―side:Akari―
12月某日。
私―頼尽あかりはラブライブ最終予選に於けるライブの演出について考えていた。
曲は現在製作中だ。みんなで言葉を出し合って、それを海未が纏めて一つの歌詞を作っている。
真姫も海未と相談して作曲しているし、ことりも衣装をデザインしてそれを形にしている。他のみんなはそれを手伝っている。
「う~ん、何かギミックが欲しいなぁ…」
「ギミック?」
とエリチカこと絵里が私に声をかけてきた。
「うん。ギミック。私も私に出来る精一杯の事がしたいからね。
今回のライブを引き立てるギミックを仕掛けたいけどどうしたものかな、って」
「なる程ね…」
とエリチカが呟いた時、私のスマホが鳴った。
発信者は私の“仕事”の上司であるつばめさんからだった。
「もしもしつばめさん」
『あかり、調子はどうだ?そっちは順調に進んでる?』
「まぁ、ぼちぼち進めてますよ。それで、今日はどうしたんですか?」
『忙しい時に悪いんだが、ヴェルと一緒に今からこっちに来てくれないか?今日中には終わる案件だから』
今日中には終わる案件?どゆこと?
「まぁ、とりあえずは了解しました。今からそっちへ行きます」
とりあえず私はそう言って電話を切る。
さてと…みんなにも言わないとね…
「絵里、悪いけどヴェルと一緒にちょいとネスト日本支部に顔を出して来るね。今日中には戻って来るとは思うけど…多分遅くなると思うからみんなには泊まっていってって伝えておいてね」
「えぇ、わかったわ。いってらっしゃい」
「いってきます」
…みんなは、μ'sのみんなは私が全身義体型不完全不老不死生命体―アデプトテレイターの中でもトランステクターを“纏う”事でトランスフォーマーとしての力を得られるアデプトマスターだって事を知っている。
μ'sが一度解散の危機に陥って再スタートして…その時、私はμ'sのマネージャーを辞めようとした。
そもそも廃校を阻止するまでという条件で引き受けたし、解散の危機に瀕しているのは間接的には私のせいであるからその責任を取るというのもあるが…それとは別に血塗られた存在―如何なる理由があろうと殺人を犯した私がそういったのとは無縁の世界にいる彼女達と一緒に居て良いのだろうかと思ったからだ。
だけど、彼女達はそんな私を受け入れてくれた。
その事にどれだけ救われたか…それはヴェルも同じだったらしい。
“普通でない私達”に取って受け入れてくれるのはまさしく救いなのだ。
ネスト日本支部。
「つばめさん、一体何の用が…」
まぁ、ヴェルの言うとおりだね。
そんなこんなで私達は亜理火がいる司令官室への扉をノックする。
「どうぞ」
「「失礼します」」
部屋に入るとその奥にあるデスクに手を置いて高そうな椅子に座っているつばめさんの姿があった。
「まぁ、二人ともソファに座って」
「わかりました」
「お言葉に甘えて」
私達がソファに座るのを確認した亜理火さんは用件について話し始めた。
「まぁ、用件についてなんだが…あるアデプトテレイターをしばらく君達の元に預けようって思っている」
「あるアデプトテレイターとは一体…」
ヴェルの質問につばめさんは一泊置いてこう口にした。
「1週間程前かな、静岡県の某所にてある少女が発見されたんだよ。
彼女について分かるのは名前とアデプトテレイターである事ぐらい。
彼女がどこから来たのか、どの様にしてアデプトテレイターになったのか…それがわからないんだよ」
亜理火さんの言葉を聞いて私はある可能性に辿り着いた。
「記憶喪失…ですね」
「そういう事だよ、あかりちゃん。それと、あくまでも私の推測なんだけど、あの娘はこの地球ではなく、別の地球出身で、何かしらの出来事があってこっちに飛ばされてきたんじゃないかなって事かな」
そう言うと亜理火さんは立ち上がり
「彼女の元まで案内するよ」
と私達を連れてある部屋へと向かった。
隊員用宿泊室にその娘がいるらしい。
「初めて見た時は私も驚いたよ。その娘は君達の“後輩の一人”と外見が瓜二つどころか名前すら一緒だったからね。名字は違ってたけど」
後輩の一人?つまりミケモカのどっちかとそっくりさんって事?そう言えば、あの娘達って今はアメリカの方へ研修に行ってるんだったな…私は日本に経つ数ヶ月前に会ったぐらいだけどね…
そう言えばヴェルが日本に来るまではヴェルにしごかれてたけど…今頃はレノックス達にしごかれているかな?
と何かしら考えてたら、亜理火さんはその部屋の扉をノックして
「入るよ」
と部屋の中に入っていった。
私達もその後に続いて部屋の中に入った。
その部屋の中には茶色い長髪の少女がこちらを見つめていた。
彼女を見て、私もヴェルも何故この娘の面倒を見る事になったのかを理解した。
この娘はまるで嘗ての私の様だったからだ。いや、ヴェルやミケモカもそう思うだろう。
何もかも失って絶望の中にいる―そんな目をしていた。
私達はとりあえず彼女の目線の高さまで屈んで
「はじめまして、私は頼尽あかり。貴女と同じアデプトテレイターだよ」
「同じく風見ヴェールヌイだ」
私達が挨拶をした後、少女はこう名乗った。
「みさき…あけの…岬崎明乃です」
その少女―岬崎明乃は私達の後輩の一人―岬風明乃と瓜二つの少女どころか名前まで一致してた。
かくして、私達は記憶喪失の少女を預かる事になった。
To be continue