あかりにとって希がサポートに入ってくれたのはかなりありがたかったが…
「やる気がねぇなおい…」
と誰にも聞こえない声であかりは頭を抱えて呟いた。
海未達の解説は分かりやすいものだとあかりは思うが…
だが、その解説も穂乃果、凛、にこの三人にとっとは子守唄になってしまっているらしい。
「これじゃ本当に出場が危ぶまれるなぁ…っと」
そう呟いたあかりの元へジーオスの襲撃を知らせる連絡が入った。
「ちょいと“仕事”が入ったから抜けるね」
そう言ってあかりは現場へと向かった。
「ことり、私はこれから弓道部に顔を出さなければならないので後はお願いします」
海未が弓道部の方へ顔を出し、その弓道部の練習を終えて帰宅しようとした時だった。
「この曲…『START:DASH』?」
何処からかμ'sがまだ3人だった頃に初めて歌った曲『START:DASH』が聴こえてきたのだ。
そこにいたのはイヤホンを音楽プレーヤーに繋いで、聴こえてくる曲に合わせて口ずさんでいる亜里沙だった。
海未は亜里沙が見ている動画を覗き見る。
「ネットに上がってない部分も…」
海未がそう呟くと、その亜里沙は海未に気付き
「あの、園田海未さんですよね!」
「は、はい…そうですが…」
「私、大ファンなんです!握手してもらっても良いですか!?」
亜里沙の要求に答え、握手をした海未。
「この動画、ネットにない部分もありますが…」
「お姉ちゃんが撮ってきてくれたんです!」
「亜里沙、お待たせ」
「あ、お姉ちゃん!」
そこへ現れたのは
「貴女…」
「生徒会長…」
絵里たった。
場所を変え、公園で話をする事になった海未と絵里。
亜里沙は現在飲み物を買いに行っている。
「飲み物をどうぞ!」
海未が面食らったのも無理はない。
亜里沙が持って来たのはおでん缶だったのだ。
「亜里沙、これは飲み物じゃないのよ。新しいの買ってきてくれる?」
絵里の言葉に従い、亜里沙は自販機へ向かった。
「ごめんなさい、あの子はまだ日本に馴れてないの」
「馴れてない…?」
「私達の祖母はロシア人で亜里沙はまだ日本(こっち)に来て間もないの」
と返す絵里。
「まさか、あなたに“も”バレるなんてね」
「“も”って事は…」
「頼尽さんには既にバレているわ」
後であかりに事情を訊こう、と海未は思いつつ動画の件について絵里に尋ねる。
「動画の件ですが、前々から気になってたんです…誰が撮ってたのか…
あの動画には感謝してるんです。アレがなかったら、今の私達はなかった―「やめて」…!?」
「あの動画をネットに上げたのは、貴女達の為じゃない…むしろ逆。
貴女達のダンスが如何に人を惹きつけることが出来ないかを知ってもらう為…。
だから、見向きされないどころかメンバーが増えているという今のこの状況は私にとって予想外…。
私からすれば、スクールアイドルだなんてただの遊び…あのA-RISEだって素人にしか見えないわ。
そんなものに学校の命運を背負ってほしくないの」
その日の夜。
「あかり、貴方は知っていたのですね?あの動画を撮影したのが誰なのかを」
『…Yesだよ。亜里沙―絵里先輩の妹に会った時に知ったんだよ』
「どうして言わなかったのですか?」
海未の言葉に
『タイミングを見てたんだよ、タイミングをね』
と返し、通話を切るのだった。
翌日の放課後。海未の様子がおかしい事に気付いた―いや、その元凶たるある映像を見せた希は海未に問う。
「ショックを受けたんやろ?エリチの踊りに」
「はい。正直…かなりショックでした…。
自分達が今までやってきたことは…何だったんだろうって思いました…」
海未は昨日あかりと通話した後、神田明神でバイトをしてた希の元を尋ね、ある映像を見せて貰ったのだ。
その映像があかりも見たバレエを踊る幼き日の絵里の映像であった。
この映像を見て海未もあかりと同様、自分達の踊りがまだまだである事に気付いてショックを受けると同時にある考えを抱いていた。
「だからこそ…学びたいんです…!あんなに上手い人からダンスを…!」
「考えとた事はあかりちゃんと大体同じやね。
でも、最初にやるべき事があるんやないかな?」
「やるべき事…?」
「件の試験。まずは全員が赤点を回避しないと事は始まらんよ」
希の言葉で自分のやるべき事に気付いた海未は希に礼を言い、穂乃果がいるアイドル研究部部室へと向かう。
「穂乃果、今日からあなたの家に泊まり込んでみっちり勉強を教えます!」
そして、期末試験があった週の翌週の火曜日。
その日はテストの結果が全て帰ってくる日だった。
そして、あかりは希と共に理事長に呼び出され、理事長室にいた。
「―で、あかりちゃんは皆と一緒にいてあげなくてもええんの?」
「私なら大丈夫だよ。全教科満点だったし」
「ウチ、あかりちゃんは入ってくる学校を間違えたんじゃないかって思う時があるんよ」
「そうかな~融通が利いたりと色々と条件に見合っててピッタリだと思うんだけどなぁ~
それに、此処に入ったから希ともまた会えたんだし」
そうやって話をしていたら絵里も理事長室に入ってきて、理事長は話を始めた。
「お話とは何でしょうか?」
「3人に来てもらったのはね、言わなくちゃならないことがあったからよ。
単刀直入に言います。今度のオープンキャンパスの結果が悪かったら、音ノ木坂学院は…廃校とします」
理事長のその言葉にあかりは一瞬思考停止した。
そして、あかりが詳しい事を訊こうとする前に絵里は理事長に詰め寄った。
「どういう…ことですか?」
「言葉通りの意味です。見学に来た中学生にアンケートを取って、結果が芳しくなかったら廃校にします」
「そんな一方的な…!」
「これは決定事項なの。結果次第で、音ノ木坂学院は来年から生徒募集を止め、廃校とします」
「待ってください理事長…理事長!」
絵里が言葉を続けようとした時、扉が開け放たれ
「今の話、本当ですか!?」
穂乃果が理事長に詰め寄った。後ろには海未とことりも続いている。
「貴方…っ!」
「本当に廃校になっちゃうんですか!?
みんな赤点を回避してラブライブにエントリー出来る様になったんです!
もうちょっとだけ待ってください!あと一週間…いや、二日で何とかします!!」
「廃校にするというのはオープンキャンパスの結果が悪かったらって話なの。オープンキャンパスで来てくれた中学生達にアンケートを実施して、その結果が良ければ廃校は1度保留になるの」
その話に穂乃果の表情も今にも泣きそうなものから安堵の表情へと変わった。
「な、な~んだ…」
「穂乃果、安心している場合じゃないんだよ。オープンキャンパスは二週間後の日曜日。
もし結果が悪かったら全てが終わって私達の今までが全部水の泡となる…!」
焦りの表情を見せるあかりに現状を思い知らされる穂乃果達。
「理事長。オープンキャンパスの時のイベント内容は生徒会で提案させて頂きます!」
「止めても聞く耳はなさそうね」
理事長の許可に絵里は一礼し、その場を後にした。
その後、希に呼び出されたあかりは廊下で話をしていた。
「何か考えてるみたいやね」
希はあかりに問う。
「本当にピンチだよね…」
「でも、あかりちゃんが考えてるのはそれだけじゃないんやろ?」
希の言葉にあかりは頷く。
「時としてピンチとチャンスは表裏一体でもある。この現状はこの学校―そして私達にとってピンチであると同時に私達―いやμ'sにとってチャンスでもあると思う。9人揃い、“μ'sというユニットが完成する”チャンスだと」
To be continue