ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神   作:衛置竜人

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第42話『憧れ』

「無理だよ。どう考えても、凛には似合わないよ…!」

部室の隣の練習部屋にて凛はぼそりと呟いた。

「そんなこと―「そんなことあるの!」」

絵里の言葉を遮り、凛は続ける。

「だって凛…こんなに髪が短いし…」

「髪が短いお嫁さんって多いわよ!」

真姫の言葉も

「でも!凛は…!とにかく、μ'sの為にも凛じゃない方が良い!」

凛は受け入れない。

(これは思ってた以上に根深い、か…)

あかりは心の中でそう呟くと同時に自分の事を思い出した。

あの時までは…μ'sの面々に自身の過去などについて打ち明ける前はあかり自身もまた“血塗られた咎人”として己を過小評価していた。あかりもある意味では臆病だったのだ。

そして、目の前にいる凛も自分自身に自身がなくて臆病になってしまっているのだ。

「でも確かにあの衣装は穂乃果ちゃんに合わせて作られたから凛ちゃんだと手直ししなくてはならないんよね」

凛の気持ちを汲み取ったのか、希はそう口にし、言葉を続けた。

「…近いサイズだったら…花陽ちゃん?」

「私っ!?」

「確かに…急にリーダーになった凛一人に全てをやらせるのも頂けないわよね。…花陽、どう?」

花陽が候補に挙がった途端

「そうにゃ!かよちんならきっと似合うにゃ!」

と凛は明るい表情で花陽を誉めだした。そんな凛に花陽は

「でも凛ちゃん…良いの?」

と問い返すが

「良いに決まってるにゃ!」

凛はそう返した。

その後、時間も惜しいため絵里と希は早速衣装合わせをするために作業に取り掛かり始めた。

そして、凛は練習部屋を出ようとするが…一瞬だけ衣装を纏う花陽に顔を向け、花陽へ笑みを浮かべてそのまま練習部屋を後にした。

だが、凛が一瞬だけ浮かべた表情―“憧れ”を含んでいた表情をあかりや花陽は見逃してなかった。

 

 

(凛…そんな顔をしたって説得力ないよ…)

 

 

その日の夜、あかりとヴェルは花陽の部屋にいた。

この様な事態になったのは…仕事を終えて夕飯の買い物をしようとしたら母親と買い物をしていた花陽と遭遇、『娘がお世話になっている』と花陽の母親から夕飯に招待され、そのまま泊まる事になったからである。

因みに花陽の母親は嘗てアイドルを志望しており、とあるアイドルグループの研究生だった過去があるらしく、結婚と同時に引退したらしい。

だからこそスクールアイドルである娘達を誇りに思い、その活動を応援しているのだ。

「やっぱり不安があるんかい?」

「うん…穂乃果ちゃんと話し合って私なりに考えて決めてみたんだけど、もし凛ちゃんを傷つけてちゃったら…あかりちゃんやヴェルちゃんはどうなのかな…」

「それは花陽が決めるべき事だよ」

「右に同じく。最終的な判断は花陽が下すべき」

「穂乃果と同じ答えだね」

と苦笑いを浮かべる花陽に

「だってそうなんだもん。その人物の最終的な決断はその人自身がするものなんだよ。

私達もそうなんだよ」

「“選択肢”がそれしかなかったとはいえその最終的な決断―アデプトテレイターとなる決断は私達自身で決めた事だからな」

「まぁ、そういうことなんだよ。私達は花陽の選択に口を挟む気はない」

「だが、私達は花陽の選択―その勇気と優しさに従う」

「だからさ、花陽は後悔しない選択をしてね」

あかりとヴェルの言葉に花陽の中から不安は消え、ある決心が浮かんでいた。

「…その顔は…どうやら決心がついたみたいだね」

「うん、ありがとう。あかりちゃん、ヴェルちゃん」

「いや、私達は大切な友人が後悔しないようにただ思っている事を口にしただけだよ。

…それに私はあの時、みんなに救われた。だから、今度は私の番だよ」

「私も同じ気持ちだ。私を暖かく受け入れてくれた皆に恩返しがしたい」

そして三人は希、絵里、にこ、真姫に連絡を取るのだったのだ。

 

 

 

 

ファッションショー当日。

あかりやヴェルは今までこの様なイベントとは無縁の世界で生きてきたと言うのもあってか人生初のファッションショーはとても新鮮なものであった。

何がともあれ、あかり達は控室に通された。

「じゃあ皆、着替えて最後にもう一度踊りを合わせるにゃ!」

凛の言葉に皆は頷く。

「あっ、凛の衣装はあっちに用意してあるよ」

「あかりちゃんありがとう!」

あかりに言われ、カーテンを開いて中を確認する凛。

「えっ…」

そして、凛が驚いたように声を上げた。

 

 

そこにあったのはセンター用の衣装―あのウェディングドレス風の衣装だったのだ。

 

 

何かの間違いかと思った凛は

「あかりちゃん…これ衣装間違って―」

皆の方を向くがウェディングドレス風の衣装を着る予定だった花陽がタキシード風の衣装を身に纏っていた。

私服を着ているヴェルが、音ノ木坂の制服を着ているあかりが、タキシード姿の絵里が、希が、にこが、真姫が、そして花陽が暖かな視線を凛に向けていた。

「間違ってないよ」

「貴方がこれを着るのよ、凛」

花陽と真姫の言葉。

「でも、急にセンターを変えたら…」

凛の言葉に対し絵里はこう返した。

「それなら心配は無用よ。凛がセンターで歌えるように皆で調整したから」

そして、花陽は一番大切な親友へ―生まれて始めて出来た親友である幼なじみへ思いを告げる。

「凛ちゃん!私ね、凛ちゃんの気持ちを考えて、困っているだろうなって思って引き受けたの。

でも、思い出したよ!凛ちゃん出会った時の事、そして私の背中を押してくれた時の事を!

あの時、一人ぼっちだった私に凛ちゃんが声をかけてくれたから今の私が此処にいる。

そしてあの時、凛ちゃんが背中を押してくれたから今の私が此処にいる。

だから、今度は私が凛ちゃんの背中を押す番!凛ちゃんはかわいいよ!」

花陽に続き真姫はこう言った。

「皆が言ってたわよ。μ'sで一番女の子っぽいのは凛だって」

そして、真姫の言葉にあかりは続いた。

「凛ちゃん、あの時、言った言葉―かわいいよって言葉。

あれはお世辞なんかじゃない。本当に似合ってる、かわいいと思ったからそう言ったんだよ」

「あかりちゃんの言うとおりだよ!

私、凛ちゃんの事、抱きしめちゃいたいって思うくらい可愛いって思ってるもん!」

「花陽の気持ちもわかるわ。見てみなさいよ、あの衣装!一番似合うわよ。凛が!」

花陽は真姫と共に凛の背中を押す。

あの時、花陽の背中を押したのは真姫と…そして凛だった。

そして、今度は押してもらった花陽が凛の背中を押す。

背中を押された凛はその衣装に手を触れる。

そして、凛はあかり達の方を向いて頷いた。

 

 

そして、いよいよライブ本番。司会者による紹介の後、ステージにいる6人にスポットライトが照らされる。

「皆さんこんにちは!音ノ木坂学院のスクールアイドル『μ's』です!」

凛がそう言うと、観客達が皆「かわいい!」と凛へ言い、そんな観客達に対し凛は

「ありがとうございます!」

と笑顔で返し、言葉を続ける。

「本来なら9人なのですが、今回は都合により6人で歌わせていただきます。

でも、今日はこの場にいない3人の分まで精一杯歌います!」

そして、凛は一泊置いてライブ―『Love wing bell』という曲のスタートを告げた。

 

 

 

 

「それでは!一番かわいい私達を、見ていってください!」

 

 

 

 

二年生組が修学旅行から帰ってきた翌日の屋上。μ'sの8人とあかり、ヴェルは屋上で練習をしたりそれに付き合っていたりした。

其処へ扉を開いて現れたのは

「…え、えへへ…ど、どう…かなぁ?」

今までの練習着とは異なり、スカートを履いた凛だった。

「Wow…it's so cute…!」

思わずあかりはそう呟き、皆もより一層可愛らしくなった凛の姿に盛り上がっていた。

 

 

 

 

「よーし!さあ、今日も練習いっくにゃ~!」

 

 

 

 

To be continue

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