ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神   作:衛置竜人

26 / 66
第26話『Wonder zone』

「『完璧超人なんかじゃない』ね…」

絵里はあかりがことりに言った事を思い返し、そう呟いた。

「さっき絵里先輩が言ったじゃないですか。

『自分の事を優れた人間だなんて思う人は殆どいない』って。私だってそう…私も足掻いてるんですよ。

あっ、この事は穂乃果達には御内密に」

「わかってるわよ。それにしても…変えたいから、ね…ねぇ、あかり。ちょっと思いついた事があるんだけど」

「奇遇ですね~私もですよ」

二人は笑みを交わし、ある場所へ向かうのだった。

 

神田明神にてバイトをしていた希だったが、そこへ絵里とあかりがやってきた。

「あれ?エリチ、あかりちゃん、どうしたん?」

「希、ちょっと良いかな?」

あかりは希の腕をしっかりと掴んで目的の場所―秋葉原へ向かった。

「また戻ってくるなんてどうしたん?」

「ちょっと思いついたことがあって。さっき、あかりと二人で街を歩いていて思ったのよ」

「次々と新しいものが生まれ、それを取り込んでいって、毎日目まぐるしく変化して新しくなる。そこが秋葉原の凄い点なんだよ」

「この街は、どんなものでも受け入れてくれる一番ふさわしい場所なのかなって。私達の“ステージ”に」

つまり9人となって完成したμ'sのライブをこの地でする―その意見に対する、希の返事は決まっていた。

「ええやん、それ。面白そう!」

「これから忙しくなるわね」

「新しい曲の作戦にライブの場所を抑えたり、ね」

 

 

翌日。あかりは“仕事”のコネなどを駆使しつつライブの場所―とあるビルの前の場所を抑える事ができた。

勿論、ビルを管理する不動産や警察への許可はとってある。

場所を抑えた、までは良いのだが…問題は曲の方だった。

作曲は何時もの様に真姫だが、今回の作詞はことりが引き受けていた。

「秋葉に相応しい曲を書くのなら、秋葉を良く知る人物が良いと思うの」

というのが絵里の弁である。

勿論、あかりも賛成なのだが…肝心のことりは初の作詞に加え相当なプレッシャーで作詞に難航しているらしい。

そこで穂乃果は

「私に良い考えがあるよ!秋葉の事を書くなら、秋葉で考えて書けば良いんだよ!」

と発案。

かくして穂乃果、海未も期間限定だが一緒になって働く事になった。

因みにあかりも働かされそうになったが

「いつ急な“仕事”が入るか分からないし遠慮しておくよ」

と断った。

 

そんなこんなで働いている穂乃果達を客席で眺めていたら通話が入ってきて、あかりはそれに出た。

「もしもし、ツバサ。どうしたんだい?」

『今どうしてるかなって思って。

“面白い事”の準備は順調?』

「うん、順調に進んでいるよ~。今度、“二人”も連れて見に来る?」

『えぇ、勿論そのつもりよ。

それと、勧めてくれた例の映画、“二人”と一緒に見たわ』

例の映画とは、今から一世紀近く前に製作された日本初の特撮怪獣映画である。

因みにその怪獣映画は大ヒットを飛ばして配給会社の屋台骨を立て直し、続編やリブート作が次々と作られ、更にはハリウッドでの映画化という快挙も成し遂げた長寿シリーズである。

『私もだけど“二人”も感動して泣いちゃったわ』

「気に入ってくれて何よりだよ。んじゃ、また良い作品があったら紹介するね」

そう言ってあかりは通話を切るのだった。

 

 

 

 

あかりがツバサと通話をしていた頃、穂乃果とことりは休憩時間に入っていた。

「それにしても、ことりちゃんやっぱりメイド喫茶にいる時って活き活きしているよね!

まるで別人みたいだよ!」

「なんかこの服着ていると何だか“出来る”って思えるんだ。

この街に来ると、不思議と勇気がもらえるの。

もし自分を変えようとしても、この街なら受け入れてくれる気がするってそんな気がするんだ!だから私、この街が好き!」

その言葉を聞いた穂乃果は何かを思い付き

「ことりちゃん!今のだよ!今の気持ちをそのまま詩にするんだよ!」

そう提案するのだった。

 

その提案に他のμ'sの面々は勿論、あかりも賛同したのだった。

 

 

 

 

数日後、遂に路上ライブの日が訪れた。

今回のステージ―ビルの前には何かイベントがあると嗅ぎつけた通行人やチラシなどによって前々からイベントを知っていた人達が集まっていた。

その中には当然、雪穂や亜里沙の姿もあった。

「さて、今の時間は…っと」

あかりは時刻を確認する。

ライブ開始まであと5分。

μ'sの面々はビルの前で既にスタンバイをしている。

因みに今回の衣装は秋葉が舞台ということもあってメイド服であったりする。

「あかりちゃん!」

あかりに声を掛けてきたのはあかりの“父方の従姉妹”にして“A-RISEのリーダー”である綺羅ツバサであった。

後ろにはA-RISEのメンバーである統堂英玲奈や優木あんじゅの姿もあった。

因みに3人共、今日は周囲にバレないよう変装をしていたりする。

「ツバサ!英玲奈とあんじゅもありがとう!」

「せっかくの友人からのお誘いだからな。断るわけにはいかないさ」

と返す英玲奈。

「それに、“彼女達”は前々から気になってたのよ。

リーダーの従姉妹がマネージャーをしているという点を差し引いても、ね」

あんじゅの言葉―それはA-RISEの3人がμ'sに興味を持っている事、そしてライバルとして意識している事を意味していた。

「んじゃ、そろそろ始めようか」

開始時間となった事を確認したあかりは穂乃果達に合図を送るのだった。

 

 

 

 

「皆さんこんにちは!μ'sです!」

あかりの合図を確認した穂乃果は挨拶を始めた。

「今日は私達の事を皆さんにもっと知って貰いたいと思って路上ライブをする事になりました!是非、最後まで楽しんでいってください!」

その後、穂乃果は脇へと移動し、先程穂乃果がいたセンターへことりが移動する。

 

 

そして、ことりの歌い出しから『Wonder zone』という曲が始まった。

ことり曰わく『どんなものでも受け入れてくれる街』である秋葉原。

あらゆる物を押し流してしまう過酷な地であると同時にあらゆる物を受け入れる暖かな地でもあるこの街。

そんなまるで“生きている”かの様に日々変化しているこの街で『自分を変えたい』ということりの気持ちが詰まった曲である。

(『自分を変えたい』、か…)

ライブを撮影しつつあかりはふとことりが言った言葉を思い返していた。

 

 

 

 

(私の場合、どうなんだろうか…私はあの頃から変わっているのか…)

 

 

 

 

“輝き”の中、楽しく歌い踊るμ'sの姿があかりにはとても眩しくて手の届かないもの―そして“血塗られた存在たる自分が触れてはならないもの”の様に見えたのだった。

 

 

 

 

To be continue

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。