多分毎回言ってんな(Nyose)
仮面はだいたい胡散臭い(モンターク)
IS学園 第4アリーナ ロッカールーム
俺とミカの二人で、ずらりと並ぶロッカーの間を飛び交う形で敵IS『アラクネ』を撹乱。
そんな調子でまずは様子を見ているものの、正直、余り状況は好転していない。
完全に状況は向こうが有利だ。あの自在に動く多脚には上も下も関係ないらしい。
俺が斬りかかろうと、ミカが殴りつけようと、それはあくまで「線」の動き。
一方向からに対し、相手は二方向三方向から攻めることができ、しかも壁や天井に張り付けるから姿勢は問わないときた。
つまり正面からでも挟み撃ちでも、向こうは「面」での対応ができる。
なにせ手数が全然違う。刃を交えてさらに分かったが装甲も硬い。
そんな状況をなんとか好転させようと、ミカが再び敵に接近し、白くて大きな特殊メイスを振り下ろす。
だが、アラクネは脚を合掌させ、まるで網かあるいは剣道の面具のような形をとる事で、本来とてつもなく重い筈の一撃を弾いていた。
それに続いて、俺も雪羅をクロウモードで展開。
雪片弐型よりも直接的に使えるこっちの方が、反応や大きさといった取り回しの面で優れている。今必要なのは速さだ。
脚が全部使われている今なら、真横から狙えば…!
そう思い、俺は右側へ突っ込んだ。
一夏「うらあああっ!!」
アラクネの操縦者「甘ぇんだよ!!」
女は柵と化した脚の隙間から、マシンガンを右手から左手へと投げ渡し、牽制で弾丸をばら撒く。
「うわっ!」
悪い条件反射がついてんなぁ……。
間近に迫る弾丸を俺はエネルギークローでかき消す。
その一瞬の間に相手はこちらへと距離を詰め、リーチに勝る装甲脚での突きを食らわせてきた。
突くついでで俺をキック台にし、素早い身のこなしで飛び退いたアラクネは、再び壁へと張り付き、数本の脚を前へと向け射撃の用意を整える。
が、
そこへスラスターを噴射したバルバトスが急接近。
「んなトロい攻撃当たるわけが……!」
俺もこの女も、正面からメイスを叩きつけると思っていた。
だが、それは違った。
メイスが抉ったのは確かにアラクネめがけて。だが、狙い始めは壁から。
つまり、壁面を削りながらスイングしたのだ。
「なっ!?」
頭や胴ではなく脚の接地面を周辺ごと砕くことで、姿勢を安定させないつもりか。
なら、俺は奴が飛び出した瞬間の空中でぶった切る!
急いで雪片弐型を呼び出し、予想通りバルバトスから離脱したアラクネめがけブースト。
「ここだぁああっ!」
「チイッ!」
すんでのところで姿勢を逸らされた為、雪片弐型の刃は本体に直撃こそしなかったものの、脚の一本、その先端部分を斬り落とすことに成功した。
「ハッ!やるじゃねえか!ガキ共!」
「何なんだよ、アンタは!?何者だ!」
「アタシを知らねえのか?悪の組織の一員って奴だよ!」
真後ろから迫ったバルバトスの一撃をかわしながら、女は答える。
悪の組織?なんだそりゃ。周知の事実みたいに言っているが、さっぱり分からない。
一夏「ふざけてんのか?!」
オータム「ふざけてねーよ!ガキが!
三日月「なんでもいいよ。どうせここで消える名前だ…!」
なおも猛攻を加えようとミカは接近。
だが繰り出されたメイスの一撃を、オータムと名乗った女は右側の多脚で衝撃を受け流し、左側の多脚を束ねてバルバトスを逆に殴りつける。
吹き飛ばされたミカは、その先にあったロッカーを幾つも薙ぎ倒しながら離れていった。
三日月「ッ――!」
一夏「ミカッ!!」
オータム「ついでにいぃ~事教えてやんよぉ~…。第二回モンド・グロッソ…!」
一夏「?!」
オータム「あん時、お前を拉致したのはうちの組織だ。感動のご対面だなぁ?ええ?アタシみてぇな美女達にだぜぇ?会えて嬉しいかぁ?コラァ!ハハハハハ!!」
こいつ等が…?!
その言葉を聞いた瞬間、俺の中で怒りが爆発するように沸き上がった。
こいつ等のせいで、あの時、千冬姉が…!そのあとの色々が…ッ!
「そうかよ…てめえが…!テメエ等がぁあぁあーーーーっ!!!」
俺は雪片弐型と雪羅のクローの二刀流状態となり、オータムへと突撃する。
これに対し敵は装甲脚を展開。真正面からの殴り合いが始まった。
こっちも手数を増やしてひたすらに武器を振るう。
だが俺が幾ら叩き込もうと、向こうは脚の一本一本を攻撃や防御と巧みに扱い、
ダメージが増えていくのは俺の方ばかりであった。
「ぐっ!くううっ!!らああああああっ!!!」
「どうしたどうしたどうしたぁ!!」
「お前はああああっ!!」
「そぉらッ!」
「がふぅっ!」
しばらく続いた剣戟の末に蹴りを食らい、俺は背後のロッカーに叩きつけられる。
姿勢を整えようとオータムは俺から距離を取ろうと後退するが、
そっちには、アイツがいた。
オータム「………!」
天井すれすれを飛び、口のような部分が開かれた特殊メイスを、大きく振りかぶって迫るミカ。
よし、いいぞ!あの距離と速度なら直撃コースだ!防御姿勢を取る暇もない!
気配に気づいたオータムが腕を構えるも、防御は間に合う筈が────
「……フッ」
瞬間、俺はオータムが、フルフェイスのバイザー越しに嗤っているのを感じ、
アラクネの腕から『何か』が放たれた。
三日月「…?!」
その何かを受けたらしいミカは、突如姿勢を大きく崩し、空中から急降下。
ロッカーをまた薙ぎ倒して地面へ突っ込んでいった。
一夏「…何が、起きた…?」
あのミカが攻撃の一つ食らってここまでなるだろうか。
俺はまず、バルバトスが墜落して隕石の落下跡みたいに抉れた床を見やり、次についさっきまで飛んでいた辺りへと視界を映す。
……見ると、天井に何か、棒のようなものが刺さって…いや、違う。
あれはバルバトスが持っていた特殊メイス…レンチメイス、だったか?
それがしかも、刺さっているのではなく、『何か粘性の高いもの』で固められ……。
結果、加速の勢いにいきなりブレーキをかけられてミカはド派手にすっ転んだのだ。
「ハハ、蜘蛛なら糸吐くっつーのは常識だろうがよ。少し焦ったが楽勝だぜ、まったくよぉ!」
「糸…?そんなの使えるのか…だがっ!」
ロッカーにめり込みかけている体を起こし、すぐ近くに落とした雪片を拾い上げ、再び俺は眼前の敵と相対する。
今まで、たぶんオルガやミカ達みんなと比べれば少ないだろうが、俺は色んな相手と戦ってきた。
けれど、だけどもだ。初めてだよ、ここまで『俺が倒したい』と思えるのは。
こいつと多分、それ以外にもいるんだろう。組織って言ってたからな。
確かに、ああ嬉しいさ。会えて嬉しいに決まっている。
いたんだな、俺が立ち向かうべき『因縁の相手』って奴が。
ならば、後は、一つだ。
「―――あんただけは…落とすっ!!」
「あぁ?!やってみろよォ!!!」
オータムは俺に向け装甲脚を展開。射撃の雨を降らせる。
それを上に飛んで回避。すると奴は次に両腕を突き出し糸を発射。
そんな見え透いた拘束、喰らう筈が……。
む、狙いが俺じゃない?…まさか!
「ぐあああああっ!」
アラクネが糸を飛ばしたのは俺向けてではなく、左右に連なっていたロッカーの束。
かなりのパワーで腕を交差させ、結果、鉄球の如く迫ったそれを叩きつけられ挟まれる。
「へッ。こいつぁ使えるな。テメェにも喰らわしてやんよォ!」
「や…め、ろぉ…ッ!」
俺の動きが封じられたのを確認すると、再び手近なロッカー塊の一つに蜘蛛糸を張り付け、今度はミカがいるだろう辺りへと勢いよく投げ込む。
しかし、ロッカーはバルバトスの墜落地点へぶつけられる直前で、
「何ィッ?!」
「…お前……消えろよ…!」
バルバトスの右手に握られていたのは、先ほど手放したメイスではなく、太刀。
あの横に伸ばした右腕。残心の構えからして、繰り出したのは居合切りだろう。
それでロッカーを一刀両断したのだ。
オータムを睨みつつ、太刀を両手で握りなおし、姿勢を低くする。そして──
それも普通のそれを上回るかなりの速度。向かう先は、俺の方向。
「うわあっ?!危なっ!」
繊細に振るわれた斬撃により、俺の動きを封じていたほぼ瓦礫のロッカーは砕け散る。
よし。これで俺も自由だ。
……ちょっとでも下手に動いてたら巻き添えで斬られてたけど。
「ありがとな、ミカ!…へぇ。武器、お揃いだな。刀」
「だね。んじゃ、そろそろこいつ片付けよう」
「ああ!」
「くたばんのはテメー等だろうがああああぁぁ!!」
もう見慣れてきたアラクネの一斉射撃。
俺とミカはそれを掻い潜り、距離を詰めていく。
順調に行くと思っていたが、向こうにはまだ手札が隠してあったらしい。
「しまっ――」
「イチカ!」
撒かれるエネルギー弾の中に、糸が混ぜられていたのはわかっていた。
けども避けようとしたその糸の塊が目前で開き、蜘蛛の巣状に広がるのは予想しきれなかった。
反応が遅れた俺をかばい、ミカが胴に蜘蛛の巣を浴びる。
「………はあっ!」
全身へと糸が絡まろうとしたその瞬間、バルバトスは上半身についていた追加装甲をパージ。
蜘蛛の巣による拘束を外し、身軽になったその状態でさらに加速。
「何だと?!」
多少射撃が掠めようとも止まる気配を見せず、そのまますれ違いざまにオータムを一閃。
強烈な斬撃をモロに食らわせることに成功した。
「うぐああああっ!!おのれッ!ガキ共、があっ!」
「イチカ、今」
「分かってる!!うわああああ!
―――ここから、出ていけぇーーーっ!!!」
ミカの一撃をまともに受けて、姿勢を崩している隙を狙い、俺は雪羅を最大出力で発射。
マグナムのように放たれた荷電粒子砲の直撃により、オータムは爆発を起こして吹っ飛び、天井に穴を開けて姿を消した。
「…やった…のか…?」
「へぇ…まだ生きてる。追いかけよう。もっと叩いておかないと、また来るよ」
「お……え、お、おう!」
いつもなら引き止めたいが、今回は俺の事情もある。念のためもう少し追撃しよう。
借りは必ず返す男でありたいからな。なんであれ。
一夏と三日月がなんとかオータムを一時撤退まで追い込んだその数分前──
マクギリスは自身を襲撃してきた謎の…未知のガンダムと対峙していた。
(私の世界には、あのようなガンダム・フレームの存在は無かった。まさか、彼らが先日遭遇したという……)
『異なる』ガンダム同士が睨み合う。
自身の見たことのない『似て非なる物』と対面したマクギリスは彼ら──鉄華団が雲海の煌めく山で相対した
その未知のガンダムへと剣を向け、マクギリスはこう問うた。
マクギリス「……何者だ。もしや君か?キラ・ヤマト」
後光のように目立つ武装ポッドを背負った、未知なる灰色のガンダム。
右腕で大型のライフルを担ぎ、左腕は通常の形ではなく、甲羅のような形状をしている。
腹部はシリンダーが露出していない為、バエルと比較して些か太い体形といった印象。
鉄華団から聞いた話を基にしマクギリスが知人の名を挙げる。
予想はすぐに外れた。
応える声は男の物、だがやはり機体の外観同様、知らない声であった。
「ほう。彼もまたここへ来ているのか。いや、導かれたというべきかな?……ではやはり私がこの場に居るのは偶然などではなく、全ては必然だという事か」
僅かだが線が繋がった。挙げた名を知っている。
……マクギリスは余計な事を口走ったようだ。
しかし求めた答えではない。
「……彼の知り合いか?なぜこのような…」
「君こそ何をしている?その機体。その力。私と同じ。有らざるもの。同じここに本来あるべきではない者でありながら、君は何ゆえに?何を成そうと?」
「投降しろ。私と君が同じような存在であるというのであれば、異なる世界の者同士で戦うほど無為な事は無い筈だ」
「―――あってはならない存在だというのに!」
「バエルを持つ私に逆らうか―――」
未知のガンダムが担いだライフルを撃つ。
放たれたのは銃弾ではなく、ビーム。
この時点で相手が異世界のガンダムであることが確定した。
ISとして変換されている今のバエルに耐ビームの装甲はない。
マクギリスはこれを避ける。
次にバエルは高く飛翔。
右手の剣を振りかざし、降下の勢いを乗せ敵へと向かう。
向かい来るバエルを見つめる敵は、背部の武装ポッドから子機のようなものを射出。
(…?!BT兵器?いや、これは『何か』が違う)
警戒したマクギリスはすぐに接近をやめ下がろうとする。
だが反応するのが遅かった。ほんの一秒先でいたであろう地点を幾つものビームが通り過ぎ、避け損ねた一筋の閃光が、バエルの右足首を貫く。
「…ッ!」
「察するに君が『4人目』なのだろう。会えて嬉しいよ。むしろ私と共に来ないか?それほどの力、ここで終わらすには惜しい」
「断る。この世界は私にとって、居心地の良い場所でね。貴様のような者に乱される訳には…!バエルッ!!」
翼のスラスターから炎を煌めかせ、二本の剣を横一閃に払う構えでバエルが突進。
敵はこれを上昇して回避。ついでに頭と胴に搭載されたバルカンを斉射して反撃する。
計四門から同時に撃たれる弾丸を、マクギリスは左手のバエルソードで受け防ぐ。
決して折れぬと謳われていた黄色の刀身は、中ほどからあっさりと砕けた。
急上昇してバエルは右手の剣で斬りかかるが、またしても敵は避け、幾つかの子機がビームを放つ。
バエルは右へ左へとかわし羽の電磁砲で応戦。
敵はその攻撃を一切意に介することなく子機の射撃に加えて、右腕のライフルと左腕の砲からもビームを織り交ぜ射線の数を次々に増やしてゆく。
子機も背の他に腰にもついていたものが追加で射出され、やがてバエルの四方八方から弾幕は襲い来るようになった。
元の世界では他の追随を許さぬバエルの圧倒的な機動力で、ギリギリ攻撃は掻い潜れている。
子機の排除も試みるも、電磁砲は細かく動きまわる小さな的を狙うに適さない。
即座に本体を直接狙う方針に切り替え、左手の折れた剣を敵ガンダムへ投げつける。
空を切って進む刀身は、真横から延びた子機のビームに阻まれ回転しつつ地面へと落ちていった。
「ハッ!他に武装はあるのかな?」
「……アグニカ・カイエルの意思が宿るこの機体に、過度な武装は必要ない」
「ならとくと味わうがいい。プロヴィデンスの力を…」
バエルめがけ無数の光線が放たれる。
空中で大きく縦に円を描くような飛行で避け、ついにバエルはプロヴィデンスの懐へ辿り着く。
突き出された剣は、相手の胴を貫くかに見えた。
だがプロヴィデンスはバエルソードを左腕で防ぐ。盾の機能がついていたようだ。
剣は弾かれ、敵の左腕からはさらにビームの刃が伸びる。
そのまま返す動きで、バエルは一太刀を浴びた。
「くっ!」
「ふぅむ…君は見なかったか?この世界もまた歪な姿をしていると」
「人は誰しも歪みを抱えている。その人が織り成す世界もまた、歪みは必ず存在しているものだ。どの世界でも変わらんさ。故に私は、純粋な物のみが輝きを放つ、真実の世界を作り出す!!」
「だが世界はどれも輝きに包めるような優しい物ではない」
「バエルッ!奴を圧倒させうる力を!」
バエルの刃とプロヴィデンスの刃がぶつかりあう。
幾度も続いた激しい剣戟は、左右から迫った子機のビームをバエルが避ける事で途絶える。
距離を離した事で、マクギリスは再び敵のみの射程内に収まる形となった。
再度接近を試みバエルはスラスターを噴射する。
斜め上からの射撃を仰向けにスライドして回避。直後真下から来たので上昇、さらに真後ろからの二連撃を回転して避け、連続した回避で勢いを殺された為、
弧を描きUターン。また距離を取る。
退くバエルを眺めプロヴィデンスは一旦子機を各部に収納し、牽制にビームライフルを発射。
射線を潜り抜け、マクギリスは体勢を整えようとしたその時だった。
逆にプロヴィデンスの方から接近。
左腕から延びる大型のビーム刃を振り下ろす。
素早くバエルは剣で防御。刀身に触れたビームが弾け、激しく火花のように飛び散る。
しかし相手は真面目に剣の斬り合いをするつもりはない。
鍔迫り合う片手間に子機を射出。
うち一つをバエルの真上へと運び、射撃。
先ほどからの傾向から予測をつけていたマクギリスは急速に離脱。回避する。
だが、飛び退いた先でどうなるかまでは考えが及ばなかった。
距離を取ったまさにその場にあったのは、上下左右360度のほとんどをカバーした状態で待ち伏せていた子機。
完全なる死角。想像もつけきれぬ所に置かれていた敵の罠にどっぷりと漬かった。
「…バッ?!」
次の瞬間、バエルは一斉に放たれたことで形成されるビームの檻に全身を貫かれ、指一本動かすレベルの抵抗もできぬまま、なすすべもなく爆散した。
「ふむ。異界の戦士とはこのようなものか。これであれば彼やあの男のほうがよほど……」
墜落してゆくバエルは、真下にあるIS学園のどこかの天井を崩し、床に激突したところで解除された。
「扉が…俺の……目指した……世界の扉が……」
「心配しなくていい。扉はじきに開かれる。但し、君のではない。私のだがね。今回はこのぐらいにしておこう。脅威は他の者に伝えねば恐怖たりえん」
「ハァッ……ハァ…グウッ……」
蹂躙されたマクギリスは、ただ敵に見下ろされながら地べたを這うことしかできず……
視界に入ったエレベーターへ辿り着くころ、未知のガンダムはいずこかへと姿を消していた。
オータム「ちく……しょうっ……!」
いた!オータムはさっきの攻撃を受けてまだISの展開を保っているようだが、
既に八本の脚は震えが止まらない状態で、立っているのがやっとだというのが見て取れる。
多少加速すればすぐに到着できる距離。今ここでとどめをさせばコイツを捕らえて、もっと色々聞き出せるかもしれない。
そうすれば、あの時の真実だとか、そういうのが分かる。
何としてでもコイツを逃す訳には…!
俺はミカと共に武器を構えてスラスターを噴射。奴めがけ急速に接近する。
が、
オルガ「ヴヴアアアアアアアアアアッ!!!」
真上から聞こえてくる男の叫び声。
直後、真っ逆さまにオルガの獅電が俺たちとオータムの間に墜落。
それとほぼ同時に紫色の大出力レーザーが地面に叩きつけられ、俺とミカの行く手を阻む。
一夏「?!」
三日月「………新手か?」
見上げればアリーナの天井には大きな穴が空いていて、その穴の向こうには人のような、蝶のようなシルエットが浮かぶ。
多分あれもISだろう。……それも、敵の。
≪迎えに来たぞ。オータム≫
ずいぶんと大胆なのか、オープン回線で通信が聞こえてくる。
女……それも少女の声だ。
「テメェェ~ッ……!!私を呼び捨てにするんじゃねぇっ!!!」
オータムが返事をする。やっぱりコイツの仲間みたいだな。
今ボロボロのオータムを回収させるわけにはいかない。
身動きできない方は後回しにして、この増援の敵を何とかする方が賢明か?
一応、判断を仰ごうとミカにアイコンタクトを試みる。
バルバトスの頭部装甲に覆われて表情は外側から窺い知れないが、視線は俺の目を見た後に一瞬だけ上を向いて、また俺の方を見る。
……意見は一致したようだ。
なら、後は行動あるのみ。
三日月「……逃がすか!」
俺は地面を蹴って、三日月はスラスターを大きく噴射して飛翔。
真上に佇む新たな敵を迎え撃つ。
エネルギーの残量はだいぶ危ういけれど。
「……あっ」
アリーナを出ようとする間際、三日月が何かに気付く。
……多分下にみんながいたとか来たとか、そんな感じだろう。任せておこう。
────────────────────────────────────────────
「チッ…ウゥッ……!」
大破しかけているアラクネで、引きずるように歩くオータム。
その機体は今にも崩れ落ちそうな様相。
しかし捕まるわけにはいかないと、目の前の二人が上へ向かった隙をつき移動を試みる。
だがその歩みはすぐさま止まった。いや、止められた。
ラウラ「貴様…逃がさん」
AIC。ラウラ・ボーデヴィッヒのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』に搭載された特殊機能。
静止結界とも呼ばれるそれは、一定範囲の動体を停止させる特殊な力場を放つことができる。
この状態になってしまえば、いかなるISであろうと、大概はもう動くこともままならない。
シャルロット「往生際が悪いよ」
箒「これまでだ」
次いでアラクネの左右それぞれに剣先と銃口が向けられる。
篠ノ之箒の『紅椿』、シャルロット・デュノアの『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』。
計三体の専用機に囲まれ、ついにオータムは完全に身動きを封じられた。
────────────────────────────────────────────
一夏「ぐっ!うぅっ!」
アリーナの上空に出て早々やってきたのはレーザーを放ってくる子機。
見た感じ、セシリアの機体と同じ種類の武装、BT兵器だろう。
だが偏向射撃の精密性が圧倒的に違う。零落白夜で光線を無力化する為、雪片弐型を振ろうとするが、レーザーは剣を避けて俺へと向かってくる。
かといって回避しようとすれば、今度はフェイントだ。
右に避けた直後に曲がるとか、いくらなんでも対応しようがない。
あんなんどうしろと……。
しょうがないので俺にできるのは撃ってくるレーザーをひたすら視界に収め、視界の外(主に真後ろ)に向けて一瞬だけ雪羅をシールドとして使用。
意外とこれで凌ぐ程度は何とかなっている。
だがこのやり方も問題がない訳じゃない……。
回避と防御に俺の神経はすべて使用されている為、敵本体に近づくどころかどんどんと離れていっているのだ。
つまり──
「…こいつ…滅茶苦茶強い…!」
一緒に来てたはずのミカはいったいどこに行ったんだ…?!
マクギリス「…ハァッ……ハァーッ………これ程とは……!」
マクギリスはIS学園内のどこかのエレベーター内を血まみれにし、壁にもたれかかる状態でようやく辛うじて立っていた。
念のため手には拳銃を握りしめているが、それでもとても戦える状態ではない。
完膚なきまでに、敗れた。
メッセンジャーとして、敢えて生かされた。
バエルの剣が、折れた。
機体の相性、元居た世界では見たことのない初見の攻撃等、敗因は幾らでも浮かぶ。
恥を忍んでただ逃げる事しかできない事実も相まって、彼は心身共に死に体ともいえる状態であった。
一応、性格的にバエルを適量与えてしばらくすれば回復するだろうが、今はそんな余裕はない。
とにかく今は、適当な下層階へ逃げ延び、傷を癒さねば……。
「ハーッ……ハァッ…ハァ……ッ…!」
やがてエレベーターの扉が開き、おぼつかぬ足で廊下へと歩む。
朦朧とする彼の目の前には人影が立っていた。
楯無「……大丈夫。お姉さんがいるからここは安全よ」
マクギリス「…あぁ……」
マクギリスを待ち受けていたのは、彼の協力者である、更識楯無。
重傷を負い崩れ落ちる彼を受け止め抱きかかえ、見るからに敗れたのであろう様子を確認する。
「だったら…私の、出番のようね」
懐からISの待機形態である扇子についた飾りを取り出し、戦う用意をする彼女に向け、マクギリスが絞り出した言葉は意外なものであった。
「……君では、勝てんよ」
「えっ?でも…」
「三日月・オーガスならば、あるいは…いや、それでも………」
アリーナ上空に出て数秒で敵との交戦が始まった一夏。
彼が複数のビットに襲い掛かられているのは三日月から見ても明らかであった。
複雑かつ緻密な偏向射撃に苦戦していることも。
「…やらせるか…ッ!」
当然、加勢に向かおうとする。
バルバトスの形態を変更、バルバトスルプスにし、腕部砲を展開。突撃の構えをとる。
「…ハッ?!」
瞬間、三日月は『何か嫌な気配』を感じ取り、前進しようとした所を急速後退に変更。
予感は的中し、ルプスのあと少しで進んでいたであろう目と鼻の先に、
「………!?」
──直前まで、気づかなかった。
すんでのところで気配を感じていなければ、あの複数伸びたビームが全身を直撃していただろう。
三日月の顔に珍しく冷汗が流れ、慌てて数度首を振り、周囲を見渡す。
右を見上げると、空に佇む機体が一つ。
大きな背負いものをした、バルバトスとは『つくり』の異なるガンダム。
「……フッ」
そこにいたのは、プロヴィデンス。
機体の内側で、金髪と仮面の男が静かに嗤った。
二機は互いに睨みあう。
その衝突は『最後まで』続くと、認識した瞬間に悟った故に。
だからこそ、微動だにすることができなかった。
(……こいつ、やばいな)
────────────────────────────────────────────
一夏「ぐっ!うっ…はあっ!」
縦横無尽に襲い来る光線の群れを、俺はとにかく必死にかわし、防ぎ、半ば逃げるかのような形になりながらも何とかビット相手のドッグファイトを耐えていた。
全くもって攻勢に出る余裕が一切与えられない。
雪片弐型も雪羅も全部使って盾代わりにしなければ急カーブで向かってくるのに耐えられず、やっとマシな回避方法として使えたのが、避ける際にアクセル全開の連続ブースト。
空中をぐるぐる、いやジグザグか?無我夢中でどういう飛び方をしてるかすら分からない。
当然そんなやり方をしていれば自分の現在地も認識できない訳で、今しがた辛うじて見えていた敵影も視界から消えていた。
焦って動きを止めた直後、真後ろから勢いよく長細い脚での鋭い蹴りが叩きつけられる。
「ぐわああああっ!!」
衝撃でついに姿勢制御を失い、落下。
網膜投影からはシールドだとかのエネルギー表示がごっそりと消えてなくなっている。
これでは態勢を立て直すのはかなり難しいだろう。
俺は真っ逆さまに墜落してゆき、真下にあるアリーナの天井に二つ目の穴を開け、さらには演劇の舞台に使われていた城の壁に突っ込むような形で不時着した。
「がはっ…!」
てかこれハリボテじゃねぇ…のかよ……。
くそっ、身動きがもう取れそうに無い……!
打ちどころも悪かったのか、意識も…途切れ……。
────────────────────────────────────────────
「「「一夏っ!」」」
墜落した白式を目撃し、アラクネを囲む箒、シャルロット、ラウラが叫ぶ。
何があった、と見上げれば、そこには悠然とサイレント・ゼフィルスが舞い降りる姿。
ゼフィルスは三人の頭上で静止し、ビットを射出。
周辺に向けてレーザーによる爆撃を行う。
辺りを薙ぎ払われ、箒とシャルロットは後退し、ラウラは意識の集中を乱され、AICを解除させられる。
これでオータムは自由となった。
ラウラ「くっ……!」
残ったラウラはゼフィルスを睨む。だが即座に反撃というわけにもいかない。
オルガや一夏を一蹴し、姿が見えないセシリアや鈴も恐らく倒してここまできたのだろう相手。
そういった状況証拠だけでもこのISが尋常ではないレベルの強者であることは明白だった。
下がらずにこちらを睨みつけてくる様子から何かを感じたのか、数度空をゆらめいたのち、ゼフィルスはラウラの目の前に着地する。
「……この程度か。ドイツの
「貴様…何故それを知っている!」
「言う必要はない。それとも…戦って吐かせるか?」
「……ッ!」
知る者がそうはいない己の出生を蔑まれ、ラウラは怒りに震える手で眼帯に手をかける。
だが、同じく武器を取ろうとしたゼフィルスに通信が入り、動きが止まる。
≪撤退する。デルタゼロに集結しろ≫
男の声、その指示を聞きゼフィルスはまず周囲の状況を確認する。
アリーナの中央を占領している城、その壁に空いた穴をまず見やる。
一夏「うっ…うう…!」
気を失っていたと思しき一夏は目を覚ました。
尤も、もう白式には展開を維持する程度にしかエネルギーは残されていないが、
そんなことはゼフィルスを身に纏う少女、エムには知る由もない。
次に一応、仲間であるオータムに目をやる。
ダメージの蓄積が酷く、とても戦える様子ではない。
そして、周囲には高性能な専用機…いくらかは蹴散らせど、まだ複数が目の前にいる。
練度からしてみればエムにとって大した脅威ではないが、オータムも巻き込みかねない。
ここはひとまず、『あの男』の指示に従う事にする。
「フン……。帰投するぞ、オータム。その壊れかけで動けるか?」
「あぁ?…そう、だな。こいつらにプレゼントでもくれてやるか。私を運べ!」
「早くしろ」
「そうはさせ―――ッ!」
逃すまいとラウラ達は武器を構えるが、ビットからの連続射撃に阻まれ、その隙をついてオータムはアラクネの多脚ユニットを取り外し、ISのコアを回収する。
灰に鈍く輝く球体を手に、オータムはゼフィルスに捕まり、飛び去ってゆく。
オルガ「あ……ぐ…あぁ……あ…いっ…てぇ…あ…?!」
墜落したのち、気絶していたオルガが目を覚ましたのはこの時だった。
ぼやけた視界に映るのは、コアを抜かれた上で自立稼働する、アラクネの多脚武装ユニット。
人間部分がなくなったことでますます蜘蛛そのままといった印象をうける物体が、ピッ、ピッと電子的なカウント音を鳴らしながらシャルロット達の所へ歩んでゆく。
シャルロット「これって…もしかして」
ラウラ「分かりやすい爆弾だ!シャルロット!箒!逃げるぞ!恐らくかなり高性能の物が使われている!並のISでも耐えれる威力ではない!」
箒「だが追ってくるぞ!?壊すか?」
シャルロット「それだと結局爆発しちゃうよ!」
僅かに話し合う間にも、自爆しようと迫る蜘蛛は歩みを止めない。
逃げるのは間に合わないと思われたその時だった。
蜘蛛の動きが止まる。理由は簡単だった。なぜならば……
オルガ「足を止めるなぁっ!」
シャルロット「オルガ!?待って!!」
既に重傷を負っている身で、オルガが獅電を再展開。
シャルロット達と蜘蛛の間に割って入り、敵の置き土産の動きを抑え込む。
一夏「オルガよせ!逃げろぉっ!」
三日月「ッ!?オルガ?!オルガ!!」
慌てて一夏も壁面から飛び立ち、三日月が降下。とても間に合う距離ではない。
周囲の焦りに呼応するように電子音は激しくなり、
「なんて声、出してやがる……!俺は…鉄華団団長…オルガ・イツカだぞ……!
こんくれぇなんてこたぁ―――――」
オルガが台詞を最後まで言い終わる前に、カウントダウンは終わりを告げる。
周囲は閃光に包まれ、シャルロット達は充分な距離へと逃げ延び……
大蜘蛛はアリーナの中央で大爆発を起こした。
密着していたオルガを巻き添えに……
「嘘…ねえ…オルガ……
オルガァァァァァァ――――――ッ!!!」
敵つよない?と思うあなた 一夏くんもそう思ってますので安心してね!マッキーは機体相性差でもよう頑張った(nyose)
いつもオルガは死ぬ
これは異世界オルガの摂理……(モンターク)