ローゼンメイデン:別の次元の物語   作:肉羊

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艦これのほうも書きたい、こっちも書きたい


第二階:現状確認とこれから

その人形に初めて出会った者の反応は様々である

初めから受け入れるか、存在を知っていたがために目の前の伝説の人形に出会えた己の生まれついた幸運の星に

心の底から感謝するか、あるいは恐怖し拒絶するか。

 

始は別にオカルトにハマってもいないし、別段信心深くもない

父母が墓参りに行こうと言えば、寺へと赴き、自分へと命のバトンを授けてくださった先祖代々に手を合わせる事もあるし、一年に一回は神社へ行き、お賽銭箱に銭が落ちる音を聞くことを習慣づけているが

一般的に言えば信心深い内には入らないだろう。

 

しかし少なくともオカルトでもなければこの目の前の存在は説明がつかない。

 

 

 

 

 

_______

 

 

「もう一度聞くわ、貴方は桜田ジュンではないのね?」

「そうだって、というか誰だよそれ」

 

失神してから数分、目を覚ました始は目の前の現象をようやく飲み込めてきた

とはいえ飲み込むといっても、事態そのものは一切咀嚼して理解できず、ただただ(人形動いてる、すごい)

という大雑把な形で飲み込んでいるに過ぎない。

 

「でもそれはあり得ないわ」

「はぁ、あり得ないって、別に俺は多重人格者でもないし名前を騙った事もないぞ」

「そう、それは分かるの、だからこそおかしいのだわ」

「おかしいったって、俺は別に…」

「あなたがマイスタージュンでないのなら、私がこの場に立っている理由が分からないもの」

 

勿論状況をあまり理解できていないと言えば真紅もそうである、アリスになった後、自らを犠牲に他のローゼンメイデンの姉妹たちを復活させた所までは彼女自身意識はある。

そんな魂が何処かへ行ってしまった自分が、再び二つの足で現世に立つ事ができる理由は、思い当たる事と言えばかつて自分のマスターであり最も信頼していたパートナーである桜田ジュンに助けられたという事だと考えていた。

 

「ローザミスティカ…」

 

ぽつり、と真紅はモミジのような手を自分の胸に当てて呟いた

今現在の自分には無いはずの物がある実感、それは喜ばしい事であると同時に不安を紡いでいく。

 

もっとも、真紅らしくもないその悩みからくる独り言は始には聞こえなかったようである。

 

 

とはいえ

 

「そんなことよりも」

「ん?」

「紅茶を淹れてもらえるかしら」

 

ひとまず復活することにはできたので、細かいことは後から考えようという判断に至ったようだ。

 

「紅茶って…お前、俺がまだまだ聞きたいことがあるってのに紅茶って…!」

「大体お前なんなんだよ!そもそも人形がなんで喋って、動いて、紅茶を要求できるんだよ!」

「ああこれは夢だこれは夢なんだ、俺はまだ夢の中で」

「うるさいのだわ」

 

一瞬で緊張感が抜けたせいで、今まではなりを潜めていた緊張がまた噴き出してきたようで分かりやすく狼狽える始に

真紅は鞭のようにしなる髪の毛で制裁を加える

 

「痛ぇ!痛ぇ!ああクッソ夢じゃねえ!」

「これで分かったかしら?これは夢じゃないの」

「ああ分かったよ、痛いほどにな」

 

打たれた手の甲を擦りながら皮肉たっぷりに始が答える

 

「そもそも、非常事態において別の人間と仮契約をしたことはあるわ、でもそれは過程は違えど同じ人間であるからで」

「仮契約?」

「それと酷い味ね、茶葉が開ききっていないし、温度は98度「酷いのは俺の扱いだよ、燃やすぞ」」

 

言われた通りにお茶を汲んで案の定酷評されたのをぶった切りながら、聞きなれない単語が唐突に飛び出たので反射的に聞き返す

 

「ああもう、飲み込みの遅いしもべだわ」

「飲み込ませたいならかみ砕いてくれよ、ローゼンメイデンって?なんか単語は聞いたことはあるけど」

 

ローゼンメイデン、失神する前に名乗られたその単語が耳に引っかかったので質問をする始

 

「ローゼンメイデン、錬金術師であるお父様が究極の少女を目指して作った、私を含めて7人の人形」

「水銀燈 金糸雀 翠星石 蒼星石 雛苺 雪華綺晶 そしてこの私真紅」

「あんたみたいな生き人形があと六人もいるのか、というか錬金術ってこの世に本当にあったんだなぁ」

 

真紅からざっくりとした説明を受ける始、錬金術だとかあと六人居るだろうだとか、相も変わらず情報量が大きいが

なんとか食らいつけていけているようだ。

 

「いや待てよ?ローゼンメイデンって聞き覚えあるんだけどさぁ、アニメだか漫画だかで見たような気がするわ」

「アニメ?」

 

真紅はかつて桜田ジュン宅で、大人気アニメであった、くんくん探偵というアニメをよく見ていただけにアニメという物には意外と縁があったが、まさか自分たちローゼンメイデンがアニメ化されている等とは聞いたこともない。

かつての世界ではそもそもローゼンメイデンが存在していなかったとされる「まかなかった」世界はもとより、それなりにローゼンメイデンを知る人間もいた「まいた世界」でさえもオカルトに留まっており、アニメ化などとてもあり得ないことであった。

 

「まぁ、待ってなって、今調べるから」

「それは?」

「ああ、これはスマホ、便利な携帯電話だよ」

スマホを取り出して調べる始、スマホを見たことがない真紅は興味深そうに眺める

 

「また人間は進化したのね、テレビを見たときも中々に衝撃だったのだけれど」

「まぁ、かなり画期的な発明だったと思うよ、ちょっと待って…ん」

「あれぇ?検索してもヒットしねえわ」

 

ヒットしない、すわ検索間違いかと思ったが、間違えたにしては妙な違和感を始は覚えた

まるであったものが後から削ぎ取られているかのような…

 

「知らないなら知らないで最初からそう言えばいいのに、全くこの僕(しもべ)は」

「疑うな!…まてよ?水銀燈、そう水銀燈だよ…白髪だろその子」

 

一つ、記憶を紐づけて行って思い出せた記憶がある、ニコニコで見た水銀燈の動画

深入りすることはなかったがそこで本当に、一部、浅ーーーーーい知識を身に着けたことがあった

始は見た水銀燈の容姿を伝える

 

「…」

 

ビンゴだったようだ、真紅は明らかに動揺している、語ったことのない水銀燈の髪色を当てられたので無理もない

始は手ごたえを感じつつ続ける

 

「ゴスロリ…ああ、まぁ黒い服を着てて、羽が生えてる、あとはよくわからないけど、人を小馬鹿にしたような喋り方をする、そうだろ?いや間違ってたら凄い恥ずかしいけど」

「…間違ってはいないわ、特に人を小馬鹿にしたような喋り方をするという所が」

 

真紅は水銀燈の特徴をズバリ当てられたことで始の話を信じざるを得なくなる

しかし、ローゼンメイデンのアニメを見たという話に信ぴょう性がでた事によってまた疑問が生まれる

 

「なら、あなたが見たという私たちローゼンメイデンのアニメは何故調べても出ないの?水銀燈という名前は確かにあっているわ、それに説明された容姿も…それならば適当に調べてもタイトル名はともかくとして、水銀燈というキャラクターくらいは引っ掛かってもいい筈ではなくて?」

「それなんだよなぁ…」

 

最初から「なかった」世界に行くのとはまた違う、知識はあるのにどう調べても出てこない、これもまた不気味である

まして真紅は自分がこの世界に鞄と人工精霊という一式装備を持って立っている以上誰かしらの意図をもって送られたようにも思えるが、それが出来そうな人物には二人と一匹(人?ウサギ面だけど)ほど覚えがあるとはいえ、それらの仕業ならとっくに自分に接触してきている筈だ。

 

「ところで、何故水銀燈だけ知っていたの?」

「ああ、それは…」

 

とはいえ始に聞いても答えが出るはずもなく、思考を切り替えて素朴な疑問を投げかける真紅

 

「水銀燈って子の熱烈なファンが作った手書き動画を見たんだ、乳酸菌飲料をがぶ飲みしてる奴」

「乳酸菌飲料をがぶ飲み?乳酸菌…飲料を…?」

「え?いやファンメイドだしそんなに怒らなくても」

 

始の説明を聞いた瞬間に肩が震える真紅、それに対して知り合いを貶したと受け取られたのだろうかと不安になる始

 

「あはははははははははは!」

「!?」

 

堪えきれないというように、笑いだす真紅、予想外にも爆笑されたので始は面食らう

 

「うふ、くくく…あの子がぁ…乳酸菌飲料を…?可笑しくてお腹が痛いわ…ふふ」

「だから!ファンメイドだから本当じゃないだろうし」

「そうでしょうね知っているわ、でも可笑しいじゃない、あの高飛車な水銀燈がぁ…がぶ飲み…くく」

 

未だに笑いが抑えきれていないのか口に手を当てて笑いを噛み殺している真紅、会ったことはないが

何となくこの目の前の真紅と水銀燈という子の関係性が何となく察せてしまう

 

「その水銀燈の動画は見たことがないけれど、いつか見てみたいものね…乳酸菌」

「色々と察したよ、仲は良くなったんだなぁ」

「仲は良くなかったし、好きにはなれないわね、でも…」

「うん」

 

真紅は最後に水銀燈と話した時のことを思い出す、彼女は彼女なりに筋は通していた

めぐという女性の為に奔走していたのも見たし、口は悪くともお互いに認めている節があったのもまた事実である

 

「嫌いになれないといえば、そうね、嫌いじゃないわ」

「おー…」

 

妙な信頼感が伝わってきて、思わず唸る、ほろ苦いというか色々あったんだろうと想像できる

性質が合わないだけで相手をよく理解しているのだろう。

 

「ところで、水銀燈だけ知っていたという事は他の子は知らないのかしら?」

「いや?微妙に覚えてるよ」

「言ってご覧なさい」

「いや、えっとねぇ」

 

一応他にもうろ覚えであるが、記憶がないでもない、始はまたうろ覚えの記憶を茶碗に残った米粒を箸でかき集めるように

記憶を辿っていく、そして幾つか浮かんだ

 

「そうだ、ですます調で話してる緑の服着たオッドアイ(両目色違い)の子、そういう子いるでしょ」

 

始の記憶にあったのは、緑の民族衣装のようなドレスを着こんだ、ですます調で話す女の子だ

彼女を知っている人間なら、ここに毒舌やらツンデレやらの特徴も合わせて言い当てるだろう

 

「ああ、それは翠星石ね、第三ドールで口は悪いけれども良い子よ」

「ふーん、翠星石ねぇ…」

 

なんとなくでしか見た目も分からないので、この場では相槌を打つだけに留まる

なまじ前の反応がアレだっただけに、まぁ良い子だよという、ありきたりな返しが来ても衝撃はない

実の所、水銀燈に負けず劣らず翠星石のキャラも濃いのだが…今はまだ知らなくてもいいだろう

 

「ところでこの私、真紅の評判は?」

「ウッ…」

 

急に言葉に詰まる始、言うべきか言わないべきか迷うが、水銀燈の話をした限り

寛大に受け入れられたので、許されるだろうと思って語る

 

「そのぉ…二次創作での話だし、読者が勝手につけた、あだ名だよ?実際俺も原作を見たわけじゃない」

「ええ、そうね?」

「だからさ、実際の所どんな理由があって付けられたかも分からないし本音じゃないからね!?」

「分かっているのだわ、それでどう呼ばれているの?」

 

原作での彼女をしっている人物なら明らかに地雷だと分かるだろう、彼女は何だかんだプライドが高い

そしてファンからの愛称は…

 

「『不人気』だったかな…」

「…」

 

張り詰めていく空気、始は逆鱗に触れてしまった事を一瞬にして悟るが、時すでに遅し

自分の膝元ほどの小ささの少女がここまでの殺気というものを出せるのかと関心すら覚えるような圧力で始を睨みつける。

 

「水銀燈の乳酸菌で済めば、まだ笑えていたものを」

「いやぁ俺が言ったわけじゃ」

 

弁明をするも焼け石に水で、真紅はすでに制裁の構えをしていた

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

刹那、渾身の髪の毛ウィップが始を強かに打ち付けたのとほぼ同時に、始の絶叫が家中に響いた。




ローゼンメイデンは揃いも揃っていい子ばかりだけど
皆様はどの子がお好きですか
私は金糸雀と雪華綺晶
前者はアホっぽいけど健気で実は有能なところが好き
後者は怖いように見えて実は愛情に飢えてるっていうギャップがたまらない

ちなみに真紅不人気ネタあるけど5位になった投票は一回だけで
他は軒並み上位だったから本当は不人気じゃないよ!流石主人公!
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