『ジーオスマリナーにコア持ちのジェネラル級か…』
「うん、この間始めて見たけど…ジーオスマリナーとコア持ちのジェネラル級はおそらく今後も現れると思う」
あかりは先日の首長竜型ジーオスの事についてヴェルと話をしていた。
『100年近くも戦いが続いているとはいえ奴らは未だに未知数の存在だ。そいつらがこっちにも現れるかもしれないし更に進化したのが現れるかもしれないな…』
真姫がμ'sに入って数日後の月曜日。
「あ、真姫おはよー」
「おはよう、あかり」
と挨拶を交わす二人にクラス中が驚いた。
人を寄せ付けない雰囲気を持つ真姫と一人だけ年上で話すのが躊躇われるというか話し辛いと(周囲は)思いがちなあかりが親しげに話をしているのだ。驚くのも無理はない。
だが、当の本人達はそんな事など気にせず話を続ける。
その日の放課後。
「お邪魔します」
あかりは穂乃果の部屋の扉を開ける。
「あかりちゃん、遅いよー!」
「ごめんごめん、急な“仕事”が入っちゃってね」
穂乃果にそう返答したあかりは珍しい来客に気付く。
「花陽?どうしたんだい?」
「お菓子を買って帰ろうかと思ったら穂乃果先輩に呼ばれて」
と返す花陽。
「あかりちゃんを待ってたんだよ。
今、ちょうどあの動画見つけたところだったし」
とことりはあかりに言う。
「あの動画?」
あかりはことりのノートパソコンの画面を覗き込むとこの前のファーストライブの動画が再生されていた。
「本当に誰が撮ったんだろうか…(まぁ、“誰か”は予想つくけど)」
「ここ!綺麗に出来たよね!」
「何度も練習してたところだったから決まった瞬間ガッツポーズしそうになっちゃってたよ!」
「あ、今の所は―」
穂乃果、ことり、海未は3人でファーストライブの反省会を始めていた。
一方の花陽は動画を食い入る様にして見ていた。
その瞳には憧れや感動といった様々な感情が含まれており、とてもキラキラしていた。
そんな花陽に視線を向けているあかりはこう口にした。
「花陽、スクールアイドル、本気でやってみないかい?
私、花陽に目を付けてたんだよね。この子をμ'sに欲しい!って」
「でも、私…人前に出るのが苦手で…向いてないですから」
「私も人前に出るのは苦手です。向いているとはとてもではないが思えません」
「私もたまに歌詞忘れちゃったりするし、運動も苦手なんだ」
「私はすごいおっちょこちょいだよ!」
「で、でも…」
海未の、ことりの、穂乃果の言葉に揺らぐ花陽。
「スクールアイドルはやりたいって気持ちがあれば出来る!って私は思うな」
ことりの更なる後押しに花陽は揺らぐ。
「尤も練習は厳しいですが」
そう言った海未はすぐさま穂乃果に叱責された。
「さて、花陽にある言葉を授けよう。
アメリカにいた時に知り合いから言われてた言葉があるんだよ。
『やりたい事ならやってみろ。
あの時やっとけば良かった、って50年後に後悔しない為にも』
私も後悔しない様に行動しているつもりだよ」
「ゆっくり考えて、答え聞かせて?」
あかりと穂乃果の言葉に、ことりも続いた。
「私達はいつでも待っているから!」
翌日、あかりは授業中に花陽をこっそりと観察すると…花陽はやはり考え事をしている―迷っているようであった。
放課後になり、あかりは屋上へ行く道中、中庭の樹の下に座って考え事をしている花陽の姿を目撃、彼女に話しかける。
「考え事かい?」
「う、うん…正直…私、まだ…そう言えばあかりちゃんはどうしてμ'sのマネージャーを?」
「う~ん、そうだねぇ~廃校を阻止しようと必死に頑張っている従姉妹と幼なじみ達を全力でサポートする為、とでも言っておこうかな。
まぁ、私は私に出来る事をやってるって事だね」
「スクールアイドルをやろう、とは思わなかったの?」
花陽の言葉に
「私じゃ駄目なんだよ…。“仕事”の関係もあるし、それに…いや、これ以上は止めとこう」
あかりはどこか悲しげな表情を浮かべた。
「まぁ、私の事は良いんだよ!それよりも、花陽!」
あかりは立ち上がって花陽の肩に手を乗せ、真面目な表情をする。
「は、はい!」
「昨日も言った通り、後悔だけはしない様にね!…んじゃ、私は屋上へ行くね」
あかりは去り際、花陽に見えぬよう立ち上がった時に遠目に見えた真姫にウィンクをする。
先程から花陽と話をしたそうなオーラが出ている彼女の邪魔をする気はあかりにはないからだ。
あかりは屋上へと向かう道中、凛と遭遇した。
「あっ、あかりちゃん。かよちんを見なかったにゃ?」
「うん、中庭にいるけど…今は止しておいた方が良いと思うよ」
「どうして?」
と怪訝な顔をする凛。
「今、お取り込み中だからね。まぁ、そんな事より…凛、スクールアイドルをやってみない?」
「スクールアイドルを…?凛が…?」
「うん、この間のライブ、花陽と一緒に目を輝かせて見ていたのを見てたよ~」
「見られてたんだ…で、でも凛は髪も短いし可愛くなんか…」
とネガティブになる凛の頭をあかりは優しく撫でる。
「あかりちゃん…?」
「髪が短いとか関係ない…前にも言ったように凛は可愛いよ」
「あかりちゃん…」
「んじゃ、私はそろそろ屋上へ行くね。穂乃果達を待たせちゃってるし」
あかりは去り際にこう付け加えた。
「放課後は大抵屋上か神田明神で練習してるから良かったら遊びに来てよ」
一方、中庭では花陽と真姫が話をしていた。
「さっき、あかりと何を話してたの?」
「うん、後悔だけはしないようにって…
でも、私なんか…」
「自分を過小評価しすぎよ。あなたは声も綺麗なんだし、後はちゃんと声が出てれば問題ないんだから。
歌の方は私が幾らでもレッスンしてあげるわよ。μ'sの曲は私が作ったんだし」
「えっ、そうなの!?」
花陽の言葉に真姫は頷き、こう続けた。
「それに、私はμ'sのメンバーになったんだから」
「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!?」
花陽が驚くのも無理はない。
「私、大学は医学部って決めてて私の音楽はもう終わってると思ってた。
でも、音楽を続けたいって気持ちもあって…そんな時にあかりからどうするかは自由だけど後悔だけはしないようにって言われたの」
「後悔しないように…」
「そして、あなたがウチに来た後、私は決心したの。音楽を続ける事を、μ'sのメンバーとして音楽を続ける事を。あなたもやってみたい気持ちが少しでもあるのならやってみたらどうかしら?」
真姫は言いたい事を言い終えたからか、その場を後にするのだった。
「あっ、真姫。話は済んだかい?」
あかりの言葉に真姫は頷く。
「後は本人の判断待ちね」
「二人とも、何の話なの?」
と尋ねる穂乃果に
「いや、何でもないよ」
「そんな事よりも練習を始めるわよ」
「後悔だけはしないように…」
その言葉に噛み締める花陽は屋上へと向かう。
「かよちん…」
その道中、凛と合流する。
「凛ちゃん…」
二人は顔を見合わせて頷いた後、共に屋上へと向かう。
穂乃果達が練習をしていると屋上入り口の扉が開き、“彼女達”が現れた。
「どうしたんだい?」
やっと来たか、とワクワクする気持ちを抑えつつあかりは彼女達に問う。
「あのっ!」
まず声を発したのは花陽だった。
既に決心をした花陽は感情が高ぶったからかうっすらと涙を浮かべていたが、その瞳に迷いはなかった。
「私、小泉花陽と言います!
一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで得意なものは何も無いです…
…でも、アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!」
「凛はかわいいのとか…自分がアイドルに向いてるのかわからないし自信ないけど…それでも挑戦してみたい!」
そして、二人は息を揃えてこう口にした。
「「そんな私達ですが、μ'sのメンバーに入れてください!お願いします!」」
二人の決心に対する穂乃果達の答え―それはあかりにはわかっていた。
「こちらこそ、よろしく!」
翌日の早朝。
「朝練って毎日あるんだね」
「当然でしょ」
神田明神の男坂を登りながらそうやり取りをしていた凛と真姫。
上には既に花陽がダンスの練習をしていた。
「かよちんおはよ~!」
「おはよ~!」
と振り向いた花陽は何時もの眼鏡を着けてなかった。
「あれっ、かよちん、眼鏡は?」
「コンタクトに変えてみたんだ。変、かな?」
「ううん、すっごく似合ってるよ!」
「その通り、似合ってるわよ」
「凛ちゃん、西木野さん、ありがとう」
「…あのさ、コンタクトに変えたついでに私の事、名前で呼んでよ。
私も名前で呼ぶから…花陽、凛」
照れながらそう言う真姫に
「うん、真姫ちゃん!」
花陽は頷き
「真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃ~ん!」
凛は真姫に抱き付いた。
「な、何回も呼ばないで!」
「良いじゃん真姫ちゃ~ん!」
「だ、抱き付かないで!」
と言う真姫だったが、まんざらでもないようであった。
To be continue
用語解説
・ジーオスマリナー
ジーオスの派生種の一つ。
水上戦に特化した個体で、首長竜をモチーフとしている。
・コア持ちジェネラル級ジーオス
外見は通常のジェネラル級ジーオスと変わらないが、体内に赤い正二十面体のコアが存在する個体。
コアを破壊されない限り再生する事が可能。