宿泊施設、恐竜の科学施設も兼任するテーマパークであるジュラシックワールドは開園1ヶ月目で9万8120人の訪問客が訪れたとされており、年間1000万人の観光客が訪れていた。
「いやぁ~、楽しみだよ!何たって生きた恐竜、しかも今回は一般公開されてないラプトルにも会えるなんて」
「一番好きな恐竜だったか、ラプトルは。私はアロサウルスだな」
そんなイスラ・ヌブラル島へ向かう船の中、あかりとヴェルは談笑していた。
年も近く、趣味趣向も似通っているこの二人は気が合うらしく基本的には二人一緒に行動している。
「楽しみにするのは結構だが、本来の目的を忘れるなよ」
「分かってるよ。私だって仕事を忘れる様な馬鹿じゃないよ」
と頬を膨らませるあかりにレノックスは苦笑いを浮かべてこう返した。
「分かってるってあかり。それに一応、俺も楽しみなんだからな、生きた恐竜に会えるのは」
レノックスを始め今回の仕事に参加しているネスト隊員達もまた生きた恐竜を見れるのを楽しみにしていたのだ。
「改めて今回の仕事内容の確認だ。
今回の仕事はジュラシック・ワールドの視察―特に新しく生み出された恐竜―インドミナス・レックスをな」
「インドミナス・レックス…制御不能な獰猛な王」
そう呟くあかりにレノックスは解説をする。
「パークの新たな目玉として生み出された恐竜らしい」
「だが、そんな名前の恐竜…見たことも聞いた事も…」
「もしかして“1から作り出した”んじゃ…」
ヴェルとあかりの言葉に頷き、レノックスは続けた。
「その通り、話によると基本的なDNAはティラノサウルスらしいが…他にどんなDNAを使ったかは不明だ。
奴ら、最低限の情報しか提示しなかったからな」
手元にある資料を二人に見せるレノックス。
「う~ん、頭部はT-レックスと言うよりはギガノトサウルスっぽい気が…」
「確かに…T-レックスはもっと厚みがある。
長い腕は…テリジノサウルス辺りか?こんなのを展示するって正直嫌な予感しかしない」
「脱走したら、どうするんだって話だよ。トランステクターやモビルスーツ…MSがあればともかく、今回は“トランステクターやMSが使えない”し」
あかりの言うとおり―今回の仕事はトランステクターやMSの使用をインジェン社からの圧力で禁じられているのだ。
立場的には政府の組織であるネストの方がインジェン社より上なのだが…正直に言って揉め事を起こすのはネスト側にとっても面倒である為、トランステクターやMSの使用禁止という条件を渋々ではあるが了承したのだ。
「隊長、そろそろ到着します」
隊員の一人がレノックスに報告する。
「わかった。それじゃ、各自準備をしておけ!スケジュールは渡した資料通りだ!」
島に上陸して、まずあかりとヴェル、レノックス達が向かったのは一般公開されていない施設である。
その施設では元海兵でレノックスの友人のオーウェンという人物が“ヴェロキラプトル四姉妹”を躾ているらしい。
因みにラプトルは本来“五姉妹”だったらしいが、一羽が攻撃的な非常に危険な性格だった為、安楽死による処分となったらしい。
「此処がラプトルの…」
あかりの呟きに頷くレノックス。
「ハラショー…本当に躾てる…」
ラプトル四姉妹はオーウェンの指示に合わせて動いていた。
訓練終了後、オーウェンがキャットウォークの上から降りて来た。
「オーウェン!久し振りだな!元気してたか!?」
「あぁ、バリー共々、何とかな!」
と握手を交わす二人。
「―で、其方の日本人とロシア人のお嬢さん二人は?」
オーウェンはレノックスの後ろにいるあかりとヴェルの事について問う。
「彼女らは俺の部下だ」
レノックスの促され、あかりとヴェルはオーウェンの前に立つ。
「ネスト特殊隊員の頼尽あかりです!」
「同じく風見ヴェールヌイです。ヴェルと呼んでください」
「俺はオーウェン・グレイディ。元アメリカ海軍所属でレノックスとは軍にいた頃からの仲だ。宜しく」
オーウェンはあかりとヴェルと握手を交わす。
「此方こそ、お会いできて光栄です。オーウェンさん」
「暫くの間、宜しくお願いします」
「あぁ、此方こそ。あと、さん付けとかは止めてくれ。何かむず痒いからな」
「うん、わかったよ」
「改めて宜しく、オーウェン」
「それじゃ、ラプトル達を紹介しよう」
オーウェンは日向ぼっこをしているラプトル四姉妹を紹介する。
「まず、青銀色の模様の個体が長女の“ブルー”。ベータの代わりさ。
緑色に近い色の次女が“デルタ”。
三女がオレンジや赤に近い体色に黒い縞模様が特徴の“エコー”。
“チャーリー”は四女で緑色の体色に黒い縞模様の個体だ」
「じゃあ、アルファは?」
「俺がアルファさ」
とヴェルの疑問にオーウェンは答えた。
「あれ?お前の相方は?」
オーウェンは何時の間にかあかりの姿が見たらない事に気付き
「あぁ、名前を聞いた後、檻の中に入っていった」
とヴェルは檻の中を指差す。そんな檻の中では
「お~よしよし良い子だねぇ~」
あかりがラプトル四姉妹を優しく撫でてて四姉妹は警戒心を抱いてない所か懐いているという光景が繰り広げられていた。
「おいマジかよ…」
愕然とするオーウェンに
「本当に良い子達だね!オーウェン!」
と満面の笑みを浮かべるあかり。
「あ、あぁ…そうだろ?それに生まれた時には刷り込みをやってる」
と返すオーウェンに
「あかりが一番好きな恐竜なんだ、ラプトルは。
今回もラプトルと会うのを楽しみにしてたし」
とヴェルは苦笑いを浮かべる。
「なる程な…だが、どうやって檻の中に入ったんだ?まさか飛び越えたのか?」
「そのまさかさ。私達ならあの高さの檻飛び越えて入るのは容易い」
と言った後、ヴェルはあかりの元へ―檻の中へ飛び越えて入っていった。
そのヴェルもあかり同様、あっと言う間にラプトル達と仲良くしている。
「なぁ…レノックス。あの二人はもしかして…」
「あぁ、お前が想像している通り、あの二人は普通の人間じゃない。
脳以外の身体の部位を金属細胞による義体に置き換えたアデプトテレイターだ」
「やはりアデプトテレイターだったか…」
「二人ともおよそ2年前に重傷を負い、その際にアデプトテレイターになった。
当時、あかりは13歳、ヴェルは11歳だ」
「その年でアデプトテレイターになったって事は…相当な訳ありなんだろ?」
「その通りだ」
オーウェンはあかりとヴェルに内心驚いていた。日本人はアメリカ人と比べて小柄(最もヴェルは血筋の1/2がロシア人、1/4が日本人、1/4が日本に帰化したアメリカ人なのだが)と言われているが、目の前にいる二人は身長154cmとそれに輪をかけて小柄だ。
“背中に接続されたパックパックにマウントされている銃”さえなければ部外者だと思ってしまった程だ…
To be continue