ」
仮にも生徒会長に「これ」と言う時点でミカの怒りも限界のようだ。
まあ事実だし、俺も突っ込まないけど
「追い出せねぇよ……一応生徒会長権限とかで追い出したところでまた這い上がってくるよ」
「動けないように縛りつけて放り出しても?」
「いやその場合は俺達が社会的に死ぬことになるからやめたほうがいいぞ……」
「……そっか。でもとりあえず放置してていい?」
「うん、それくらいなら……ミカがメイスでぶん殴ったお蔭で気絶してるみてぇだしな」
──ん?
仮にもISの装備でよくたんこぶのレベルに抑えられたなミカ。
俺がそのことについて聞いてみると、ミカはこう答えた。
「………殺さないようにはしたからね」
すげぇよ、ミカは……。
俺ももっとISを扱えるようにしねぇとな!
今日は学園祭当日だ。
俺たちも色々と事前の準備をしている。
「オルガ、似合ってるよそれ」
「勘弁してくれよ……」
俺もイチカやミカと同じく執事服を着るってわけだ。
正直あんまり着慣れてねぇがよ……。
──まぁ、接客とかはイチカの野郎が殆どやってくれるだろうし、俺は会計に集中するわけだがよ。
ちなみにシャルはメイド服に着替えている最中だ。
──今度こそ…今度こそだ……!
「お、お待たせ!」
「お、おう……シャルじゃねぇ…か!?」
シャルの声がした方を向くと──
そこにはメイド服姿のシャルが居た。
「お、オルガ……ど、どうかな……?」
まるで……天使のような……いや、天使なんて生易しいもんじゃねぇ……とにかく綺麗だ。
なんとも言い表せねぇ……
「お、お……くっ……」
思わず涙が出てしまいそうだからよ……なんとかそれを手で抑える。
これが感激ってやつなのか……
「だ、大丈夫?……やっぱ僕には似合ってなんか」
「そんなことはねえぞ……学園一…いや、世界一似合ってるぞぉ……」
間違いねぇ、これだけは間違いねぇ!
俺は倒れないように力強く言う。
「そ、そんなに……かな……///」
「ああ、だからよ……胸張っていいんだぞぉ……間違いはねぇからよ……」
「……ありがとう、オルガ」
照れながらもお礼の言葉を口にするシャル……やっぱ可愛い。
そんな時、クラスの他のやつがシャルを呼んだ。
「デュノアさーん、こっち手伝ってもらってもいいかなー」
「うんわかった!じゃあまたねオルガ」
「おう、頑張れよ…シャル」
シャルはそのまま上機嫌に軽くスキップしながら準備に入っていった。
「……オルガ?」
「お、おう……どうしたミカ」
「ラウラのメイド姿、どう?」
ミカが指さした先には教室内の飾り付けをしているメイド服姿のラウラが居た。
「どうって……いいんじゃねぇの?」
ピキュッ!
「え?」
俺の返答がお気に召さなかったのか、ミカはすぐに俺の胸元を引っ張ってきた。
「かわいいでしょ?」
「お、え……」
ミカお前……また同意してほしいのかよ?
確かにまぁいいかもしれねぇがよ……
だが今回は譲るつもりはねぇ!
「あ?お前状況わかってんのか!?シャルのほうが良いって言ってるだろうが!」
「別に……普通でしょ?」
「ミカお前……!」
「……何?」
今回だけは絶対にシャルだ!これは譲れねぇ!
そして、俺とミカで一触即発になろうとしたその時──
ゴンッ!
「ぐぉっ!?」
俺の頭に出席簿が直撃し、
「だからよ、喧嘩するんじゃねぇぞ……」
間違いねぇこれは……
学園教師勢最強の──
「全く……こんな時から喧嘩とは相変わらずお前らは元気が有り余ってるようだな」
オリムラ先生じゃねぇか……!
「すみませんでした」
「別に……」
俺とミカはオリムラ先生に怒られて少し萎縮しちまった。
ミカまで萎縮させられるなんて……すげぇよ、オリムラ先生……。
「全く、学園祭だからといってはしゃぎ過ぎるな。あくまでも学園の授業の一環だということを忘れるなよ」
「は、はい……」
「うん、わかった」
オリムラ先生からのお叱りもあり、俺とミカは静かに他の準備をすることにしたのであった。
オリムラ先生が去った後、ミカが俺を呼び止めた。
「あと、オルガ」
「あ?」
「さっきはごめん」
ミカが謝ってきた。だが、俺にも悪いとこはあったんだ。ここは筋を通さねぇといけねぇな……
「ああ、こっちも悪かった……。しかしやっぱ今日は気分悪いのか?ミカ。寝不足みたいだしよ……」
「生徒会長が色々邪魔してるせいで上手く寝れてない……ラウラも最近これなくなったし……」
「そうか……」
確かミカとイチカの部屋にあの生徒会長が同棲……つか無理やり乱入してきたとか言ってたな。
大変だな……ミカもイチカも……。
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一方の一夏もせっせと準備の手伝いをしていた。
「よいしょ……こんなんでいいか」
(これで俺の仕事は一段落だな、後は他の手伝いに……)
「一夏!」
「ん?」
その様子を呼び止める聞き慣れた声……
ふと一夏が顔を見上げるとセカンド幼馴染の鈴が居た。
いつもの制服姿とは違い、チャイナドレス姿だ。
「お、鈴か!どうしたんだ?」
「ちょっと偵察に来たのよ。一組はメイド喫茶をやるって聞いたから」
「ああ、俺はもちろんメイドじゃなくて執事だけどな」
鈴は一夏の執事服を見定めるように上から下へと目を動かす。
「ふーん……結構似合ってるじゃない」
「そうか?動きにくくて結構疲れるんだけどな……ところで鈴のそれって……」
「ええ、チャイナドレスよ。今回二組は中華喫茶をやるから」
そのチャイナドレスは一枚布のスカートタイプでかなり大胆にスリットが入っており、真っ赤な生地に龍があしらわれ
金色のラインも入っている。
なお髪型もいつもとは違い、いわゆる両把頭というシニョンの一種で、二つのお団子としてまとめられている。
「へー、相変わらず似合ってるな!」
「そ、それはまあ、中国人としての嗜みっていうか…なんというか……」
少し照れながら言い淀む鈴。
そんな鈴の様子に一夏が首を傾げていると、鈴はこう言った。
「と、とにかく!がんばりなさいよ!」
「お、おう!」
そして、鈴はそのまま顔を赤くしながら、逃げるように二組のほうへと走っていった。
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所変わり生徒会室
ここではバエルのプラモデルを磨くマクギリスと相変わらず扇子で仰いでいる楯無が居た。
「全く……また君は……。三日月・オーガスの睡眠を邪魔するのは得策ではないだろうに」
「あら?良いじゃない……まあここまで来るとは思わなかったけど。早々に私の学園最強の看板も狙えるくらいよ?」
「だろうな……私が知る限りでも彼はかなりの
「ふーん……まあその強さは是非「組織」との戦いに使ってほしいものね」
「ほう?ではあの「亡霊」の次の目標はここになると?」
「ええ、私の情報筋によれば…ね。まぁ男性IS操縦者を三人……いや、先生も合わせたら四人ね。ともかく
「つまりこの「学園祭」で襲撃してくる……と?」
「ええ、その可能性は高いわ。一応警備は強化してあるけど、あいつらは必ずそれを掻い潜ってくるはず……先生も警戒をお願いね」
「ああ、そのつもりだ。……ところで一つ気になっていたのだが」
「なにかしら?」
「まだ生徒会の出し物について何も聞いていないのだが……何にするつもりなのかね?」
「……まあちょっと趣向をこらしたものよ。鉄華団の面々を「少し」巻き込んじゃうけど」
「ほう、そうか……」
(全く、また騒動を起こすつもりか……?困った女だ)
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つーことで、俺たち一年一組のこの催しは盛況で、結構大忙しになっちまった。
ラウラの読みもあたったみてぇだ。
すげぇよ、ラウラは……。
「いらっしゃいませ!」
シャルはにこにこと元気よく接客をしている。
メイド服を着れたことが相当嬉しいみてぇだ。
「オルガ、シャルばかり見てないで仕事して」
「お、おう……」
ミカに怒られちまった……。
仕方ねぇな、俺も俺で与えられた仕事を……
しようとした時、何やらイチカの困った声が聞こえてきた。
「巻紙礼子……さん」
「あ?」
あの様子じゃ……こりゃ間違いなく変な連中に絡まれちまったか……?
そしてイチカの向かいに座っている人をよく見ると、女が座っていた。
聞き耳を立てて、その女が何を話してんのか確認する。
「はい、織斑さんの白式に是非我が社の装備を使っていただけないかなと思いまして」
いかにも胡散臭いおばさんだ。
どうやらこのおばさんはIS装備の開発企業の奴らしく、イチカにIS装備を売り込みに来たらしい。
まぁ、それ自体はよくあることらしいがよ……
「オルガ?」
おばさんを睨んでいる俺に気付いたミカが小さな声で俺に話し掛けてきた。
「ミカ、あのおばさん、胡散臭すぎる」
「……うん、なんか怪しい」
「ミカもそう思うか……」
やっぱミカもおんなじ事考えてたみてぇだ……。
「イチカも困ってるし……どうする?オルガ」
「なら……」
とにかくあいつからイチカを離さねぇといけねぇ。
なら……一芝居打っちまうか……
「こちらの追加装甲や脚部ブレードもついてきます」
「いや、あの……」
困り顔で笑うイチカを俺は大声で呼ぶ。
「イチカァ!なんかここの数あわなくねえか?」
「あ、悪い!すぐ確認する!」
「あの……」
「すみません、仲間が呼んでいるので失礼します」
イチカはあのおばさんに断りながらも席を立ち、俺たちのところに向かってくる。
助け舟を出すことに成功したみてぇだ。
「…………チッ」
────────────────────────────────────────────
「ふぅ……助かったぜオルガ」
「へっ、それよりイチカもあんなおばさんの相手に疲れてねぇか?」
「これくらいなんてことはねぇよ!まだまだ行けるぜ!」
そう言って一夏は肩を回す。
「ならいい……あのおばさんも諦めてどっか言っちまったみてぇだしな」
「うん、もう大丈夫だと思うよ」
「そっか、なら仕事に戻るとするk……」
そう言って仕事に戻ろうとしたその時──
「ぐっ!?」
突然、
「オルガ!?」
倒れたオルガの後ろに居たのは、何故かメイド姿になっていた楯無であった。
「じゃじゃーん」
「うわ!?た、楯無さん!?」
「オルガ、また死んでる……」
「だからよ……急に扇子でぶっ叩くんじゃねぇぞ……」
どうやらオルガは楯無の扇子でぶっ叩かれて
「んふっ、時にその男子三人……生徒会の出し物「観客参加型演劇」に協力しなさい!」
「は!?」
「え?」
「あんた何いってんの?」
楯無からの急な協力要請(?)に首を傾げる三人。
「いいからいいから。お姉さんと来る~♪」
「え?」
「はい決定!オルガ君と三日月君も第4アリーナに集合ね♪」
そのまま一夏は楯無に引っ張られていってしまった。
「どうする?オルガ」
「どうするもなにもねぇよ……協力しろってなら受けるまでだ。いくぞミカ」
「………うん、オルガが言うなら」
取り残された二人もクラスメイトに事情を話し交代を頼んだ後、一夏を追いかけようとした。
しかし、教室を出たその時──
「まて、三日月・オーガス」
聞き慣れた声が呼び止めてきた。
ご存知バエルバカことマクギリスである。
「マクギリス……ウチのミカになんか用か?」
「ああ、少し大事なことを話しておきたいのでな……」
「………わかった、オルガは先行ってていいよ」
「ああ……じゃあ後でな」
オルガはそのままアリーナの方へ向かった。
オルガが去ったのを見計らい、ミカはマクギリスへ口を開く。
「……で、話って何?」
色々とカオス気味だけどなんとかしてる……多分!