ローゼンメイデン:別の次元の物語   作:肉羊

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実際めぐって水銀燈・雪華綺晶という比較的ヤバイ二人と出会って
やたら気に入られてるんですよね、不思議!


第三階:狂気の白薔薇(意外と優しい)

安部川始と真紅が出会ったのと同刻、16歳になった鏡礼(かがみ れい)は目の前に立つ純白のドレスを身に纏った少女に対して土下座をしていた、打算も何もない土下座だ、純粋な恐怖心に負け、目の前の少女に対して許しを請いていた。

 

少女もまた同じく、まだ未熟さが残るとはいえ少しづつ大人へと変わっている青年が情けなくも土下座をして、泣きながら命乞いをしてくるのを見て、毒気が抜かれていった。

 

 

何故こんなカオスな状況に陥ったのか、時を戻そう

 

最近16歳の誕生日を迎え、一端の高校生らしくなった鏡礼は夏休みに友人と喫茶店で駄弁ろうかそれとも酷暑の外を尻目に家でダラダラしていようか悩んでいた。

 

この男、根はけして悪い奴ではないが、中学時代には格好つけておおよそ世間では悪いと思われているようなチンケな喧嘩ばかりを繰り返してた不良少年で、高校にもなれば流石に大人しくもなるもののイマイチ過去にやらかした悪行が尾を引いてまともそうな友達が中々できず、結局中学時代に一緒に馬鹿な事をやった悪友とつるんでいた方が楽しいと感じる有様だった。

 

最近美容院に行ってツーブロックに刈り上げた、黒髪のもみあげの辺りを指で触ってジョリジョリ感を楽しみつつ、今でも貰っている小遣いと、それで出来そうな遊びを勘定する。

 

「っしゃ今日はパチっか(パチンコ)」

 

中間策として、1000円を握りしめてパチンコをやりに行くことに決めたようだ

当然この齢では違法だが、その辺りの監視が緩い場所というのは案外そこら中にあるものである。

 

もっと言えば1000円じゃ1円台でもほとんど粘れず、どうせすぐ飲まれて仕舞だろう

そういう事だから彼自身パチンコは楽しいとも思っていない、惰性で続けている。

 

「ちっちゃい頃から悪ガキでーっと」

 

言いながら洗面台で髪を固めだす、ワックスの香りが鼻につく

 

「15で不良と~俺は13から不良だったか…ん?」

 

何か気配を感じて髪から視線を下げる、しかし写っているのは年齢の割に老けた自分の顔のみだ

結局気のせいかと思い、また視線を髪の方へと上げる

 

「なんだこれ?ツタ?」

 

そこには白い、植物のようなツタがあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは、どこでしょう?」

 

ローゼンメイデン第七ドールである雪華綺晶は、どこともつかぬ鏡の中で目を覚ました

鏡などの鏡面から入ることができる、Nのフィールドという世界の中で、彼女はたった一人で立っていた

 

「ああ、嘆かわしい…あれだけ居た苗床から力が送られて来ませんわ」

 

そして自らの身に起きた違和感に気が付く、今まで無尽蔵とも言える、エネルギーの供給源である

ローゼンメイデンと契約できる才を持った人たち(彼女はこれを精神空間に閉じ込め半ば強制的にエネルギーを抽出していた)

その苗床と呼称している人たちからのエネルギーの供給がプッツリと途切れている事に気が付いたのだ。

 

「良いですわ、また再び苗床を…今一度苗床を…」

 

手を握りしめて恨めし気に呟く雪華綺晶、その顔は原作最後のような憑き物の落ちた顔ではなく

まるで初めて登場した時のように、ボディと愛への妄執に憑りつかれているような、そんな妖艶で恐ろしい顔だった。

それもその筈、この雪華綺晶には真紅やまかなかったジュンの優しさに触れた記憶がない

真紅と違い、言わば原作の記憶がないと言っていいのだ。

 

そして、美しくも恐ろしい策略家は一手目に移った

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻って鏡礼(以下『礼』)は鏡に映った白いツタを見て後ろを振り向く

「あれ?どこにあんだ?オイ」

しかし、そこにはあるべきツタがない、そうして何度か鏡と自分の背後に視線を往復させたのち

鏡のみにツタが出現しているという恐ろしい結論に行き着いた

 

「ヒィィィィィィィ!?」

 

もはや恥も外聞もなく叫ぶ、ここで腰を抜かして鏡から視線を外せば幾分かマシだったが

恐怖で体が直立体制で固まってしまった為に、直後現れた少女と目が合ってしまった。

 

「あっ」

「初めまして」

 

微笑みかけてくる純白の少女の顔を見てしまい、礼はその瞬間、あっさりと失神した。

 

 

 

 

 

 

 

礼が目を覚ますと、白い水晶に一面覆われた何とも形容のできない不思議な世界に自らが飛ばされている事に気づいた

これがNのフィールドと言われる世界にある、雪華綺晶の世界だが、礼には知る由もない

 

「どこだよここ」

 

怯える、礼、不良である事とオカルト耐性には何の因果もない

一般的な高校生よりも肝は据わっているが、この状況でもビビるなというのは酷だろう

 

「お目覚めでしょうか?残念ですわ、眠っていれば怖い思いをさせずに済んだのに」

「ヒィィィィ」

 

追い打ちと言わんばかりに例の少女に話しかけられる礼、完全に怯え切っている

雪華綺晶にとっては、苗床にしている人間の反応では想像できる部類なので、至って慣れたものだ

 

「どうかそのまま動かないでください、すぐに眠らせて差し上げますから」

「嫌だぁぁぁぁぁ!」

 

眠らせるというのをどう解釈したのか分からない、ただ腰が抜けて動けない状況

もはや抵抗する気力も礼には残っていなかった。

 

「ご容赦くださいまし、私が体を手に入れるまでの辛抱ですわ」

 

手足を四本すべて使って這いずる雪華綺晶、その赤ん坊のするハイハイのような動きは、図らずも腰を抜かした礼の視線の高さと同じくらいになり、合わさった視線の威力を倍増させていた。

 

「ど、どうするんですか…俺を…どうするんですかぁっ」

 

礼は、せめて悪いようにされないように祈りつつ、雪華綺晶の右目に文字通り生えている白バラの花を見つめていた

 

「先ほど申し上げた通り、しばらくの間眠ってもらいます、そして私にエネルギーを与える苗床として…」

「嫌じゃぁぁぁぁぁ!勘弁してぇぇぇ!そんなのは嫌だぁぁぁぁ!」

 

却ってきたのは無情な苗床宣告、当然納得できるわけがない

 

「許じでぇぇぇ!俺が何しだんだよぉぉぉ」

 

雪華綺晶は、ここまで拒否反応を示されると流石に気の毒になってきていた

それなりに年を重ねている青少年が情けなくも恥も外聞も放り投げて許しを乞われると

一方的に自分の都合で襲った手前罪悪感が強くなってくる。

元々苗床計画自体、マスターを眠らせてそのまま苗床にするというプロセスだったため、抵抗される事がなかったので、こういう状況に陥ったことも初めてだったという事でもある、ましてローゼンメイデンは全て本来善性の存在でもある、ひねくれているか真っ直ぐな性格をしているかの差こそあれ、どのドールも根は悪い奴ではないのだ。

 

「ああ、そんなに泣かないでくださいな」

「勘弁してください…勘弁してください…」

 

だから、らしくもなく雪華綺晶はフォローをすることにした

 

 

「そうですわ!幻覚空間で見たい夢の内容を教えてくださいな、その夢を見せ続けますので、どうかそれで」

「変わってないじゃないですかぁぁぁぁ!」

 

名案を思い付いたと言わんばかりに手を叩いて提案する雪華綺晶

 

全くフォローになっていない、なんかもう倫理観から言って捻じ曲がっているが

元々体が存在しない精神体であり、どこの空間に居るのか定まっていないので夢だろうが現実だろうが左程変わらない+生まれた時から価値観を共有してくれるような友人の不足の為、まず常識から壊れているのが雪華綺晶だ

 

「頼むぅ何でもする、何でもするから寝たきりは勘弁してくれぇぇ」

「困りましたわ…」

 

困るのは礼だろう、今日から寝たきりやってね、と言われて「しゃーないなぁ」と受け入れる人間がこの世に何人いるのだろうか、一人いたなぁ(めぐ)

 

「どうか!なにとぞ!何卒!!!」

 

とうとう時代劇で見れそうな口調で土下座まで始めた礼

 

「なぁ許してくれよぉ!苗床じゃなければ何でもするって!パチンコの当たり台とか教えられるから!」

「どうしましょう…」

 

雪華綺晶の裾に縋って顔をクシャクシャにして許しを請う礼

もはや雪華綺晶は罪悪感に負けて苗床にする気はなくなっていた

 

「ねぇ、貴方、名前は何と言うの?」

 

雪華綺晶には毒気は最早ない…が、代わりに別の感情が沸々と湧き出てきたのである

 

「か、鏡礼です」

「礼…良い名前ですね」

「ねぇ、礼様、どうか私のマスターになってくださらない?」

 

いわば独占欲とも言うべきか、元々この雪華綺晶というドールは寂しがりやで自分を受け入れてくれる人間を見つけるとその人間に偏愛する傾向がある、苗床をすべて失った雪華綺晶は目の前の苗床候補に自分を受け入れてくれそうな何かを見出した

 

雪華綺晶は自分に縋られているこの状況を、求められる、或いは頼られているのだと思ったのかもしれない

 

確かに縋るというのは頼るという意味も含んでいるが、微妙に異なっているのではないだろうか

とりあえず今それを言うのは野暮という物だろう。(というかマッチポンプだし)

 

 

「マス…タァ?すいません俺、師範代になれるような習い事はしてないです、すいません」

「まぁ面白い冗談、ですが私と契約してマスターになってくだされば、貴方を苗床にしなくてもすみますわ」

「じゃあやります…やらせてください!!」

 

冗談だと受け取ったのかクスクスと笑う雪華綺晶

そのまま深々と頭を下げる礼、苗床とやらが回避できるのならば最早何でもいいといった調子だ

 

「その、契約ってのはどうやるんですか?俺、悪筆だからマジで書類とかは無理っすよ」

「うれしい、それではマスター、契約の口づけを」

「えっ口づけ?チュー?っべぇ…焼きそば食べてきたから青のりが…」

 

契約を勧める雪華綺晶、礼にその整った顔が近づいてくる

そして礼の顔まで残り三寸ばかりといった所で雪華綺晶の口がゆっくりと開く

口内には人形の物なのに人間らしい妙な肉っぽい質感を持った舌と、その上に対照的に無機質な指輪が乗っかっていた

 

「ちょっなんかエロ」

「不束ものですがよろしくお願い致します、私の大事な大事なマスター」

 

強引な形でのキスが行われた、礼は寸前で口を開けたため、唇というよりは歯に当たったのと

歯肉に指輪の尖った装飾が刺さってちょっと痛い思いをしたが、ともかくとして指輪に口づけしたので契約はなされた。

 

「あっ」

「どうしたよ!?」

 

契約がされてから礼に指輪がいつの間にか嵌められていた事も驚くべきことだったが

何よりも契約した刹那、雪華綺晶の体にノイズのようなものが走った

 

「な…に…これ!?」

「おい!どうした!」

 

そうしてノイズは雪華綺晶に一通り走った後、何事もなかったかのように消え去った

一見すれば何も変わっていないようにも見える

しかし

 

「凄い、すごいわ!ねぇマスター!この私に身体が!」

 

雪華綺晶に何故かボディが発生したのである

 

「え?身体って?」

「身体よ、ああ、潤むわぁ!マスター!」

 

恍惚とした表情で礼へと手を差し伸べる雪華綺晶

この一瞬で契約者と身体、予てから喉から手が出るほど欲しかったものが二つとも手に入ったので

らしくもなく浮かれているが、その身体の出所も全くわかっていない

 

「まぁ、身体が手に入って良かったな、欲しかったんだろ?喜んでるってことは」

 

相手の態度が軟化したことで余裕が生まれる礼、余裕が出てきたことで慣れない敬語から砕けた言葉に変わる

キスまでしたので礼は礼で乱高下しているテンションがまた上がってきたというのもある

 

「ですが腑に落ちない点があるといえば…妙に馴染みすぎているのです、まるで最初から私のボディだったような」

「じゃあ最初から契約ってそういうモンだったんじゃねえの?良かったな!」

「そうですね、そういう事にしてしまおうかしら」

 

礼は最初からそうなのだろうと強引に納得しているが、雪華綺晶は唐突すぎる身体にやはり訝しみを覚える

何よりも本当に不気味なくらい馴染むのだから、警戒心がない筈がない

しかし付いてしまったものはどうしようもない、結局受け入れようが受け入れまいが

ボディが与えられたという事実は変わらないのだ

 

「とりあえずこれからよろしくね、ええと?」

「順序が逆になってしまいましたわね、私は雪華綺晶…よろしくお願いいたしますわマスター」

 

切り替えて改めて挨拶をする二人、この出会いと契約は歴史を決定的に変えることになるが

今はまだその切っ掛けといった所だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ

 

「ここは?どこですか?」

 

一般的な部屋に比べれば随分と散らかった部屋で目を覚ます新緑の少女

その翠と紅の目が捉えたのは、自分を何か幽霊でもみたかのような目で見てくる男だった

 




身体はまるで最初からあったかのように着いてきましたね

或いは本当に最初からあったのでは?例えば元の世界でラストに入ったボディとか…
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