「前に私に言ったわよね?めんどくさい人間って。…自分の方がよっぽどめんどくさいじゃない!」
真姫の本気の言葉と真剣な表情に
「気が合うわね。同意見よ」
絵里は肩をすくめてそう言った。
「エリチ…」
「ねぇ…希、ちょっと家へお邪魔して良いかしら?」
絵里の言葉と目―そして真姫とあかりの目にもはや逃げる事は出来ないと察した希は頷いた。
希が暮らしているアパート。
そこに案内されたあかり、絵里、真姫。
お茶を淹れる為のお湯を沸かしている希に真姫は問う。
「一人暮らし……なの?」
「うん」
そして希は語り始める。
―side:Nozomi―
今まで“私”は一人ぼっちだった。
小学生の頃から転校ばかりで友達がいなかった。
最初は行く先々で友達を作ろうと頑張った。
けれども…
「ごめんな、希。また転勤が決まったんだ」
“なりかける”って所で転校が決まり、友達になりかけてた子達に何となく見送られる日々。
「こんな思いをするなら、友達なんていらない」
何時の間にかそう思う程に私は疲れていた―、それどころかその思いすら摩耗していって何も思わなくなった。
そんなある日の―中学生最後の夏休み。
両親の仕事の都合で暫くの間、アメリカ・ニューヨークに住む事になった。
私からしてみれば旅行の様なものだ。
アメリカには何度か来たことがあるし英会話に関しては日常会話程度なら出来るので差し支えない。
そんな中、一人散歩してたら一人の日本人の少女に―あかりちゃんに出会った。
どうせまた“なりかけ”の所で別れる…だったら話しかけずに…って思ったのに何故か話しかけずにはいられなかった。
穂乃果ちゃん達から遠く離れた異国の地で暮らし始め…そして両親を失い、ネストに入ってヴェルちゃんに出会うまでの空白の期間のあかりちゃん。
始めて会った時に気付いた―この子もまた“孤独”なのだと。だから話しかけたのかもしれない。
たわいもない―何ともない話をあかりちゃんは興味深々に聞いていた。
「同じ年頃の日本人の少女とお話が出来て嬉しい」
ある日、彼女はそう言った。あかりちゃんはある意味、始めて出来た“親友”だったのかもしれない。
「私ね、高校生になったら日本に帰国して通いたい高校があるんだ」
ある日、ふとあかりちゃんがそう言った。
「通いたい高校?」
「音ノ木坂学院。歴史ある女子校で、私は昔から彼処に通いたいって思ってたんだよ。彼処に通うお姉さんに憧れたりして―」
私は興味を持った―彼女が憧れてるという音ノ木坂学院に。
それから日本へ帰国した私は音ノ木坂に入学すべく受験勉強をして…入試で合格を果たして、春から一人暮らししながら音ノ木坂に通う事になった。
「絢瀬絵里です、宜しくお願いします」
そして、その音ノ木坂で出会ったのは自分を大切にするあまり、周りと距離を置いて、上手く溶け込めない―自分にズルが出来ない、まるで自分と同じ様な人だった。
思いは人一倍強く、不器用な分、周りとぶつかる子。
「あの!」
「あなたは?」
「私―ウチ、東條希!」
その日、私は―ウチはその子と友達になった。
それから色んな子に出会った。
同じ思いを持つ人がいるのにどうしても手を取り合えない、どう繋がっていいのかが分からない子。
そんな子達が此処にも、此処にも。
そんな時、大きな力で繋いでくれる存在が現れた。
残したかった―思いを同じくする者がいて、繋げてくれる者がいる。
それを必ず何かしらの形にしたかった。
―side out―
「そして、あかりちゃんと再び会うことが出来た。
久々に会えたあかりちゃんはある意味―ウチと似てる様な気がした。
どこか寂しげで、悲しげで…その“答え”を知ったのはあかりちゃんがアデプトテレイターだって知った時やったんだけどね」
図星を突かれたがあかりは何も言わず、ただ黙って希の話に耳を傾けていた。
「だけど、その答えを知る前からこう思ってた…あの時、ウチを“救って”、音ノ木坂と…μ'sとみんなと巡り合わせてくれたたあかりちゃんを今度はウチが手助けをする番だって…あかりちゃんを救いたいって」
そして、絵里もまた心優しい様子で続けた。
「そんな希の夢だったのよ―皆で曲を作りたいって。
ラブソングが作りたいんじゃないの。一人一人の言葉を紡いで、想いを紡いで、全員で作り上げた曲。そんな曲でラブライブに出たい」
「だから希と絵里は…」
「ええ。上手く、行かなかったけどね」
「…夢なんて大それたものやないの。ただ…曲じゃなくても良い、十人が集まって力を合わせて何かを生み出さればそれでよかったんよ。
だって…この十人は奇跡で…一番の夢はとっくに…
だからこの話はお終い。それでええやろ?」
この話を聞いてあかりはある考えが浮かんでいた。
どうやら絵里や真姫も同じ事を考えていたらしい。
「お終いにする―だが断る。此処でお終いになんかしないよ」
あかりの言葉に絵里と真姫は笑みを浮かべて頷き、それぞれが携帯を取り出した。
そして、何をしようとしているのか気付いた希は
「まさか、皆をここに集めるの?」
と問い、真姫はこう返した。
「良いでしょ。一度くらい皆を招待しても。“友達”、なんだから」
数分後。あかり、絵里、真姫に呼び出さた皆が希の部屋に集まった。
「ええ!?やっぱり作るの!?」
穂乃果の驚きの声にあかりは笑みを浮かべて返す。
「Yes!やっぱり作るしかないよ!」
「あかりの言う通りよ。それに、これはちょっとしたプレゼントなの。μ'sから“μ'sを作ってくれた女神様”へ」
それから絵里、真姫、あかりはその“方法”について説明する。
「皆で言葉を出し合って、かぁ…」
そう呟く凛。
「…何かあったの?」
小声でそう尋ねてきたことりに
「まぁ、色々とあって、ね」
とあかりは返した。
そうやって話をしている中、花陽はある物に気付いた。
あの日―あかりが“本当の意味”でμ'sのマネージャーとなった後に皆で撮った写真やヴェルの歓迎兼誕生日パーティーの時に皆で撮った写真。
どの写真も皆、とても楽しそうで、笑顔を浮かべていた。
それらの写真を希は恥ずかしいからか奪取して胸に抱える。
「そういうの飾ってるなんて意外ね」
そう言うにこに
「べ、別にいいでしょっ。…友達、なんやから」
希は頬を少し赤く染めてそう返す。
その姿が愛おしく思った皆は希に抱き付こうとする。
「もう!笑わないでよ!」
珍しい―そしてあかりにとってはアメリカで別れて以来久々に聞く希の標準語をあかりは逃す筈がなく…すぐさま“録画”する。
「おぉ~希の久々で珍しい標準語、頂きました」
「ちょ、どさくさ紛れに何やってるのあかりちゃん!」
「こらこら、からかわないの」
と絵里は希を優しく抱きながら皆を宥める。
その後、ふと窓の外が目に入った穂乃果が外を指差した。
「見てー!雪だよー!」
外に出ると、舞い落ちる粉雪―その粉雪は初雪だった。
そんな舞い落ちる粉雪の中、“9人の女神”は楽しそうに舞い、“鋼鉄の戦女神”はそんな女神を暖かく見守る。
そして、雪と月明かりに照らされた女神達は言葉を―脳裏に浮かんだ言葉を口にする。
「想い」
「メロディ」
「予感」
「不思議」
「未来」
「ときめき」
「空」
「気持ち」
「好き」
その眩しく、そして幻想的な光景にあかりもまた言葉を口にした。
「雪の光暈…Snow halation」
To be continue