ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神   作:衛置竜人

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第4話『命の重さ』

管制室。其処にはオペレーターだけでなくマスラニやクレア、ヴェルの姿もあった。

「おい!あれは一体どういうことだ!

あいつは赤外線センサーにも引っかからなかった。にも関わらずアレはあの中に居た!」

クレアに問うオーウェン。

「それは…機械の誤作動に違いないわ」

「そんな訳ないだろ?君も見ただろ、あの壁に刻まれた爪痕を。あいつは逃げ出したと見せかけて、俺達がゲートを開けるのを待っていたんだ」

オーウェンの意見に続けてあかりは自身の推測を述べる。

「あの子には体温調整によって赤外線センサーを騙せる能力を持っているし、擬態能力も持っている。

あんな巨体の生物が見つからなかったとしたらそれしかない」

「それだけだったらまだ良いが…嫌な予感しかしない」

とあかりに付け加えるヴェル。

(優れた観察能力だ…それにどこかで見覚えが…)

マスラニはあかりの姿にある人物の姿を、数年前に亡くなった友人の一人とその姿を重ねる。

 

(頼尽…まさか…!?)

 

その“まさか”である事をマスラニはこの後、知る事となる。

「私たちが話したいるのは動物のことよね?」

「ああ、高度な知性を持った動物の、な」

クレアの言葉にオーウェンはそう返した。

「―ビーコン発生源まで400メートルまで接近」

そう告げる女性オペレーター。

スクリーンには隊員達の姿が映し出されていた。

「電撃ライフルに麻酔銃に電気ショック槍、ネット銃…えっ、本当に?」

思わずそう口にするあかり。

「殺傷能力のある武器がない」

「あの資産には2600万ドルがかかっている。簡単に殺す訳にはいかない」

ヴェルの言葉にマスラニはそう返すが

「幾ら彼らが精鋭隊員だったとしても…このままじゃ全滅だ」

とヴェルは言い返した。

「ビーコンまで300メートル」

再びオペレーターが状況を告げる。

「隊員たちを呼び戻せ!今すぐ作戦を中止するんだ!」

「此処の責任者はあなたじゃないわ!」

オーウェンの言葉はクレアに届かなかった。

スクリーンの中では暫くして捕獲チームのリーダー格であるハマダが何かを見つけた。

「あれは何だ?」

と問うマスラニにオーウェンはこう答える。

「奴の体の中に埋め飲んでいた追跡装置です。鉤爪で抉り取ったのでしょう。

血がまだ凝固していない事から近くにいる可能性が高い」

「でも、何故分かったの?」

「多分、覚えてたんじゃないのかな?

全く、とんでもない存在を生み出してくれたものだよ…

赤外線無効化に擬態能力―」

とあかりが分かっている範囲でのインドミナスの能力を挙げていると

「ちょっと待って!擬態能力って!?」

とクレアが待ったをかけて問う。

「あの巨体で体色も白。普通だったらジャングルの中に潜入するのには向いてない…なのにインドミナスは見つからない」

「なる程…擬態能力で身を隠しているのか!」

とヴェルの言葉を聞いてマスラニが、その言葉を聞いた者達が納得した時だった。

 

モニターの向こうで体色を緑へ変化させていたインドミナスが1番近くにいたハマダを捕らえ、高く持ち上げたのだ。

『俺に構うな!撃て!撃つんだ!』

勇敢にも隊員たちは次々と槍や殺傷力のない弾を撃ち込んでいくが、インドミナスには効果がなく、次々と殺されていく。

モニターに映されている心電図は次々と直線となり、心配停止を知らせる音が鳴り響く。

「これで分かったろ?今すぐ殺傷能力の高い武器を用意させて奴を倒すんだ。観客も避難させろ」

「ここには家族連れだって居るのよ。貴方はここを戦場にでもする気?」

「とっくに戦場だ」

「グレイディさん、我々の助けになってくれないなら、ここから出ていって」

クレアの言葉を受け、オーウェンは苛立ちを隠せずに出て行ってしまった。

そして、あかりが管制室を出ようとした時だった。

「あかり君、ちょっと良いか?」

マスラニはあかりを呼び止める。

「君はもしかして頼尽夫妻の―」

そして、マスラニはある二人の友人の名を口にする。

「―はい、私はその娘です。そして両親はもうこの世には…」

「そうか…御両親の御冥福を祈るよ」

「ありがとうございます。マスラニさん」

そして、あかりはマスラニにある事を頼む。

「インドミナスの情報について詳しく知りたいです。彼女を作った奴らからの情報収集を頼めますか?」

「ああ、任せてくれ」

「恩にきます」

そう言ってあかりは去り際に一言忠告をして、オーウェンの後を追って行った。

 

 

 

 

「マスラニさん…このままじゃ本当に客にも被害が及ぶよ」

去り際のヴェルの警告にマスラニは

「クレア、リゾート区より北部を閉鎖するんだ」

と指示を出し、クレアは頷く。

「フェーズ1発動!」

クレアがそう指示を出すと、オペレーター達は各所に伝達する。

 

一方のビジターセンター。

そこであかりとヴェルがオーウェンと合流した後だった。

「オーウェン!」

クレアが三人の元へやってきた。

「クレアさん、どうしたの?」

「私の甥の兄弟がまだパークの中に居て帰って来ないのよ」

「何処にいる?」

クレアに問うオーウェン。

「ジャイロ・スフィアの谷よ」

それを聞いたオーウェンは

「クレア、あかり、ヴェル。探しに行くぞ」

と三人に呼び掛け、三人は頷く。

あかりは管制室にいるレノックスへ連絡を入れる。

「レノックス、私とヴェルは要救助者の救助に向かいます」

『了解。管制室は任せろ。何かあったら知らせる』

 

 

クレアの甥―ザックとグレイの兄弟はクレアの秘書で彼らの面倒を任せていたザラを出し抜いて大人気アトラクションのジャイロ・スフィアを堪能していた。

暫く移動していると

『ライド休止』

と小型モニターにされ、速やかに戻るよう警告を受けた。

インドミナスの脱走が原因なのだが、二人はそんなこと露知らず。

「戻れって…」

「俺達はVIPだぜ?少しくらい無視したって大丈夫だ」

そして弟が悲しい顔をするのを見たくなかったザックは警告を無視する。

グレイも段々乗り気になる。

そして、兄弟は立ち入り禁止エリアに入ってしまった。

「ほら見ろよ。お前の好きな恐竜が4頭も居るぜ」

「アンキロサウルスだよ。それに5頭だよ」

「何言ってんだ。4頭だろ?」

「ここに5頭」

グレイが指差したスフィアに写り込んだ恐竜―それはインドミナスだった。

「お兄ちゃん、動かして!」

スフィアを移動するよりも早く、インドミナスはスフィアを蹴り飛ばす。

インドミナスに気付いたアンキロサウルス達も逃げ出し始めるが、その内の一頭が滑り転んだ結果として逃げ遅れ、せめて他の仲間達が逃げ切るまでの時間を稼ごうとインドミナスと対峙する。

ザックはインドミナスがアンキロサウルスに気を取られている隙に逃げ出そうとスフィアを操作するが、運が悪くアンキロサウルスの尻尾が当たってしまう。

さて、アンキロサウルスの堅牢な上皮はインドミナスでも噛み砕けない硬さである。

だが、そんなアンキロサウルスも腹部や首は流石に柔らかいものである。

その事を察したインドミナスはアンキロサウルスを仰向けにし、上皮に対して“柔らかい”首を噛みつき、アンキロサウルスは絶命した。

 

衝撃で逆さまになっていたスフィアの中、衝撃で落としてしまったザックのスマホが鳴り始める。

叔母のクレアからの着信を受け取ろうと手を伸ばすザックだが、手が届かない。

「お、お兄ちゃんお兄ちゃん!」

グレイに呼ばれ前を向くザック。

インドミナスはザックとグレイの姿を見据えていた。

インドミナスは前足の爪でスフィアを覆うガラスに穴を開け、スフィアを回してザックとグレイの身体の前面が真上に向く位置にした後、大きく口を開けてスフィアに噛み付き、何度も地面に叩き付ける。

やがてスフィアのガラスの一部が割れ、兄弟はシートベルトを外し、地面へと落ち、隙を突いて逃げ出す。

インドミナスは兄弟を追い掛ける。

そして、滝に辿り着いた。

「グレイ!飛び込むぞ!」

ザックの言葉にグレイは頷き、滝の中へ飛び込んだ。

暫くして水面から浮かび上がった兄弟は陸に上がる。

「僕達、生きてる?」

「あぁ、生きてる、大丈夫だ」

兄弟は崖の上のインドミナスを見上げる。

川の広さが自分が飛び込み、そして泳ぐには不充分な広さだと理解したインドミナスはそのまま立ち去るのだった。

 

 

ジャイロ・スフィアの谷に到着したオーウェン達を乗せた車は“あるもの”の近く車を停車させる。

車から降りた一向の目の前にいるもの―それは瀕死の重傷を負い、今にも息絶えそうなアパトサウルスだ。

「これは酷い…」

と呟くヴェル。

「アパトサウルスは此処にいた他の恐竜達と比べて重量があるからね…」

あかりの推測通り―アパトサウルスは足が遅い恐竜である。それ故にインドミナスの襲撃を受けてしまったのだ。

オーウェンやあかり、ヴェルはアパトサウルスの頭や喉元を優しく撫でる。

そしてクレアもアパトサウルスの喉元にゆっくりと触れていき、優しく撫でる。

その時、アパトサウルスは力を振り絞り首を上げ、立ち上がろうとする。

「よせ!頑張らなくて良いんだ!…楽になれ」

オーウェンの言葉を聞き入れたのか、アパトサウルスは力を抜き、首と頭を地面に着かせた後、静かに息を引き取った。

アパトサウルスに黙祷を捧げる4人。

ふとあかりの視界にクレアの顔が入った。

クレアはこれまで恐竜を“命はあるが単なる展示物”として見ていた。

だが、それは“命を軽んじる愚行”であった。

その事にクレアは漸く気付き、そして涙を流すのだった。

 

 

 

 

To be continue

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